『ロボット・ドリームズ』を見た。
ストーリーも演出も外連味はなく静謐。舞台は80年代のNYで、主人公は都会の孤独な青年、その約一年間のお話。擬人化された動物たちが暮らしています。絵本がそのまま動いている感じ。
話の運び方が結構強引なのですが、絵本的な絵面なので、リアリティラインが引き下げられてて、まあいいかとなります。
友達をお金で買っていいのかと、びっくりしてしまったけれども。都会の孤独な青年とは、たぶんそういう存在なのでしょう。
セリフなしの映画ですが、表情が雄弁なので、話はすんなり理解できます。そんなに難しいことは語っていないし。
ただ、このなだらかさで1時間50分は個人的には長くて。だけど人生を語るには、この長さも必要だったのかなあ。

『がんばっていきまっしょい(劇場版アニメ)』を見た。原作未読、実写映画・ドラマ未視聴。
漕艇の女子部活動もの。モーションキャプチャーの3DCGアニメで、動きや造形にまだちょっと違和感があるというか。慣れの問題かなあ。
微妙に煽りのアングルが多くて、スパッツを履かせてあげて欲しかった。居た堪れなくて、他人の内腿とか見たくないんだわ。
あと、スカートの裏に張り付いてるシュミーズみたいな白い生地、あれなに。下着ならそんなもん見せんなだし、裏地ならスカートと同系色にして裾は真っ直ぐカットしとけ。
画面に映るたびに気が散ってなあ。

主人公は余裕がなくて、自分の気持ちでいっぱいいっぱいになって他者を気遣えない人間(思春期人間だね)なのですが、作中の世界は優しくできていて、誰も主人公を責めないし、無理に立ち入ろうともしないんですね。
いろいろはあるけど、敢えていろいろには触れない。
水面のゆらぎとか煌めきとか、あえてそういう表面のニュアンスを取り扱った作品なのかなと思いました。

んで、愛媛県松山市が舞台なのですが、主人公の名字が「村上」なのが、いいですよね!周囲の人物も、「佐伯」「二宮」などで、とても良かったです!

『破墓/パミョ』を見た。
韓国ホラー、なんですけれども、前半と後半とでジャンルが違ってまして、作中カーナビのアナウンスで「ルート変更します」と宣言があったのが面白かったです。個人的には前半のテイストのままでいて欲しかった。んであとまあ、日帝をもっと擦り倒して欲しかったです。

『侍タイムスリッパー』を見た。
幕末の会津藩士が現代日本の時代劇の斬られ役になる話。
ベタな展開でストレスなく設定が飲み込めて、この設定ならこういう展開が見たいよね、というのに応えてくれる。反面、この展開は安直過ぎないかな(助監督がベタで便利過ぎるよ)という気持ちの半々。
後半、大物スターが登場してからの展開にはノレないのですが、これはわたしが時代劇や撮影所にあまり浪漫を持っていないからですね。
主人公が髷を落としてジーパンとポロシャツを着てる場面に心を痛めたのですが、作品では愁嘆場にならずさらっと流されていて、これはこれでいいなと思いました。

『オペレーション・ミンスミート 』を見た。
第二次世界大戦下のイギリス軍の情報戦についての映画。作戦内容については、ミンスミート作戦を検索してください。
作品中たびたび言及があるように、スパイ小説みたいな作戦ですね。目配せに007の作者をちょい出ししていて、ちょっと気が散りました。
作戦だけでは間が保たないのか、ロマンスや身内のスパイ疑惑をまぶして緊張感を与えていますが、その辺のフレイバーは未消化で終わります。でもあんまり不満感はないです。
現代の民主主義国家で都合よく死体をでっち上げるのは一苦労なんだなあ、と思ったり。

『無名』を見た。
スパイ物の中国映画。画面と雰囲気はバチクソに決まっててとてもいいのですが、説明がなくて話が分かんねえよ!
日中戦争下、傀儡の汪兆銘政権の秘密工作室で日本陸軍の指揮下で働く中国の人たちの話なのですが、この基本設定すら台詞からなんとか拾えた情報だからな。
秘密工作室といっても、日本陸軍の現場監督官みたいな人と料亭で観念的な会話してる場面が多く、具体的にどういう工作してんのかも謎で。登場人物少ないのに、キャラデザも若干かぶっていて、見分け付かないし。時系列も時々ぴょいっと飛ぶし。
あと、格闘シーンが妙に長くて、日本軍の描写が若干トンチキでした。
でも、雰囲気抜群!

『ラストマイル』を見た。ドラマ未視聴。
物流がテーマのサスペンス映画。インフラの話はいいですよね、もっとインフラがテーマのお話増えてくれ。
面白かったのですが、タイトルと舞台(物流センター)と、事件の動機と犯行と結果の結びつきが、なんかバラバラな感じがします。
システムによる犠牲を問題視し、システムの一部に成り果てる前に「止まれ」と訴えている物語なのですが。
作中の事件で被害者が出ており、最後の事件の家族以外は名前も顔も剥ぎ取られており、焦点が当たっているのはシステムの被害者で、事件の犠牲者は置き去りにされており、テーマが濁ってる感じ。
通販サイトで商品をクリックした段階で、事件の犠牲者はシステムの加担者でもあるわけなのですが。それでもなんだかなあ。
犠牲が出なければ会社も社会も変わらないという諦念があり、そういう話はドラマのほうでしてるのかな。

『ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ』を見た。
凄かった。映画のアクションをどう撮っていたかが主体です。映画本編だとフィクションフィルターがかかって見ていると思うのですが、ドキュメントだとそのフィルターが外れるので、「人間がこの動きを!」と驚くことになります。
練習、リハーサル、本番と、何度も何度も何度も同じアクションを繰り返しているのですが、どの動きもキレが良くて、特に本番のリテイクなどはどこが悪くて撮り直しているのか、説明があってもよく分からなくて。
映画としてわたし達が見ているのは、磨きに磨いて残したほんの僅かな上澄みなんだなあ、と。
贅沢を言えば、アクションパート以外のドキュメンタリーも、もっともっと欲しかったです。
台本作りとか、役の解釈とか、衣装合わせとか、ロケーション選定とか、美術とか、小道具作りとか、もっといろいろ見たいよね。

『スターリングラード』を見た。2001年のほう。
狙撃兵が主人公の話で、敵の凄腕スナイパーとの駆け引きがとても面白いです。戦争映画は面白い。そう思っちゃうんだよ、わたしは。
題名どおり舞台はスターリングラードの戦いですが、飢えと寒さはオミットされているので、地獄度はナーフされています。
主人公は地獄の底で、生まれも育ちも人種も階級も違う将校と出会い、友情を育みます。主人公が活躍し若干地獄深度が浅くなると、友情に亀裂が生じ、ついには色恋沙汰でその友情は破綻します。友情より恋愛が勝って、悲しかったです。
地獄度が極限に寄ると友情が復活して、嬉しかったです。

『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』を見た。前作未視聴。
楽しかった。銃撃戦も肉弾戦も豊富でキレが良い。宮崎県庁がカッコいい!
不器用で生真面目でどこかズレてしまっている人がいて、そのズレがおかしみで笑いどころになっているのですが、そこにペーソスがあって嫌な感じがしないのが良かったです。
笑いどころだけど、笑いものにしていないというか。

『ヒットマン』を見た。
依頼殺人のおとり捜査官が、殺し屋設定のまま元依頼人と再会して恋仲になってしまい、というコメディ。
詐欺師ものの変奏で大変楽しかったのですが、とても怖かったです。
「人は変われる」「なりたい自分になれる」というメッセージで話は締め括られるのですが、外的要因に影響されて人の内面は変質してしまう、というような話に思えてしまって。
ブッダは「本当の自分というものはない」と説いているのですが、わたしはそこまで悟っていないので、とても怖かったです。

『シュリ』を見た。
北朝鮮の潜入工作員と韓国の諜報部員の悲恋もの。1999年だから、韓国の大統領は金大中の頃か。
ええと、主人公と主人公の相棒の顔の区別が付かずに、どっちがどっちかだいぶ混乱して見ることになってしまってまして。
苦難に喘ぐ北の同胞は南の繁栄と享楽を許さないだろうという、韓国の罪悪感が描かれたものですよね、表面的には。
潜入工作員の合言葉が「祖国統一万歳」なんですが、北が統一を手放した後で見ることになってしまって。暴走して独自にテロを起こそうとした潜入工作員の隊長の切迫感がより迫りました。
潜入して偽っていた自分が本当の自分だったと、ひととき夢を見ていたその時だけが本当の人生だったと工作員の人に言わせてしまっていて、それがつらかったです。
どちらも、どちらも本当のあなただよと、とても言えるような境遇ではないんですよ。状況が彼女を引き裂いてしまった。

『スオミの話をしよう』を見た。
富豪の妻が誘拐され、その富豪の家に妻の元夫たちが集まって、夫たちの語る妻の姿はそれぞれ異なっており、というコメディ、なんですが、いやこれ、だいぶつらい話だな。
作ってる人もこれがつらい話だと把握していて、だからつらくないように演出しているというか。
「スオミ」という名前もだいぶつらくて、作中出てくる「ヘルシンキ」は「シャングリラ」と同じ意味合いで、見果てぬ夢の土地で、いつか辿り着けるといいねと祈るしかないというか。
それぞれの男に合わせ依存し乗り継いで漂流し、その旅路に寄り添い続けたのがシスターフッドっていうのも、切ねえな。
夫たちの年齢と社会的地位スオミよりだいぶ上なのもエグいんですよ。これさ、コメディじゃないと正視に堪えないですよ。
喜劇の役目は悲劇を悲劇のままに終わらせないことかなと思うんですが、誤魔化してもやっぱり悲劇は悲劇なんですよ。だけど、ただ憐憫するのもスオミに対する侮辱になるようで、ううう。

『男たちの挽歌』を見た。
いろいろ雑だったけど、とても良かった。
土台の話としてはヤクザからカタギになるのはとても大変という話しなんですが、弟、元相棒、元部下からの主人公に対する引力が強烈で錯綜していて、足を洗いたい主人公の足を引っ張り巻くってるんですよ。
反社の家族が刑事になってる話の根本の設定がまず雑だし、処置中の手術室に面会人が着の身着のままで立ち入ってなおかつ汗を拭いてるし、足を負傷した元相棒は軽快な身のこなしでラストバトルしてるしで、いろいろ雑なんですが、そんなことはフィルムに焼き付けたいことの前には些事なんですよ。
いやだってさ、黒のロングコートでサングラスして二丁拳銃打ってるの、問答無用でイイんですよ!
元相棒の笑い方がですね、とてもチャーミングで、こんな慕われた方したら主人公は振り払えないし、その笑顔を曇らせて「人生を取り戻したい」とか言われたら付き合わざるを得ませんよね!
冒頭、主人公と元相棒、主人公と弟と、それぞれイチャイチャしてる場面がありまして、元部下も主人公とイチャイチャしたかったんだろうなあと思うと、ままなんねえなあと思います。
んであと、弟の彼女は弟を振ってもいいと思うよ。自分で持ち込んだゴミは自分で片付けろ、弟。

『きみの色』を見た。
主人公は長崎のミッション・スクールの寮生で、バンドを結成して文化祭で演奏する、という話なのですが、それはあくまで作品のアウトラインであって主題ではないと言いますか、描かれているのは善性のアトモスフィアです。
作中、木造家屋の床に蝋燭を置いてバレエを踊る場面があって、わたしはすごく怖かったんですが、それを怖いと思わない人たちで構成されていると言いますか、怖いことの起こらない世界の話です。
善きもの、綺麗なもの、輝くもの、敢えて上澄みだけを掬いとって繊細に構築されています。
わたしはあそこにはいないなあ、と分厚い膜を通して見上げている気分でした。

『ツイスターズ』を見た。
フォロイーさんが見ていたので、見た。良かった。
竜巻のディザスター映画なんですが、災害物と同時進行でスタートアップ企業物をやっていまして。
最初にガツンと取り返しつかない挫折は置かれているのですが、それでも理念や夢や抱いているガレージ物の楽しさがあって。
人工的に竜巻を消そうぜって話なのですが、作中上映されていた映画がたぶん「フランケンシュタイン」で、これはどう受け取るべきなんだろうか。
作中の科学技術の妥当性がいまいち掴めなくて(あのデータの取り方は危な過ぎだろ)戸惑うのですが、竜巻はとても怖かったです。

『サユリ』を見た。原作未読。
やっぱりわたし、ホラーは苦手ですね。描写はわりと手控えしてる感じなのですが、早く解放してくれって思いながら見てましたもの。
解放はしてくれるんですが、そこまでは頼んでないって感じでバイオレンスでした。でも描写に品があるんだよな。露悪的じゃない。
いい感じの家族とクソな家族と両極端な家族が登場するのですが、どちらの家族も「家族」を守ろうとしてたんですよねー。
過ぎたことは取り戻せず、怨霊に打ち勝つには「生きる力」とのことで、過去に拘泥せずに生きていけって感じでしたわね。
理不尽で、理不尽を処理するための「ホラー」。

『ボストン1947』を見た。
日本から独立した韓国、1948年のロンドン五輪に参加するには国際大会での記録が必要だとのことで、ボストンマラソンに参加するため頑張る話。
オリンピック絡みの話なので、ナショナリズムとスポーツの話なのですが、国旗を背負って走ることの意義が描かれています。

主人公はベルリン五輪の金メダリスト孫基禎。日本総督府に選手引退を強要されやさぐれておりましたが、後進の選手を育てることで立ち直っていきます。
ベルリン五輪では孫基禎は日本国の代表として出場しており、金メダルは日本の実績となっており、その記録は未だ修正されておりませんで。
なので、韓国の選手が韓国の代表として韓国の国旗を負うことの意味が、とても重い話となっているんですね。国旗を負うことで、祖国と国外の同胞に与える影響も大きくて。
個人が個人でいられなくて、わたし達の代表で。それが必要な時代は確かにあって。

前半はとにかくお金がないって感じで、後半はマラソンパートが充実しており、スポーツ物としても面白かったです。
ベルリン五輪銅メダリストの南昇竜が明るくて前向きで、凄かったです。

『劇場版モノノ怪 唐傘』を見た。シリーズ未視聴。
基本設定を知らんので、理屈が分からん。何かが起きて調査してるって、話の入り口のところでもっと分かりやすく示しておくれ。描写が勿体ぶってんだよ。
舞台の規模感と事件の規模感が釣り合わんなあと思っていたら、続編があるのですね、なるほど。

話の感想としては、働くのって大変だよね、って感じでした。
労働って、大なり小なり心を捨てなきゃやっていけないと思うのですが。いろいろ捨てていかなきゃいけない中で、捨てることを責めらるのはつらいなと思いました。
働き方とか、生き方って、どこまで選べるものなんでしょうね。
いろいろ捨てていかなきゃいけない中で、それでもそれでも捨てられないものは何ですかって面をもっと前に押し出して欲しかった。捨ててしまうこと、捨てさせてしまうことに対して、もう少し温情が欲しかった。
だって、捨てないことを、心を殺さないことを選べる人って、どれだけいますか?
わたしなんかは、逃げて、人生から逃げ続けて、自分の未来を食い潰している最中なんで、そう思うんですが。
でも、わたしは、これしか選べなかったんですよ。

『ソウルの春』を見た。
朴正煕暗殺事件後の、粛軍クーデターの映画。粛軍クーデターで主役が全斗煥なので結果は分かっているのですが、一晩のうちに二転三転する状況に手に汗握る。憔悴するおじさん、声を荒げるおじさん、頽れるおじさん満載で楽しい。上から指示が錯綜していて、下の人は大変だなと思いました。
最後の集合写真に、「こいつが、こいつらが!」という映画制作者の怒りを感じます。
全斗煥が、おだて、あおり、脅し、宥めすかして人心を操作する様が凄かったです。

崔圭夏役の人が塩谷座長に似ていました。崔圭夏大統領は頑張ってました。

粛軍クーデターの映画なので、普通に後味は悪いです。
この後、光州事件に繋がるんだな。見よう、『タクシー運転手』!
韓国政治史を、わたしはほとんど知らないんだよなあ。

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