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『マイ・エレメント』(2023)
監督/ピーター・ソーン

飛行機の機内で鑑賞。水、木、風、火、4つの元素が暮らす都市で、相容れないはずの炎と水の若者が出会い、恋におち、触れ合う物語。

それってあれやん『ズートピア』やん、って思いますやん。確かに冒頭シーンはどうしてもズートピアと比較しながら見てしまった。でも全然ちがう話なのでズートピアが刺さった人ほど見てください。父の跡を継ぎファミリー(コミュニティ)の炎を守るかどうするかって話なのでどちらかというと『ゴッドファーザー』です。

ズートピアでは「種族」の違いを全面に押し出すかたちで格差は造形としては大きくでてこなかった印象だけど、マイ・エレメントでは格差がはっきり描かれていた。水風木(街を形作る3つの要素として冒頭で提示される)の暮らす街と火(移民として街に来たことが示唆&街を燃やす厄介者扱い)の住む場所の経済格差や、互いの差別意識といったものが、劇中なんどもリフレインされる。

印象的だったのが、分かりやすい差別発言ではなく、相手を楽しませようとしたジョークやもっと知りたいという好奇心だったりが、相手を深く傷つけてしまう、という描写がされていたこと。悪気がなくても差別の当事者になるということを親しみやすく描いていて凄いと思った。

マイ・エレメント感想続き・2 

主人公の「かんしゃく」が実は改善すべきものではなく、大切な自分の要素であるという話になっていたのが良かった。
私も昔はよく怒りっぽくてすぐに大声を出す性質で「なんでこんな風なんだろう?」と落ち込んだものだけど、環境が変わると落ち着いたことがあり、あれは自分の身体が信号を発してたのだなぁと思うなどした。

ちょっとだけ残念だったのが、序盤に提示された格差社会の要素が後半薄くなって、ふたりの心の交流がメインになってしまったこと。それはそれで素晴らしかったのだけれど、個人的には、移民として街に来た炎たちの命に関わるライフラインの故障が放置されてることや、家が手作りでツギハギで建築基準法をクリアしていないのを理由に店の営業停止を命じることは、街の支配層である水風木の怠慢だって指摘があったらもっとよかったな。いや正直そんなん無くても十分良くできたお話で素晴らしかったんだけど、どうしてもいろいろと詰め込みまくってる感があったので、30分12話か45分8話位で見せてほしかったな〜とおもった。それだけのポテンシャルがある都市の造形だったので。

我ながらなんて贅沢な不満だ。でも本当によかったので、ホシイ…モットヨコセ…って唸る妖怪みたいになった。もっとくれ。

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