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ジョン・ファンテ『塵に訊け』未知谷

小説家志望でイタリア移民のアルトゥーロは、ロサンゼルスのホテルで宿代を滞納しつつ、書けない毎日を送る。ある日訪れたビュッフェで溌剌と働くメキシコ女性のカミラと出会う。優しさを示してくれるカミラを求めつつも傷つけてしまうアルトゥーロ。成功の糸口を掴むが次第にカミラとの関係が変化していき……、というストーリー。

すごく良かった。アルトゥーロの、若い傲慢さと自信のなさが入り混じって繊細で詩的な語りも良いし(句読点で繋がれる文章を辿る気持ちよさ!)、物語が進むにつれて誠実で善良な部分が顕になる彼自身を好きにならずにいられない。
1930年代、移民である二人はどちらも差別される側で、互いの立場に共感と侮蔑の入り混じった複雑な感情を抱いている。カミラの運命に対するアルトゥーロの悲しみと、それでも彼女の自由を願う祈りの美しさに感情移入せずにはいられない。もとは序文だったブコウスキーの文章が本編終了後に収録されたのは、物語の余韻が増幅されてとても良かった。

第二次大戦前のロスの街角の移民の生活描写も貴重なのでは。どう見ても貧乏であろうアルトゥーロに、つけでオレンジを買わせてあげる日本人の姿とか、名前も性別も出てこないけど優しさにグッとくる。

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