『ザ・クリエイター/創造者』(2023)
監督/ギャレス・エドワーズ
#映画 #感想
圧倒的な映像と寓話的なストーリーを展開する完全新作SF。AIと人間が戦争をしている世界…という「それ知ってる」「またかよ」「何度目だ」な設定でだいぶ損している気がする。正直、脚本はご都合主義っぽいところが多かったんだけど、映像が本当に凄すぎてねじ伏せられた。こういう映画こそ劇場で観るべきだよ~と心から思える映画だった。うちの近所の劇場では公開一か月で上映終了になってしまったので気になっている人は駆け込んでください、ぜひに。
AIを「人類の敵」として圧倒的な軍事力で殲滅しようとする西側諸国に対し、不思議な均衡を築きながら共生するニューアジア、という設定に監督のオリエンタル趣味を感じて多少う~んとは思った。あえて謎翻訳した日本語とかが出てくるとことか、全角半角ごちゃまぜフォントとか、サブタイトルが毛筆なところとか…。
あっでも時代劇風のコテコテ演出は好きでした。あとゴジラのセルフオマージュも。ギャレス作品はどれも「くるぞ…くるぞ…キターーーーーー!!!」が凄いんですけど今回も凄かったです。
ザ・クリエイター感想続き
まぁその「キターーーーーー!!!」で今回は圧倒的弱者が蹂躙されて泣き叫ぶので、ゴジラ映画的な破壊の爽快感は皆無で私は始終ため息つきながら見てたんですけども。
細部のアジア趣味が成功しているようには見えなかったけど(むしろノイズだった)逆に、映画全体の雰囲気は嫌いじゃなかった。
というのも、アジア色が押し出されているのは、西側諸国が続ける攻撃の欺瞞や、AIを道具として利用することへの倫理観を揺さぶるためでもあるんだな、と感じたので。
現在進行中の「対象地域に住まうものを全員敵と見做し圧倒的な軍事力をもって無差別攻撃をおこなう行為」=虐殺をとめられないなかで見ると、「西側」に近い人ほどずんと胸が苦しくなるような映画だったとおもう……でも西側の啓蒙のためにアジアが利用されるのをヨシとも思えないので悩ましい点ではある。私はそんなに気にならなかったな~という話でした。
この映画、どうやら興行成績は芳しく無さそうなんだけど、そりゃそうやで。SF映画的なものに通常求められる爽快感が皆無だもん。こんなんよく撮ったなあ……。