『シン・仮面ライダー』(2023)
監督/庵野秀明
#映画 #感想
真横に監督がいて始終ジッとこちらを見つめて「どや、かっこええやろ」って聞いてくるような映画だった、怖かった。いや怖いほどの偏愛をビシバシ感じたという意味で。ウルトラマンも大概だったけどそれ以上だった。
冒頭30分の演出がまぁ〜〜〜とにかくくどくて(古式ゆかしい特撮風)これが2時間続くのか…?耐えられるのか…?とめちゃくちゃ不安でしたがそこはさすがにそんなことはなく全然問題なくとても面白かった。多分原作履修してる人にならあの「良さ」が正しく伝わったんだろうな…いや様式美は私も感じたんだけど…。
あとは根本的に人間のお話への興味が薄いというか、なんというか。キャラ立てと人間味の描写って別なんだなぁ。
敵キャラの行動原理がゲンドウもガーゴイルもゾフィーもわりかし思考回路が似たり寄ったりなので、何かそういう方向の悪しか設定できないんだろうかと思った。あと「力を正しく(悪人を成敗できるように)使いたい」という決意はそれでええんか。モヤる。
おたくが喜びそうな小ネタを随所に仕込みまくりセルフオマージュ的なことすらやりながら、中盤でヒロインが観客席にむけて「広い世界を知って良かった」と訴えるのはなかなか皮肉やなとおもいました。好き。
『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)
監督/井上雄彦
#映画 #アニメ #感想
この作品をCGで表現してくれてありがとう、と思ったのは人生二度目(一度目は『宝石の国』)…といっても原作未読なんだけど。バスケのルールもよく知らず原作にも触れていない人間を、コートの中に放り込んで実際のプレーを体験させる、凄い熱量の映画だった。
原作者自ら監督しているためか、紙の手触りを感じさせるCGの質感が絵にピッタリで、よくあるゴム人形っぽさとか動きの硬さを全然感じなかった。(ブルージャイアントですら感じたのに!)試合中のカメラワークが基本的に選手の腰位なので、リストバンドとかユニフォームになった気持ちを味わえた。
大事なものを喪い、居場所を亡くしてしまった人間を「おかえり」って迎えるまでの映画だった。喪失の取り扱いが丁寧だったのもよかったなあ…。りょーちんに恋せざるを得ないストーリーだったけど個人的にはメガネくんが気になります。皆のことをもっと知りたくなるのでこりゃ原作も売れるわ。箱買いだわ。
とにもかくにもとてもよかった。劇場で見て没入感を味わい尽くすべき一作なので、予備知識ゼロでも劇場での鑑賞をおすすめします。
『ヒックとドラゴン』(2010)
監督/ディーン・デュボア、クリス・サンダース
#映画 #アニメ #感想
島民全員が屈強なバイキングの島で一人だけ虚弱な主人公が、島の食糧を奪っていく天敵・ドラゴンと心を通わせていく話。
評判は前々から聞いていたけどおもしろかった!ラスト「大ボス倒してハッピーエンドて、それでええんか」とはちょっとおもったけどまぁイモータン・ジョーが倒されたみたいなものとおもえば、実質マッドマックスだったかもしれない。違うか。
2010年のファミリー向けアニメ映画で、異文化理解&家父長制的体制批判を組み込んでるので凄いなとおもったら、監督が『ムーラン』(1998)の脚本のかたで納得だった。一箇所アラジンやなとおもったらアラジンの原案もやってらした。そら名作ですわ…。
原題は『How to Train Your Dragon』だそうで、直訳で日本に輸入されなくてよかったなとおもった。
『BLUE GIANT』(2023)監督/立川譲
脳みそから感想が消し飛ぶ最高のライブ体感映画だった。もう今年の日本アカデミー賞これやろ。すごかった。
上原ひろみが音楽やると聞いて、視聴の際はできるだけ両音質の映画館にいかねばならないと思い、立川シネマシティの極上音響上映で観た。ありがとうシネマシティ。最高。
だいたい予想通りのことが起こるべくして起こる筋立てではあるんだけど、それが面白さを損なわない。音楽を音だけではなく絵でも表現する「光」の演出がとてもよかった。
漫画原作のジャズ作品が、本来静止した絵を動かして命(アニマ)を吹き込むアニメーションによって、魂はそのままに100分間の生を授かったみたいな映画だった。原作読んでないけど多分原作の熱量も相当なものだと思う。
作中繰り返される「ジャズやるべ」は「生きようぜ」ってことだ。一回きりの命を青白くなるまで燃やしつくそうぜ。パートナーを変えながら、手を離したら二度と会えないかもしれない今この瞬間を、何度も何度も生きて死ぬ。今の時代には冷笑されそうな単純なメッセージが、全身全霊の演奏でスクリーンの向こう側から飛んでくる。
応援上映で手拍子したい。なんならペンラも振りたい。頼む…。
『ジョン・ウィック』監督/チャド・スタエルスキ
#映画 #感想
伝説の殺し屋が愛犬と愛車を奪われてマフィアに復讐する話。冒頭30分で上記の説明を終えたあとはひたすらガン・アクションが続く最高にヒャッハーでラブリーな映画だった。なんて良い日だ。
いやしかし、しゃーないわ。そら殺られるわ。あんな愛らしいワンコ(しかもジャックラッセルテリア!マスクやん!)を惨殺した者には当然の報いだわ。あのアホボン息子の命の値段はおいくら万円だったのでしょうね。
あとは殺し屋御用達ホテルが素敵好きた。あの場所をめぐって二次創作が捗りそうだし、受付も支配人も「良」い。ただし女性と黒人俳優の扱いについてはまぁ…ウン…ってかんじだった。
シーズン4がもうすぐ公開らしいけど、犬がしあわせに暮らしていたらいいな…。真っ黒いわんわん、地獄の番犬みたいでよかったけど、キアヌに安息の日は訪れるんだろうか…。
#映画 #感想
『コンスタンティン』(2005年)
監督/フランシス・ローレンス
アマプラのジャンル区分が「ホラー」だったのだけど、ホラーだったの?ファンタジーと違う?
アメリカのホラーはすぐ顔に虫とか湧くけど、その観点ではホラーだったと思う。
風呂場で地獄に行くのと、サランラップの芯で十字架鉄砲作るのと、「父と子と聖霊の御名において…!」ってやつ、皆真似したやろ。小道具や設定に私の内なる中学二年生がざわめいていた。
総じて面白かったんだけど、助手の子かわいそすぎひんか。主人公の役にも立ってたし、助手として今後の成長が期待されるものだとおもっていた。助手の子がかわいそすぎて、後の展開も全部「助手の子かわいそう」に負けた。
あ。堕天使の人?は美しくて素敵だった。ルシファーも好き。
でもちょっとだけ「デビルマンだ!」って思ってた。
なにはともあれ、チェンソーマンのOPでオマージュされた個所が特定できて満足です。
#映画 #感想
『ハケンアニメ!』(2022年)
監督/吉野耕平
聞いたことのある台詞、見覚えのある演出、オタク心をうまくくすぐる楽しい映画だった。
とはいえですよー。
2022年の映画化なら、アニメ制作現場の低賃金・過重労働問題には触れてほしかったし、作品への情熱を描くなら情熱を維持するための仕組みが今どれほど危機的状況かについても語られてほしかった。作中の難題が全部気合で解決されたのでズコーーーとなった。
あと、中盤の舞台挨拶のシーンだけ異様に情熱をもたない「普通の人」にきびしくて、司会の人がかわいそうだった。女性メインのお仕事映画で「女の敵は女」みたいなことはやめて〜〜〜と胃がしくしくした。それこそ2022年の映画化なら男性司会者でもよかったとおもうので…。
そこ以外は男女比やパワーバランスに気を配って作られていて今時だなと感じたけど、実際現場はどうなんだろう。映画や舞台で起こっているハラスメントの問題はアニメ業界では起こってないんだろうか。
消費者としては2時間楽しませてくれたらそれで元はとれるけど、それだけでいいのか…いやだめだろ…僕たちは絶対大丈夫じゃないんだわ…とおもった。
とりあえず適切なおちんぎんが支払われてほしい。話はそれからだ。
#映画 #感想
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(2022)
こんなにエエ話と思って観てなかった…。
子供が死ぬ話がとことん駄目になっているので情緒がガタガタになった。すごく真っ当なファザーフットの話だった。
日本アニメではあまり見ないタイプの親子の話だな、とおもった。「vs毒親モノ」は増えたけど、たいてい「娘vs母親」で父親は空気のことが多いとおもってるので…ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデンもそんなかんじだったし水星の魔女も強毒性なのは母親で毒父は死ぬし。毒親が認知されて問題視されるようになったのはありがたいけど、親のサポート薄すぎる中で責任ばっかり増やされて、そりゃ毒にもなるわと言う気持ちもあるのであんまり便利に使わないでほしい。閑話休題。
ディズニーアニメ映画へのリスペクトがありつつ、全体主義への批判要素があって世相を映しているなぁとおもった。
ラストが哀しかった。でも、誰もがああなる。
哀しいなぁ…。
『ロング・ウェイ・ノース』(2015)
#映画 #アニメ #感想
フランス・デンマーク合作のアニメ映画。
とてもよかったので見終えたあとしばらく「よかった…」しかいえない妖怪みたいになっていた。
前半は町並みの色彩と陰影が美しくて画面から目が離せなかったし、北極圏では流氷の軋む不気味な音が絶えず鳴っていて、いつ足元に亀裂がはしるのか、すぐとなりの氷山が崩れるのか、ずっとハラハラしていた。
キャラクターの演技が好きだったな。たとえば、2年前から不在の祖父の書斎で、開きっぱなしの本や地図を指先でなぞりながら歩いたりする。セル画時代のディズニーのような雰囲気があった。
酒屋のおばさんが与えてくれた親切や、おかあさんが示す控えめな共感に、女性描写への気配りが感じられたのもよかった。
派手なアクションやカメラ回しはないけれど、頭が良くて頑張り屋な主人公と彼女の前にあらわれる人たちが魅力的に描かれていて、見てよかったなぁ、誰かにおすすめしたいなぁ、と思える作品だった。吹き替えが有名声優陣ではなかったのも気が散らなくてよかった。
今の日本じゃ作れない作品だなと思った。漫画原作じゃないし、おたく好みの絵ではないし、派手な作画もないし、全然お金にならなさそうだから…。
クリスマスイブに百鬼夜行してきた。
事前情報としてボイスアクターが誰かは知っていたものの、実際見てみると、夏油傑の詭弁が思ってた以上に霊幻新隆だった。怪しい団体率いてるし除霊(除霊ではない)もしてるし。あのひと、なんかようわからんでかい理想抱いて街破壊してはるけどはよやめさせたってや師匠。
話変わって、呪術廻戦とすずめの戸締まりって方向性真逆だけどおなじことやってたことに気づいた。ひとの思いが澱んで呪いが生まれる呪術と、ひとの思いが離れてミミズが出てくるすずめ。だからどうしたって話だが…。
呪術ってセカイ系に似てるところがあるのかもしれない。世界の危機に対して「世界を救うため」って理由じゃなくて自分の志とか理想とかで闘ってるところとか。ってこれ1stガンダムもそんなかんじやな。違うか。忘れてほしい。
乙骨くんの話は純愛だし声優さんもシンジくんだから余計にそう思ったのかもな。
面白かったけど、3話位くっつけたみたいな構成だったので映画というよりOVAっぽかった。でもこれは原作も4話構成だし仕方ないかもなあ。面白かったけど。
#映画
『未来戦記(明日戦記)』(2022)
面白かったーーーーーー!!!
最初からずっとクライマックスの100分だった。展開はよくあるやつ詰め合わせって感じなのにテンポがめちゃくちゃ速くて今どきな作風だなとおもった。メインの5人がとてもいい。トラウマ持ち+昔馴染み+退役軍人(何でも屋)って最高すぎんか。
やり手の3人組に加えて、魂を受け継ぐべきひよっこ軍人とモンスターが徘徊する修羅場で保護した子供という、理屈なんかどうでもいいがアクション映画には絶対こいつらが必要なんだってメンバーがそろっていて最高だった。あ―楽しかった。
古今東西名作アクション映画の一番盛り上がるところがずっと続いてくみたいな映画だったので、個人的には侘び寂びが少なくて物足りなかったけど100分でこれだけやり切ったの凄いしすごく楽しかったし、ロボットバトルシーンが全部よかったのでPS5とかのゲームになりそう。
#映画 #アニメ
『漁港の肉子ちゃん(2021)』
良かった…。泣いた…。
同じ監督の『海獣の子供』も観たけど断然こっちが好きだなあ。
吉本興業制作ってことでちょっと身構えていたけれど(維新との癒着も気になるし…)ストーリーはとてもよかった。西加奈子の原作小説も読みたい。西加奈子作品は関西弁で喋る登場人物がみんなめちゃくちゃ魅力的で好き。
肉子ちゃんがおもちみたいにぽにょぽにょ動くのが最高に魅力的だった。肉子ちゃんが動くシーンは全体的に『かぐや姫の物語』『ホーホケキョとなりの山田くん』『じゃりン子チエ』を混ぜたみたいな演出が付けられていたのがかわいかった。一か所完璧にトトロだったけど雨のバス停だったら皆あれやるとおもう。神社もあったし。
小説の文字が本から飛び出してキラキラする演出が、すごくわかる…と思って観ていた。文字を読むのってキラキラするよね。わかる。
#映画 #アニメ
『きみと、波にのれたら』(2019)
想像以上にド直球&鉄板の恋愛ラブストーリーだった。王道すぎてびっくりした。でも奇を衒わない王道を真面目に描いてちゃんと面白かったのですごい。
ラブストーリーもあるけどしっかりと「鎮魂」と「弔い」をおこなう、とても個人的な話だった。終盤はちょっとだけ「おいおいそりゃないぜ」的なファンタジー展開だったけども、水や波をヒーローにできる展開にしたらああなったんだろうなあ。
あとは妹の扱いがやや雑だったような気がする…。
波乗りのシーン等、水を表現したシーンはすべてとても好きだった。『ルー』でも出てきたけど、キューブみたいなぽよぽよした水、かわいい。
スナメリのビニール人形を水で膨らましてぽよんぽよんするのはすごくシザーハンズだなと思ったら、監督インタビューでシザーハンズの話をしていて「やっぱり!」となるなどした。
#映画
『バーフバリ 王の凱旋』(2017)
見届けた…王、凱旋した…
話の展開はだいたい予想ができたけど始終画面のインパクトが強烈で全然飽きなかった。
シヴァガミ様が最期までかっこよくてちょっと泣けた。自らの過ちを認めるところもかっこよかった。神話の女性陣が皆はちゃめちゃにすてきなのに、なんで『RRR』の女性描写はあんなかんじになってしもたん…?(時代背景的に仕方なかったかもとはおもいつつ)
悪政に立ち向かう群衆が身一つで、めちゃくちゃな戦術で立ち向かうのもよかったな。あの勢いは憧れるなぁ、いまの日本映画には出せない力強さだなぁとおもった。いうてそんなに邦画を観てないけれども。
主人公が背中そらしてジャンプしたら周囲10m位の敵をはね散らかすのに、敵側がジャンプしたときはだいたい切り捨てられるのがかわいそうだった。主人公ジャンプ(※技名)強すぎやろ。そういうの好きやで。
『RRR』はイングロリアス・バスターズだなと思ったんだけど、バーフバリ1はキル・ビルvol.1、バーフバリ2はvol.2だった。
あんまり踊らないタイプのインド映画だったので、こんどは踊りまくる映画が観たい。音楽がどれもすてきだった。
『バーフバリ/伝説誕生[完全版](2015)』
面白かった!なんか色々凄かった!
語彙がなくなる面白さだった!
ミュージックビデオパートがとても好き。演出も曲も好き。後半の戦闘シーンがマッドマックスだった。好き。でてくる女の人がみんなそれぞれバリエーション豊かに強くて格好良くてよかった。好き。
中でもシヴァガミ様が素敵すぎる。女帝やん。
カッタッパも好き…あのひとスター・ウォーズに出てきそう。たぶんいたとおもう(幻覚)
他所の部族が意思疎通不可能な野蛮な民族っぽく描かれていたのは、最近のハリウッド映画では観ない演出なのでちょっと新鮮だった。ぶちのめされるためだけの悪役…(RRRのイギリス軍にも同じことを思ったけれどこちらは歴史的経緯がいろいろとアレだった)
牛さんや馬さんがコケたりどつかれたりするシーンでちっちゃく「CGI」と表示されるのは初めて見た。『RRR』でも表示されてたんだろうか…劇場で観たのに気づかなかった。
王の凱旋も観るぞ。楽しみだなー!
#映画
まめです。本や映画や漫画やゲームの話をします。
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