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『鑑識レコード倶楽部』(マグナス・ミルズ)

厳かであり、即物的でもある小説だ。男たちがレコードをパブの奥の部屋で聴くだけ。コメント、批評はなし。ただ聴くだけ。主宰が定めた厳密なルールに則って進行するはずだった会は、しかしながら、厳密過ぎるが故に……。人々は自らの信念に沿って倶楽部の活動に携わっていく。小説全体を通して、彼らのひとりひとりが、聖域とでも呼べるような不可侵な領域を持っていることが描写される。その意味で、非常に厳かだ。そして即物的でもある。この小説に比喩はない。レコードの音楽の感想にも比喩はない。人々の精神活動は動詞によって表現される。
ありふれた話にも思えるし、決してありえない話にも思える。小説冒頭で、その瞬間にとあるレコードを聴いているのは自分たちだけだと評するシーンがあるのだが、本作を象徴している。誰にも開かれている話だが、どこにもない。
amazon.co.jp/鑑識レコード倶楽部-マグナス・ミル

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