いろいろと読んではいたものたち。
つまみ食い含む。

『法とは何か 法思想史入門』
著/長谷部恭男

『翔ぶ女たち』
著/ 小川公代

『三淵嘉子と家庭裁判所』
著/清永聡

『外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か-』
著/白井恭弘

『ラストマイル』(2024)
監督/塚原あゆ子
脚本/野木亜希子

年に一度の「ブラックフライデー」前夜、東日本の物流を担う巨大物流センターから発送された商品が次々と爆発した。センター長・舟渡エレナと数少ない社員の一人・梨本孔は原因を突き止めるべく倉庫を奔走する。

最初から最後までず~~~っと面白く、しかも安心して観ていられる作品だった。だって監督・脚本・そして役者を『アンナチュラル』『MIU404』の布陣だもの。安心と信頼のエンタメ作品。ドラマ2作品分の登場人物がたくさん登場するため群像劇っぽい雰囲気もあり面白かった。みんなそこにいたんだね。ずっと生きていたんだね。ありがとう。また逢えたら嬉しい。

私達は皆、多かれ少なかれシステムの一部として生きて、システムが無ければ生きていけない存在であると同時に、システムを動かす存在でもある。私達が止まれば都市は止まる。都市が止まれば私達もただでは済まない。都市に張り巡らされた交通網をうごく小さな光の粒としての私達、血流の一滴である私達の話をずっとしていた。

……でも個人的な好みとしてはもっとポリティカルでもよかったな~!

『砂糖の世界史』
著/川北稔

誰もがほとんど毎日口にする「砂糖」。この白くて甘くて栄養価の高い貴重な食材は、いままでどのように作られて『世界商品』となったのかを、600年もの歴史の流れとともに描き出す。

内容的に「おもしろい」とか「好き」とか言うのはどうかと思うんだけど、凄く面白いし好きだった。岩波ジュニア新書の一冊なだけあって、使われている語彙は分かりやすく解説も平易。文体には古い児童文学のような独特な味わいがあったのもよかった。

歴史を学ぶ面白さのひとつに「教科書の出来事のひとつに過ぎなかった事柄が、今の自分の在り方につながって息づいているとわかる」があると思っているんだけど、砂糖を通じてまさにそういう体験ができる本だった。

砂糖をバナナに置き換えたら『バナナと日本人』になるのだとおもう。実は読んでないのでこっちも読みたい。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』
著/ブレイディみかこ

日本人の著者とイギリス人の配偶者とふたりの息子が、イギリスの地方都市で暮らす風景を書いた人気エッセイ、その続編。

全然そういうテーマじゃないのは百も承知で言うと、読んでる間じゅう私はずっと「いいなぁ~~~~~~!」と思っていた。政治の話がとても身近で当たり前なのが羨ましい。住民説明会で怒声が飛ぶほど活気があって羨ましい。世の中にはびこる憎悪が日本よりずっと目に見えて分かりやすい気がする。それはそれで怖いし嫌だけれど、普段から政治の話題が身近なぶん、「いつも朗らかなおともだちのお母さんがエグい差別主義者だった」みたいなことが、日本よりも起こらなさそうな気がする。都知事選のとき、鞄に「選挙にいこう!」って紙をぶらさげてただけで露骨に軽く引かれた身としては、ため息しかでてこなかった。

は~~~~~~。
いいなぁ~~~~~~。

されど時代は進み、世界は変化しつづける、日本もまた然り。

どうしたらいいんだろうなあ~?????

『エヴリデイ・ユートピア』著/クリステン・R・ゴドシー
訳/高橋璃子

そこに行けばどんな夢もかなうという。人はそれを「ユートピア」と呼んできた。人類はどんな世界を夢想し実現させてきたのか。2000年以上の歴史を展望して、現在の我々が 当たり前と思っている社会の在り方は期間限定でしかなく、未来は無限の希望に満ちているかを説く本。

帯の文句は「打倒、家父長制」である。熱い。

著者は社会主義国の研究が専門だそう。社会主義的な考え方がどんな思想のもと、どういう人達に支持されて、どんなふうに実現されてきたか、ちょっと美化しすぎでは〜と思った所はありつつも様々な例示があって面白かった。資本主義的な在り方に異を唱え、すこしでも全体主義的な社会(車や服をシェアしたり、こどもを皆で育てたり)を説けばあらゆる方面から批判を受けるのは、資本主義にとって都合がいいからだという指摘にはとても納得。また、核家族という家族の形は資本主義にとって都合が良く、そのために女子供が犠牲になっているという説明は上野千鶴子の『家父長制と資本主義』にも通じるなとおもった。

異なる世界を夢見続けるイマジネーションが世界は必ず変わる、実際人類は世界を変えてきたのだから。勇気が湧いてくる本だった。

『怪盗グルーのミニオン超変身』

高校の同窓会に参加したグルーは、再会した元同級生から成り行きで命を狙われることになった。家族を連れて自宅を離れ、安全な場所に引っ越したものの、そこのお隣さんは悪党志望の悪ガキで、正体をバラされたくなければ盗みを手伝えと脅される。一方、復讐に燃える元同級生はグルーの息子を誘拐するため住処を探していた……。

シリーズ最新作にして第4弾。残念ながらチビッコ大歓喜のおなら爆弾は出なかったものの、珍奇なメカやヒミツ道具が大量に登場していた。今回はシリーズで一番アクションシーンが作りこまれていた気がする。大人もしっかり楽しめた。シリーズどれも曲のセンスがカッコよくて大人ウケを狙ったネタが差しはさまれるので見ていて飽きない。

とにかくテンポが速いのでこどもも飽きずに観られるのだけれども、一方で、もうちょっと深堀した方がいいだろうよ~と感じた個所がいくつかあった。マキシムとヴァレンシーナの連帯の事情とか、新生活をはじめたこどもたちとルーシーの内面とか、ポピーがどうして悪党を夢見るようになったのか、とか。虫さん軍団がかわいかったんだけど1シーンしか出てこなくて残念だった。あとは、第3作でドルーとどっかいったはずの大勢のミニオンが一緒にいるのはなんで?ってなった。

『ここはすべての夜明けまえ』
作/間宮 改衣

肉体改造を経て死ねない身体になった「わたし」は、暇を持て余した末に家族史を記し始める。父のこと、兄と姉のこと、恋人のこと、これからのこと。

正直、前評判ほど「良い本」とはおもわなかった。身体性も名前もはく奪された永遠の少女(って年齢でもないんだけど、一人称で語られる文体がとても幼く実年齢と乖離している)が、介護や育児といったケア労働にずっと搾取され続け、しかも自分も搾取の連鎖に関わっていたことを悔やみつつ、いろいろ納得した末に筆をおく……って話なんだけども。

物語はずっとすごく淡々とすすむ。主人公はまるで心までロボットになったように、悔恨も憤怒もあらわにしない。それは自身が受けた「傷」に影響していた乖離症状かもしれないけれど本編からは読み取れない。表現や道筋はどうあれ、最終的に搾取を納得しちゃう話を『いい話』として消費するのは、どうにも気が乗らない。

ずっと家と個人のなかで完結しているのも、物語の仕掛けの一つなのだろうけれど、社会情勢や社会規範といったものは殆ど出てこず、こうあるべきといった理念も理想も描かれず、自分がした/されたことのみが取り上げられていたことに凄く違和感があった。でもまあそういう作風がウケたのかなともおもった。

『密輸 1970』
監督/リュ・スンワン
脚本/リュ・スンワン、キム・ジョンヨン、チェ・チャウォン

1970年代半ば。環境汚染による不漁であえぐ、韓国の小さな漁村・クンチョン。生活のために、海女たちは密輸品引き揚げの仕事を請け負った。やがて仕事は密輸王や税関までをも巻き込んだ金塊争奪戦に発展する。疑念と裏切り、愛と友情、そしてサメ。最後に笑うのは誰だ。

っていうね~~~~~!!!
め~~~っちゃ面白かった!!!
ありがと~~~~~~!!!
だいすき~~~~~~!!!

これがほんとのオーシャンズ8でした。海女だけに。やかましいわ。あとジャッキー・ブラウンみもあった。

こういう映画大好き。なんかハラハラしながら観て、観終わったあとは「はーおもしろかったー!」って言えるやつ。それでもちゃんと環境汚染や漁村の貧困、権力の腐敗、歴史的背景、そして血と暴力と裏切り明け暮れる男たちに対して鮮やかに描かれるシスターフット……といった社会的な要素も描かれていて、エンタメとのバランスが最高だった。あと音楽と衣装がずっとかわいかった。さっき「愛と友情」とか書いたものの、真面目にフィーチャーされているのは友情部分だけだったのもよかった。

『<悪の凡庸さ>を問い直す』
編/田野大輔、小野寺拓也

「凡人でも環境さえあれば大いなる悪を成しうる」程度の意味で広まってしまったアーレントの「悪の凡庸さ」という語について、アーレントはどのような意味で使ったのか、凡庸という語は適切なのか、この語の意義はまだあるのか、ドイツ史や思想史の研究者が語り合った本。

『関心領域』を見て気になっていた本だったので読めてよかった。すごく面白かった。「悪の凡庸さ」の意義やアイヒマンの実像は研究者の間で今なお議論され続けている。本来複雑で多層的な事柄は、分かりやすいキャッチーな言葉で理解してはいけない。いやいけないことはないが本質ではない。

興味深かったのが「アイヒマンは誰かと話す際は決まり文句を愛用していた」……というか、死の間際ですらそういう風にしか話せなかったという点。私は以前から、いわゆるネトウヨ的な言動ってすごくテンプレだと思っていて、皆おなじ言葉を使ってるな~と思っていたのだけれど、ちょっと似ている。一見つっかえたり言いよどんだりしないから、凄く明快にスラスラ喋っているように見えるけど、実は自分のことばを持ってない人って、最近特に増えたよなぁ、と思う。

『ぼくは6歳、紅茶プランテーションで生まれて。:スリランカ・農園労働者の現実から見えてくる不平等』
著/栗原俊輔

スリランカの紅茶プランテーション農場の歴史は、19世紀、イギリスの植民地にされたことから始まった。独立と内戦を経てもなお150年前から続く過酷な労働現場と構造的不平等、そんななかで世界は何ができるのか。

この前読んだ『マーリ・アルメイダの七つの月』のあとがきで紹介されていた本のうちの一冊。今もう一度『マーリ・アルメイダ~』を読み返したら印象が変わりそう。タイトルに「僕は6歳」とあるので、農園で暮らす6歳の男の子のルポなのかと思いきや、そうでもなく、スリランカ全土のプランテーションの状況について説明がされていた。

平易な言葉遣いで内容も分かりやすく、中学生位なら余裕で読めそうな内容になっており、字も大きくてすぐに読み切れる本。スリランカを知るための最初の一冊にはちょうどよかった。

続)

『ヒトラーのための虐殺会議』(2023)
監督/マッティ・ゲショネック
脚本/マグヌス・ファットロット、パウル・モンメルツ

湖のほとりに建つ白い邸宅に続々と黒い車がとまる。午前中に開かれる会議に参加するために軍人や官僚が集まっているのだ。議長・国家保安部代表ラインハルト・ハイドリヒの元に集まったのは高官15名と秘書1名。会議のテーマは「ユダヤ人問題の最終的解決について」ーー

おじさんたちが机にへばりついて会議しているだけの映画なのに、100分間息をつめて観てしまった。白熱した議論が展開されていたし、なにより「面白かった」ーーそう、この会議はすごく「面白かった」

最近会社で色々とめんどくさい会議をしているオットーはこの映画を観て次のような感想を述べた。

「議長の手腕が凄い。まず、会議の目標を明確に定めているのが偉い。色々と反論や横やりがありつつも最終的に100点満点中80点位で達成したし、80点の内容でも全員の合意がとれたので議長がプロジェクトの主導権を得た。よくできた会議には下準備と根回しと数字が大事だなと良く分かった。でも、こんな映画でわかりたくなかった!!!」

ほんまそれ。

続く)

『マッドマックス:フュリオサ』
監督/ジョージ・ミラー
脚本/ジョージ・ミラー、ニコ・ラサウリス

故郷から連れ去られ、母を殺された少女フュリオサは、荒くれ者の集うバイカー集団を束ねるディメンタスの養子として荒れ果てた地で生き延びる。要塞シタデルでイモータン・ジョーの子産み女となった彼女は、やがて髪を剃り男装してメカニックの技術を学び大隊長となって再び故郷を目指す。瞳に怒りの炎を宿しながら。

宣伝文句の仰々しさが白々しく思えるほどに、静かな怒りに満ち満ちた映画。改造バイクや馬鹿でかいタンクローリーといったいかれたメカニックは山盛り登場する一方、全作みたいな熱狂はまったくない。あれはなんだったんだろうなあ、イモータン・ジョーって前作も今作もすげーヤなやつなのに。

今作のヴィランとして登場するディメンタスは、イモータン・ジョーに比べると凄く小悪党だ。部下にも裏切られるし治世も下手。そのくせ、恐ろしい男ぶろうとヒゲを赤く染めてマントを羽織る姿は痛々しさすらある。二つ名を自分で名乗りはじめたときが最高にイタかった。

あのイタさには見覚えがある。給湯室や女子だけの飲み会で交わされる、職場の○○さんについてのトーク。男性がなにかを守ろうとして強い男を演じている姿はたいていバレている。

続)

『関心領域』(2023)
監督・脚本/ジョナサン・グレイザー
原作/マーティン・エイミス

大きなおうちには召使が二人。きれいに手入れされた広い庭。夏になれば子供たちを連れて近くの河でピクニックや水遊びを楽しみ、冬はふかふかの暖かいコートを着込んで散策する――誰もがうらやむ素敵なおうちの真横では、アウシュビッツの焼却炉がいつも低く唸っている。

立川イオンシネマの極上音響で観た。定点カメラで記録したような映像が続き銃撃戦もカーチェイスも凄腕音楽家も出てこない映画なのに「極上音響」で上映されていた理由は、この映画の主役は音響にあるからだ。

銃声、汽車の音、悲鳴、怒声、警備の連れる犬の鳴き声、そしてなんだかよくわからない、船のエンジンが動いているような低い音。家の主でアウシュビッツ局長のルドルフ・ヘスは、自宅に軍人を招き、いかに効率よく焼却炉を稼働させるかの計画を立てている。ふたつの炉を交互に動かして24時間体制で稼働する計画だ。
低い音は映画の最初から最後までずっと響いている。

数々の音の正体は、最後まではっきりと明かされることはない。家の住民たちが身に着ける服からでてくる金歯や口紅が、畑に撒かれる灰が、靴底の血が、川底にみつかる骨が、一体「何」なのかは一切示唆されない。

続)

『マーリ・アルメイダの七つの月』
著/シェハン・カルナティラカ
訳/山北めぐみ

目覚めると彼は冥界にいた。マーリ・アルメイダ。戦場カメラマンで希代の好色漢でゲイでギャンブラー。<光>に向かうまでの猶予は7日間、その間に彼は自分の死の謎を解き、愛する者たちに隠された写真の在りかを伝えなければならない。その写真があれば戦争を終結に導くことができる――死者と生者の入り乱れる混沌の国を風に乗って駆け抜けながら、スリランカの内戦終結のために奔走する。

大好き。最初から最後までずっと好き。「おまえ」で語られる不思議な文体も、皮肉屋な主人公も、ヴォネガット風の愛と達観も、何もかもが好き。単行本上下巻だし馴染みのない固有名詞が山盛りでてくるしスリランカの歴史全然知らないし登場人物めちゃくちゃ多いけど、文体のグルーヴにのせられてぐいぐいと読み進めてしまった。あぁいい小説読んだなあ、Novel《新奇なもの》を体験したなぁ、という気持ち。説明したら野暮になるので読んで欲しい。

映像化されるかなぁ、いやされてほしくないなあ、あまりに奇妙だし、この小説に溢れる死者たちを映像にしたらきっと陳腐になってしまう。どうせやるなら松尾スズキ風(この人もヴォネガットの申し子である)の舞台にしてほしい。

『レオン 完全版』(1994)
監督・脚本/リュック・ベッソン

麻薬取引のいざこざから家族を殺された少女は隣人の部屋に転がり込む。その部屋の主はプロの殺し屋だった。復讐を誓う彼女は殺し屋から殺しの手ほどきを受けていく。孤独な二人の奇妙な共同生活、その終焉までの話。

あらすじもいらない程の有名作品を20年ぶりに再見。細部はほとんど忘れていたにもかかわらず、ゲイリー・オールドマン演じる警察官の狂気を現すしぐさ(ピルケースを鳴らす、薬を噛みしめて天を仰ぐ、云々……)を観た途端、脳細胞が「あぁ~~~~~~!!これ覚えてるぅ~~~~~~!!」と悲鳴を上げたので驚いた。観たものの記憶に刻み込む演技をする役者、すごい。

モノマネクイズの「イーストウッド?」「…ジョン・ウェイン」で笑うことができて、私自身の成長を感じた。20年前はジョン・ウェインは勿論イーストウッドが誰だか知らんかったので……。

「主役の性愛の対象にはならない」が一貫しているので今も鑑賞に堪えうるし、これからも残り続けるんだろう。ただ、監督の性加害報道を知ったうえでみると、その設定自体がちょっと言い訳めいたもののような気もする。

『イラクサ』
作/アリス・マンロー
訳/小竹由美子

短編集。カナダの都市や田舎に暮らす、名もなきひとたちの人生の一瞬を切り取った映画を観たような読後感。

あれはどういうことだったのだろう、なぜ彼女は、彼は、あのときそうしたのだろう、あの光景は本当に見たものかそれとも幻影か。登場した情景のひとつひとつを、いつまでも思い出してしまうような、そういう作品たちだった。他のももっと読みたい。

作者の経歴を把握したうえで作品を読むと、似たモチーフが繰り返されていることにすぐ気づく。田舎育ち、結婚、離婚、ふたりのこども、文筆業、などなど。在り得たかもしれないもう一人の自分。当然、登場人物たち=作者ではないにせよ。二次創作をするオタクのわたしは「自分の人生で二次創作しているみたいだな」と思った(もうちょっと適切な語彙力がほしい。)

『セルリアンブルー 海が見える家』
作/T.J.クルーン
訳/金井真弓

魔法青少年担当省に勤める主人公は、ある児童保護施設を存続させるべきか否かを判断する任務を命じられる。赴任先で出会ったのは、謎多き施設長と強烈な個性をもった6人のこどもたちだった。

規則を守ることが生きがいみたいな主人公が、規則を離れて生活する中で、本当に大切にしたいものは何なのかを見つけていく。お腹の底からじんわりと温められていくような優しい物語だった。

登場人物たちは超常の力を用いて闇からの使者と戦ったり、異世界に冒険に出かけたりはしない。近所の森を散策したり、街に出かけて買い物をするだけだ。でもそれは彼らにとっては大冒険だし、今の彼らにはそれが精いっぱい。「変わったもの」である彼らに近寄ろうとする人は少ないし、視線は冷たい。
それでも、いつもと違う道を歩くことや隣にいる誰かに寄り添おうとすることで、ほんの少しの勇気を出せば、他の人もあとから続いてくれるかもしれない。これは希望の物語ではなく、そうなるはずの物語だ。

ジャンル的にはヤングアダルト(≒ジュブナイル)になるらしく、筋も本文もかなり分かりやすい。お話はよかったんだけど文体が苦手に感じたのは私が読みなれていないのが原因かもしれない。

『グッド・オーメンズ(season1)』
脚本/ニール・ゲイマン
監督/ダグラス・マッキノン

人間界に長く暮らして馴染みまくった天使と悪魔が、世界を終わらせる最終決戦《ハルマゲドン》を回避すべく奔走する話。

一応爆発したりカーチェイスしたり戦ったりとアクション要素も多少あったのだけれど、大まかな内容は「天使と悪魔の気ままなロンドンライフ~ダグラス・アダムス風ブリティッシュジョークを添えて~」だった。大好きです。ありがとう。ところで聖★おにいさんって知ってる?

天使と悪魔が仲良くしている話、という薄ぼんやりしたあらすじしかないまま観始めたら、預言書を解読する魔女やらあらゆるメカを破壊する青年やら魔女狩り組織のおじいさんやら悪魔の息子やらその友達やら登場人物が多くて中盤ちょっとパニックになりつつも、終盤に一点へと収束していく展開はわくわくした。総じて楽しく観られてよかった。

天使アジラフェルと悪魔クロウリーの友情が最高で、特にクロウリーのキャラクターが好きだったのだけれど、日本語版の吹き替えを関俊彦氏(土井先生、鮮血、ゲゲ郎)が担当されていたと知り、「関俊彦は私をどうするつもりだ…」と呟いた(私が勝手にどうにかなっているだけ)(この冬の映画忍たまで更にどうにかなる気がする)

『シティハンター』(2024)
監督/佐藤祐市

Netflix独占配信。表立って解決できないワケアリな依頼を請け負って、凄腕ガンマンとその相棒は東京・新宿の夜を真っ赤なミニクーパーで駆け抜ける。

「女好きの主人公がショートヘアの女の子に100tハンマーで殴られてるアニメ」という前提知識しかない状態で観ました。大変面白かったです。ふたりがどのように出会い相棒になるのかまでの物語。

一応サスペンス系のストーリーではあるものの、謎解き部分はおおざっぱで、そこを楽しむ映画ではなかった印象。アクションは抜群にかっこよかったし面白かった。ネトフリ配信作だけあって2作目への布石が用意されていたので今後の展開が楽しみです。

SNSでは鈴木亮平のガンマンっぷりが話題になっており、もちろんそれもよかったのですが、個人的には香のキャラクターが秀逸でした。「仕事人の主人公の邪魔をする口うるさい女」という一般的には嫌がられるであろう登場人物にもかかわらず、観ていると応援したくなる素朴さがあり可愛かったです。

主人公の「女(※女体)好き」設定はくずすことなく、現代の価値基準にあわせた絶妙な調整がされていて全編快適に見られました。やればできるじゃん日本映画。

『共謀家族』(2019)
監督/サム・クァー

横暴な警察官がハバを利かせる街で、警察署長の息子を殺してしまった妻と娘を守るため、男はこれまで観てきた映画の知識を総動員して完全犯罪を目指す。

この説明だけで観始めたのでどんなコメディーやねんと思っていたし、これはネタバレではないですが、「どこかで種明かし的に『実は全部フィルムでした~』って言うんやろ?」って思ってたらそういう映画ではなかった。ごめん。不誠実な権力への怒りを感じる凄く真面目な映画でした。

中国映画版『容疑者Xの献身』なので筋はまあだいたい予想できていたけれどめっちゃ面白くて最後までハラハラしながら観られた。子役の演技がものすごく達者でそれだけでもう泣きそうでした。

2013年制作のインド映画をその2年後にヒンディー語でリメイクして、それを中国で更にリ・リメイクした作品らしい。ややこしい。元ネタの映画ではダンスしたんだろうか。してほしい。

古いものを表示
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。