『ラストマイル』(2024)
監督/塚原あゆ子
脚本/野木亜希子

年に一度の「ブラックフライデー」前夜、東日本の物流を担う巨大物流センターから発送された商品が次々と爆発した。センター長・舟渡エレナと数少ない社員の一人・梨本孔は原因を突き止めるべく倉庫を奔走する。

最初から最後までず~~~っと面白く、しかも安心して観ていられる作品だった。だって監督・脚本・そして役者を『アンナチュラル』『MIU404』の布陣だもの。安心と信頼のエンタメ作品。ドラマ2作品分の登場人物がたくさん登場するため群像劇っぽい雰囲気もあり面白かった。みんなそこにいたんだね。ずっと生きていたんだね。ありがとう。また逢えたら嬉しい。

私達は皆、多かれ少なかれシステムの一部として生きて、システムが無ければ生きていけない存在であると同時に、システムを動かす存在でもある。私達が止まれば都市は止まる。都市が止まれば私達もただでは済まない。都市に張り巡らされた交通網をうごく小さな光の粒としての私達、血流の一滴である私達の話をずっとしていた。

……でも個人的な好みとしてはもっとポリティカルでもよかったな~!

『怪盗グルーのミニオン超変身』

高校の同窓会に参加したグルーは、再会した元同級生から成り行きで命を狙われることになった。家族を連れて自宅を離れ、安全な場所に引っ越したものの、そこのお隣さんは悪党志望の悪ガキで、正体をバラされたくなければ盗みを手伝えと脅される。一方、復讐に燃える元同級生はグルーの息子を誘拐するため住処を探していた……。

シリーズ最新作にして第4弾。残念ながらチビッコ大歓喜のおなら爆弾は出なかったものの、珍奇なメカやヒミツ道具が大量に登場していた。今回はシリーズで一番アクションシーンが作りこまれていた気がする。大人もしっかり楽しめた。シリーズどれも曲のセンスがカッコよくて大人ウケを狙ったネタが差しはさまれるので見ていて飽きない。

とにかくテンポが速いのでこどもも飽きずに観られるのだけれども、一方で、もうちょっと深堀した方がいいだろうよ~と感じた個所がいくつかあった。マキシムとヴァレンシーナの連帯の事情とか、新生活をはじめたこどもたちとルーシーの内面とか、ポピーがどうして悪党を夢見るようになったのか、とか。虫さん軍団がかわいかったんだけど1シーンしか出てこなくて残念だった。あとは、第3作でドルーとどっかいったはずの大勢のミニオンが一緒にいるのはなんで?ってなった。

『密輸 1970』
監督/リュ・スンワン
脚本/リュ・スンワン、キム・ジョンヨン、チェ・チャウォン

1970年代半ば。環境汚染による不漁であえぐ、韓国の小さな漁村・クンチョン。生活のために、海女たちは密輸品引き揚げの仕事を請け負った。やがて仕事は密輸王や税関までをも巻き込んだ金塊争奪戦に発展する。疑念と裏切り、愛と友情、そしてサメ。最後に笑うのは誰だ。

っていうね~~~~~!!!
め~~~っちゃ面白かった!!!
ありがと~~~~~~!!!
だいすき~~~~~~!!!

これがほんとのオーシャンズ8でした。海女だけに。やかましいわ。あとジャッキー・ブラウンみもあった。

こういう映画大好き。なんかハラハラしながら観て、観終わったあとは「はーおもしろかったー!」って言えるやつ。それでもちゃんと環境汚染や漁村の貧困、権力の腐敗、歴史的背景、そして血と暴力と裏切り明け暮れる男たちに対して鮮やかに描かれるシスターフット……といった社会的な要素も描かれていて、エンタメとのバランスが最高だった。あと音楽と衣装がずっとかわいかった。さっき「愛と友情」とか書いたものの、真面目にフィーチャーされているのは友情部分だけだったのもよかった。

『ヒトラーのための虐殺会議』(2023)
監督/マッティ・ゲショネック
脚本/マグヌス・ファットロット、パウル・モンメルツ

湖のほとりに建つ白い邸宅に続々と黒い車がとまる。午前中に開かれる会議に参加するために軍人や官僚が集まっているのだ。議長・国家保安部代表ラインハルト・ハイドリヒの元に集まったのは高官15名と秘書1名。会議のテーマは「ユダヤ人問題の最終的解決について」ーー

おじさんたちが机にへばりついて会議しているだけの映画なのに、100分間息をつめて観てしまった。白熱した議論が展開されていたし、なにより「面白かった」ーーそう、この会議はすごく「面白かった」

最近会社で色々とめんどくさい会議をしているオットーはこの映画を観て次のような感想を述べた。

「議長の手腕が凄い。まず、会議の目標を明確に定めているのが偉い。色々と反論や横やりがありつつも最終的に100点満点中80点位で達成したし、80点の内容でも全員の合意がとれたので議長がプロジェクトの主導権を得た。よくできた会議には下準備と根回しと数字が大事だなと良く分かった。でも、こんな映画でわかりたくなかった!!!」

ほんまそれ。

続く)

『マッドマックス:フュリオサ』
監督/ジョージ・ミラー
脚本/ジョージ・ミラー、ニコ・ラサウリス

故郷から連れ去られ、母を殺された少女フュリオサは、荒くれ者の集うバイカー集団を束ねるディメンタスの養子として荒れ果てた地で生き延びる。要塞シタデルでイモータン・ジョーの子産み女となった彼女は、やがて髪を剃り男装してメカニックの技術を学び大隊長となって再び故郷を目指す。瞳に怒りの炎を宿しながら。

宣伝文句の仰々しさが白々しく思えるほどに、静かな怒りに満ち満ちた映画。改造バイクや馬鹿でかいタンクローリーといったいかれたメカニックは山盛り登場する一方、全作みたいな熱狂はまったくない。あれはなんだったんだろうなあ、イモータン・ジョーって前作も今作もすげーヤなやつなのに。

今作のヴィランとして登場するディメンタスは、イモータン・ジョーに比べると凄く小悪党だ。部下にも裏切られるし治世も下手。そのくせ、恐ろしい男ぶろうとヒゲを赤く染めてマントを羽織る姿は痛々しさすらある。二つ名を自分で名乗りはじめたときが最高にイタかった。

あのイタさには見覚えがある。給湯室や女子だけの飲み会で交わされる、職場の○○さんについてのトーク。男性がなにかを守ろうとして強い男を演じている姿はたいていバレている。

続)

『関心領域』(2023)
監督・脚本/ジョナサン・グレイザー
原作/マーティン・エイミス

大きなおうちには召使が二人。きれいに手入れされた広い庭。夏になれば子供たちを連れて近くの河でピクニックや水遊びを楽しみ、冬はふかふかの暖かいコートを着込んで散策する――誰もがうらやむ素敵なおうちの真横では、アウシュビッツの焼却炉がいつも低く唸っている。

立川イオンシネマの極上音響で観た。定点カメラで記録したような映像が続き銃撃戦もカーチェイスも凄腕音楽家も出てこない映画なのに「極上音響」で上映されていた理由は、この映画の主役は音響にあるからだ。

銃声、汽車の音、悲鳴、怒声、警備の連れる犬の鳴き声、そしてなんだかよくわからない、船のエンジンが動いているような低い音。家の主でアウシュビッツ局長のルドルフ・ヘスは、自宅に軍人を招き、いかに効率よく焼却炉を稼働させるかの計画を立てている。ふたつの炉を交互に動かして24時間体制で稼働する計画だ。
低い音は映画の最初から最後までずっと響いている。

数々の音の正体は、最後まではっきりと明かされることはない。家の住民たちが身に着ける服からでてくる金歯や口紅が、畑に撒かれる灰が、靴底の血が、川底にみつかる骨が、一体「何」なのかは一切示唆されない。

続)

『レオン 完全版』(1994)
監督・脚本/リュック・ベッソン

麻薬取引のいざこざから家族を殺された少女は隣人の部屋に転がり込む。その部屋の主はプロの殺し屋だった。復讐を誓う彼女は殺し屋から殺しの手ほどきを受けていく。孤独な二人の奇妙な共同生活、その終焉までの話。

あらすじもいらない程の有名作品を20年ぶりに再見。細部はほとんど忘れていたにもかかわらず、ゲイリー・オールドマン演じる警察官の狂気を現すしぐさ(ピルケースを鳴らす、薬を噛みしめて天を仰ぐ、云々……)を観た途端、脳細胞が「あぁ~~~~~~!!これ覚えてるぅ~~~~~~!!」と悲鳴を上げたので驚いた。観たものの記憶に刻み込む演技をする役者、すごい。

モノマネクイズの「イーストウッド?」「…ジョン・ウェイン」で笑うことができて、私自身の成長を感じた。20年前はジョン・ウェインは勿論イーストウッドが誰だか知らんかったので……。

「主役の性愛の対象にはならない」が一貫しているので今も鑑賞に堪えうるし、これからも残り続けるんだろう。ただ、監督の性加害報道を知ったうえでみると、その設定自体がちょっと言い訳めいたもののような気もする。

『シティハンター』(2024)
監督/佐藤祐市

Netflix独占配信。表立って解決できないワケアリな依頼を請け負って、凄腕ガンマンとその相棒は東京・新宿の夜を真っ赤なミニクーパーで駆け抜ける。

「女好きの主人公がショートヘアの女の子に100tハンマーで殴られてるアニメ」という前提知識しかない状態で観ました。大変面白かったです。ふたりがどのように出会い相棒になるのかまでの物語。

一応サスペンス系のストーリーではあるものの、謎解き部分はおおざっぱで、そこを楽しむ映画ではなかった印象。アクションは抜群にかっこよかったし面白かった。ネトフリ配信作だけあって2作目への布石が用意されていたので今後の展開が楽しみです。

SNSでは鈴木亮平のガンマンっぷりが話題になっており、もちろんそれもよかったのですが、個人的には香のキャラクターが秀逸でした。「仕事人の主人公の邪魔をする口うるさい女」という一般的には嫌がられるであろう登場人物にもかかわらず、観ていると応援したくなる素朴さがあり可愛かったです。

主人公の「女(※女体)好き」設定はくずすことなく、現代の価値基準にあわせた絶妙な調整がされていて全編快適に見られました。やればできるじゃん日本映画。

『共謀家族』(2019)
監督/サム・クァー

横暴な警察官がハバを利かせる街で、警察署長の息子を殺してしまった妻と娘を守るため、男はこれまで観てきた映画の知識を総動員して完全犯罪を目指す。

この説明だけで観始めたのでどんなコメディーやねんと思っていたし、これはネタバレではないですが、「どこかで種明かし的に『実は全部フィルムでした~』って言うんやろ?」って思ってたらそういう映画ではなかった。ごめん。不誠実な権力への怒りを感じる凄く真面目な映画でした。

中国映画版『容疑者Xの献身』なので筋はまあだいたい予想できていたけれどめっちゃ面白くて最後までハラハラしながら観られた。子役の演技がものすごく達者でそれだけでもう泣きそうでした。

2013年制作のインド映画をその2年後にヒンディー語でリメイクして、それを中国で更にリ・リメイクした作品らしい。ややこしい。元ネタの映画ではダンスしたんだろうか。してほしい。

『アメリカン・フィクション』(2024)
監督/コード・ジェファーソン

あんまり売れてない作家(純文学寄り)が、白人をコケにするためにコテコテの黒人っぽい文学を書いたところ、発売前から重版出来、映画化も決まって文学賞まで取っちゃったから、さあどうしよう。

っていう…ね。笑。

めっちゃめちゃ面白かった。いたるところにダークなジョークが仕込まれていて頬が引きつった。でもいくつか見落としている気がする。黒人2名、白人3名でおこなう文学賞最終選考シーンの皮肉が個人的に一番強烈でした。

産まれたところや皮膚や目の色で、それに見合った音楽や口調や人生を求められる。そぐわなければ驚かれる。人間って、人生って、皆そんなに単純じゃないのにねえ。だけど複雑なものを複雑なままにしておくのは不安だ。

実は主人公の人生が一番『くだらないメロドラマ』っぽく描かれていて、ちょっとだけ悲哀だなぁなどと思いました。

『花様年華』(2000)
監督/王家衛(ウォン・カーウァイ)

仕事で忙しい妻をもつ男と、仕事で忙しい夫をもつ女が、たまたま隣の家に住むようになり、互いに惹かれあう話。

タイトルや監督のおなまえだけは知っていた。始終ばっちばちにキマった映像がでてくる美しい映画だった。影の使い方がやばかっこいい。映像に恋をするような映画だった。

遠景の映像が一切でてこず、始終「主人公から半径五メートル以内」程度の風景しかでてこないこと。同じやりとりが何度か繰り返されること(タクシーに乗る、電話をかける、別離の練習...)等、始終夢見心地で非現実的な雰囲気がつきまとい、どこからどのあたりが現実で空想なのかが一瞬わからなかった。最後の下りも結局シンガポールについていったのかよく分からず、Wikiのあらすじを読んでやっと把握した。これは私の初見での読解能力の無さも影響している気がするが…。

香港の歴史的事情を把握していれば、1966年という時代背景にももっと色々と感じることがあったかもしれない。

主演の張曼玉(マギー・チャン)が着るチャイナドレスがどれも美しくて格好良くて最高だった。眼福。

『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』(2023)
監督/堂山卓見

三日月形のユートピアを探すのび太達が、誰もがしあわせに暮らせる都市「パラダピア」に迷い込んで完璧な小学生になるハズが…?

大方の予想通り、完全無欠の未来型ユートピアに見えた世界は実は人の心を支配することで成り立つ監視国家であり、住人は特殊な光で思想を統制されられていたという展開になる。住民の大半がこどもたちという点がなかなかリアルで嫌だった。独裁者は教育から支配してくもんだからね…。

成人女性(と思われる)キャラクターが、窮地を子供たちに任せてどっか行ってしまったのはだいぶ無責任だった。でもドラえもんというコンテンツの性質上ある程度仕方ないな~とは思うし、その人物も義賊寄りのアウトローっぽく描かれていたので、目くじら立てるほどではないが。あと「不完全な僕たちだからこそすばらしい」という主題はいいとして、かといってジャイアンにいじめられるのを許容したらいかんので、友情パワーで本当の心を取り戻す展開はちょっとテーマを単純化しすぎちゃうか?と気になった。それはそれとして洗脳が解けるシーンは熱い。大好きですああいうの。

ドラえもんに同じネコ型ロボットの友達ができる、という設定は今まであまりみたことが無くて良かった。

『怪盗グルーの月泥棒』(2010)
『怪盗グルーのミニオン危機一髪』(2013)
監督/ピエール・コフィン、クリス・ルノー

黄色い生物ミニオンと自称大悪党のおじさんグルーのスラップスティックコメディ。私の知識はこれだけで娘が三人もいるのは知らんかったので大変驚いた。しかも続編の危機一髪を先にかけてしまったので状況が読み込めず大いに困惑した。

2010年のこども向け映画で「男らしさにこだわる中年男性が、強さを断念してケアする者(=三姉妹の保護者)になる」ってストーリーをやってるのが凄い。

2013年の続編では「こどもには母親が必要」等ツッコミたい点はあるものの、グルーが過去のトラウマから恋に興味を持た(て)ない⇒行動を共にした相手への気持ちを自覚して結婚って展開はいいなと思った。ただのビジネスパートナーだったはずの博士が三姉妹を「わしの家族」と宣言して助けに行ってる展開もよかった。グルーと実の母親はわだかまりを残すものの関係を否定しきらず、かといって血縁至上主義にもなってない塩梅、娯楽作品としてのポジション取りがうめぇ~な~とおもった。

思っていた以上に「悪人・グルー」のキャラクターが複雑で魅力的だった。5歳サンはおなら爆弾に夢中だったし最近ミニオン語で喋ってます。だよね。

『窓際のトットちゃん』(2023)
監督/八鍬新之介

黒柳徹子の自伝をアニメ化。小学校を退学になったトットちゃんが新しい学校に入学してからの日々が描かれる。

本当によかった…泣いた…。
周りもかなりしくしくしていた…。

泣いたからいいというわけではなく、トットちゃんが感じる世界の色鮮やかさ、わくわくどきどき、不可思議さが伝わる映像と、トモエ学園の校長・小林先生の主義思想が相まって、映画の中盤過ぎまでは本当にしあわせな時間だった。

SNSでは日常が戦争にじわじわと浸食されていく恐怖が評判だった。たしかに、冒頭で聞き逃されるラジオの音声や、黒板の板書の文字列には、ほんの少しだけ不穏な空気が漂っている。太平洋戦争前夜の昭和15年には「じわじわ」どころか、既に日本はどっぷりと足を突っ込んでいる。それを台詞での説明や暴力描写をなしに丁寧に少しずつ表現していて、なんというのだろう、品が良いなと思った。嫌味ではなく。

品のよさというと、この映画には子どもの裸体がしっかりでてくる。お風呂やプールに入るシーンで素っ裸になり股間も映る。当然ながら全然性的じゃない。まったく嫌な感じがない。パトラッシュを連れて行く天使の裸を見ているイメージ。作品全体にこういう『品の良さ』が行き届いていた気がする。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)
監督/ダニエルズ(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート)

コインランドリーを営む冴えない主人公が多元宇宙で異なる人生を生きる自分の能力を呼び出しながら強大な悪と戦う話。

120分もある本編のうち8割位の時間でなんか良く分からん事が常に起こり続けるカオスな映画だった。最後までなんか良く分からんのにハチャメチャに面白いのは何なんだろうか。観終わったあとは荒野の石がいとおしくなり、指がソーセージの宇宙に暮らす人たちのしあわせを願うようになっていた。だからなんなんだこれは。良く分からないけどすっごい面白かったです。いろんな作品へのオマージュがごった煮になっているのも楽しい。娘ちゃんの衣装がコロコロ変わって可愛くて良かった。ケラケラ笑いながら観ていたのになぜか感動していた。不思議だなぁ……。

結末に思うところは無きにしも非ずで、現実は映画のようにはいかないので優しさも話し合いも役立たずかもだけど、映画の中でくらいこういう奇跡が起きてもいいよねえ、ミシェル・ヨーがんばったもんねぇ、って思いました。にしても、これがアカデミー獲ったの凄いな……。

『ヴァチカンのエクソシスト』(2023)
監督/ジュリアス・エイヴァリー

朽ちた修道院に眠る強力な悪魔を対峙するふたりの神父の物語。事前情報は「神父のおじちゃんがヴェスパに乗ってる」ことしか知らなかったんですが、老いが若いに仕事の流儀を伝授するタイプのバディムービーでした。内容の大筋は誰も死なない『コンスタンティン』だった。面白かったです。

名前を知ること、悪魔の発言、自らの過去の出来事と向き合う事、等々が悪魔への攻撃となるのが不思議だった。どういう理屈なんだろう。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
監督/古賀豪

ゲゲゲの鬼太郎、その生誕の謎に迫る物語。

ヒト型だった頃の目玉親父がイケメン過ぎたのと、水木しげるの話ではなく『ゲゲゲの鬼太郎』作中世界での鬼太郎誕生秘話を描くと聞いて、「おいおいおたく受け狙いかよぉ」と鼻白みアウトオブ眼中だったんですが、SNSの評判を聞いているうちに、もしかして傑作なのではないかという予感がして観に行きました。私は心が弱いおたく……。

結論。名作なので何らかの賞を得てほしい。映画の街調布賞は最低限必須で。

閉鎖的な村と謎多き一族を巡る物語も面白かったですが、すさまじかったのが「昭和三十年」の描写力。執念を感じるほどに作りこまれた風景は後半への伏線がいくつも貼ってあり、こりゃ入村したまま戻れなくなる気持ちがわかるわぁ~とおもいました。村人一人ずつにちゃんと設定がありそうなところもよかった。

会社員として村に訪れた戦争帰りの男・水木と、妻を探す幽霊族の末裔=目玉親父のかつての姿・ゲゲ郎のコンビが嫌いなおたくはいねえわ……同室で寝たり飯食ったり着替えたり風呂入ったりアイス舐めたり酒呑んだりするシーンが多く地味に色気がありおたくは狙い撃ちされていた。やめろよ。いや嘘ですもっとください。

以下、ネタバレ全開で書きます。

『ザ・クリエイター/創造者』(2023)
監督/ギャレス・エドワーズ

圧倒的な映像と寓話的なストーリーを展開する完全新作SF。AIと人間が戦争をしている世界…という「それ知ってる」「またかよ」「何度目だ」な設定でだいぶ損している気がする。正直、脚本はご都合主義っぽいところが多かったんだけど、映像が本当に凄すぎてねじ伏せられた。こういう映画こそ劇場で観るべきだよ~と心から思える映画だった。うちの近所の劇場では公開一か月で上映終了になってしまったので気になっている人は駆け込んでください、ぜひに。

AIを「人類の敵」として圧倒的な軍事力で殲滅しようとする西側諸国に対し、不思議な均衡を築きながら共生するニューアジア、という設定に監督のオリエンタル趣味を感じて多少う~んとは思った。あえて謎翻訳した日本語とかが出てくるとことか、全角半角ごちゃまぜフォントとか、サブタイトルが毛筆なところとか…。

あっでも時代劇風のコテコテ演出は好きでした。あとゴジラのセルフオマージュも。ギャレス作品はどれも「くるぞ…くるぞ…キターーーーーー!!!」が凄いんですけど今回も凄かったです。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2022)
監督/アーロン・ホーバス、マイケル・イェレニック

双子の配管工がブルックリンの地下で謎の土管に吸い込まれて異世界転生する超おもしれ~~~映画。謎の恋愛描写やジョークで雑音を感じさせないスカッとしたエンタメでした。そういう意味では前に見た『ダンジョンズ&ドラゴズ』と同系統。

離れ離れになった双子の弟ルイージを探す為に兄マリオが頑張る、そのためにピーチやドンキーコングと協力する、という展開がよかった。ピーチがメチャクチャタフで強くてかっこよかったです。クッパの「ピーチピチピーチ♪」ソング最高に好き。アナ雪2のクリストフとデュエットしてほしい。

私はゲームとしてのマリオはスーファミのやつとヨッシーアイランドとオリガミキングダムのプレイ動画位しか知らないんだけど、ファンが見たら涙ちょちょぎれる演出がされてるんやろうなあ…というのは伝わった。ただ、これはこの映画に限らず最近の風潮だし元ネタが有名なぶん仕方ないんだろうけど、超盛り上がるエピソードのパッチ―ワークでずっとサビをお出しされている感があり、個人的にはもうちょっと侘びとか寂びとかはほしかった。でもまあ5歳サンが観てもほぼ飽きなかった点はよかった。

『マイ・エレメント』(2023)
監督/ピーター・ソーン

飛行機の機内で鑑賞。水、木、風、火、4つの元素が暮らす都市で、相容れないはずの炎と水の若者が出会い、恋におち、触れ合う物語。

それってあれやん『ズートピア』やん、って思いますやん。確かに冒頭シーンはどうしてもズートピアと比較しながら見てしまった。でも全然ちがう話なのでズートピアが刺さった人ほど見てください。父の跡を継ぎファミリー(コミュニティ)の炎を守るかどうするかって話なのでどちらかというと『ゴッドファーザー』です。

ズートピアでは「種族」の違いを全面に押し出すかたちで格差は造形としては大きくでてこなかった印象だけど、マイ・エレメントでは格差がはっきり描かれていた。水風木(街を形作る3つの要素として冒頭で提示される)の暮らす街と火(移民として街に来たことが示唆&街を燃やす厄介者扱い)の住む場所の経済格差や、互いの差別意識といったものが、劇中なんどもリフレインされる。

印象的だったのが、分かりやすい差別発言ではなく、相手を楽しませようとしたジョークやもっと知りたいという好奇心だったりが、相手を深く傷つけてしまう、という描写がされていたこと。悪気がなくても差別の当事者になるということを親しみやすく描いていて凄いと思った。

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