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ハリー・クルーズ『ゴスペルシンガー』、プレスリーが自身を主演にして映画化を希望していたそうで、確かに映画『エルヴィス』を見ていたおかげでクライマックスのキャンプ・ミーティングのテントの様子をしっかり思い浮かべることができたんだが、恐ろしい話だった。

ジョージア州の行き止まりの町エニグマ出身の「ゴスペルシンガー」、美しい声と外見、そしてカリスマ性で成功者として讃えられているが、彼を奇跡を起こす救済者と見做す人々の存在に疲れ果ててその内面は複雑にねじれている。彼の後をついて回るフリーク・ショーの面々、恐ろしい過去を抱えたマネージャー、彼をエニグマに囲い込みたい家族たち、彼の恋人で彼の友人に殺されたメリーベル、彼女を殺したウィラリー……とにかく歪んで濃密な人間関係が描かれ、決定的な瞬間に向けて息が詰まるような物語が展開されていく。

登場人物それぞれの苦悶を描く筆致に迫力があって一気に読んだ。解説ではフラナリー・オコナーやフォークナーの名が挙げられているけど、それらの南部文学の系譜を引き継ぎつつもクライマックスで宗教性を一気に剥ぎ取るような作風だと思う(ただオコナーやフォークナーを読んだのがかなり昔なのでこの例えが正しいかどうか自信がないですすみません)。

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