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【木村勝千代独演会】2023年12月24日(日)14:30~16:45@上野原文化ホール

勝千代「甲州一揆 犬目の兵助」
勝千代「秋山の民話 姥捨山」
~仲入り~
勝千代「芝浜の革財布」
曲師:広沢美舟

勝千代さんがPR大使を務める地元上野原での独演会。ホールということで背景に浮世絵を映したり、最初に掛け声の練習をしたり、市長や恩師がひと言述べさせられたりと、温かい雰囲気のいい会だった。勝千代さん、自分で後ろの浮世絵込みで写るように自撮りしてみたかと思えば、客席からの撮影タイムも設けるなど、お茶目さと地元愛とサービス精神にあふれていた。ちょっとマナーの悪い客もいたのが残念と言えば残念。こういう鑑賞に慣れていないのだなとは思ったけど、あれは誰かに注意してほしかったな。

一緒に行った、山梨在住で浪曲初体験の友人は、勝千代さんの声と節の圧倒的迫力、それからくるくると変わる表情に感激して、すごいを連発。次は木馬亭も行ってみたいと興奮気味に語っていた。

浪曲の三題噺は、落語以上に面白いし難しいかもしれないと思った。曲師さんと即興で合わせる妙味。どこを節(歌)にして、どこを啖呵(セリフ)にするかという切り分けもあるし。

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三題噺③小ゆき・貴美江「小ゆきのしあわせ」(お題:アイスモナカ/山鹿灯篭/小ゆきのしあわせ)
もともと新作派の小ゆきさん、一番楽しみにしていたが、お題の中に明らかに小ゆきさんに宛てたものがあって(山鹿灯篭/小ゆきのしあわせ)、それを選ばずをえない流れに。ギャンブルばっかの夫があるとき大金を当てた。豪遊&買い物に走りかけた夫の通帳を妻は隠し、10年後夫ががんの診断を受けたときに「実はわたしが隠していた」と打ち明ける。おや、まるで落語の三題噺として最も有名な「芝浜」のようだ、そっちに寄せたのか……と思いきや、誇張はあるものの小ゆきさんとご主人の実話だったらしい。それにびっくり。あと、「ちょっと時間が余ったので~」(ここももちろん節に乗せている)、小ゆきさん十八番演目の「ベートーベン一代記 歓喜の歌」からドイツ語で「歓喜の歌」を歌ってくれた。曲師の貴美江師匠もしっかりドイツ語でそれに合わせた弾き語りデュエット。いいもの見させてもらいました。

琴美・明「人情芝居囃子」
三代目団十郎の話。劇中劇なんかもあって、難しい一席なんじゃないかと思った。最近、琴美さんの魅力がちょっとわかってきた駆け出しファン。今日もご祝儀とかお菓子とかたくさんもらっていた。

演者はたいへんだろうけど、ぜひまたやってほしい。

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三題噺①千春・理緒「東家千春物語」(お題:紀文のカニカマ/ブラックホール/ゲリラ豪雨)
千春さんは年季明けしたばかり。しかも新作をつくるのは初めてだったらしい。でも、「これは自身の入門のきっかけを描いた実話です」などといいつつ、竹取物語を踏襲した楽しいお伽噺風の物語にお題をうまく絡め、とても楽しく可愛い一席だった。これで初めてならほんとに立派だ。終わって外でお客さんと話しているのを小耳にはさんだら、ほぼ眠れなかったとか。緊張したんだろうなぁ。お題を選んでくれたので、ちょっと挨拶させていただいた。近くで見ても本当に美人さん。

三題噺②恭太郎・美舟「思わぬ助太刀」(お題:万歳/トナカイ/暖冬)
これはあくまでわたしの想像だけど、恭太郎さんは「来そうなお題」を想定してしっかり一席作り込んできて、あとは今日選んだお題をそこに当てはめたという感じだった。だから、何のお題であっても、話の骨子は変わらなかったと思う。現に、ひとりだけメモに目を一切落とさなかったし。内容は忠臣蔵を下敷きにしたオヤジギャクとダジャレ満載のノリノリの一席。途中、おそらく美舟さんは知らないだろう「走れコータロー」なんかを唄いだしたりしたけど、美舟さんは即興でぴったーーーっとついていってすごかった。ついそっちばっか見ちゃったw

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柳一・一貴「忠治関宿落ち」
柳一さん、初めて聴いたけれどとてもよかった。節もしっかりして啖呵も堂々としていてとても前座さんとは思えない。ダミ声系ではない。また聴きたい。これは要注目だ。

はる乃・美舟「将軍の母」
はる乃さんはもう本当に安定の楽しさ。東京ドームでもマイクがいらないようなピーンと張った素晴らしい声&声量。見事な節回し。最年少浪曲師とは思えない貫禄すら感じさせる。なんといってもそのエンターテイナーぶりで、ぐいぐい客を乗せて引き込んでいく。本当に魅力のある浪曲師さんだなあ。美舟さんとの息もぴったり。ちなみに、今日は衝立がなかったので、曲師さんも全員よく見えてよかった。

月子・明「徳川家康 人質から成長の巻」
ベテランの見事さ。本当にお上手。でもやっぱり、はる乃さんのようなケレンがないというか、引力の強さみたいなのがわたしには働いてこなかったかな。

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【浪曲冬の陣】2023年12月23日(土)13:00~16:00@浅草木馬亭

浪曲協会主催の冬の企画興行。今回の目玉は、浪曲初の三題噺(1人10分)に3人が挑戦するというもの。落語の三題噺の場合は、当日の会場にいるお客さんからお題を叫んでもらって、演者の耳に止まったものを3つ選ぶ、というのが多いんじゃないかと思う。今回の企画では、先月から館内に設置してあった箱に客がお題を投函してきた。わたしも7-8個応募してあったのだが、なんとそのうちの2つを千春さんが選んでくれるという快挙(?)。こうなると楽しみが十倍増し!

三題噺のお題選び
柳一・一貴「忠治関宿落ち」
はる乃・美舟「将軍の母」
月子・明「徳川家康 人質から成長の巻」
~仲入り~
三題噺①千春・理緒「東家千春物語」(お題:紀文のカニカマ/ブラックホール/ゲリラ豪雨)
三題噺②恭太郎・美舟「思わぬ助太刀」(お題:万歳/トナカイ/暖冬)
三題噺③小ゆき・貴美江「小ゆきのしあわせ」(お題:アイスモナカ/山鹿灯篭/小ゆきのしあわせ)
琴美・明「人情芝居囃子」

勝千代(豊子)「芝浜の革財布」
動画では見ていたけれど、やはり生は何百倍も素晴らしい。とにかく声の圧倒的な魅力がすごい。東京ドームでもマイクがいらなそうな声量に、絶対誰にも真似できそうにない節回し。啖呵の部分もほんとに引き込まれる。筋は落語とほぼ一緒だけど、節の部分がドラマチックさをいやでも増す。シーズン初の芝浜がこれでよかった。感激。

雪絵(鈴)「滝の白糸」
いやー、おそろしいというか切ないというか悲しいというか。非業の物語。泉鏡花原作なのか。幸絵さんはこういう文芸ものがよく似合う。最初に聴いた雪おんな(ハーン)といい、次に聞いた大つごもり(樋口一葉)といい。お芝居を観ているよう。

福助(鈴)「真柄のお秀」
今日はこれが勝千代さんに次いでよかったかな。真柄のお秀ははる乃さんで2回聴いていたけど、福助さんの少しどじごしらえな感じが素朴で正直なお秀によく似合っていて、じつに可愛らしい。押しかけ女房となった先で、都はるみの「惚れちゃったんだよ」を熱唱したり(はる乃さんVerにこれはない)、そこで客席から手拍子が入ったり。楽しかった。

琴美(秀敏)「壺坂霊験記」
すべての悲劇をくつがえす観音様の霊験パワーハッピーエンドストーリー。妻は夫をいたわりつ、夫は妻に慕いつつ、の名セリフのやつ。

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【木馬亭 十二月定席三日目】2023年12月3日(日)12:15~16:05

志乃ぶ(秀敏)「近藤勇のぼんやり女房」
すみれ(豊子)「山之内一豊の妻」
実子(秀敏)「吉良の仁吉」
勝千代(豊子)「芝浜の革財布」
~仲入り~
雪絵(鈴)「滝の白糸」
講談 昌味「太閤曽呂利」
福助(鈴)「真柄のお秀」
琴美(秀敏)「壺坂霊験記」

今日は「妻特集」ということで、全員女流の浪曲師によるいろいろな妻・夫婦の物語。まあ、もとは男がつくった演目だろうし、時代の影響もあって現代にこんな妻/女はおるかいな、という話もなくはないけれど、そこはそれ。それを男の噺家なんかがやるより嫌な感じがしないのは不思議。バラエティ豊かで全部よかった。

志乃ぶ(秀敏)「近藤勇のぼんやり女房」
時間を一時間間違えたばっかりに、最後の5分くらいしか聞けなかった。本当に申し訳ない…

すみれ(豊子)「山之内一豊の妻」
この演目は浪曲大会以来二度目。のびやかな声にすごく細かい節回し。若いけど堂々とした存在感。

実子(秀敏)「吉良の仁吉」
実子さんの啖呵(語りの部分)がすごく好き。映画のようだった。今日はヤクザ者の噺とあって、紫の極妻ルックの着物がすごく似合っていて素敵だった。

【さん喬独演会 昼の部】2023年12月2日(土)14:00-17:20

小きち「出来心」
小もん「辰巳の辻占」
さん助「堪忍袋」
さん喬「井戸の茶碗」
~仲入り~
小平太「おすわどん」
さん喬「ちきり伊勢屋」

さん喬独演会(昼)@三鷹へ。大好きな井戸の茶碗と、2度目のちきり伊勢屋は65分! この不思議な噺、全世界に通じる寓話/お伽噺になれそうだなと今日思った。数奇な運命にいくつものドラマ。鶴次郎がどの国の人でも成り立つような。あ、でも雪の降る国がいいかな。雪の別れの場面があまりに美しいから。

(以下は少しネガティブなことを言います)ただ、3時間20分はちょっと長かったかな…っていうか、独演会なのに、師匠以外に前座を含め4人登場するという構成はどうだったのだろうと思わなくも…。サービス精神はよくわかるし、ミニ一門会と銘打たれていたなら何の文句もないのだけれど…心が狭いかな…それぞれがつまらなかったわけじゃないんだけどね…

今日は小きちさんでも小もんさんでもけっこう寝てしまったし、なんか注意力散漫で、落語を聞くのが久しぶりのせいか、聞き方を忘れてしまったのか、この構成のせいでよけいに集中できなかったせいもあるのか。

やはり圧巻だったのはゲストの雲月師匠。本当に格が違うというか、貫禄の至芸というか。終盤の畳みかけるような展開はかっこよかったの一言。

志乃ぶ(秀敏)「葛の葉」
志乃ぶさん、口上のときから相当に緊張の面持ちだったが、いざ出番でもめちゃくちゃ緊張していて、マクラも何もなく、外題を言うのが精一杯。それでも、安倍晴明の母といわれる狐の化身・葛の葉の物語を熱く、切なく、ソウルフルにうたいあげて、あああこれは感動した。胸にずどんと来る感じ。ハンカチに登場いただいた。ネタ下ろしとは思えないすばらしい渾身の一席だったと思う。

千春(秀敏)「陸奥間違い」
対照的に千春さんは度胸のかたまりなのか、まったく落ち着いてマクラもニコニコたっぷり振ってこちらもネタ下ろし。高く美しいのびやかな声。明るくコミカルな話はとてもニンに合っているように思えた。笑いもたっぷりとっていた。同期の2人。これからも楽しみ!

そうだ、あとすごかったのは秀敏師匠の三味線。御年88歳(三味線歴80年!)にして3席連続で飄々と弾く。馬のひづめの音や、松風が吹き渡る音まで弾いてびっくり。なんたって103歳の祐子師匠も現役だからね、浪曲界は凄いよ。

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【東家三楽一門会 千春・志乃ぶ年季明け披露興行】2023年11月26日(日)13:00~16:15@浅草木馬亭

三可子(秀勇)「双葉山」
実子(けい子)「花の若武者 那須の与一」
雲月(ちぐさ)「徳川家康 人質から成長の巻」
雲月・三楽・千春・志乃ぶ・実子(司会)「口上」
~仲入り~
三楽(秀敏)「権太栗毛」
志乃ぶ(秀敏)「葛の葉」
千春(秀敏)「陸奥間違い」

浪曲の披露興行を観るのは初めて。駆け出しファンだけど、目出度い場に行ってみたかった。で、行ってほんとによかった。晴れがましさと緊張と、見守る師匠・姉弟子・客席の温かさ。札止めの超大入りで狭い通路に臨時の椅子が並べられる大盛況。あんな混んだ木馬亭は初めて見た。凄い熱気(外は寒いのに名物アイスモナカがよく売れる)。口上と三本締め。決意のまなじり。これを経験したら、当人たちはいやでも頑張ると思うし、立ち会った私たちも絶対に応援するぞ、となる。

2人の師匠の三楽は日本浪曲協会の会長でもあり、弟子に5人の女流浪曲師をもつ。今日も舞台の上は曲師の秀敏師匠以外は全員女性。華やかだし、ここが個人的に浪曲の好きなところのひとつかな。マチズモ感がない、っていうか。三楽師匠の口演は初めて聴いたが、朴訥として味わい深かった。

もう一度聞けた武田信玄は、前回の美舟さんとちょっと比べたくなるところもあったけれど、この噺の素晴らしさ、勝千代さんの口演の素晴らしさは変わらず。これ、ほんとにほんとに、ほんとにかっこいい。何度でも聴きたい。川中島の戦いの最中で終わる、あの終わり方もすごくいいなあ。余韻が残る。
あと、信玄の初陣が霜月二十一日だったのにもびっくり。勝千代さんも途中で気づいて「あれ? 今日!?」と中断して驚いていらした。

それにつけても、18日の美舟さんのとき、終盤どんどんテンポが速くなったのは美舟さんが仕掛けたんだな、きっと。今日のまみさんは同じテンポを刻んでいた。あと、信玄が城主を斬るときの音。あれも美舟さんしか出せないのかもしれない。名状しがたい。この噺は美舟さんとのコンビでぜひまた聴きたい。

そして今日もア・ビアント特製チーズケーキはべらぼうにうまかった❤

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【第14回かつちよかい】2023年11月21日(火)13:30~15:25@荻窪ア・ビアント

勝千代「長短槍試合」
~ティータイム~
まみ 三味線ミニ講座
勝千代「武田信玄」
曲師:まみ

武田信玄は18日に聴いたばかりだし、長短槍試合は1月の兜町の独演会でネタ出しされている。なのでプログラム見て一瞬、あ、と思ったが、それも一瞬。どっちも何度でも聴きたい噺だということがすぐに証明されちゃった。

長短槍試合は、木下藤吉郎の人心掌握術がさえわたるコミカルな一席。こういうコミカルなの、勝千代さんにぴったり。でも節はすごいんだなー、ほんとに。

仲入り後にまみさんが浪曲の三味線について少し説明したのがとても面白かった。次回もまたこのコーナーがあるといいな。曲師さんと三味線についてもっと知りたい。

勝千代「武田信玄」
武田信玄が元服して初陣で手柄を立てるも、そのせいで父から疎まれ確執が生まれ、のちに父を追放して当主となり、上杉謙信との川中島の戦いのさなかまでを描いたもの。勝千代というのが信玄の幼名だったとは知らなかった(山梨出身なので師匠が勝千代と名づけたのだそう)。もうもう、三味線との呼吸のぴったりさがものすごいレベルだった。まず、信玄が初陣のときに奇襲をして敵の党首を斬るときの三味線の音。鳥肌立った。あんな音出るんだ。それから川中島の戦いに入ってからは、人と三味線がぴたーっと完全に一体化して、テンポがどんどん速くなっていく。その迫力と臨場感と緊迫感とドライブ感の凄まじさ。かっこよかったなー。今まで見たことのない勝千代師匠の一面が見られて本当によかった。

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【木村勝千代独演会】2023年11月18日(土)14:00~15:40

勝千代「鉢かつぎ姫」
トーク 勝千代&杉江松恋
~仲入り~
勝千代「武田信玄」(芝清之作)

今日来なかった人は損したよね、と終わりに勝千代さんがおっしゃっていたけど、まったくその通り。二席目の「武田信玄」はほんとに、ほんとに、勝千代&美舟コンビがほんとにすごかった。聴けてよかったー。

勝千代「鉢かつぎ姫」
御伽草子の物語から勝千代さんが浪曲化した一席。じつはわたしはまったくあらすじを知らなかった(恥)のだけれど、コメディタッチも加えて楽しい一席に。でも、鉢かつぎが一度死のうとして死にきれず、風呂焚きに身を落として、白魚のようだった指が働く女の指になっても、「生きていればこそ花が咲く」と歌い上げて前を向くところは涙腺決壊した。節が本当に細やかで美しくて。でもって、あの声量。圧倒的な力強さ。

トークの最中、勝千代さんの大ファンのおじいさんが(たぶん耳が悪くてトークの内容が聞こえなかったせいもあるかと思うのだが)、トーク無視して質問したり、賛辞を連ねたり勝千代愛を披歴したり、はてはご祝儀まで手渡ししたのは微笑ましかった。

東家孝太郎「入れ札」(菊池寛原作)
これも先月だったかに木馬亭で聴いたばかりだったけど、やはりじっくり聴けてよさがきわだった。あの地の底から湧いてくるようなダミ声はすごいよなあ。のどが痛くならないんだろうか。今回はとくに、忠治と離れることになる老いた侠客の悲哀と、そのふたりを秋の野原の風が吹きすぎていくラストの場面がなるほど文学的で切なく心に残った。

澤雪絵「大つごもり」(樋口一葉原作)
今日がネタ下ろし。緊張されていると話し、客席も何となく張り詰めた感じで聴き入った。拍手のしどころもよくわからなくて、結局最後まで入らないまま皆でしーんと耳を傾けた。ところどころ言葉に詰まったり噛んだりするところもあったけど、娘の揺れ動く心情がひしひしと伝わってきてとてもよかったと思う。終わったあとに、ほっとして「ようやく終わった」と漏らしていたのが印象的。最後に、演歌歌手としても活動している方なので、持ち歌の「風の演歌節」を三味線の生演奏付きでワンコーラスのサービス。

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【浪曲かるた亭】2023年11月17日(金)18:00~20:00

天中軒すみれ「安兵衛婿入り」
東家孝太郎「入れ札」(菊池寛原作)
~仲入り~
澤雪絵「大つごもり」(樋口一葉原作)
曲師:玉川鈴

初めての浪曲かるた亭。なんたって場所がいい。神保町の有名なかるた専門店「奥野かるた店」の二階。一階は店舗で色々なかるた類を販売。二階は普段はミニ博物館だそうで、珍しいかるたやトランプなどが展示されている。演者の立つ後ろの壁にも素敵な掛物がかかり、30人くらいのこじんまりした空間はほぼ満席。ちゃんとちょーんと木も入って雰囲気もあって、なんだか特別感たっぷりの会だった。お席亭の挨拶に先立って、まずお店の店主の方の挨拶があったのもほのぼの。見やすく聴きやすく、すごく気に入ったので絶対にまた行きたい。

天中軒すみれ「安兵衛婿入り」
もともと声がのびやかで声量もあってスケールの大きさを感じていたけれど、最近は聴くたびに節回しが細やかに上手になっていて、若手のホープといわれるだけのことはあるなあ。啖呵の部分も場面がよーく浮かんできて、とても楽しい。木馬亭でもこの演目は聴いたことがけど、あの空間でじっくり聞けたのですごくよかった。

奈々福・まみ「赤穂義士伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
今日一よかったのはやっぱりこれ。赤垣源蔵は前に安久鯉さんの講談で聴いたことがあったけど、浪曲のほうが好き。やはり、浪曲の何がいいってドラマチックさじゃないかしらん。九州遠征でお疲れだろうに、素晴らしい声量で啖呵もすてき。すっごくよかった。

講談 琴鶴「あんぱんを食べた次郎長」
あんぱんの木村屋誕生秘話。面白かったんだけど、聴きながらつい「ここで三味線が入って唄っちゃえばいいのに」と随所で思ってしまった。これから講談聴くたびに思いそう。

順子・貴美江「一妙麿」
最初の一節で「名調子!」と掛け声がかかったのはいいが、そのせいで次の文句を忘れてしまい、どうしても出てこなくて、いったん楽屋に下がった。ちょっとお気の毒。声がとてもきれい。

柳・美舟「一本刀土俵入」
若手はかなり聞いたけど、トリをとるベテラン勢はまだ聞いていない人が多く、柳さんもそのひとり。でも、ちょうどお眠タイムが訪れてしまって、うろ覚え。ごめんなさい。

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【木馬亭十一月定席千穐楽】2023年11月7日(火)12:15~16:10

綾・美舟「出世定九郎」
小ゆき・貴美江「最強主婦伝説 奇跡の夜」
菊春・美舟「竹の水仙」
奈々福・まみ「赤穂義士伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
~仲入り~
太福・鈴「悲しみは埼玉に向けて」(三遊亭圓丈原作)
講談 琴鶴「あんぱんを食べた次郎長」
順子・貴美江「一妙麿」
柳・美舟「一本刀土俵入」

平日だけどかなりの大入り。団体さんも入っていたとか。暑かったので、名物のアイスモナカも飛ぶように売れていた。明日は立冬だっていうのにねえ。

綾・美舟「出世定九郎」
綾さん、初めて聴いた3月から比べるとすごくお上手になった気がする。来年1月年季明け。こちらの興行も行かなくては。お披露目系大好き。

小ゆき・貴美江「最強主婦伝説 奇跡の夜」
新作。ご友人の実話らしいけど面白かった。仕事ばかりで家事育児を妻に押し付ける男。そいつと別れてシンママで奮闘する女性。女性からすれば(子育て経験ある人なら余計に)「あるある」と頷けるけど、会場の圧倒的多数を占める高齢男性はこの噺をどう受け止めるのかな。まあピンと来ないんだろうな。小ゆきさんは鋭い高音の節が熱くて好き。

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