『劇場版すみっコぐらし つぎはぎ工場のふしぎなコ』
監督/作田ハズム
#映画 #感想
森の奥で見つけたおもちゃ工場で働きはじめたすみっコたち。最初はできなかった作業が少しずつできるようになり、労働の楽しみと喜びを知り、街の人々の笑顔のためにおもちゃをたくさん作り続けるが、どこまでも利益追求を続ける工場経営はやがて破綻を迎えることになり…まってこれ本当に「すみっコぐらし」の映画の話してる???なんか別の映画の話じゃなくて???
劇場版すみっコぐらし、1作目では子供向けとは思えない複雑構成と衝撃の結末で落涙必死のハートフルストーリーを展開し、2作目では「夢って何?夢を持つってどういうこと?」をテーマにこれまたヘビーな内容で涙を誘い、3作目では資本主義的な成長主義に懐疑を投げかけるというまさかの展開になっていました。すげえわ……。
NHKで放送してもおかしくないキャラクター造形ながら、もちもちした質感が感じられる作画や効果音が楽しかったです。序盤でしっかり張られた伏線を丁寧に回収していく脚本もよかった。しかも今回はアクション映画のお約束(ダクトを通って基地に潜入!変装して脱出!車&飛行機の脱出劇!)も登場してとても見ごたえがありました。5歳サンが90分飽きずビビらず見続けられたのが何よりよかったです。
『ダンジョン&ドラゴンズ』(2023)
監督/ジョナサン・ゴールドスタイン
#映画 #感想
人生ちょっとダメな感じのスットコ4人組が一発逆転を狙って裏切者から財宝を強奪しようとなんやかんやするうちに街ひとつ救う話。前評判どおりちゃんと面白かった。RPGやファンタジーのあるあるを茶化す小ネタもたくさん入っていて、ゲーム好きな人は楽しめそう。おデブすぎて飛べずコロコロ転がって攻撃してくるドラゴンが可愛かったです。
司令塔の主人公に戦闘面での特技がなくて何じゃこいつと思ってたんだけど、口達者で歌って敵をリュートで殴り倒してたので吟遊詩人だわ。あとは斧使い&黒魔導士&青魔導士とキャラも立っててよかった。聖騎士は立ってるだけでセクシーだった。
元旦那のことが忘れられない斧使いが元旦那の家を訪ねて今嫁と会うシーンが好き。従来の映画とは性別を逆転させたシーンだった。今までだと「あんな奴よりオレの方がいいのに!」って台詞があったと思う。この映画では無言で元旦那のしあわせを称えて別れていて令和を感じた。配役にも人種の配慮があってよかったし、血縁関係のない親子もでてきて色々よかった。
予備知識ゼロでご飯食べつつCM挟みながら観ても楽しめる映画だと思うので、金ローでヘビロテして令和のこどもたちの魂に刻まれてほしい。
『ロミオ+ジュリエット』(1996)
監督/バズ・ラーマン
#映画 #感想
ロミオが車をかっ飛ばしてメキシコの荒野を走りぬけ、ジュリエットは仮装の天使の羽根を背負い、キャピュレット家とモンタギュー家の郎党は銃で決闘している映画。遥か昔に一度観て「???」だった映画を改めて観たらめちゃくちゃ面白かった。舞台は現代都市に置き換わっている一方で台詞がわりと原作通りなのにそれほど違和感がなくて驚いた。
序盤のレオ様が可愛くて天使で最高だったしジュリエットも天使だった…終盤の顔つきの変化にぞくっとした。あとマキューシオが凄く良かった。ドラァグクイーンみたいな衣装かっこよかった。
それにしても、このふたりは馬鹿だ。たった数日の恋に命をかけるし、夜のうちに去れと言われているのに朝まで寝てるし、不在通知に気づかないし、早とちりして勝手に死ぬし。
でもこの馬鹿なふたりの物語が400年生きた。様々に解釈されて語りなおされながら。
この映画での恋は水槽越しに始まって、プールの中でキスをして、雨の夜に契りを結び…と、常にふたりは濡れている。周囲には怒りの炎が燃えさかる中で彼等だけは冷めて、一目ぼれから始まる真実の恋をしている。狂っているのは、憎しみにとりつかれた世界のほうだ。
『べいびーわるきゅーれ』(2021)
監督/阪元裕吾
#映画 #感想
高校卒業と同時に同棲をはじめた殺し屋のおんなのこが、バイト探しつつゲームしつつ時々ヒトを殺してるガールズムービー。は?(は?)
ながら見するつもりでかけたのにおもしろかったので最後までわりとちゃんと見ちゃった。なんだこれ。
常にテキトーな雰囲気を醸しつつも、実はばりばりに演技できる人たちが本気の悪乗りとアドリブで繰り広げる、ネットミームと鉄板演出を逆手に取った悪乗りと社会人あるあるとおたくムーヴと関西しゃべくり漫才的な会話のテンポと時々さしはさまれる日常パートのゆるさで展開される怒涛の90分だった。は???(は???)
リコリコってこんな感じだったのかな。2話位までしか見てないんだけど。最近は女子高生が学校帰りに殺し屋やるのが流行ってるのだろうか。いや別にそんなもん今に始まったアレではないが。
特徴であり魅力のひとつのインターネットミームの多用は、一歩道を誤ればクソつまんない映画まっしぐらだったともおもうので、この映画では本当に上手な演出が為されていたとおもう。面白かったしクセになるタイプの映画なのでロングランした理由もわかる。他の監督作品も見てみたいな。
『SHE SAID/シーセッド・その名を暴け』
監督/マリア・シュラーダー
#映画 #感想
ハリウッドの大物プロデューサーの長年に渡る性暴力を告発し、「#Metoo」運動の契機となった、ニューヨーク・タイムズの新聞記事が公開されるまでの話。
構成は『スポットライト/世紀のスクープ』とまったくおなじで、物語や映像に目新しさは全然ない。けれど、暴力を受けたあとの女性たちがどれだけの傷を負い、孤立し孤独を感じ、人生を損なわれたのか、そして彼女たちの声を届け連帯することがどれだけ大切で難しいのかを、いろいろな角度から丁寧に描いていたとおもう。
日本ではこういう話は作れないのかな…『新聞記者』も『エルピス』も現実の事件をモチーフにはしていたけれど、一番大事なところが特大のフィクションになっていた。観た直後にそれでいいのか?とおもったし、この映画を見て改めてそうおもった。
誰かの尊厳を損なった者が適切に告発され、その不正義や理不尽に対しする怒りや悲しみに連帯を表明しても咎められず、共に声を上げてくれるひとがいる。そんな『当たり前』が、今までこの社会にあったかどうかわからない。でも、少なくとも海外ではそれを当たり前にしようとしているとおもう。
翻って日本はどうだ。なんか、だんだん悲しくなってしまった。
『ガンパウダー・ミルクシェイク』
監督/ナヴォット・パプシャド
#映画 #感想
夫を亡くした女殺し屋、恨みの炎に身を焼かれ、会稽遂げた雨のダイナーで哀れ親子は生き別れ。消えた母親の背中を追って、あの日の少女も殺し屋に。
こどもを助けた女殺し屋は組織に反旗を翻し、武器を求めて図書館へ。追っ手の死体を踏み越えて、血染めのジャンパーの背中にゃ今日も子虎が牙をむく。
……という感じの映画でした(どんな?)
タランティーノ作品が好きだったら絶対に楽しめる系。色々なものへのオマージュがタイトルの通り「シェイク」されていた。ボウリング場の闘いがまんま『キル・ビルvol.1』で喝采しちゃった。
最強の図書館員たちが本のから武器を渡してくれるんだけど、ラインナップがジェイン・オースティンとエミリー・ブロンテとヴァージニア・ウルフ(一瞬だったけど『自分だけの部屋』だった?)という強すぎる布陣で、それだけで勝利が約束されていた。
監督インタビューによると、女性暗殺者が出てくる先行作品をくまなくチェックして作られた、とのことで、どこかで見たことがあるシーンやモチーフが多く、一方でごちゃまぜ感が「どこでもなさ」でもあって面白かった。
フェミニズムへの目配せもあったけど個人的にはもっとやってくれてええんやで、と思った。
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(2023)
監督/サラ・ポーリー
#映画 #感想
閉鎖的な村で発覚した集団強姦事件。村中の男たちが不在となる2日間に、残された女性たちは投票をおこなった。ほぼ同数の得票となったのが「闘う」あるいは「去る」――どちらを選ぶか、代表者が話し合うことになる。
現代(2010年)が舞台だけどまるで時間が止まってしまったような村には「メノナイト」というキリスト教の宗派の人々が暮らしていて、ガスや電気を使わない生活をしている。聖書の教えは知っていても人権の概念はない。男性と女性が平等である『べき』だという前提すらもない。それでも、自分たちがこんな扱いをうけていいはずはない、という静かな怒りと悲しみが漂う。まだ4歳の子が「痛いの」と涙を流す。
こんなことが起きていいはずがない。
村の女性たちは教育の機会を奪われており、読み書きもできず地図を見たこともないけれど、「同じ体験」を共有している。血に濡れて目覚める朝のイメージだ。それでも意見や態度はまったく異なるし、受けた傷の形も現れ方も、何もかもが違っている。フェミニズムにまつわる有名なことば『一人一派』のように。
続く→
書店で偶然手に取ったBL漫画にハマった75歳のおばあちゃんが、書店員の17歳と仲良くなる話。「良い」とは聞いていたけれどとてもよかった本当に良かった、何年かに1本現れる繰り返し観たい邦画だった…。
「BL」が好きな主人公は、自分が好きな物を人前で「好き」と言うことができない。好き、を人前に出すのは怖い。拒否されるのも、変にチヤホヤされるのも、嫌だ。自分の好きをどうやって大事にしたらいいかも分からないのに、17歳には「進路」という難題が付きつけられる。何をすればいいか、どこへ行けばいいのか、自分に何ができるのか。進路を決めろ、目標を言えと言われても、自分には何もないと感じる気持ち、痛いほどに良く分かる。
一方75歳の行く末はある程度決まっている。人生の終焉が目前にあるからだ。腰は痛むし物も忘れる。でも、書店での偶然の出会いによって、大冒険が始まることだってある。自分の形が分からず、まだ何者でもない17歳と、自分の核も殻も形も持っている75歳が、それぞれほんの少しだけ「メタモルフォーゼ」する。
続く→
『赤と白とロイヤルブルー』(2023)
監督/マシュー・ロペス
#映画 #感想
アマプラ限定配信。アメリカ大統領の息子とイギリス王室の次男は犬猿の仲で顔を合わせると喧嘩が始まる。だがイメージアップの為に共に過ごすうち、かけがえのない相手になって…というラブコメ。
いわゆる「BL」的なラブロマンスを、歴史と伝統を重んじるイギリス王室の在り方とアメリカ大統領選挙に絡めて描かれており、恋愛描写以外もとても楽しめた。勿論、恋するふたりが最高に可愛くてずっと最高だった。なんならもっといちゃいちゃしてくれてもよかった。
同じく犬猿の仲から始まる韓国ドラマ『海街チャチャチャ』は喧嘩のシーンが楽しくて「もっと喧嘩しててくれ~!」と思ったのだけど、今回は割と序盤に犬猿ではなくなるせいか、愛情表現の演出レパートリーが豊富だった気がする。甘い言葉の応酬がシャレていて好きだった。
字幕もあったけど吹き替えで鑑賞。もともと小林親弘さんの声が好きなんだけど堪りませんでした。ラブコメは観てると叫びたくなるんですが、叫ぶ代わりにMisskeyでずっと呟いていたので、よければご参照ください。
https://misskey.yukineko.me/notes/9ia7mi15fs
『ヘアスプレー』(2007)
監督/アダム・シャンクマン
#映画 #感想
1960年代、人種差別が続くアメリカを舞台にしたミュージカル映画。ずっと見たいと思っていたので見られてよかった。リメイク作品だったの知らなかった。
オープニングの歌が始まった時から「あ、これはええ作品やわ」とおもっていたけど最後までずっとハッピーなお話で、歌とダンスも最高で、観ていてすごく元気がでた。いまの自分自身がどんな姿でも、その背中をバシーンと叩いて肯定してくれるような力強さがあった。
改めて、この映画が2007年の映画ということを考えると、15年経っても世界はまだこんな調子なのかと思う。なにもかも、おとぎ話のように簡単に変わらない。それでもその年の分だけ私達は年老いて、多少は利口にもなって、間違いなく未来を作りながら歩いている。いまいるここは、もうこの世にはおらず、共に歩けなくなった人たちと共に作ってきた未来の世界。私達は歩き続ける。
この物語はおとぎ話だけど、今も昔も、闇の時代を生きる人の心にちいさな光を灯してくれると思う。展開がご都合主義すぎひん?とか主人公がエエ子ちゃんすぎちゃう?とかイチャモンはいくらでもつけられるけれど、それ以上に大事なものが詰まっている。これは高校生の夏休み必修映画にしたほうがいい。
『ニモーナ』(2023)
監督/ニック・ブルーノ、トロイ・クアン
#映画 #感想
twitterで評判を聞いて観てみたかった映画。序盤のスピード感やコメディのセンス、古今東西名作パロ(ゴジラもある!)がとても楽しかった。あとなんの理由付けも説明もなしに男性同士のカップルが登場したのもよかった。
ニモーナは何にでもなれる。強くてユーモアがあって、誰にも負けないすごい力を持っている。何だってできる、でもそれゆえに、皆から嫌われる。何者にもなれるニモーナは、何かに成れず、コミュニティに属することができないから。
「君は何者なの?」「ニモーナだよ」
何度か繰り返されるやり取り。ニモーナは何度も「何者」かを問われ、その度に「自分はニモーナだ」と答える。他の何でもないと繰り返す。
終盤、自らの命を絶とうとした「怪物」は、恐怖と憎しみで街を焼こうとする兵器に立ち向かって消えてしまう。結局自己犠牲か?そうではない、きっとそうしたかったからしただけだ。街を助けるためじゃない。恐怖と憎しみにムカついただけ。結果は同じでも、全然違う。
街の人々は『壁の外には怪物がいる』と1000年間信じていた。でも彼らが怪物と呼ぶニモーナは最初から壁の内側にいた。いなくなってから花を手向けて何になる?我らはすでにともにあるのだ。
『生きる LIVING』(2022)
監督/オリヴァー・ハーマナス
#映画 #感想
黒澤明『生きる』のリメイク。飛行機の機内で二回に分けて鑑賞。機内でもらえるイヤホンの性能のせいか、高音がキンキン響いてせっかくのBGMがあんまり楽しめなかったので、今度は万全の環境で観たい。
昔の映画風の雰囲気も大好きだったし、イギリスの街並みや公園の情景が美しくてだいすきだった。なにより主演のビル・ナイのお芝居が本当に素晴らしかった。感情を抑えた演技から孤独が滲んでいて、派手さは一切ない映画なのに画面から目を離せなかった。
『ゴンドラの歌』に変わるスコットランド民謡もよかった。歌詞がとてもよかった。昔を慈しみ、今まだ生きている自分を慰める歌だった。ラストシーンを思い出したら泣けてきた……。
原作映画の一番好きなシーンはハッピーバースデーの所なんだけど、終始抑制的な映画だったので、無くなっていたのは逆によかった。原作もだいぶ忘れているのでまた観たい。
世界的に有名な名作映画のリメイクは大変だったろうなあ。脚本も演出も演技も音楽も全部よかったです。
『GODZILLA 怪獣惑星』(2017)
『GODZILLA 決戦起動増殖都市』(2018)
『GODZILLA 星を喰う者』(2018)
監督/静野孔文・瀬下寛之
#映画 #アニメ
作業しながら鑑賞。この手のお話は必ず科学者ポジションの人が好きになるんだけど、もれなくマーティン少佐が好きでした。
これは『シン・ウルトラマン』を観た時にも似たような感情を抱いたのだけれど、「前地球人類は愚かだから滅んでも仕方ないね」という感想になった。それでいいのか…いや、作品としては徹底して「人類は愚か」でまとまってるし大正解なんだろうけれど、面白いかと言われると微妙。
一作目では、人類の母数が激減して絶滅寸前なのに母なる惑星・地球に固執して僅かな兵力で消耗戦をしかけている主人公に共感がほぼ一切できなかったんだけど、いや百歩譲って共感はともかく応援すらできなかったんだけど、それでいいのか…?
二作目では過酷な環境に独自の適応を遂げた知的生命体が歪ながらも生態系を築きあげているので侵略では…って気持ちが消えなかった。あと作戦の土壇場でカノジョを助けに行ったりと、なんというか…それで…よかったんか? 人間らしさを棄てずに行動したということなんだろうけどそれまでの犠牲や作戦規模を考えると納得いかない…。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)
『ナイブズアウト:グラス・オニオン』(2022)
監督/ライアン・ジョンソン
#映画 #感想
最高〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
天才〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』も大好きなんだけど、こちらは全く毛色の異なる古典的探偵もの。画面からレトロさがにじみ出るカットに現代的価値観の問題が絡む脚本と演出で、隅から隅まで楽しめる娯楽映画だった。
世界一の名探偵と称されつつも、どこか胡散臭くてつかみどころのないブノワ・ブランが好きすぎる。一作目・二作目ともに女性が協力者だしダニエル・クレイグが演じているので実質胡散臭いジェームズ・ボンド。
紛うことなく超極上の娯楽映画ではあるのだけれど、一作目では移民問題、二作目では大富豪に忖度する成り上がり権力者たち(そして伏せられる不都合な真実)というテーマが絡まっていて、社会性も反映されているのが凄いし大好き。
三作目も準備中らしい。嬉しい……。
過去作の配信もおねしゃす……。
『生きのびるために』(2017)
監督/ノラ・トゥーミー
#映画 #アニメ #感想
いつかは観なくてはならないと思っていた映画。もうすぐネトフリ公開終了なので急いで観た。以前読んだ『私のペンは鳥の翼』は、本を開けば女が逮捕される環境で文字通り命をかけで執筆されたのだなと思いながら観た。辛かった。
女であるというだけで外を自由に歩けず、買い物もできず、家長がいなくなれば飢えるしかない生活って、理不尽すぎてすごいな?なんでこんなものが現代で許されてるんだ?なんで???でも私はこの環境に、女が男にしいたげられ、こどもはおとなにこき使われ、戦闘機が頭上を飛び交い、明日戦争が始まる状況に、無知と無関心によって加担している側でもある。しんどかった。
序盤で「お話は役に立たない」と吐き捨てた主人公が、終盤でおはなしの力により道を開く展開が泣けた。おはなしは、アニメには、道を開く力がある。そう信じて作られた作品だなと思った。死んだ兄、死んだ妻、語られることのない大勢の喪われた人たちが見守るような青い月夜のラストが、悲しくて優しかった。
いつかお金を溜めて海に行くのだ、と夢を語る子供たち。戦闘機の下で交わされた「またね」の別れの挨拶が、どうか、必ず叶いますように。
『おやすみ、オポチュニティ』(2022)
監督/ライアン・ホワイト
#映画 #感想
アマプラ限定配信。90日間の運用を想定されて設計・開発された双子の火星探査機「オポチュニティ」と「スピリット」、火星着陸から15年間のドキュメンタリー。
メチャクチャよかった……。開発者たちがオポチュニティのことを「彼女」と呼んで、我が子のように慈しむ姿に見ているこっちも泣けてきた。AI議論のときによく持ち出される「海外は日本と違ってロボットに親しみがないから云々」ってやっぱ嘘やん!と思うなどした。映像のなかのオポチュニティが愛嬌があって愛らしい。あの鳴き声(通信音?)って本物なのかな。可愛い。
NASAでは宇宙飛行士を起こす為に地上から「朝のお目覚めソング」を流す伝統があるらしく映画内でもABBAの曲が流れていた。2015年の映画『オデッセイ』では主人公を励ますように始終ダンス・ミュージックが(当然ABBAも)流れているのだけれど、偶然なんだろうか。
『DUNE/デューン 砂の惑星』
監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
#映画 #感想
観終わったあと「これ序章やん?!!」って叫んだ。ここから始まるのね。最初は勢力図がつかめなくて良く分からなかったけれど、見ごたえがあったし世界観も魅力的でメカもよかった。トンボ型の乗り物がすごく好き。
「異星の砂漠」の広大さと砂の描写の美しさに見とれた。真逆の環境だけど、過酷で美しい自然は『レヴェナント』を思い出した。スローモーションも多いし抒情的な雰囲気で、スターウォーズ適菜SFドンパチ映画と思って見たら肩透かし喰らった。星を支配する帝国との闘い的要素があるのも特に。
主人公がこのままこの星の救世主になってええんやろか……とモヤモヤしていたんだけれど、北村紗衣先生のブログに全部書かれてあった。「『アラビアのロレンス』っぽい白人酋長ものの気配」これだ……。
https://saebou.hatenablog.com/entry/2021/10/16/000620
『ブレット・トレイン』(2022)
監督/デヴィッド・リーチ
#映画 #感想
金をかけてタランティーノ的B級映画になろうとした凡作。伊坂幸太郎小説の映像化作品に成功した作品はないと思っているんだけれど、その論拠を一つ増やすことに貢献した映画だった。
トンチキ日本描写が話題だったけれど、トンチキ加減が20年位時代遅れのセンスでしんどかった。雨と霧とネオンのギラギラビカビカした日本像をいまも抱いてるのって、かつての栄光を知る日本人くらいでしょうよ。だっせえ。
ラスト15分位はまあまあ面白いし、真田広之の殺陣もあるし、ブラピの泣きべそ顔が可愛いし、サンドラ・ブロックも拝めるんだけれど、そこまで110分間我慢しなくちゃいけなかったのがしんどかった。その110分のなかにも10秒ずつくらいは要所要所でおもしろシーンがあって完全な駄作にもなり切れていないのがまたダサかった。
個人的に伊坂幸太郎と村上春樹は実写化じゃなくてアニメ化のほうが向いてると思っているので、アニメでやってほしい。『魔王』とか。
『オーシャンズ8』(2018)
監督/ゲイリー・ロス
#映画 #感想
初見ではなく二度目の視聴。派手な格闘もドンパチも一切なく、頭脳派ながらも古風な手口でスタイリッシュに颯爽と宝石を盗んでいく姿があまりにも尊い。拝んだ。会話のセンスが最高オブ最高で序盤からずっと悶えていた。あのセンスは一体どんな爪の垢を煎じて飲めば出てくるんだ。私にも飲ませて欲しい。
全然関係ないけど、デビーがルー(※この二人の関係も最高なんだな)を引き込むシーンの「食いつきなさい」に『七人の侍』のお茶碗のシーンを思い出していた。映画のごはんは名シーン。
2010年代中盤は『ゴーストバスターズ』のリブート版や、フェミニズムを強く意識した『マッドマックス/怒りのデスロード』があったりと、これまで男性の物語だった人気シリーズを意図的に女性の物語にした作品が出てきたけれど、最近やらないのかな。続編やってほしいなー。
『雨を告げる漂流団地』(2022)
監督/石田祐康
#映画 #アニメ #感想
テーマよし。キャラデザよし。作画よし。音楽よし。雰囲気エモエモのエモ。
なのにどうしてこんなに面白くないんだ?????
序盤30分は結構わくわくしたんだけれど、それ以降が壊滅的に面白くなかった。なんだろうなあ、ロビンソン・クルーソー的な冒険と、喪失を抱えた心の描写が、うまいこと噛み合ってなかった感じがする。アクションシーンは見ごたえがあったんだけど、心の描写が薄味…というか、気合入れるとこそこちゃうねん、もっと関係性をちゃんと見せて欲しいねん、ってなった。
にしてもこの話、90分に収まったとおもう。無駄に引き延ばしたシーンが多い。例えば『のっぽくん』の正体は序盤からまあだいたいどっちかやな、って見当が付いてたし、いっそのことさっさと教えて欲しかったなあ…。ノスタルジーに訴えかける内容なので、その辺の機微を知らない小中学生がターゲットとも思えないし…。
雨が降って廃墟が出てきてオチが「僕達は大丈夫だ」でよく見たらキービジュアルもなんかうっすら『天気の子』感があったので、実質新海作品だったのかもしれない。
まめです。本や映画や漫画やゲームの話をします。
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