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『獣たちの海』 上田早有里

陸地の大半が水没した25世紀の世界で生きる人々を描いた中短編集。4本収録。

多分これ人によるんだろうけど、私は心の柔らかいところにめっっちゃ刺さってしまって全部の話でちょっとずつ泣いた。全編通して"孤独"や"愛"の描き方が好みだったんだと思う。普遍的で叙情的。
「狭義のヒト」ではない存在との交流がいくつも描かれていて、特に収録4作目の『カレイドスコープ・キッス』は珍しく主人公に移入しまくってしまった…… :ablobcatheartsqueeze:

一連の同世界観シリーズの中の短編集という位置づけらしいのだけど、そうと知らずに手に取った。これだけ読んでも全然楽しめたけど、とても良かったのでシリーズ通して読むつもり!どの話もじんわりと心に残る。

主人公に移入してしまったいくつかの箇所をそっと引用(ネタバレはないと思うけど一応注意) 

「世界の終わりを見るときはひとりでいたい。誰かと一緒だと、余計に悲しくなりそうな気がする」
「そういうものかね」
「他のみんなは違うのかな。やっぱり誰かと手を取り合って、世界が終わるところを見たいのかな。私だけが変?」
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「子供を産む機能を捨てても、まだお互いの接触行為が必要なの?コミュニケーション手段として?」
「そうだよ」
「めんどくさい!昔ながらの接触式愛情確認行動なんて!もっとスマートな方法はないの?電脳で繋がって、お互いの精神だけを愛でるとか」
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「世界一孤独な者が、誰もがうっとりする永遠の愛と美を描き出すこともあるのだ。わかるな?」
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苦しくなってきた。苦しいと感じることを自分で嫌悪した。どれほど目の前の映像にショックを受けても、死ぬのは自分じゃない。獣舟たちだ。悲鳴を聞き取れても、私はその意味を理解できない。
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「あなたにボディがないことを、生まれて初めて悔しいと思う。こんなときには、しっかりと抱きしめてから行きたかった」
「気にするな。私にとっては言葉が全てだ。君の言葉そのものが、私という存在を抱きしめるのだ。それは人間同士の抱擁と同じだ」

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