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でも、ほかの演者も好きな人がたくさんでとてもよかったのだー。

奈みほさん、DV亭主とか、お花畑の平和主義とか、現代的なくすぐりを入れつつ、それが全然浮いた感じがなく、本当に面白い。声ものびやか。がんばれ。

志乃ぶさん、若手の中ではとくに応援している。甲高くない声と、節回しと、女賭博師みたいな風貌と、ソウルを感じる唸りがいいなあ。

綾那さん、久しぶりだけど、この人はやっぱり気になる。ハスキーなアルトの声。強い目力。ありありと浮かぶ場面描写。今度独演会に行ってみたい。

恵子さんは初めて。かなりご高齢。落語でもよく聞く千両みかんだけど、この若旦那がいかに乳母日傘で大事に大事に溺愛されて育ったか、という部分を丁寧にやったので、そのあとの展開への納得が大きい。落語もこういうやり方すればいいのに。

一太郎さん、魚の「このしろ」が「腹切魚(ふくせつぎょ)」と呼ばれて武士に嫌われていたとは知らなかった。

安久鯉さんはやっぱりいいなぁ。語りは繊細だけど、なんかお人柄に豪快なところがありそうで、なつきたくなる。

琴美さんは風邪で声の調子が悪そうだった。

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たーへるあなとよこは、11歳から曲師だった豊子師匠の来し方を浪曲で綴ったもの。自分の人生を語る浪曲に、自分がベベーンなんて三味線を入れるわけだから、考えてみたらこんな面白おかしいことはない。豊子師匠の人生もすごいけど、それはすなわち、過去76年の浪曲の歴史でもあり、いろいろな流行を見た特徴的な節をたどる変遷とそのミニ講座でもある。後半は奈々福さんと豊子師匠の様々なエピソードを通し、ふたりの絆の強さ・温かさが浮き彫りになった。(あとね、浪曲師だった豊子師匠のお父さんが、声の良さを仲間にねたまれてお茶に水銀を入れられ(!)、声が出なくなった、当時はそういうことがよくあった、というくだりに館内どよめくくだりもあり^^)

豊子師匠は終始涙ぐみ、時おり完全に手を止めて奈々福さんの語りに聞き入っては、促されてまた三味線を弾く。力強く美しい音。つややかな掛け声。だってまだまだ全然現役だからね。でも、みなに支えられて床几をようやく降りた姿は年齢なりの小柄な女性。でも、元気なうちはまだまだ続けるって。最後は館内全員でハッピーバースデーを歌い、お弟子さんたちほかが花やケーキをもって現れ、にぎやかに閉幕。この日に行ったのは大正解!

浪曲は女性と高齢者が生き生き活躍しているからいいね(もちろん若手もたくさんだけどね)!

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【木馬亭二月定席初日】2024年2月1日(木)12:15~16:10

今日は曲師・沢村豊子師匠の数え米寿のお祝い公演(本当は先月に予定されていたが豊子師匠がインフルエンザで延期)とあって、木馬亭の前にはいくつも花が出て、館内も平日にもかかわらずほぼ満席の熱気。演者はそれぞれが豊子師匠への思いやお祝いの言葉をマクラに口演を務めていき、本日の目玉であるトリの奈々福さんの新作「沢村豊子解体新書 たーへるあなとよこ」は幾重にも工夫の凝らされた、愛溢れる(でもよく考えたら可笑しいったらない)素晴らしい一席だった。

奈みほ・豊子「松山鏡」
志乃ぶ・美「みみず医者」
綾那・博喜「貝賀弥左衛門」
恵子・貴美江「千両みかん」
~仲入り~
一太郎・美「大高源吾 腹切魚の別れ」
講談 安久鯉「水戸黄門記 出世の高松」
琴美・貴美江「燃える絆」
奈々福・豊子「沢村豊子解体新書 たーへるあなとよこ」

勝千代さん、芝浜の革財布をやります、と最初に宣言したとき、思わずサイレント拍手をしてしまった。12月と1月にしかできないから、とおっしゃっていたけど、その2か月でわたしは今日を含めて4回聴けた。嬉しい。勝千代さんしかやらない演目みたいだしね。これでまた12月までお預け。今日はやや短いバージョンだったけど、尋常とは思えない唯一無二の節と圧倒的な声はいつもと変わらず。素晴らしかった。最後に即興の節に乗せて、観客の一年を寿ぐような言葉をうたったのもよかったなー。

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小ゆきさんのは、故郷である熊本の山鹿に実際にあった話を浪曲化した新作。これ、すごーーーくいい話だった。名作だと思う。大正時代の初め、地元で有名な腕利きの木工職人の木村兄弟。何でもつくりたがる兄が目をつけたのは、まだアメリカから輸入するしかなかったピアノ。ピアノを作ることで、山鹿の物作りの意地と魂を日本中にとどろかせたいと、地元の名士を説得し、やがて後ろ盾を得て日本初のピアノを数十台製作するも、戦争が始まり、金属の材料にするとしてすべてのピアノが徴発されてしまった……かに思えたが……戦後、とある公民館に、由来も知れぬ古いピアノがたった一台、古びた音を響かせていた……というところで終わる。じーんとしたよ、これは。

あと、前半、地元のお嬢様が弾くトルコ行進曲、という設定で、小ゆきさんと曲師の貴美江師匠が阿佐ヶ谷姉妹ばりのティアララルン♪を披露したのはすごかった。ハーモニーばっちり。そういえば、前は歓喜の歌を二人でドイツ語で歌ってたっけ。歌える曲師、只者にあらじ。

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【浪曲広小路亭 新春特別公演】2024年1月28日(日)13:00~15:20

き太・鈴「寛永三馬術 愛宕山梅花の誉れ」
小ゆき・貴美江「木村のピアノ」
~仲入り~
口上・三本締め
勝千代・鈴「芝浜の黒財布」
順子・貴美江「糸車」(山本周五郎原作)

演者のみなさん、定席では言うに言えなかった「あけましておめでとう」の言葉をようやく今日言える、と口々に。そうだよね、地震と航空機事故の2連発はApocalypse Nowという感じだったもん。今日も震度4の地震があったりして、しみじみ日本は危ない国だなと思うけど、それを浪曲で吹きとばしてもらった感。聴きごたえのあるとてもいい会だった。


昨日は木村勝千代さんのかつちよかい@ア・ビアントへ。コーヒーの香漂うアットホームな雰囲気の中、愉快痛快な安兵衛道場破りで大笑いし、ドラマチックな芝浜の革財布に聴き入った。芝浜、また聴けて嬉しい。ただでさえ凄い節が一層細やかな気がして、どうすればこんなに自在に声を操れるのかと感嘆。

もう語彙が全然足りないので、とにかく騙されたと思っていっぺん聴いてみてー!と叫びたい。勝千代さんの演じる女房は、芯があってシャキッとしてるけどとっても可愛い。「だってばさ」のセリフと、「白川夜船~♪」のところがとくに好き。お誕生日のまみさんも速弾きカッコよかった🎂


木村勝千代独演会@アートスペース兜座へ。「長短槍試合」と「鬼の涙」。とても楽しい2席だった。圧倒される生声の迫力と、コミカルな楽しさ可愛さ。かと思えば、細やかな感情がひたひたと押し寄せてきてハンカチの出番がやってくる。小さな空間で、こんな贅沢いいのかしらんと、いつも思う素敵な会だ😺(お仕事佳境につき簡易レポ)

奈々福さん、今日もすべて持っていった。きのう木馬亭の講談で聴いて、「この噺好きじゃない」と思ったばかりの「愛宕山梅花の誉れ」。なのに、とても同じ噺とは思えない、これってこんなに面白い話だったの?もしかしてわたしはこの噺じゃなくてきのうの講談師が好きじゃないだけだったのか、と思うほどの大盛り上がりの一席だった。奈々福さんの発散するオーラは、客をみんな乗せてくるくる巻き込む。現代的なくすぐりを入れつつも、圧倒的な声と節の迫力で聴かせる。やっぱり段違いにすごい人だ。
それに特筆すべきは美舟さんの三味線。馬が階段を上がる音、止まる音、階段から落ちる音、三味線ってこんな音が出るんだというのをドンピシャのタイミングで息ぴったりに決めてみせる。人馬一体の噺だけれど、浪曲師と三味線の一体感も尋常ではなく、それが客席とも一体化して、何が何でも楽しくなるものすごい空気になる。終わったあとに飛んだ掛け声の分厚さが観客の満足感をすべて表していたと思う。

最後の手拭い撒き、美舟さんか志乃ぶさんのが欲しかったけど隣りの男性に取られた。ちっ。

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すみれさん、江戸時代の武家の女性に生まれなくてよかったと思うような悲劇。現代人には心情を理解するのが難しいね。細やかな節は丁寧だけれども、もっと自然なグルーブ感が出てきたら本当にすごい人になりそう。

太福さん、人気があって落語家さんとの二人会なども多いけど、女流びいきで声節重視の初心者のわたしにはそれほど響かない。面白いとは思うのだけれど、噺家さんが節も唸ってみました、みたいな感じに思えてしまう。あくまで初心者の放言。

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【新春なかの浪曲大会・夜の部】2024年1月8日(月)18:00~20:45

若手と中堅による会。普段木馬亭で言えないことをマクラで熱く語ったり、テーブル掛け交換の場面をあえて幕を閉じずにコント仕立てにしてわちゃわちゃ見せる演出があったり、くつろいだ愉快な雰囲気ながらも若いエネルギーが輝くようなすごく楽しい会だった。今回が初開催とのことだが、第2回もぜひ。

綾・美舟「楽屋草履」
志乃ぶ・理緒「赤城おろし」
すみれ・理緒「元禄忠臣蔵 琴の爪」
~仲入り~
太福・みね子「阿武松」
奈々福・美舟「寛永三馬術 愛宕山梅花の誉れ」

綾さん、市川團十郎に似ているというのが持ちネタなんだけど、それを言うのは日頃師匠から止められているらしく、でもなんとか客から「成田屋!」の掛け声をもらいたくての婉曲なあの手この手が楽しい。本当にいいキャラクターで場を盛り上げる。噺のほうも芝居物がよく合っていて、聴くたびお上手に。

志乃ぶさん、こういっちゃなんだが風貌が女賭博師みたいな感じなので、任侠物が本当に良く似合う。啖呵の部分が素晴らしくぐいぐい引き込まれた。節も良いし、もっとお上手になると思う。声もキンキンしたソプラノじゃないのが好み。やっぱり新人の中では私的期待の星。

成人式とか振袖とかって、そんなに大事なものなのかな。一生に一度、とかいって。理解が難しいが、重きを置く人がいるという事実は認識している。わたしは振袖には何の興味もなかったし、式で地元の同級生と会うなんてまっぴらごめんだったし、conventionalなものへの反抗意識も手伝って、成人式参加は断固拒否して奈良の若草山の山焼きを見に行った。これだって一生に一度だけどね。

講談のこの噺ははっきり言って好きではない。馬が可哀そう。それに加えて、琴調さんの滑舌があまりよくないというか聞きにくい感があって、後半ぼーっとしてしまった。

勝千代さん、今日はトリ前の「モタレ」という立場から、軽く楽しい一席を。先日の上野原の独演会でも披露した姥捨て山。でもやっぱり声と節はすごいなあ。あと、噺のとおり60歳以上は山に捨てられちゃうとすると、わたしも含めて会場のほとんどの人が捨てられちゃう感じだったので、ラストの救いがありがたかった(^^)。

トリは奈々福さん。やっぱりこの人は段違いの桁違い。空気をガラリと変える。初心者ながら、いまの浪曲会のトップを走るのはやっぱりこの人だなと思う。声すごい、節すごい、そしてエンターテイナーぶりをいかんなく発揮する啖呵も聞かせる聞かせる。一瞬たりともゆるむことなく客全体を引きつけまくり、会場中を巻き込んでぐるぐる渦ができるかのよう。誰よりもたくさんの掛け声を集め、一席終わったあとに客席から飛んだ「日本一!大正解!」の怒涛の掛け声のすごかったことったら! これぞトリ、を見せつけた一席だった。終わりよければさらによしの大満足。

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前座の奈みほさん、声がのびやか、一生懸命。人柄よさそう。好感持てる。頑張れ。

すみれさん、年明けして一年とは思えない堂々感と、しっかりした音程、細やかな節。上手。

小そめさん、この顔ぶれの中に入るとちょっと声と節では見劣りしちゃったかなぁという感じだけれど、啖呵(語り)では状況を生き生きと描いていたと思う。

はる乃さん、この噺は二度目だけど、いやもう楽しい。弾けるリズムにノリノリ感、客も曲師も自分自身もぐんぐんのせて、随所に余裕のくすぐり入れたりもして。声と節の素晴らしさはいつものとおり。恐るべし最年少浪曲師。絶対にハズレがない。

菊春さん、断然女流びいきのわたしだけど、この噺はちょっと佇まいがかっこよかったなぁ。とくに後半の試合の場面は、なんともいえない雰囲気をかもしだしていて、これは習得して得られるものではなく、本人のもってうまれた魅力なのだろう。中盤からずっと速い展開だったけど、美舟さんの三味線がまた見事だった。

獅子舞は、落語の寄席で見るより長くたっぷり。途中、獅子がネコ科動物っぷりを発揮して、ごろごろしたり、顔を洗ったり、耳を掻いたりするさまがなんとも可愛かった。

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2024年1月7日(日) 木馬亭正月定席の千穐楽へ。本来なら、今年で数え米寿を迎える現役曲師・豊子師匠のお祝い興行になるはずだったのだが、なんとご本人がインフル感染でお祝いは2/1に持ち越し。それでも、豊子師匠の6人の弟子のうち5人の曲師が勢ぞろいし、豊子師匠にお世話になった浪曲師がタッグを組むという素晴らしい公演となった。

臨時のパイプ椅子が通路にまでずらりと並ぶ、見たことのないほどの超大入り満員。素晴らしい顔付け、冷房入れるほどの熱気、いつも以上に分厚く飛びかう「待ってました!/たっぷり!/名調子!/日本一!/大正解!」の掛け声、獅子舞にミニ太神楽と、お正月らしい格別感が満載だった。あー楽しかったー!

奈みほ・まみ「不破数衛門の芝居見物」
すみれ・理緒「織田家士官」
小そめ・博喜「大石妻子別れ」
はる乃・道世「水戸黄門漫遊記 散財競争」
菊春・美舟「姿三四郎恋暦」
~仲入り~
獅子舞+ミニ太神楽
講談 琴調「寛永三馬術 愛宕山梅花の誉れ」
勝千代・まみ「秋山の民話 姥捨て山」
奈々福・美舟「甚五郎旅日記 掛川宿」

講談 阿久鯉「義士銘々伝 赤垣源兵衛徳利の別れ」
この話は安久鯉さんで一度、奈々福さんで一度聴いたことがある。しみじみした情感みなぎるいい話だなあこれも。昭和な日本人の心情にドンピシャくるね。討ち入りを肯定するつもりにはなれないけれどもね。安久鯉さんの語りがまたね、本当にどうしてこんなに引き込むんだろうか。しみじみと、でもドラマチックに聴かせに聴かせてくれた。とてもよかった。

そして最後に爆弾発表! 来年以降もこの2人で続けていきたいと抱負を語ったあとで、安久鯉さんからなんと、「次回はてんちかいをやりたい」と。転地会と書くのかな。天地会かな。ともあれ、それは互いに相手のジャンルで演じる、つまり奈々福さんが講談を、そして安久鯉さんが浪曲を!!! 場内のどよめきったらなかった(^^)。奈々福さんの講談はまあ想像がつく。でも浪曲は節があるし、節と啖呵を組みあわせないといけないし、曲師さんという存在もある。こちらのほうがハードルが高いように思うんだけど、どうだろう。発案者は安久鯉さんらしいから、浪曲をやってみたかったのかもしれないし、喉に自信があるのかもしれない。ともあれ、ただでさえ楽しみなこの二人の顔合わせの楽しみが倍増した。2回目以降も絶対に行く!

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そうだ、慶安太平記は勝千代さんの十八番でもあるのだけど、一番最初の「善達箱根山」しか聴いたことがないので、いつか通しで聴きたいなあ。

浪曲 奈々福「ものくさ太郎」
これは今年の3月、「玉川奈々福 喬太郎アニさんにふられたいっ!vol.1」で、キョン師から振られた「民話」というお題でつくった創作。たまたま、浪曲に興味を持ち始めたばかりのわたしはこの会に行っていたので、ネタ下ろしに立ち会った。それがその後練り上げられて見事な一席になっていた。いやーもう、楽しい楽しい。どう表現したらいいのか。民話の荒唐無稽な筋書きと、奈々福さんの見事な唸りとプロデュース力とエンタメ精神が融合して爆発した何度でも聴きたい一席だ、これ。

いつも思うんだけど、奈々福さんは本当に浪曲界の喬太郎と呼ぶべき存在だなぁ。古典も新作もいけるというだけでなく、浪曲というジャンルを超えた、誰をも取り込む力があるというか。かといって、浪曲というフォーマットを借りて面白いことをやっている、というのではない。浪曲だけで一流なんだけど、そこに何かがあって、パフォーマンスが一大エンターテインメントになる。それは何なのか。頭の良さなのか編集能力なのかプロデュース力なのかその全部なのか、組み立て方が巧みで一瞬も気をそらさない。いや、すごい人だ。

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【阿久鯉・奈々福二人会】2023年12月25日(月)18:00-20:40@上野広小路亭

ジャンルは違えど芸歴も年齢も近いという2人。館内は大入り大盛況。その満員の観客を魅了する凄い会だった。なんという聴き応え。ぐーっと糸をたぐるような引力で吸い込む講談と、わっと発散する熱い空気に客を乗せて包む浪曲。阿久鯉さんのドラマチックな語りと、奈々福さんのエンターテイナーぶり。2つの魅力がぎゅうぎゅう詰めのがっぷり四つ。これが2500円でいいの?

開口一番 落語 幸路「転失気」
講談 阿久鯉「慶安太平記 前半ダイジェスト」
浪曲 奈々福「慶安太平記 善達三島宿」
~仲入り~
浪曲 奈々福「ものくさ太郎」
講談 阿久鯉「義士銘々伝 赤垣源兵衛徳利の別れ」
曲師:沢村まみ

仲入り前は「慶安太平記」を俥読みの趣向。浪曲ではときどきあるそうだが、講談+浪曲の俥読みは珍しいとのこと。前半では京都までの道筋を安久鯉さんが駆け足で。もうね、引き込む引き込むあの話術。すごいなあ。そして奈々福さんは後半の山場のひとつ「善達三島宿」を。浪曲は噺に華やかさとドラマチックさを加えてくれるなあ。奈々福さんの声量と節のすばらしさ。啖呵(語り)の面白さ。前半ですでにご馳走たっぷり感。

勝千代「芝浜の革財布」
今月初めに木馬亭で聴いてあまりに素晴らしかったので、もう一度聞きたいと思ったのが今回の遠征の一番の目的。今回はフルバージョンということで、木馬亭ではやらなかった、そして落語の芝浜では聴いたことのない部分が含まれて興味深かった。ああいう型、落語にもあるのかな。誰かに聞いてみよう。これも本当に素敵な一席なんだけど、わたしがとくに好きなのは、本筋とは関係ない箇所。亭主が酒を飲んで寝てしまったあとに、「白河を渡る夜の船~」と歌うところ。なんかねえ、とてつもなくいいんだなあ、そこが。説明不能。

ともあれ、上野原は意外と近いことがわかったし、また上野原で会があるときはためらわずに行くことにする。

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勝千代「甲州一揆 犬目の兵助」
天保の飢饉の際に、民を助けたい一心で役人への請願を決めた兵助。非暴力の運動はいつしか暴力的な打ち壊しへと発展。手に負えなくなった兵助は逃亡し、流浪の民として辛酸をなめる。この知られざる史実をもとに、構想7年で勝千代さんがつくりあげた新作浪曲。平時ならば知識人として地元の信望を集めたであろう兵助の激動の運命が描かれて面白かった。こういうのつくれるのって、才能だよなあ。兵助と行動をともにしていた治左衛門が、まだ若い兵助の命を助けるために逃亡を命じ「行けーー!!」と叫ぶところで鳥肌立ったよね、みんな。

勝千代「秋山の民話 姥捨山」
地元の学校が主体になって行っている民話の収集活動。そこからのひとつの話を勝千代さんが浪曲化。ほのぼのと楽しい一席。こういう可愛くてコミカルなやつも本当にうまいんだよね。

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