ジョー・ヒルの『二十世紀の幽霊』再読して泣いてた。ディズニーのファンタジアの一場面を観ながら戦争で死んだ兄と映画館の中で若くして亡くなった女性の儚い運命を思い起こす一節が胸に迫って何度読んでも泣く、「若者の物語、若く健康な肉体の物語、穴だらけにされて、血管からあふれる血とともに命までも流れ出ていった肉体の物語にして、ひとつの野心も達成できなかった若者の物語だ」
映画を観るときに、自分の生きる世界とは全然別の世界が描かれているのにそこに自身の生、身近な誰かの運命を重ねてしまう感覚が活写されていてたまらない気持ちになるのと、映画館で亡くなった女性の幽霊がやがてミューズとなり、映画に携わる人々の運命を変えていく結末が悲しくもハッピーエンドにも思えて大好きな短編。ハーパー・ブックス『ブラック・フォン』収録。ブラック・フォンはスコット・デリクソン監督の映画も良かった。
お父さんのスティーブン・キングと同じジャンルで活動するの、凄く勇気がいったんじゃないかと思うんだけど、お父さんとはまた違ったストーリーテリングのうまさがあって、小説家という職業を選んでくれてありがとうございますの気持ちです。
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今吉屋信子の『乙女のための源氏物語』を少しずつ読み進めてて、まだ紅葉賀の章なんだけど面白い〜!戦後すぐの鎌倉で、老婦人が孫娘三人とお隣の実業家の女性に講義する形で源氏物語が語られるんだけど、この婦人の目を通して語られることで物語の筋立ての面白さだけではない、情景描写や宮中生活の描写の美しさが伝わってきてとても新鮮だし、物語に対しては聴き手のツッコミが入るからすごく楽しい!光源氏が女性に手を出すたびに末っ子が「なんでこんな男性の話書いたのかしら」とか「色魔」とか言うから笑っちゃうし、実業家の女性は「いつの時代も女性が生きるのは大変ですね」としみじみ語るのもいい。なんか全員が光源氏のこと拒否した空蝉のこと応援してるのもおかしい。吉屋信子の感覚は今にも通ずるものがあって、その新しさがとても好き。
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創元推理文庫の『伝説とカフェラテ』、とてもよかったのですが、女性同士の真摯な恋愛描写があること宣伝したほうがいいと思う。出版社が全然触れてないし物語の後半に出てくる要素だし、ネタバレになるかと思って書くの躊躇したんですけど、「それなら読みたい」って人絶対いるよね。
種族に対する偏見のせいで仮住まいを余儀なくされてる女性たちが、協力しながら徐々に伸びやかに自分の能力を発揮して、最終的に安住の場所を作り上げていく話なので、そういうのが好きな方におすすめしたいです。それと美味しそうなパンとコーヒーの描写!
オークの主人公をはじめとして人間ではない種族が全員真面目なのに対して、「熱いの飲めない」つって研究のためだけに店に長居する学生とか変形リュートとアンプみたいなの持ち込んで店でライブする奴(でも照れ屋)とか暗黒街のボスとか、人間側のほうが癖が強いのも良かった。
あと『伝説とカフェラテ』って店名なんですけど、原文だと『Legends&Lattes』でお洒落なんですよね。これを真面目なホブの船大工が照れながら提案するとこがとても良いので、翻訳時に残してほしかったなとちょっと思った。
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https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488559052
クエンティン・クリスプ『魔性の犬』感想、残酷な描写がある小説の感想なので一応
動物しか愛さない偏屈な貴族が死亡し、遺産をすべて飼い犬に贈る。遺産狙いで愛玩動物たちを密かに殺していた使用人夫婦は犬に仕えることになるが、犬の散歩途中に出会った娼婦と夫が浮気する。不能の夫の代わりに犬と娼婦が関係を持つことになり、娼婦は妊娠し犬の特徴と人間の特徴を持った子どもを産み……というストーリーで、犬という生き物をこれほど気持ち悪い生物として描き出した小説は初めて読んだ。
人間の描写についてはその暗部を暴くというより、上品かつ突き放した乾いた筆致で描かれるのであんまり嫌悪感を持たずに読めてしまう何だか不思議な作品。意外なのは、使用人の妻が主人と夫に抑圧されて正しい判断ができない状況や娼婦の歩んできた人生が垣間見えるときに、ほんのわずかだけど作者の筆に同情や共感が宿っている……気がすること。主人公であるチョッグと呼ばれる犬と人間の子(ChildとDogを合わせた言葉。大変酷いと思う)の哀れな運命にも。いやみんな大変なことになるけど。
クエンティン・クリスプ、これしか翻訳がないようで残念です。他の小説も気になるし、自伝も読みたい。
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『〈人類保管機構全短編1〉スキャナーに生きがいはない』を購入して即読了し、続刊も購入しますが読み切っちゃったら寂しいのでその前に家にある古いSFをどんどん読んでいくことにしました。
昨日『バベル-17』を読み終えて、こんなに胸のすく話なのかと感激。今年のアカデミー賞のあれやこれやの後で読むと、1966年の段階でアジア系の女性がスーパーヒーロー並みの活躍をする展開がとても眩しい。この主人公ってポリアモリーの実践者で、バイセクシャルでもあるんですよね。この先見性!
ディレーニィを読むのは初めてで、難しい言語哲学や思弁を含んだ小説だと思ってちょっと敬遠してたのを後悔している。そしてリドラ・ウォンと愉快な仲間たちの活躍をもっと読みたい…!(『エンパイア・スター』の登場人物が作中に登場してるそうなのでこれも読みたいのだが、古本屋探すしかないのか)
しかし2016年発行の『スキャナーに生きがいはない』と比べて古い文庫本はめちゃくちゃ字が小さいなー!
手元にあるのが92年の文庫でヤケも結構あって、物理的に読むのが大変だった。次はスタージョンの『時間のかかる彫刻』を読みます。
コードウェイナー・スミスは大切な作家なので、折を見て『スキャナーに生きがいはない』の感想も書いていきたい。
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ジョン・ファンテ『塵に訊け』未知谷
小説家志望でイタリア移民のアルトゥーロは、ロサンゼルスのホテルで宿代を滞納しつつ、書けない毎日を送る。ある日訪れたビュッフェで溌剌と働くメキシコ女性のカミラと出会う。優しさを示してくれるカミラを求めつつも傷つけてしまうアルトゥーロ。成功の糸口を掴むが次第にカミラとの関係が変化していき……、というストーリー。
すごく良かった。アルトゥーロの、若い傲慢さと自信のなさが入り混じって繊細で詩的な語りも良いし(句読点で繋がれる文章を辿る気持ちよさ!)、物語が進むにつれて誠実で善良な部分が顕になる彼自身を好きにならずにいられない。
1930年代、移民である二人はどちらも差別される側で、互いの立場に共感と侮蔑の入り混じった複雑な感情を抱いている。カミラの運命に対するアルトゥーロの悲しみと、それでも彼女の自由を願う祈りの美しさに感情移入せずにはいられない。もとは序文だったブコウスキーの文章が本編終了後に収録されたのは、物語の余韻が増幅されてとても良かった。
第二次大戦前のロスの街角の移民の生活描写も貴重なのでは。どう見ても貧乏であろうアルトゥーロに、つけでオレンジを買わせてあげる日本人の姿とか、名前も性別も出てこないけど優しさにグッとくる。
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「私の意見では、文学的な幻想小説には文学において重要な役割があります。幻想小説とは芸術家の経験の総計であり、それは神秘的な魔法に驚いた彼らの問い、あるいは、恐怖の悲鳴といった形で表現されます。(中略)
幻想小説とは人間の奇蹟への、神秘への憧れの表現です――存在の〈向こう側〉に関する至高の問題を小説の形で把握する試み、生と〈彼岸〉との間に橋を掛ける試み、大きな果てしない〈謎の草原〉に侵入する試みであり、神聖な超自然的人間の系譜を調べることです。
そのうえ幻想小説は一種の避難所、不幸な人々や運命に恵まれない人々、ひどく失望した人々のための慰めの聖堂なのです。彼らが夢とおとぎ話の世界で見つけるのは、憧れていたあらゆる価値の改定と待ち焦がれた充足です。最後に幻想小説とは、日常生活の機械化と無味乾燥に対する夢の反応であり、日常生活の散文に対して反逆する魂の反応なのです。」
ステファン・グラビンスキ『火の書』、1930年のインタビューより。この時グラビンスキは結核の症状が進み、ベッドの中で受け答えをしていたそうです。とても美しく、瑞々しい言葉で幻想小説の魅力が語られている、と思ったので記しておきたくなりました。
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ハリー・クルーズ『ゴスペルシンガー』、プレスリーが自身を主演にして映画化を希望していたそうで、確かに映画『エルヴィス』を見ていたおかげでクライマックスのキャンプ・ミーティングのテントの様子をしっかり思い浮かべることができたんだが、恐ろしい話だった。
ジョージア州の行き止まりの町エニグマ出身の「ゴスペルシンガー」、美しい声と外見、そしてカリスマ性で成功者として讃えられているが、彼を奇跡を起こす救済者と見做す人々の存在に疲れ果ててその内面は複雑にねじれている。彼の後をついて回るフリーク・ショーの面々、恐ろしい過去を抱えたマネージャー、彼をエニグマに囲い込みたい家族たち、彼の恋人で彼の友人に殺されたメリーベル、彼女を殺したウィラリー……とにかく歪んで濃密な人間関係が描かれ、決定的な瞬間に向けて息が詰まるような物語が展開されていく。
登場人物それぞれの苦悶を描く筆致に迫力があって一気に読んだ。解説ではフラナリー・オコナーやフォークナーの名が挙げられているけど、それらの南部文学の系譜を引き継ぎつつもクライマックスで宗教性を一気に剥ぎ取るような作風だと思う(ただオコナーやフォークナーを読んだのがかなり昔なのでこの例えが正しいかどうか自信がないですすみません)。
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『シャーリィ・ジャクスン・トリビュート 穏やかな死者たち』(創元推理文庫)はジャクスンの作品と共通するモチーフを使用していても、それぞれの作家の不安や恐怖が少しずつ違っていて、しかもホラーとしてもどの短編もクオリティが高くて面白かった。深緑野分による解説はモチーフの分類と特徴を捉えて“シャーリィ・ジャクスンらしさ”とは何かを伝えてくれて、読了後にまた新たな発見があってありがたい。
私は特にジェフリー・フォードの『柵の出入り口』という短編が好きで、これはホラーと言うより奇想小説でなんかしらんが後味が良い。夫を亡くした女性が体を鍛えてブロンソンのように肉体改造し、強盗の頭を撃ち抜いた後行方不明になる。何十年かたって、当時少年だった語り手の前に今度はサルバドール・ダリそっくりの姿で現れる……。
物語としてはジャクスンが書きそうにないんだけど、「皮肉なユーモアを持って自分自身を語る」という行為がジャクスンが残したエッセイと重なる部分があって、人を喰ったユーモアを感じさせてとても好き。あと性自認の話でもある。「私が望んだのは、単に、自分独特の種類の女になること。」というセリフが本当にいい。ちなみにジャクスンのエッセイは同じく創元推理文庫の『なんでもない一日』に収録されてます。
BT、私は岡本喜八監督が物凄く好きですが『大誘拐』は未見で、とにかく全作品を見終えてしまったら寂しい、怖い、どうしようと思うくらいには好きなのですが、今年はおそらく新文芸坐で上映されると思うので、その時までに原作を読んでおきます。原作→映画なら未見で良かった!
岡本監督はご本人も小説を何作か書いてる位のミステリ好きで、今月から始まる新文芸坐の特集上映ではコーネル・ウールリッチ『万年筆』原作の『ああ爆弾』(佐藤勝の音楽と伊藤雄之助の音感リズム感の良さ、越路吹雪と砂塚秀夫の可愛さ、中谷一郎率いるヤクザのダンス、東宝の名バイプレイヤー沢村いき雄唯一のほぼ主演作!)、都筑道夫『飢えた遺産』原作の『殺人狂時代』(デロっと登場してビシッとスーツ姿に変身するナイスな仲代達矢とスタイリッシュな天本英世のスペイン式決闘!)を熱くオススメしたいです!どちらも大コケしたそうですが大傑作です。
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2023年ベストブック
・吉屋信子『わすれなぐさ』
・ハーパー・リー『ものまね鳥を殺すのは』
・ジェフリー・フォード『最後の三角形』
・鷲谷花『姫とホモソーシャル 半信半疑のフェミニズム映画批評』
・キース・トムスン『海賊たちは黄金を目指す』
・ク・ビョンモ『破果』
・ファン・ジョンウン『百の影』
・キャスリーン・ニクシー『信じる者は破壊せよ 古代ギリシア・ローマ、キリスト教が招いた暗黒の世紀』
・ディーノ・ブッツァーティ『七人の使者 神を見た犬』
・ジョー・ヒル『ブラック・フォン』
順不同で、小説も批評もノンフィクションもごちゃまぜになってしまいましたがそれはそれとして、『わすれなぐさ』の陽子さんは今年出会えた最高のヒロインでした。
ク・ビョンモの『破果』の主人公と対立する若い暗殺者、実写化するならソン・ソックでお願いしたいです。
『ブラック・フォン』は『二十世紀の幽霊』に泣かされました。私のオールタイム・ベストの『ワイルドバンチ』も作中に登場するので……。
2023年最後の読書はファン・ジョンウン『百の影』でした。
2010年に刊行され、現在では「2000年代韓国文学における最も美しい小説」と呼ばれているとのこと。
電気機器専門店が並ぶ巨大ビル群で働く二人の若い男女を中心に、再開発による撤去に揺れる人々の姿を描いた、幻想的な連作。主人公二人もその周りの人々にも、暴力や不幸の気配を感じさせつつ(それは自分の影法師が立ち上がり、やがては自分を支配していく姿として描かれる)、徐々に人間関係も不安も変化していく日常の様子が静謐に綴られた作品です。慎重に近づいていく主人公二人が好もしく、宙ぶらりんのようでいて、闇の先に小さな光が灯るようなラストもとても好きです。
この本は作者自身のあとがき、2002年に書かれたふたたびのあとがき、そして訳者あとがきも含めて一編の小説であるように思います。執筆当時の韓国の社会状況は訳者あとがきに詳しく、現在の作者が語った二人のその後に安心すると同時に、暴力があふれる世界を何とかしのいでいこうとする人々の姿に静かな勇気が湧いてきます。
ファン・ジョンウンは『ディディの傘』が凄まじい傑作で、「生きている」という実感が火花のように閃く一瞬をこんな風に描くことができるんだ、とびっくりしました。
クリスマスに関する物語と言えば、小学生の頃母の本棚から抜き出して読んだ文春文庫のロッド・サーリング『ミステリーゾーン2』、巻末の『柔和な人のクリスマス』が大変印象的で。
何年か前古本屋で再発見して、手に取って迷って棚に戻して、やはり買おうと引き返したら、すれ違ったスーツ姿の紳士がほっくほくの笑顔で抱えた何冊かの本の中に『ミステリー・ゾーン2』が……。
タッチの差で買われてしまいましたが、おそらく年代的にテレビ番組の『トワイライト・ゾーン』を見ていた世代の方でしょうね。めちゃくちゃ嬉しそうだった。
この本、今思うと冒頭の短編『真夜中の太陽』の世界がとても怖い。灼熱地獄の中人間の精神も荒廃してどんどん滅びに近づいていく、という描写を今年の夏はよく思い出していました。小説内では地軸の傾きが原因の暑さですが、この小説の描写がこんなに身近に感じられるなんて(最後にツイストがあってそれも怖い)。
#読書 #本 #マストドン読書部
セルマ・ラーゲルレーヴ『キリスト伝説集』より、『聖なる夜』
クリスマスの夜におばあさんが孫娘にしてあげたお話。
真夜中、一人の男が家々を巡って尋ねる。《妻がお産をしましてな、親子をぬくめてやるために火がいりますのじゃ》誰もが寝静まっていて、答える者はいない。
男は遠く野天に焚火を囲む羊飼いと、たくさんの羊と牧羊犬を見つけ、火を借りるために彼らのもとへと歩み寄る。
羊飼いは意地が悪くて情け知らずの老人だった。男に犬をけしかけ、羊に邪魔をさせようとするが犬も羊も微動だにしない。持っていた杖を投げつけるが、杖は男からそれて飛んで行く。
焚火から火傷もせず素手で燠を取り上げた男に興味を惹かれ、羊飼いはこっそり男の後をつける。男が帰ったのは家ともいえない洞穴で、むき出しの石の上には出産を終えたばかりの母親と、生まれたての赤ん坊そのまま寝かされていた。
意地悪で情け知らずの羊飼いにも、罪のない赤ん坊を哀れに思う気持ちと親切心が生まれる。肩の袋から羊毛を取り出して、赤ん坊をここに寝かせてあげなさい、と男に伝える。
その瞬間、羊飼いの心の目が開いて、今まで見ることのかなわなかった天使たちを見る。天使たちは生まれたばかりの赤ん坊を讃え、声高く歌っていたのだった。
#読書 #本 #マストドン読書部
今現在大変な衝撃を受けているのですが、去年岩波少年文庫から発刊された『小さな手 ペティットおばさんの怪談』という英米の怪奇小説アンソロジー、表題作は以前創元推理文庫から平井呈一編・訳の『恐怖の愉しみ』下巻に収録された『一対の手』という短編の新訳なんです。訳は金原瑞人。
それでこれ平井版だと語り手兼主役のペティットさんは高齢の独身女性で、岩波少年文庫版では「ミセス・ル・ペティット」になってる。先ほど岩波版を初めて読んでえええ、と思い、『恐怖の愉しみ』が家に上巻しかなくて確認できなかったのですが、ネットで原文を探してみたところ「Miss Le Petyt」なんですよ。
……なんでこんなことするんだろう。新訳で若い人にも広く知られるのは素晴らしいことだけど、私は独身で幸せなまま年を取ったペティットさんのことが大好きで、物語にも一人である不安と喜びが両方ちりばめられているのに。これ物語の趣も全然違ってきちゃうじゃん。もう腹が立つ以前にすごく悲しい。
翻訳は平井呈一は古めかしさがあるけれど、闊達な語り口が素晴らしいしラスト一行の切れ味の鋭さに関しては金原訳は到底及びません。岩波がこんなことするなんで、本当に悲しい。
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映画と読書と漫ろ歩きを愛する氷河期世代