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【木馬亭二月定席初日】2024年2月1日(木)12:15~16:10

今日は曲師・沢村豊子師匠の数え米寿のお祝い公演(本当は先月に予定されていたが豊子師匠がインフルエンザで延期)とあって、木馬亭の前にはいくつも花が出て、館内も平日にもかかわらずほぼ満席の熱気。演者はそれぞれが豊子師匠への思いやお祝いの言葉をマクラに口演を務めていき、本日の目玉であるトリの奈々福さんの新作「沢村豊子解体新書 たーへるあなとよこ」は幾重にも工夫の凝らされた、愛溢れる(でもよく考えたら可笑しいったらない)素晴らしい一席だった。

奈みほ・豊子「松山鏡」
志乃ぶ・美「みみず医者」
綾那・博喜「貝賀弥左衛門」
恵子・貴美江「千両みかん」
~仲入り~
一太郎・美「大高源吾 腹切魚の別れ」
講談 安久鯉「水戸黄門記 出世の高松」
琴美・貴美江「燃える絆」
奈々福・豊子「沢村豊子解体新書 たーへるあなとよこ」

たーへるあなとよこは、11歳から曲師だった豊子師匠の来し方を浪曲で綴ったもの。自分の人生を語る浪曲に、自分がベベーンなんて三味線を入れるわけだから、考えてみたらこんな面白おかしいことはない。豊子師匠の人生もすごいけど、それはすなわち、過去76年の浪曲の歴史でもあり、いろいろな流行を見た特徴的な節をたどる変遷とそのミニ講座でもある。後半は奈々福さんと豊子師匠の様々なエピソードを通し、ふたりの絆の強さ・温かさが浮き彫りになった。(あとね、浪曲師だった豊子師匠のお父さんが、声の良さを仲間にねたまれてお茶に水銀を入れられ(!)、声が出なくなった、当時はそういうことがよくあった、というくだりに館内どよめくくだりもあり^^)

豊子師匠は終始涙ぐみ、時おり完全に手を止めて奈々福さんの語りに聞き入っては、促されてまた三味線を弾く。力強く美しい音。つややかな掛け声。だってまだまだ全然現役だからね。でも、みなに支えられて床几をようやく降りた姿は年齢なりの小柄な女性。でも、元気なうちはまだまだ続けるって。最後は館内全員でハッピーバースデーを歌い、お弟子さんたちほかが花やケーキをもって現れ、にぎやかに閉幕。この日に行ったのは大正解!

浪曲は女性と高齢者が生き生き活躍しているからいいね(もちろん若手もたくさんだけどね)!

でも、ほかの演者も好きな人がたくさんでとてもよかったのだー。

奈みほさん、DV亭主とか、お花畑の平和主義とか、現代的なくすぐりを入れつつ、それが全然浮いた感じがなく、本当に面白い。声ものびやか。がんばれ。

志乃ぶさん、若手の中ではとくに応援している。甲高くない声と、節回しと、女賭博師みたいな風貌と、ソウルを感じる唸りがいいなあ。

綾那さん、久しぶりだけど、この人はやっぱり気になる。ハスキーなアルトの声。強い目力。ありありと浮かぶ場面描写。今度独演会に行ってみたい。

恵子さんは初めて。かなりご高齢。落語でもよく聞く千両みかんだけど、この若旦那がいかに乳母日傘で大事に大事に溺愛されて育ったか、という部分を丁寧にやったので、そのあとの展開への納得が大きい。落語もこういうやり方すればいいのに。

一太郎さん、魚の「このしろ」が「腹切魚(ふくせつぎょ)」と呼ばれて武士に嫌われていたとは知らなかった。

安久鯉さんはやっぱりいいなぁ。語りは繊細だけど、なんかお人柄に豪快なところがありそうで、なつきたくなる。

琴美さんは風邪で声の調子が悪そうだった。

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