新しいものを表示

『オニールの成長株発掘法【第4版】』(ウィリアム・J・オニール)

「新高値」の概念を人口に膾炙させたオニールの名著。過去100年以上の成長銘柄のチャートを用いて、爆発的に成長する銘柄には似たパターン(同じパターンではないことに注意)があることを例示する。
本書によればエントリーの狙い目はいわゆるカップウィズハンドルに限られないのだが、本書のフォロワー(個人投資家向け)は、エントリーポイントをカップウィズハンドルに絞って紹介している。おそらく、カップウィズハンドル以外のパターンを見分けることが、チャートに精通していない初心者には難しいためだろう。数多くのチャートが紹介されていたが、一見しただけではどんな形状か理解の及ばないものも多かった。それを拾えるようにするのが優れた投資家への近道かもしれないが、さしあたって典型的な形状だけ狙おうと思った。
amazon.co.jp/オニールの成長株発掘法-【第4版】

『1勝4敗でもしっかり儲ける新高値ブレイク投資術』(DUKE。)

「新高値」(1年以内に高値をつけた銘柄)という概念がある。その新高値に着目したウィリアム・オニールの経験則をさらにアップデートしたのが本書。同じく新高値を取り扱った『株の公式』(林則行)を私は教科書としていた。同書ではやや弱かった、新高値を用いて選択した銘柄に関する売りへの洞察を深めようと本書を読んだ。結論から言えば、売りのみならず買いへの洞察も深まった。
本書の柱は、以下の2つ。
・買い:テクニカル(新高値・ボックスの上側)で銘柄を絞り込み、ファンダメンタルで傍証を得て買う。
・売り:
(利確)ボックス割れで売る。三空が出現、出来高が増大したら売る。
(損切り)あらかじめ設定した損切りラインで売る。
(例外)悪材料がでたら直ちに売る。
詳細や、その他エントリー時の注意点などは自分の目で確かめてね。
amazon.co.jp/1勝4敗でもしっかり儲ける新高値ブ

『売りの技術は儲けの技術』(出島昇・宝徳政行)

株をやってる友人と話して刺激を受けたので、セールになっていたこともあり、投資の方法の手札を増やすために読んでみた。まず、2006年初版のため(電子版のリリースが近年で、そこで勘違いした)背景事情が古い。また個人投資家がワークさせるにはやや煩雑すぎる印象を受けた。手札を増やすよりも、今ある手札へのインサイトを深めた方がいいと思った。

『よろこびの歌』(宮下奈都)

ギブ。
本作を読みながら自分の好みを改めて言語化してみると、私は基本的に人間賛歌が好きで、その中でも、ネガティブスタートでネガティブの中にポジティブを見つけ出す物語よりも、ポジティブスタートでポジティブをいったん喪い再び手に入れる物語に惹かれますね。別の観点から言えば、人は既に何らかを喪っているのだから殊更にその(物語にあらかじめ組み込まれた)喪失を強調するのではなく、持てる状態から始まって後から喪った方が輝くでしょう。
本作の主人公らは、大切な何らかを喪った(あるいはそもそも手に入れ損ねた)女子高生たちで、彼女らは31歳のおじさんとは違ってそこまで達観していないので、喪失が強調されるのは共感できるものの、小説の技法の問題として、同じパターンが3回続いて流石にページをめくる手が止まりました。

『ロジカル・プレゼンテーション』(高田貴久)

2004年に初版が発行されて2023年に27版まで数える名著。後世に「仮説思考/論点思考」と呼ばれることになる思考フレームワークを説明する。本書の特徴は、そのフレームワークに埋め込まれるファクト/示唆/仮説の説明の方法を、実際の「提案」の技法(プレゼンテーションの技法)に昇華した点だ。この一冊で「提案」に必要な技術が揃う。
「仮説=相手の疑問(知りたいこと)に答える仮の答え」
と定義されるのだが、重要なのは「相手の疑問(知りたいこと)に」という前半部分だろう。私は、仮説の立案/その検証が自己目的化することがある。折々に触れて視野を広く持ち直して「相手の疑問」に答えられているかを見つめ直したい。
内容としては私には既知のことが多かったので詳細は割愛する。
amazon.co.jp/ロジカル・プレゼンテーション――自

『鑑識レコード倶楽部』(マグナス・ミルズ)

厳かであり、即物的でもある小説だ。男たちがレコードをパブの奥の部屋で聴くだけ。コメント、批評はなし。ただ聴くだけ。主宰が定めた厳密なルールに則って進行するはずだった会は、しかしながら、厳密過ぎるが故に……。人々は自らの信念に沿って倶楽部の活動に携わっていく。小説全体を通して、彼らのひとりひとりが、聖域とでも呼べるような不可侵な領域を持っていることが描写される。その意味で、非常に厳かだ。そして即物的でもある。この小説に比喩はない。レコードの音楽の感想にも比喩はない。人々の精神活動は動詞によって表現される。
ありふれた話にも思えるし、決してありえない話にも思える。小説冒頭で、その瞬間にとあるレコードを聴いているのは自分たちだけだと評するシーンがあるのだが、本作を象徴している。誰にも開かれている話だが、どこにもない。
amazon.co.jp/鑑識レコード倶楽部-マグナス・ミル

『GE帝国盛衰史』(トーマス・グリタ、テッド・マン)

GE(ゼネラル・エレクトリック)が崩壊に至るまでを綿密な取材を元に描き切ったノンフィクション。崩壊の一途を辿った理由は、一言で言えば、ガバナンスの欠如だ。CEOは会社にチャレンジングな目標を命じる(前期を上回る決算、前期を上回る配当のために……)。組織ぐるみで手段を問わない業務遂行が恒常化し、(法規制に対して)「攻撃的な」会計処理が行われる。工業製品の会社であったはずのGEが、金融部門が攻撃的に生み出すキャッシュの麻薬に溺れていく。
天才的と言われた経営者ジャック・ウェルチ、その後を継いだジェフ・イメルト、彼らと共にあった幹部、取締役、そして多くの部下……。誰もがゴールに向かって、その時のベストを尽くそうとしていた。ただ、ゴールもコースも間違っていたのだ。
引用した画像(p.465より)は本書の最後に経営陣の過ちを総括したパラグラフだ。心の誠実さと頭の知恵が求められていることが示唆されている。
amazon.co.jp/GE帝国盛衰史-「最強企業」だった

『業界別 経営アジェンダ2024』(A.T. カーニー)

21の業界の近年の動向をまとめ、今後を占う一冊。それぞれのストーリーにどれ程の確度があるかはともかく、業界分析レポートの作り方の参考になる。あとSF的未来予測的な読み物的面白みがある。自ジャンル(ジャンル?)は、出典とするには微妙な文献(業界にメチャ恨みがあることで有名な人物の記事)を出典としており確度はやや怪しいので、他ジャンルももしかしてそれくらいの確度かもしれませんが……。
amazon.co.jp/T-カーニー-業界別-経営アジェン
(投稿範囲を間違えていたので再投稿。2024/02/01読了)

『水車小屋のネネ』(津村記久子)

面白かった!のだけれど、クライマックス直前から1ヶ月以上も間を空けて読んでしまって、ちょっと申し訳ない(が、地震が起きてすぐのときに地震が出てくる小説を読みたくなかったのだ)。人類の良心を信じているときの津村記久子で、鋭く、醒めた人間観察眼が発揮されていた。
amazon.co.jp/水車小屋のネネ-津村-記久子/dp

モジュール化の成功者として、トヨタの自動車ラインナップの思想、IBMのコンピュータのモジュール化、欧州の高速鉄道、ダイキンの空調設備、コマツの建機が例示される。
最後には、ハードウェアによるデータセンシングとデータを活用するソフトウェアのシステム(Cyber Physical System)において、API(≒インターフェース)の共通化(≒モジュール化)が必須であると紹介する。
現在の日本のもの作りに対して手厳しい意見も多いのだが、エールが通底しているように感じた。興味深く読めました。

スレッドを表示

『IoTと日本のアーキテクチャー戦略』(柴田友厚)

日本のもの作りの「すり合わせ」は幻想である……。
もの作りのためのアーキテクチャーには「モジュール」か「非モジュール」しか存在しない。複数の部品のそれぞれに固有な特性に応じて緻密に連結させて一つの製品を組み上げる(=モジュール化されていない「すり合わせ」)方法論では、市場の多様な要求に応えようとすると組合せ爆発が生じる。一方で、製品数を減らすと市場からの要求に応えられない。
このジレンマを解決するのがモジュールである。モジュール化された設計思想では、複数の部品を一つのコンポーネントとしてまとめることで部品同士の緻密な連結を減らし、それらコンポーネント同士を共通の約束で連結する方法(=インターフェース)をトータルで設計する。これにより、適切なコンポーネントを選択し共通のインターフェースで繋げることで、組合せ爆発を抑制しつつ、多様な要求にも応えることが可能となる。
amazon.co.jp/IoTと日本のアーキテクチャー戦略

『ソニー半導体の奇跡』(斎藤端)

ソニーの「お荷物」と呼ばれていた半導体部門(CMOS部門)がどのようにして今の地位を築いたのかを描くクロニクル。経営学的なマクロな観点よりもむしろ、ミクロな人の動きに着目した一冊。いま振り返れば、ソニーが九州(菊陽町・諫早)で半導体に投資をしていたのが遠因となってTSMCが菊陽町を選ぶこととなったのだが、本書が執筆された時期には確かその話はまだなく、彼らの奮闘が巡り巡って日本が外貨を稼ぐきっかけとなってくれたのだから、先見の明があったとも言えるのかもしれない。
amazon.co.jp/ソニー半導体の奇跡-お荷物集団の逆

『うどん陣営の受難』(津村記久子)

新書版で100ページの掌編。会社の代表選挙にウンザリしている女性社員のお話。主人公は三番手の勢力に緩やかに連帯しているのだが、一番手と二番手との決選投票になってしまい、両陣営から陰に陽にアプローチを受ける。同僚はより激しく投票の誘いを受け……、ととにかく社内政治に辟易していく様子が鮮やかに描かれる。
小さな会社の社内イベントに見えるけれど、これは私たちが向き合うべき「政治」の話であると感じられた。応援したい候補は弱い。それを勢力で上回る陣営はくそである。それでも自分で考え、投票を放棄せずに誰を選ぶか決めなければいけない。コミカルな筆致だけれどシリアスなテーマでした。

amazon.co.jp/うどん陣営の受難-津村-記久子/d

『ギケイキ 千年の流転』(町田康)

クソ笑いながら読んだ。室町時代に成立した軍記物語である『義経記』を現代風にアレンジした小説なんですが、その頭で読むと書き出しから殴られる。
「かつてハルク・ホーガンという人気レスラーが居たが私など、その名を聞くたびにハルク判官と瞬間的に頭の中で変換してしまう」
現代である。地名もいまの四十七都道府県で書かれたりするし、西暦が使われたりもする。ぶっ飛んでいる。
しかしながら、ここが町田康のすごいところ。源義経を始めとする人物、みな「っぽい」のだ。地元のヤンキーっぽさがあるが、当時の死生観(と読者が思ってしまう価値観)がガンガン滲み出てる。一言で言うと、躊躇いなくめっちゃ人を殺す。そういう時代だったので、と。
現代の書きぶりと当時の価値観とが調和して、謎のバイブスが生まれている。それが『ギケイキ』だ。 

『流体力学超入門』(エリック・ラウガ)

大学での研究テーマが流体力学だったので手に取った一冊。よい復習&頭の体操になった。流体力学を概観するのにちょうど良く、学部生のときの、まさに流体の研究を始めるその時に読みたい(あってほしい)一冊だった。もとはオックスフォードの「Very Short Introductions」シリーズとのことで一気読みするのにちょうどいいサイズ感。
amazon.co.jp/流体力学超入門-岩波科学ライブラリ

『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』(シーナ・アイエンガー)

私たちは何を求めて「最高の発想」のための本書を手に取るだろうか? 一言で言えば「課題を解決するため」だ。では「課題」とは? 本書はつまり「課題」を特定し、解決するための手法を教える本だ。
発想を生むためのプロセスは次のようなものだ。本書は課題を「サブ課題」へと分割せよと説く。サブ課題を解決することで叶えられる望み(私の望み、当事者の望み、第三者の望み)を比較する。この望みとは、困りごとと言い換えてもいい。そのための既存の解決手法(=選択肢)を、業界の内側と外側の両方から探す。既存の選択肢同士を掛け合わせ、新しい選択肢を生み出す。ゼロベースの発想ではない点がポイントだ。最後に、第三者からの目から見て「課題」を評価する。
ノウハウとしては、課題に対して具体化・抽象化を繰り返すことで「意味があるほどには大きいが、解決できるほどには小さい課題」に落とし込む、選択肢は5±2に絞る、アイデアは量より質(ただし、量を出した後に粘り強く考え続けることでしか質に辿り着けない)、等々。
本書のエッセンスは、究極的には添付の一枚の図だ(pp. 60-61より引用)。

『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略(柴田友厚)

読み物として面白かった。
ハードウェア(工作機械)とソフトウェア(半導体)とが融合し、新たな産業が立ち上がっていく様子が克明に描かれる。富士通からスピンアウトして誕生したファナックと当時ベンチャーだったインテルとの協業の産物がCNC工作機械なんですね。両社とも、CNC工作機械のコンセプトが商品化されるときには新興のメーカーだったが、著者によるとむしろそれが功を奏したと。
工作機械は、NC工作機械(真空管入り)からCNC工作機械(半導体入り)へと進化した。この際に、NC工作機械で勝っていたアメリカの工作機械メーカーは、当時の基準で高品質な工作精度を求める自動車産業・航空機産業の既存の顧客を優先していたためにいわゆる「イノベーションのジレンマ」に陥っていた。一方のファナックはある意味では身軽だったおかげで、新技術である半導体を貪欲に採用することができた。
ファナックの躍進が幸運の産物であり結果論も多い(著者自身も認めている)のだが、製品の機能のモジュール化、インターフェースの共通化、密接なフィールドエンジニアリングについてはいま読んでも学ぶ所はあるだろう。

amazon.co.jp/日本のものづくりを支えた-ファナッ

『小説集 Twitter終了』

Twitterは死に体で延命し、『小説集 Twitter終了』という商業で本が出たことで作者らはTwitterの外への可能性を感じさせている、というのは皮肉なシチュエーションなのかもしれない。そういうことを感じながら読みました。そして、何人かは実際にTwitterの外へ出ることに成功している。
私がTwitterでビッグリスペクトしていた何人かは表舞台に出ることに成功し、何人か失敗し、何人かはそういう「表舞台」を目指す価値観それ自体から離れた。
価値観が近くて味わい深かったのは、やはり今もつきあいのある青井タイル「オタクどもの聖霊降臨日」と根谷はやね「もう一人のあなたを作る方法」、それからTwitterってこうあってほしかったなと思わせる乙宮月子「近くて遠い二人の距離」。

『夜のピクニック』(恩田陸)

実は読了してなかったシリーズ。うーん、どうなんだろう。舞台も登場人物もその関係も魅力的なのだけれど、ぜんぶ喋りすぎだな。もっと口数少ない方が好みだ。完全に私の好みの問題です。
ただ、読む機を逸していた感があって、これは中高生のときに読まなきゃいけなかった本でもある気がするんだよな。大学生でも遅い。無理矢理に集められた「学級」の雑多さとか、無理矢理に参加しないといけない「学校行事」への期待の諦め切れなさとか。そういうのがアクチュアルな時に読まないといけなかった。
我が身を振り返ってみて、学校行事にも部活にもフルコミットした満足感はあれど後悔もある。高校3年生のクラス。仲の良いやつがいなくて(当時の私はガードを上げていたし、そうでなくてもグループができあがっていた)、そういう、誰とも連めない奴らと連んでいた。もう大半は名前も思い出せない。それが残念だ。
そういうことを思い出させてくれたから、いい小説だったのかもなー。ただ、おしゃべり過ぎな小説な気もするんだよなー。

amzn.to/3sUq3QL

古いものを表示
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。