『情報分析力』(小泉悠)

その分析・情報資料を求めている人に向けて、インフォメーション(生情報)をインテリジェンス(役立つ分析・情報資料)に変換するために、分析者はなにをするべきなのか――。
本当に重要なエッセンスだけ取り出すとまあまあありがちなビジネス書っぽいことになってしまうんですが、具体例がとにかく著者にしか出せないロシア事例でフックに富んでいる。本書から得られる教訓を一言で表すなら「相手に合わせて具体で語れ」ということになろうが、それが遺憾なく発揮されていた。
読み物としても面白かったです。

『ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト読本』(深津貴之)

家族に生成AIの使い方をシェアするために教科書的に読んだ。生成AI側に何かをいったん評価をさせた上でさらにその評価に則って生成AIをさらに動かすというような使い方は知見だった。

『テーマからつくる物語創作再入門』(K. M. ワイランド)

本書は、テーマ・プロット・キャラクターの三者の融合によって物語を創作することを志す。三者のどれかにフィーチャーした脚本術は数多くあれど(自ずと融合を論じることになった脚本術もいくらかあれど)、最初から融合それ自体を目標として語るのは初めてお目に掛かった。三者の融合を語るために、読者には前提知識を求められるが、ある程度の脚本術を読んだ人には強く勧めたい。
テーマ・プロット・キャラクターの融合は言うに及ばず、脇役の作り方、サブテクストの深め方、シンボリズムによる意味の表現の仕方、テーマ(抽象)とメッセージ(具体)の行き来の仕方など、前提知識の要求水準が高い分だけ、高度な議論がなされる。
私は同著者の『ストラクチャーから書く~』を脚本術のバイブルとし、適宜に『アウトラインから書く~』を眺めているが、『テーマからつくる~』は新たなバイブルになると確信した。
さしあたって、本書のチェックリストを自分のノートに転記した。あとで埋めよう。

ガチでお勧め。
filmart.co.jp/books/978-4-8459

フィルムアート社のカクヨムに要約もある。まずはそちらを読んでもいいかも。
kakuyomu.jp/works/117735405519

『バイバイ、ブラックバード』(伊坂幸太郎)

借金やらなんやらで「あのバス」という死を予感させる存在に乗せられることになった、5股(!)男が女たちに別れを告げに行く話。
興味深かったのは本編よりも付録の伊坂のインタビューで「短編なのに長編の書き方をしてしまう」と述べていたこと。物語を構成するリズムが長編向きなんでしょうね。確かに、長編の方が冴えている。短編集は連作だったとしても切れ味がマチマチ。伊坂ほどのエンタメ作家でも、得意不得意が明確にあるんだな、と。でも、得意な型(ハメ手)に持って行って面白い話を作れる。
アマチュアの書き手としては、なんだか肩が軽くなったように感じられた。オールラウンダーにならなくていいんだって。

『三谷幸喜 創作を語る』(三谷幸喜/松野大介)

面白いっ! タイトルの通り、三谷幸喜が創作を語る(半生を振り返りながら)のだが、聞き手の松野大介が素晴らしい仕事をしている。二人が共通言語を有しているおかげで、テンポ良いインタビューになっている。
三谷幸喜の「制約から話を作る」というスタンスは、なるほど勉強になる。1時間ドラマはCMが挟まり、映画には尺や映画の作法がある。その制約がある中で表に出る脚本(映像)のウラのお話、厚みをどれだけ作れるかが勝負なのかな、と。

『スポーツクライミング教本』(東秀磯)

新しいチャレンジ、ボルダリングをしようと思って、まずはその教本を読みました。とにかく壁にくっついて、とにかく身体の重心と壁の支点(ホールド)との距離を意識して、「てこ」を作用させる。あとは実践してみよう。

『サキの忘れ物』(津村記久子)

半年ほど前に出先の図書館で読みかけになっていたのをようやく読み終えた。表題作のは、善意と悪意と無関心の三者のバランスが絶妙だ。このバランスがピタッとハマった時の津村記久子は、本当に氏にしか出来ない味わいを出してくれる。
ウワーッ……と感じたのは「喫茶店の周波数」。店を畳む数日前の喫茶店にやってくる人々の姿を描出する。閉店間際の喫茶店というやや特殊な環境に置かれることで、彼ら彼女らの人間性(ある意味では、醜さ、と言ってもいいかもしれない)が誇張される。その具合が何とも言えず不快で、その不快感こそが津村記久子の小説の魅力である。

今月はオタク活動に励んでおりました。ジャズ7枚、本22冊でした。

はてなブログに投稿しました
241031 2024年10月度月報 - 箱庭療法記 yobitz.hatenablog.com/entry/20



『ジャズを聴く』(ジェリー・コカー)

ジャズに用いられる音楽理論をちょうど良く絞って紹介しつつ、実際の名曲の演奏がどのように実践されているかを詳細に解説する。理論と実践のバランスの良い一冊。ただ、私がまだ未熟なリスナーで、その何分の一もわかったかすらあやしい。

『「簡潔さ」は最強の戦略である』(ジム・バンデハイ、他)

読む価値なし。シンプルに書けという本なのだが、著者の来歴が延々と語られて、戦略に説得力がない(公開範囲間違えてたので再投稿)。

『ストラクチャーから書く小説再入門』(K. M. ワイランド)

お話考え屋さんとしての原点。三幕構成について考える必要に迫られた時は必ず読むようにしている。平易なのでイメージ、自分のお話に当てはめがしやすいのがいいところなんですよね。

『ムーンシャイン』(円城塔)

2017年の作品を2024年に読んで何を今更だけど「遍歴」はかなり面白く、理数的な与太と宗教的な与太とのミックスがちょうどいいと思う。
宗教的な与太の方が私の関心領域にミートしつつあるのを感じており、作家とともにいい塩梅で年を重ねているのを感じる。『コードブッダ』も楽しみです。

『負けヒロインが多すぎる! SSS』(雨森たきび)

萌えました。自分の誕生日になぜか温水くんの家に足を運んでしまう八奈見さん、彼女の誕生日を覚えていて手料理を振る舞って適切なプレゼントを贈る温水くん。萌え萌えでした。これだけでも読む価値があった。しかし、こうして1~6巻までの小話を続けて読むと各位が徐々に仲良くなっていく様子がありありと見て取れて、萌え……。

『青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない』(鴨志田一)

完結。遠回りしたが、よくがんばった。前巻『ガールフレンド』(あるいはその前の大学生編の始まり、高校生編の終わり)から想像されたビジョンと比べてサプライズはない。ただ、こう終わるしかないという納得感はある。

『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』(鴨志田一)

前の巻からの流れで一気に持ち直した。幕引きのためにしっかり加速できている。咲太がきちんと彼らしく、大学生編の新顔もしっかり使えている。これを読みたかったんよ。

『負けヒロインが多すぎる!(7)』(雨森たきび)

アクションや与太に富んでいて、ページをめくる手が止まりませんでした。これ漫画で読みたいですね。
これで本編は全部読んじゃったことになるのか……。4巻、6巻は今後とも折に触れて読み直してニコニコすることになると思います。
ありがとう。

『負けヒロインが多すぎる!(6)』(雨森たきび)

焼塩檸檬、アンタが優勝だ。
4巻は萌え萌え萌え萌え、5巻はクールダウンって感じだったんですが、6巻は立体的でした。
先輩らが卒業する巻なんですが、むしろ登場人物は増えて、その分だけ巻き込み巻き込まれが増えて、温水くんの周囲が豊かになっていく様子がありありと描かれていて、泣きながら読みました。成長したな……。

『負けヒロインが多すぎる!(5)』(雨森たきび)

豊川稲荷のデート(?)良かったな~って思い出しながらエピローグ読んでたら脳回路が焼けた。

『負けヒロインが多すぎる!(4)』(雨森たきび)

エグいて。各位かわいすぎる。

『負けヒロインが多すぎる!(3)』(雨森たきび)

モノローグのある原作だと温水くんの行動原理に八奈見さんのそれが混じりつつあることが見て取れて萌え萌え。
なんだけど、トータルでは奇妙な話だとも(やっぱり)感じていて、小鞠ちゃんの新部長周りのエピソードはそれでいいんだっけとは感じました(周囲の人物が「価値観を押しつけ~」みたいなことを言うほどにエクスキューズめいていて、首を傾げました)。

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