『華竜の宮』上・下 上田早夕里

年始に読んだ『獣たちの海』がめっっちゃくちゃ良かったので流れるように同シリーズの長編へ。

地殻変動でほぼ全ての陸地が水没した25世紀の地球を舞台にした地球科学&終末SF。
環境変化に対応するため遺伝子操作で生み出された新人類「海上民」と、旧来の人類に相当する「陸上民」が生きる世界。新たな危機が迫る地球で、それぞれの政府や立場に悩み翻弄されながら奮闘する人々を描く。

『獣たちの海』のときはなんて叙情的に孤独の機微を捉える作家なんだ!というとこに感動したのだけど、こちらは世界観の作りや政治劇の駆け引きの構造がめちゃくちゃ骨太なことに唸る感じで、また違う雰囲気の面白さにびっくりした すごいな上田早夕里……何故今まで掠りもせずに来てしまったのか……

同シリーズでまだ1冊短編集と長編上下巻が残ってるらしいので、引き続き食べる予定!

『近畿地方のある場所について』 読了!

なんか謎の逆張り精神で気になりつつ読んでなかった……面白かった!
モキュメンタリーとネット発ホラーってやっぱ相性いいな~と満足しつつ、最近よく見るパターンな気もするな……感もやや。いやでもやっぱオカルト好きだなと改めて……ビジュアルつけられると怖いタイプなので巻末付録がいちばん怖かった……

『魚舟・獣舟』上田早夕里 読了!

先日読んだ短編集『獣たちの海』が良すぎたので、同世界観のシリーズすべて通しで読んでみようと購入。
表題作が後のシリーズ第1作にあたる読み切りで、その他の収録作品はそれとは別の独立短編。

異形を題材にしたホラーアンソロジーに寄稿された短編中心の構成。私としては内容的にはあんまり刺さらんな……という作品もあったのだけど、うわこの人"小説"うまっ…!という感じで超ぐいぐい読んでしまった(どこから目線の感想よって感じで申し訳ないけど)

中でも書き下ろしの『小鳥の墓』が良かった。(あまり好きな表現ではないが)いわゆる「人間同士のクソデカ感情」を浴びて背筋ゾクゾク。あとディストピアを描くのが上手すぎる。

結構久しぶりに「作家にハマった」感覚を得ている。出会えて嬉しいな~、長編読むのも楽しみ。

『アメリカン・ブッダ』 柴田勝家 読了!

なんかタイミング合わなくて年単位でずっと積んでたのをようやく消化できた。
作者の専門分野だという民俗学や文化人類学とSFを掛け合わせた短編集。SFってその性質上どうしても濃い自然科学の味付けになりがちだと思うけど、うわそうか人文科学風味のSFってアリなんだ!という驚き。私は初めての読後感だった……

どれも面白かったけど収録作の中だと表題作『アメリカン・ブッダ』がいちばん好みかな~……アメリカの歴史、仏教的な輪廻や解脱の話、肉体を捨てて精神データのみで生きるSF的世界観の融合がおもしろい。

『獣たちの海』 上田早有里

陸地の大半が水没した25世紀の世界で生きる人々を描いた中短編集。4本収録。

多分これ人によるんだろうけど、私は心の柔らかいところにめっっちゃ刺さってしまって全部の話でちょっとずつ泣いた。全編通して"孤独"や"愛"の描き方が好みだったんだと思う。普遍的で叙情的。
「狭義のヒト」ではない存在との交流がいくつも描かれていて、特に収録4作目の『カレイドスコープ・キッス』は珍しく主人公に移入しまくってしまった…… :ablobcatheartsqueeze:

一連の同世界観シリーズの中の短編集という位置づけらしいのだけど、そうと知らずに手に取った。これだけ読んでも全然楽しめたけど、とても良かったのでシリーズ通して読むつもり!どの話もじんわりと心に残る。

『文化がヒトを進化させた』

ということで科博行く前に読み返そうと思って最近ちまちま読んでた本。2周目だったけど大半の記憶を失ってたから新鮮な気持ちで読めたな(良いのか悪いのか……)

「ヒトは遺伝的に進化したから文化を操れるようになった」という一方向の進化ではなく、「ヒトは文化の進化に伴って遺伝的にも変化してきた」という双方向、両輪の人類進化論を唱える立場の1冊。

いろいろ引用したいところはあるけどキリがないくらいの情報量。あえて要旨と関係ないとこ引用すると、「言語野の発達した人はその代わりに顔認識を司る脳領域が犠牲になっていがち」らしいです。心当たりのあるみなさん、救われてください :ablobcheer:

かなり興味深いので人類史に興味ある方には是非読んで欲しい!

『変な家2』雨穴

雨穴氏の新刊読んだ!
えーーーーこれ読んだ人とラストについて語り合いたい……雨穴作品ぽくない終わり方(だと私は思った)ので、きちんと読んで推理すると更に真相ある系な気もするけど、違和感だけがあって全然目星がつかん感じ……
小説かと言われるとうーんだけど相変わらずエンタメぢから高くて一気に読んだ おもしれ~

『ひとりでチェコに行ったこと』 トモモ舎 / トム子

著者が大学4年生のときに初の海外旅行としてチェコに11日間行った際の旅行記録本。
綺麗な写真やかわいいイラストに癒されつつ全編通して頷きまくり。知らん国でのひとり、否応なくすべてのことを自分で何とかしなきゃいけないから、自分でもびっくりするような馬鹿力発揮することもあるし、逆に小心なとこに気づいたりもするよね……自分って意外とできるし意外とできんのよな……ワカル……🕺

全然知らない方の旅行記なのに、飲みながら友達の話聞いてるみたいな共感と親近感。楽しい本だった~


『進化生物学者、身近な生きものの起源をたどる』

夏に科博行って常設久しぶりに見てから自分の中でこのへん地味にアツくて、とはいえ自ら本探すほどではなく……くらいの感じで暮らしていたところ、たまたま本屋の店先で見つけて買った。今年10月発行の新刊~📖

一般向けの自然科学系の本、やっぱ新しいの読むと最新の話が書いてあったりしてそれだけでへ~ってなれて面白いね。
本としては話題が結構ぶつ切りだなと感じたんだけど、元はウェブ連載らしく納得。
個人的にはコウモリから見る繁殖戦略、"酸素欠乏時代"の進化、退化と中立進化、音楽の起源あたりのトピックスが興味深かったのでもっとたくさん読みたい~になった👀

進化、遠い未来を見据えて目標に向かって進んでいるわけではなく、その場を凌ぐためのやりくりととてつもない試行の連続なんだな~と改めて。
ロマンだし、それってなんとなく人生にも通じるところあるよねえ……(そう言っちゃうとスケール小さいけどさ)

『かばん 新人特集号 第8号』

私も10月から所属となった「かばんの会」で4年に1度行われる伝統、直近4年の間に入会した新人全員が30首の連作に挑戦する特集号。の、いちばん新しいやつ。

私は正直これまであまり真面目に短歌に取り組んできたわけではないので、何十首単位での連作というと「○○賞受賞作」をちらっと読む程度しか経験がなかった。
となると当然「私にはできそうもない遠い世界の"ガチ勢"の話」みたいな感覚だったのだけど、新人特集号という形だと感覚的にかなり身近。「ナントカ受賞作」ではないからこそあーこれ悩みながら作ってるなというのが見える部分もあり、素直にスゲーーーな部分もあり、私だったらここはこうしたいな、みたいなことを思う部分もあり。

よくわかんない山の頂上の話ではなく、実際に先を登る先輩の後ろ姿はとても頼もしくて刺激になる。今め~っちゃ30首連作作ってみたい。月々の8首すらまだ首傾げながらやってるから、実際にはまだ厳しいだろうけど…… :blobcateyesblush:

『これより先には入れません』谷川俊太郎、木下龍也

もはや説明不要の大御所と新進気鋭の若手歌人という取り合わせで、互いが交互に数行の短い作品を書き継ぎ、対詩形式でひとつの作品を綴る。
本の後半は木下さんが谷川さんとの対戦(ではないのだけど)を1作品ずつ振り返る「ひとり感想戦」で、谷川さんの詩にどう打ち返すか毎度悩む姿が垣間見れて読み物としても面白かった。
短歌があまりお好きではないという谷川さんが過去に詠まれた短歌が折り込み冊子として入っているのも貴重。

あまりよい感想ではない気がするのだけど、"あの"谷川俊太郎が自分と同世代の歌人とこういう新作を世に出してくれる時代に生まれたことの凄みよ……みたいなことを改めて感じる一冊だったなと。

お下がりのことばはいつもぶかぶかでけれどときおり僕の帆になる / 木下龍也

刻々に変化する表情は顔の隠れ蓑
寝顔は束の間闇から生まれる朝顔の花 / 谷川俊太郎

『台南後巷探索~眷村と日本統治時代の建築を訪ねて~』鉄窓花書房

(詳しくはないものの)近代たてものラブの私がスルーできるはずもなく……。
コロナ禍前の台南で撮られた数々の歴史建造物が紹介されたフルカラー本。垂涎すぎ。

眷村とは、WW2終戦後の日本軍撤退以降、中国大陸から台湾に移住した軍関係者が住んでいた地区の総称。
建物は雄弁な歴史の証人。日本に生まれたひとりとして、そして今を生きるひとりとして、諸々に思いを馳せながら統治の歴史が何層にも重なる台湾という地で近代建築を訪ねることは私もいつかしてみたい……ていうか、この本読んで改めて思ったけどしたかったらさっさとしなきゃだね。老朽化進んでる+コロナ禍で諸々だいぶ過渡期かもしれん。

っていう話を仮に置いたとしてもたてもの好きすぎるので見たい行きたい~!が極限まで高まる本でした。本の中に身体つっこみたいくらいだった。
本編もだけど、個人的には巻末で紹介されてた台南のオススメ宿がありがたすぎた。次に台湾行く時は台南だー!

『絶島 Ⅲ』

好きな歌人ばかりの短歌同人。第三号はあの東直子さんがゲスト(!)ということもあり、必ず手にしたかった1冊でした。

全編通してやっぱクオリティ高いなあ……ッと唸る。ひとりひとりに個性はもちろんあるのだけど、音楽性のベクトルが似てる(揃えてる?)感じがするから1冊の本としてきちんと統一感がある。そういうメンバーで集まれるの、凄くいいなあぁ……!

図書館の口にひやりとふふまれてわたしはずつと焼け野原だつた / 森山緋紗

いつものが置いていなくて買ったのは空がきれいな牛乳だった / 榎本ユミ

がらくたと呼ばれるときも来るだらう性器の価値を花器とするなら / 朧

天気雨 きのうの嘘をひとつだけ正せるとして かみさまの死語 / 早月くら

『考えるほどにおもしろい教養としてのお冷』つるたちかこ

お冷についての本(お冷についての本??)
喫茶店のお冷、ラーメン店のお冷、チェーン店のお冷……と、店ジャンルごとにまとめられた「お冷あるある」が面白い。これまでそんな目で見てなかったけど、確かにそうだわ~!という再発見に満ちた1冊。
帰りに立ち寄った喫茶店で読んだのだけど、手元のお冷見て「ほんとだ……!」と唸るなど笑

シンプルなモノクロ中綴じ製本にニッチな内容がギュッと詰まってる感じ、即売会でのいい出会い~!感に溢れてて良きです。
売り子さん(ご本人さんかな?)が誤植が多いことを気にされていたのだけど、個人的にはそこ含めて味があってよかったです。

『回転寿司×AI味覚判定 一番旨い寿司は何なのか?』/ 食べ方学会

回らないお寿司屋さんでも提供されるネタ『正規軍』(まぐろ、アナゴ、えび、いくら等)と、基本的には回転寿司でしか提供されないネタ『革命軍』(サーモン、ツナ、コーン、ハンバーグ等)がAI味覚センサーでガチンコ勝負!

面白かったwwし、めちゃくちゃ真面目に計測されていて脱帽。
AIセンサーが高得点出すクセみたいな話も垣間見れて面白い。味覚にもトレンドがあるから仮に20年前の日本人の味覚が基準だったらまたAIは違うこと言うかも……?という示唆も興味深く拝読した。何より回転寿司行きたくなっちゃったな……🍣

もう少し易しいところから取っ付きたい、という方にはこちらがかなりオススメです。
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『ちいさい言語学者の冒険』

子供はよく言い間違える。車を指してワンワン、ブロッコリーはブッコロリ、死ぬ?は死む?と活用される――
あら可愛い、と微笑んでしまいたくなるこれらのよくある言い間違い、実は言語学的にめちゃくちゃ理にかなっているのだ!

子どもたちは、言わばなんの取っ掛りもなく初見の民族の言語を学習する言語学者。ことばを自分なりに定義して、過去の知識から推測して、運用して、その結果として間違える。でも実は、"正しい"のは彼らの可能性だってあるのだ――

例として散りばめられた可愛い言い間違いにニッコリしながら、ハッとしたり考えさせられたり。言語学の入口、まさに第1歩目として最適な「ぼうけんのしょ」!

さっきまでしてた話とは直接関係ないのだけど、今年バズってた『言語の本質』 はやはりよかったので読書記録を別所からサルベージ。
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『言語の本質』読了!

いろいろ興味深いところあったけど、「記号接地問題」というのを初めて知ったのと「アブダクション推論をするのはヒトのみである」から言語に切り込む考察が特に面白かった。

たとえばいちごとりんごの味の違いをAIは流暢に説明するかもしれないけど、それは意味を「わかっている」と言えるのか?子どもはそれをうまく説明できないかもしれないけど、それは違いを「わかっていない」ことになってしまうのか?……
この本が取るのは、言語を身につける第一歩目は身体に接地している必要があるという立場。読み進めるとうーん確かに……?
結局言語はどれほど進化しても、人間が主たる使い手である限り、身体の"ない"ものが使いこなせる記号にはならない(なれない)のかもしれない。

今日こそ早寝するつもりだったのに結末気になって最後一気に読み切ってしまった~~

『自由研究には向かない殺人』読了!

イギリス発のヤングアダルト向け(で合ってるのかな?)推理小説。

高校生のピップは、5年前自分の住む町で起きた殺人事件の犯人に納得していない。そこで"自由研究"を口実に、事件の再調査を始める。しかし調査を進めるにつれ、身近な人物が次々に容疑者として浮かび上がってきてしまい――?

「地方の小さな町を舞台にしたマーダー・ミステリー」、どうしても狭く閉じたコミュニティの閉塞感がついてまわるので暗い雰囲気になりがちだと思うのだけど、これは超爽やかな作風だった!
内容は結構重いんだけど、ピップがネアカというか、終始フェアで真摯なキャラ造形だからかなあ。こいつならなんとかしてくれそうぢからが強かった。無鉄砲すぎてハラハラする場面も多いけど、逆にそれでグイグイ読んじゃう感。

翻訳文も綺麗、軽めで取っつきやすい。
超オススメ!ってほどではないけど、出てる続編は続けて読むの確定くらいのおもしろさ。軽めの翻訳ミステリ読みたい機運の人、是非!
※犬が死にます

Fedibird

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