『ラストマイル』(2024)
監督/塚原あゆ子
脚本/野木亜希子
#映画 #感想
年に一度の「ブラックフライデー」前夜、東日本の物流を担う巨大物流センターから発送された商品が次々と爆発した。センター長・舟渡エレナと数少ない社員の一人・梨本孔は原因を突き止めるべく倉庫を奔走する。
最初から最後までず~~~っと面白く、しかも安心して観ていられる作品だった。だって監督・脚本・そして役者を『アンナチュラル』『MIU404』の布陣だもの。安心と信頼のエンタメ作品。ドラマ2作品分の登場人物がたくさん登場するため群像劇っぽい雰囲気もあり面白かった。みんなそこにいたんだね。ずっと生きていたんだね。ありがとう。また逢えたら嬉しい。
私達は皆、多かれ少なかれシステムの一部として生きて、システムが無ければ生きていけない存在であると同時に、システムを動かす存在でもある。私達が止まれば都市は止まる。都市が止まれば私達もただでは済まない。都市に張り巡らされた交通網をうごく小さな光の粒としての私達、血流の一滴である私達の話をずっとしていた。
……でも個人的な好みとしてはもっとポリティカルでもよかったな~!
『ラストマイル』感想つづき(※ネタバレ有)
真犯人は、自分が死んで倉庫が止まるのならばそれでいい、他の爆弾は爆発しなくてもいい、そうであってくれと思っていたのではないか。ずっとスーツケースを持った姿で、どこかに移動していて、なにも分からないままだったのが悲しかった。「がらくた」の歌詞を聞いて余計悲しくなった。
人が死ぬまでやめられない、とは割とよく聞く言葉だけれど、ほんとうは、人が死んでも止まらない。誰かが交代でまわしていくだけだ。人手不足で悲鳴を上げる物流業界では、赤信号はもうずっと前から灯っているのに、誰もが見て見ぬふりをしている。まだいける、もうちょっと工夫すればまだやれる、根性が足りない。「爆弾」は今の日本社会が抱える問題そのものだ。きっとそのうち爆発する。誰も責任はとらない。なんとなく社会は続く。それがシステムだ。ラストシーン、「次」を託された梨本が不穏だった。
ちゃんとしたお仕事ドラマでもあって、物流に関わる人達や警察以外にも色々な職業のひとが出てきて楽しかった。爆弾職人のキャラクターがつくられていてよかった。暗黒都市の闇市の武器商人やっててほしい。なんだそれ。