『シャーリィ・ジャクスン・トリビュート 穏やかな死者たち』(創元推理文庫)はジャクスンの作品と共通するモチーフを使用していても、それぞれの作家の不安や恐怖が少しずつ違っていて、しかもホラーとしてもどの短編もクオリティが高くて面白かった。深緑野分による解説はモチーフの分類と特徴を捉えて“シャーリィ・ジャクスンらしさ”とは何かを伝えてくれて、読了後にまた新たな発見があってありがたい。
私は特にジェフリー・フォードの『柵の出入り口』という短編が好きで、これはホラーと言うより奇想小説でなんかしらんが後味が良い。夫を亡くした女性が体を鍛えてブロンソンのように肉体改造し、強盗の頭を撃ち抜いた後行方不明になる。何十年かたって、当時少年だった語り手の前に今度はサルバドール・ダリそっくりの姿で現れる……。
物語としてはジャクスンが書きそうにないんだけど、「皮肉なユーモアを持って自分自身を語る」という行為がジャクスンが残したエッセイと重なる部分があって、人を喰ったユーモアを感じさせてとても好き。あと性自認の話でもある。「私が望んだのは、単に、自分独特の種類の女になること。」というセリフが本当にいい。ちなみにジャクスンのエッセイは同じく創元推理文庫の『なんでもない一日』に収録されてます。
なんか『柵の出入り口』読むと体づくりしようと思えるんですよ、実際12月に読んだ後からジョギング始めてる。おばあさん小説としても意表をついててとても良い。
フォードは前も書いたけど『最後の三角形』の表題作もかっこいいおばあさん出てきてよかった。