元気な女の子が活躍する映画は楽しいよね、ということで『サイコ・ゴアマン』を見ました。元気が良すぎてキリストに喧嘩売って十字架ぶち割ったりしててびっくりしちゃった。

地球にひそかに埋められていた銀河の破壊者が、幼い兄妹によって掘り当てられて復活するが、彼の力をコントロールする宝石を残虐な妹ミミに奪われて大変なことになるけどミミは幸せです、という物語。人体が破裂したりするスプラッタ描写もあるけど、あえての作り物っぽいコミカルさがあり私でも耐えられました。ただフィクションでも子どもが悲惨な描写をされることに耐えられない人はやめたほうがいいと思います。2人ほど凄惨なことになります(うち一人は見ようによっては可愛い)。

このミミ役のニタ・ジョゼ=ハンナがとにかくすごい逸材で、人の話を聞かない、変なスポーツを生み出す(そしてそれが宇宙の運命を決定することになる)、破壊者にいうこと聞かす等の才能に溢れた少女像を見事に演じ切っています。特にサイコ・ゴアマンにドラム叩かせてバンド活動に勤しむ姿が最高でした。つうかミミが最高すぎてPGが霞むわ…。

私はへドリアン女王が大好きなので、宇宙から来た敵役が東映特撮の悪役っぽくて、女性の声で日本語でしゃべる生き物?がいたのが嬉しかったです。


2023年配信・旧作ベスト映画(順不同)

不動の一位 大脱走

以下は順不同で
・暴力脱獄
・冬の旅
・未成年
・ペイン・アンド・グローリー
・ユーリ・ノルシュテイン傑作集
・さらば、わが愛 覇王別記
・ニューヨーク ジャクソン・ハイツへようこそ
・ブラック・クランズマン
・マッチ工場の少女

映画館で再び大脱走を見ることが長年の夢だったので、昨年は2回見に行けて幸福でした。これホモソーシャルとは真逆の映画で、男性同士の対等な労りあいやサポートが描かれているし心身の弱さも映画内で否定されないんですよね。その空気を作り出しているのがリーダーを演じたリチャード・アッテンボローで、全編を貫く強靭な明るさはスティーブ・マックイーンが担っていて、バランスがものすごく良い。また見たい、何度でも。
『大脱走』は好きすぎてどれだけでも語りたい……!
『暴力脱獄』、ポール・ニューマンがやっぱり好きだ!
『ユーリ・ノルシュテイン傑作集』についてはなんで配信終わる直前に見たんだ、と後悔している。もっと早く、何度も見ればよかった。


2023年ベスト映画 

1 FIRST COW
2 NEXT SOHEE(あしたの少女)
3 HUNT
4 別れる決心
5 THE FIRST SLAMDUNK
6 ノベンバー
7 ベネデッタ
8 首
9 カンフースタントマン
10 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

見落とした映画も多いのですがこんな感じです。前も書いたがネクスト・ソヒの邦題はどうかと思う。『ユリョン』見たかったなぁ…!
5と6は去年の映画ですが、今年に入ってから見たので。6はアンドルス・キヴィラフク原作の美しいモノクロ映画で、原作もいつか出版されますように。


『FIRST COW』、年末に滑り込みでこんなに好きな映画に巡り合えるなんて、「おっ西部劇らしいな見とくか」くらいの軽いノリで見に行って本当に良かった…西部大開拓時代より少し前の1820年代のオレゴンの話で、メリーランド出身の男性と中国からの移民の男性が仲良くなり、一攫千金を目指して仲買商人の牛から牛乳を盗んでドーナツを作る…というあらすじから想像できる甘やかな成功物語とは真逆の、持たざる者の悲しさを静謐に描きだした作品です。二人とも持たざる者ではあるんだけど、互いを思いやり労り合う強固な友情の描写がとても美しい。
あー西部劇、そんなにすごくたくさん見てるわけじゃないんだけど好きでよかったホントに。古いジャンルが新たに作られる傑作によって次々に新しい側面を照らし出されてて、これもそういう一本です。ジャームッシュの『デッドマン』やピーター・フォンダの『さすらいのカウボーイ』(あれほど作りこまれた美しい映像ではないが、自然光を生かした青く濁った色合いが泥濘とシダに囲まれたオレゴンの自然を写してとても良い)好きな人におすすめです。
 

キム・ユンソクの初監督作『未成年』もアマプラ復帰してますね。男性が若い女性を主役に撮るときに、過剰な思い込みによってある種の気持ち悪さがにじみ出ることがありますが、そういう感情を一切抱かずに見られますし、思春期の女の子たちの喜びや苦しみを鮮やかに描いた大傑作なので、たくさんの人にみてほしい。

この映画でキム・ユンソクが演じる父親、社会的な地位は高いのにとんでもなく狡いうえにダメな人間で、映画内では主人公たちに見捨てられるばかりか今までしてきた行為の報復とばかりに行きずりの暴行まで受けるのですが、ユンソクの演技が心底情けなくて(キム・ユンソクなのに!)家父長制でもごまかせない普通の男性の狡さをここまで容赦なく描いて演じ切る誠実さは逆に感動するほどです。

最後に描かれる主人公二人の行動は、日本映画だとたいてい狂気の表現として描かれるのですが、この映画では二人が自分の記憶に悲しみの経験を刻み込み、痛みを分ちあうための儀式として描かれていて、その描写の軽やかさも含めてとても好き。
若い女性の葛藤を描いた映画として、同じ韓国映画だと『わたしたち』『はちどり』等、または『ゴースト・ワールド』なんかと並べておきたい傑作。

『プリースト 悪魔を葬る者』

キム・ユンソクとカン・ドンウォンのコンビによる、繁華街の路地裏、古いアパートの一部屋で繰り広げられる悪魔祓いの物語。韓国のエクソシストものに先鞭をつけた作品で、主演の二人も悪魔に憑かれた女子高生を演じるパク・ソダムも素晴らしい。
何回も見ているけれど、見るたびになぜか勇気が出る映画。路地裏でひっそりと行われる世界を救う闘いは、褒賞も名誉もなく、例え無事に生き残ったとしても、得られるものは夜ごとの悪夢のみ。それを理解したうえで、それでも他人を救おうとする二人の姿に胸が熱くなる。

カン・ドンウォン演じるアガトがグレゴリオ聖歌を歌い、ユンソクが低く唱和する場面は、信仰心のみを武器に戦う行為をこんなふうに美しく描けるのか、と何度見ても感心します。
路地裏のアパートの暗闇から一歩出るとにぎやかな夜の街が広がっているというシチュエーションがたまらないし、街の明るさに逃げたアガトが闇の中に過去を見出す姿は感動的で美しい(もう少し葛藤を詳しく描いてもよいのでは、と思うが)。
キム・ユンソク、無頼な態度に隠した優しさの表現がまじで世界一上手な人だと思う。


イ・ジョンジェ監督・主演『ハント』見てきた。暴力描写に容赦がないが暴力の果てを見据えつつ乾いても絶望してもいない、全てにおいて物凄く真摯な映画でジョンジェさんありがとうございますという気持ちです。はーこの世界にイ・ジョンジェとチョン・ウソンが存在することの奇跡よ…!
歴史の知識が足りないとこあるのでこれからパンフレットじっくり読みます。東京支部メンバー豪華すぎてちょっと笑ってしまった(予想外の人が出演してて嬉しくて)
いやもう、いい映画でもっと感想練りたいけどまずこの感動を残しておきたい。初監督でこのスケール、本当に凄い。見てよかった!!
 

『ウィリーズワンダーランド』よかったです、という話。

ニコラス・ケイジが、迷い込んだ町の悪魔に取り憑かれた遊園地をお掃除する話。
80年代のスラッシャーのパロディだと思うのですが、ニコラス・ケイジとヒロインが、ニコラス・ケイジとウィリーがメンチ切りあう場面のカットバックとかなんか日本のヤンキー漫画の実写版ぽくもあり、段々ニコラス・ケイジがゴリラーマンに見えてきてすごいウケてしまった。寡黙でセリフ「破ァ!!」くらいだし、実直にお掃除して悪魔の動物ロボット(着ぐるみ)が襲ってきたら脊髄ブッこ抜きなどのフェイタリティを華麗に決めて、タイマーが鳴ったらジュース飲んで休憩する姿にわかばを吸うゴリラーマンが重なります。戦闘シーンのみをチラ見した息子によると、「昭和の特撮みたいだね~、ウルトラシリーズとかこれくらいのあるよ」とのことで、まあタイマー鳴ると休憩しにいっちゃうしな(ウルトラ兄弟は休憩してるわけではない)。
クライマックスからラストにかけては同じく80年代の変なハードロックのMVみたいで最高でした。ニコラス・ケイジの煌めきは1㎜も変わってなくて嬉しい。でもアメリカでは大コケしたようです。アマプラはもうすぐ配信終了なので、興味がある方はぜひ。


『THE FIRST SLAM DUNK』1月に2度見に行ってからずっとカオルさんとリョータのこと考えてて、ボタンを掛け違えたまま長い年月が経ってしまう親子関係の描写、カオルさんの気持ちにもリョータの気持ちにもしみじみ感じるところがあって大好きなんですけどそれはそれとしてあの映画、あの5人の魅力は言わずもがなとしてほかにも卓越した身体描写とか独特の時間の感覚とか見どころいっぱいあったよね、と思って昨日見てきたんですけど、リョータのアップがペン画に変わった瞬間から現在まで「あああもう一度見たいいいいい~!!」と身もだえしており31日までとは言わず年内いっぱいどっかでやってくれませんか。

Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。