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【東家三楽一門会 千春・志乃ぶ年季明け披露興行】2023年11月26日(日)13:00~16:15@浅草木馬亭

三可子(秀勇)「双葉山」
実子(けい子)「花の若武者 那須の与一」
雲月(ちぐさ)「徳川家康 人質から成長の巻」
雲月・三楽・千春・志乃ぶ・実子(司会)「口上」
~仲入り~
三楽(秀敏)「権太栗毛」
志乃ぶ(秀敏)「葛の葉」
千春(秀敏)「陸奥間違い」

浪曲の披露興行を観るのは初めて。駆け出しファンだけど、目出度い場に行ってみたかった。で、行ってほんとによかった。晴れがましさと緊張と、見守る師匠・姉弟子・客席の温かさ。札止めの超大入りで狭い通路に臨時の椅子が並べられる大盛況。あんな混んだ木馬亭は初めて見た。凄い熱気(外は寒いのに名物アイスモナカがよく売れる)。口上と三本締め。決意のまなじり。これを経験したら、当人たちはいやでも頑張ると思うし、立ち会った私たちも絶対に応援するぞ、となる。

2人の師匠の三楽は日本浪曲協会の会長でもあり、弟子に5人の女流浪曲師をもつ。今日も舞台の上は曲師の秀敏師匠以外は全員女性。華やかだし、ここが個人的に浪曲の好きなところのひとつかな。マチズモ感がない、っていうか。三楽師匠の口演は初めて聴いたが、朴訥として味わい深かった。


【木村勝千代独演会】2023年11月18日(土)14:00~15:40

勝千代「鉢かつぎ姫」
トーク 勝千代&杉江松恋
~仲入り~
勝千代「武田信玄」(芝清之作)

今日来なかった人は損したよね、と終わりに勝千代さんがおっしゃっていたけど、まったくその通り。二席目の「武田信玄」はほんとに、ほんとに、勝千代&美舟コンビがほんとにすごかった。聴けてよかったー。

勝千代「鉢かつぎ姫」
御伽草子の物語から勝千代さんが浪曲化した一席。じつはわたしはまったくあらすじを知らなかった(恥)のだけれど、コメディタッチも加えて楽しい一席に。でも、鉢かつぎが一度死のうとして死にきれず、風呂焚きに身を落として、白魚のようだった指が働く女の指になっても、「生きていればこそ花が咲く」と歌い上げて前を向くところは涙腺決壊した。節が本当に細やかで美しくて。でもって、あの声量。圧倒的な力強さ。

トークの最中、勝千代さんの大ファンのおじいさんが(たぶん耳が悪くてトークの内容が聞こえなかったせいもあるかと思うのだが)、トーク無視して質問したり、賛辞を連ねたり勝千代愛を披歴したり、はてはご祝儀まで手渡ししたのは微笑ましかった。

東家孝太郎「入れ札」(菊池寛原作)
これも先月だったかに木馬亭で聴いたばかりだったけど、やはりじっくり聴けてよさがきわだった。あの地の底から湧いてくるようなダミ声はすごいよなあ。のどが痛くならないんだろうか。今回はとくに、忠治と離れることになる老いた侠客の悲哀と、そのふたりを秋の野原の風が吹きすぎていくラストの場面がなるほど文学的で切なく心に残った。

澤雪絵「大つごもり」(樋口一葉原作)
今日がネタ下ろし。緊張されていると話し、客席も何となく張り詰めた感じで聴き入った。拍手のしどころもよくわからなくて、結局最後まで入らないまま皆でしーんと耳を傾けた。ところどころ言葉に詰まったり噛んだりするところもあったけど、娘の揺れ動く心情がひしひしと伝わってきてとてもよかったと思う。終わったあとに、ほっとして「ようやく終わった」と漏らしていたのが印象的。最後に、演歌歌手としても活動している方なので、持ち歌の「風の演歌節」を三味線の生演奏付きでワンコーラスのサービス。

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【浪曲かるた亭】2023年11月17日(金)18:00~20:00

天中軒すみれ「安兵衛婿入り」
東家孝太郎「入れ札」(菊池寛原作)
~仲入り~
澤雪絵「大つごもり」(樋口一葉原作)
曲師:玉川鈴

初めての浪曲かるた亭。なんたって場所がいい。神保町の有名なかるた専門店「奥野かるた店」の二階。一階は店舗で色々なかるた類を販売。二階は普段はミニ博物館だそうで、珍しいかるたやトランプなどが展示されている。演者の立つ後ろの壁にも素敵な掛物がかかり、30人くらいのこじんまりした空間はほぼ満席。ちゃんとちょーんと木も入って雰囲気もあって、なんだか特別感たっぷりの会だった。お席亭の挨拶に先立って、まずお店の店主の方の挨拶があったのもほのぼの。見やすく聴きやすく、すごく気に入ったので絶対にまた行きたい。

天中軒すみれ「安兵衛婿入り」
もともと声がのびやかで声量もあってスケールの大きさを感じていたけれど、最近は聴くたびに節回しが細やかに上手になっていて、若手のホープといわれるだけのことはあるなあ。啖呵の部分も場面がよーく浮かんできて、とても楽しい。木馬亭でもこの演目は聴いたことがけど、あの空間でじっくり聞けたのですごくよかった。


【木馬亭十一月定席千穐楽】2023年11月7日(火)12:15~16:10

綾・美舟「出世定九郎」
小ゆき・貴美江「最強主婦伝説 奇跡の夜」
菊春・美舟「竹の水仙」
奈々福・まみ「赤穂義士伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
~仲入り~
太福・鈴「悲しみは埼玉に向けて」(三遊亭圓丈原作)
講談 琴鶴「あんぱんを食べた次郎長」
順子・貴美江「一妙麿」
柳・美舟「一本刀土俵入」

平日だけどかなりの大入り。団体さんも入っていたとか。暑かったので、名物のアイスモナカも飛ぶように売れていた。明日は立冬だっていうのにねえ。

綾・美舟「出世定九郎」
綾さん、初めて聴いた3月から比べるとすごくお上手になった気がする。来年1月年季明け。こちらの興行も行かなくては。お披露目系大好き。

小ゆき・貴美江「最強主婦伝説 奇跡の夜」
新作。ご友人の実話らしいけど面白かった。仕事ばかりで家事育児を妻に押し付ける男。そいつと別れてシンママで奮闘する女性。女性からすれば(子育て経験ある人なら余計に)「あるある」と頷けるけど、会場の圧倒的多数を占める高齢男性はこの噺をどう受け止めるのかな。まあピンと来ないんだろうな。小ゆきさんは鋭い高音の節が熱くて好き。

たまたま演目がそうだったからかもしれないが、切々と心情を歌い上げるというよりは、軽快なリズムに乗せて物語を巧みに聴かせていくという感じ。噺自体も面白かった。安珍・清姫って、名前を聞いたことはあったけど、ああいう話だったのか(でもWikiに載っているあらすじとはちょっと違ったけど)。

曲師さんにも色々違いを感じた。まず三味線の音がぜんぜん違う。低い感じ。掛け声の入れ方も掛け声自体も違うし、つねに背後で何か弾いていて、音が止まっている時間がすごく少ない。場内はほぼ満席で熱気いっぱい。20:30終演予定と書いてあったのに19:50で「ちょうど時間となりました~」となったのはご愛敬(新幹線の時間かな?^^)。ともあれ、フォロイーさんが絶賛するだけのことはあるなと堪能した。

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鼎談
これが興味深かった。落語芸術協会に入っていて、寄席によく出ている太福さんとは違って、ほかのふたりは昨年末/今年夏の神田伯山の芝居の中の浪曲枠で初めて寄席(末広亭)に上がった。そのときの感想が2人でちょっと違って面白かった。木馬亭での浪曲は持ち時間が30分なのに対し、落語の寄席では15分。短い時間で聴かせる浪曲をどう組み立てるかには別の筋肉が必要であり、それを鍛える方法も必要。短い浪曲オンリーを並べ、立川流・円楽党などとのコラボも組み込んだ、木馬亭とは別種の寄席を主催したらどうかという菊春さんの提案に、客席からも拍手。さてどうなりますことか。

はる乃(美舟) 紺屋高尾
これはとてもよかったなー。座ったままであれだけの声が出るって、もうそれだけですごい。高尾が節に乗せて真情を吐露するところは、浪曲ならでは&女性ならではの魅力があるし、噺もよりドラマチックになる。いいものを聴きました。

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【国本はる乃10周年記念 はる乃祭り6日目】2023年10月28日(土)13:00~15:20@木馬亭

はる乃 真柄のお秀
トーク 晴美、奈々福、はる乃
奈々福 天保水滸伝~鹿島の棒祭り
~仲入り~
はる乃 忠治関宿
曲師:美舟

最年少浪曲師(27歳)なのにキャリア10年って凄いなあ。晴美師匠のところには9歳から通っていて、17歳でプロデビューしたとか。最近は前座がどんどん入ってくるけど、それでもはる乃さんがまだ最年少らしい。

はる乃さんの浪曲は、素晴らしい声量で、声がどこまでもどこまでも伸びて、弾むような弾けるような、ノリノリでキレッキレで、こちらまでついウキウキと首や体が動いちゃう。一席目は可愛くけなげな真柄のお秀。二度目だけど、この噺大好きだ。二席目は任侠物で、緊迫の場面では激しい三味線と息ぴったりでカッコよかったー。ついちらちら美舟さんを見てしまった。

トークのとき、療養中でご高齢の晴美師匠が5年ぶりという一節を短く。何て味があって愉快な文句♪ 初心者ファンの私にはもったいないほど貴重な場面だったと思う。ゲストの奈々福師匠の一席、聞くのは二度目だけど、まるで時代劇ドラマを観ているみたいに場面が浮かんで、ぐいーんと引き込まれた。とってもいい会だった😸


【浪曲広小路亭 自作自演シンポジウム】2023年10月22日(日)13:00~15:50

天中軒景友(博喜)「古田織部」
港家小ゆき(貴美江)「ディアボロス生命㈱」
木村勝千代(鈴)「ローマの休日」
~仲入り~
創作過程に関する鼎談&質疑応答

もっのすごく面白かった🎇三者三様の魅力溢れる創作浪曲と、創作過程に関する濃いトーク。景友さんは、茶人・武人としての織部の佇まいがカッコいい擬古典的な一席(三味線もカッコよかった!)。小ゆき師匠はSF/ホラー味のある完全オリジナル。笑ってぞっとして考えさせられる(でも「ほんとのところはわからない」)。悪魔のふわキャラと、対照的な節の熱さが最高。勝千代師匠は浪曲版ローマの休日。映画は何度か観たし、筋も知っているのに、素晴らしい声と節に圧倒されてドラマチックさ2倍増し。途中から涙止まらず。トークも興味深くて大満足。第2弾希望!


昨日は「第56回豪華浪曲大会」へ。舞台も顔付けも豪華なら、チケットも豪華。私は夜の部のみだったけど、とても楽しかった。もっと入るかとも思ったけど、そうでもなかったのがちょっと寂しいかな。あとで太福師匠が話していたけど、去年まではキャパ1100人くらいの浅草公会堂でずーっとやっていて、でもずーっと入りが半分くらい(600人くらい)だったから、もっと身の丈に合った会場にしようと600人キャパの日本橋劇場に今年から替えたのに、蓋を開けてみればこちらも半分の入り。「去年まで来ていた300人はどこへ消えたんだ!」のお怒りはごもっともw

奈みほ(豊子)「松山鏡」
すみれ(明)「山之内一豊の妻」
はる乃(美舟)「英国密航」
孝太郎(まみ)「江戸相撲蒙古襲来」(作:市川俊夫)
月子(明)「観世家宝肉付きの面」(作:野口甫堂)
~仲入り~
前座お披露目コーナー
一太郎(秀敏)「桃中軒雲衛門~桃源の風雲児」(原作:榎本滋民、脚色:芝清之)
太福(みね子)「地べたの二人」
奈々福(美舟)「シン・忠臣蔵」(原作:柳家喬太郎)


さん喬・新治二人会@三田落語会へ。よもや今日さん喬師の鰍沢が聴けるとは。狭い会場がそのままお熊の小屋の中に取り込まれ、雪に振り込められた。恐ろしく張り詰めた静けさが充満する中、みな小屋の中で息を詰めてお熊と旅人に見入った。お熊の廓言葉の切なさ。鉄砲を撃つときの紅い蹴出しの美しさ。さん喬師の雪の噺はやはり凄い。悩んだけど行ってよかった。

もう一席は、もう一度聴きたかった応挙の幽霊を今日は鳴り物入りで。酔っ払い幽霊が可愛いんだなー。

新治師の口入屋、最高😸 馬鹿馬鹿しい噺に軽快な関西弁が見事にハマり、漫画のような光景がありあり浮かぶ。

まめだは可哀想でね、おばさんが膏薬を貼ってあげたかったよ😿


【木村勝千代独演会】2023年9月27日(日)14:00~15:50@アートスペース兜座

勝千代「甲州街道桃太郎伝説」
トークwith杉江松恋
~仲入り~
勝千代「壺坂霊験記」
曲師:広沢美舟

昨日の大きなホールでの大がかりな舞台とは打って変わって、20人だけが聴けるこじんまりした超贅沢な会。前回に続いて二度目の参加だったけど、席が少し後ろで空調に近かったせいか、前回より聞こえが悪かったのがちょっとだけ残念。次回はもうちょっと早く行って前に座ろう。

でも内容はとてもよかった。勝千代師匠といえば、東京ドームでもきっとマイクいらないようなその声量と、得も言われぬ細やかな、どうしてそんなふうに歌えるのという節回しの見事さ、天真爛漫でチャーミングなお人柄。啖呵も素敵。そんな魅力いっぱいの二席。


【〝落語キッチン〟柳家さん喬独演会】2023年8月12日(土)13:30~16:35@中野芸能小劇場

開口一番 左ん坊「出来心」
さん喬「浮世床~夢~」
さん喬「真田小僧」
さん喬「替り目」
さん喬「徳ちゃん」
さん喬「引越しの夢」
~仲入り~
さん喬「死神」

オフィス10さん主宰の会、今回から「落語キッチン」の副題がついて場所も中野へ。いやー面白かったすごかった。前半は自らの高校時代→芸能学校→小さん入門→前座→二つ目→真打と思い出をたどりながら、合間合間にその時期に覚えたor教わった軽い噺を語る構成。なんと5席も! まさに師匠のキッチンで絶品の小皿料理を次々にふるまってもらっているかのよう。貴重な話が聴けて嬉しかったし、本当に贅沢な時間だった。

しかもあとでおっしゃっていたけど、何の噺にするかは事前にいっさい準備せずにぶっつけ本番だったとのこと。すごいなあ。仲入り後のメインディッシュはたっぷりの「死神」。ひんやりと恐ろしく。最後は死神の嗤い声のなか幕が下りる。今日もキッチンいなばのおもてなしに感激至極。ごちそうさまでした。<(_ _)>


【木村勝千代 第11回かつちよかい】2023年8月8日(火)13:30~15:15@カフェa bientot(荻窪)

「相合船」(清水一朗作)
~仲入り&ティータイム~
「まつり浴衣」(清水一朗作)
曲師:沢村まみ

4年目曲師のまみさんが、木村派の浪曲の勉強をするために一昨年に始まった会。初めて参加した。喫茶店に十数人の客という、贅沢な時間と空間。マイクなしにどこまでも届くような声量と自在の節に聴き惚れた。

毎回、演題はまみさんのリクエストとのこと。今回の夏らしい二席はどちらも、続きが気になるところで敢えて終わる余韻が爽やか。初心者ゆえに的外れかもしれないけれど、勝千代師匠の節回しは力強いんだけど柔らかくて細やかで、陰影があるというか。美しい。

「相合船」(清水一朗作)
何とも可愛らしい一席。親と番頭の決めた見合いが嫌で、当日船宿に逃げてきた若旦那。そこへ、店から相部屋を頼まれて入ってきたのは、美しいが気の強い女性。じつはその女性も親と番頭の決めた見合いが嫌で、当日逃げてきた身。やがて互いがその見合いの相手とわかり……。二人で船で佃まで繰り出し、遠目に隅田川の花火を眺める。夜空に大きく花火が広がる。さてふたりの恋の行方やいかに……というところで余韻たっぷりに終わる。これ、いい噺!

 
【木馬亭八月定席六日目】2023年8月6日(日)@浅草木馬亭

今日は企画公演の怪談特集。浪曲の怪談ってどんなだろうと興味津々で出かけた。節が入る分、ひたひたとした怖さというのとは違うけど、ドラマチックさが増す気がして堪能した。どの話もとてもよかった。帰りはにわか雨に降られたけど、スカイツリーにかかるきれいな虹が見られた。8月6日ということをふと思った。

志乃ぶ(美)「みみず医者」
綾那(博喜)「ゆうれい奇談」(沢村博喜作)
小ゆき(理緒)「最強主婦列伝 くれない包丁」
隼人(さくら)「ぬれ手拭い」(国友忠作)
~仲入り~
雪絵(貴美江)「雪おんな」
講談 春陽「江田島騒動」
一太郎(美)「怪談 牡丹灯籠」
琴美(貴美江)「吉田御殿」

とくに好きだったのは、まず綾那さんのゆうれい奇談。前に泉岳寺でも聴いたけれど、本当に噺がよくできていて面白い。コミカルさもあり痛快で。綾那さんの語りは情景がはっきり浮かんでくる。ハスキーな声と目力も素敵。

あと、小ゆき師匠の創作・くれない包丁もよかった。唯一、現代を題材にしていて、嫁姑の確執も絡んだ二重の怖さ。ちょっと馬鹿馬鹿しい感じもありつつ、なのに節回しがすごくてカッコイイ。


ドキュメンタリー映画『絶唱浪曲ストーリー』を観てきた。支えられ、支え、支えている側も支えることで支えられている。登場する方々の温かさに胸がいっぱいになった。最後のほうは涙止まらず。
浪曲に限らず、演芸ずきな人の心にきっと響くのでは。

あと、猫のあんちゃんの優しさと可愛さったら😻


【木村勝千代独演会】2023年7月15日(土)14:00~15:30@アートスペース兜座

勝千代(美舟)「安兵衛道場破り」
トーク(勝千代+杉江松恋)
~仲入り~
勝千代(美舟)「まつり浴衣」(清水一朗作)

6月の木馬亭でハートを射抜かれた勝千代師匠の独演会にはじめて行ってきた。ぜんぶで20人くらいしか客がいない小さな空間に、マイクなしで。なんて贅沢な会。
浪曲初心者ゆえにどう表現していいかわからないけど、その節回しがなんともいえない細かさというか、人間じゃないみたいに美しい。裏声部分もコロコロと。ただただうっとり聴き惚れた。こんなふうに歌えたらどんなに気持ちがいいだろう……(妄想中)。せりふの部分もかっこいい。そして曲師の美舟さんも、今日も真っ黒のお着物で素敵だった。

一席目はコミカルに。二席目は落語の新作を多数手掛ける作家さんの作品らしかった。たしかに落語でもよさそうだけど、最後の部分、あれは歌い上げるからなおさら心に響く気がした。あの場面で終わるのもいいなぁ。あのあとどうなったんだろうと想像を掻き立てられる。とにかく途中からハンカチの出番がありすぎた。

そして問題の「らくだ」。「前付け」とあり、プログラムによると、普通は死体でしか登場せず、鼻つまみ者だったということしかわからないらくだが、実際はどういう人間だったのかの前段のストーリーをつけ足すことで、本編を少し違う角度から味わえるのではないかという趣向だとか。さあどんな前段が……と思ったら、これはあれだったんだよ、「あわせ鏡」の新作部屋で掛けた「らくだの馬」! あれはけっして、ただ「高砂や→青菜→寝床→寄合酒→らくだ」と古典落語をつないだ愉快なメドレー風小品ではなかったんだ。商人を小ずるく騙してフグ鍋をこしらえる、らくだ最後の日の出来事だったんだ。そのおかげで、確かに気味の悪いただの死体がちょっぴり人間味と哀れさを帯びたかな。

仲入り後の幕が開いたら、すでに師匠は高座で頭を下げている。そして顔を上げるなり、「た~か~さ~ご~や~」と始まり、最後の最後、願人坊主が火屋で焼かれて飛び出て「冷でもいいからもう一杯」と下げたあと、三味線太鼓に乗ってかんかんのうを上半身だけで踊りながら幕が下がっていった。こういう工夫、ほんとに好きなんだよねー。それにしても、このパンフレットの写真のいいお顔ったら。

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さん喬「子別れ」
さん喬師匠の独演会はたいてい三席だから、別に締めが徳ちゃんでもいいかと思った。こんなに疲れた大変な日だし。でも、そんなわけがあるはずもなく、始まったのがなんと子別れ。そんな一日の最後にやる噺かな。すごすぎるよ。

この噺を権太楼‐さん喬のリレーで初めて聴いたときはあまりに号泣してしまって、完全に鼻がつまって呼吸困難になったほど。もうそこまで泣かないけれど、やっぱりハンカチの出番だった。前半部分をさらりとやって、亀と再会するあたりからじっくりと。最後の最後で女房のお徳が絞り出す「ちきしょーーー!!」が好き。そうだよ、さんざん振り回されてひどい目に遭ったのに、いそいそと二つ返事でよりを戻すなんて、いくら落語の世界でも許されない。

終わればぴったり20:30。プロ意識とかサービス精神とか、どんな言葉も追いつかない。相当な負けず嫌い?(自分に対して) かなりのM? ともあれ、寄席の軽い爆笑噺から、じっくりと人情噺、さらには鳥肌の立つ恐ろしい噺まで、すでに四席終えている人の業とは思えない。これを大満足といわずして何と言おう、だよ。

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2023年5月2日(火)木馬亭の定席へ

二度目の木馬亭、前回よりお尻の痛さが早い時間に訪れてつらかったが、仲入り後は一席終わるたびに立ったり、ゴミ捨てに行ったり、ぶらぶらしたりしてしのいだ(^^)。

三門綾「出世定九郎」
天中軒すみれ「中山安兵衛婿入り」
富士実子「愛染松山城」
玉川奈々福「甚五郎旅日記 掛川宿」
~仲入り~
東家一太郎「一休の婿入り」
神田昌味「情けの三味線」
花渡家ちとせ「御薬献上」
浜乃一舟「男の花道」

前回とは演者も噺もまったくかぶらず、いろいろ聞けて楽しかった。でもやっぱり奈々福さんはすごいなあ。。。出てくるだけでがらりと空気が変わる。天性のエンターテイナーというか。この方は落語でも講談でも、その気になったら何でもできてトップになる方だと思う。唄も語りも本当に素晴らしかった。噺自体も面白い。落語の「抜け雀」と「竹の水仙」を合体させたような風味もあり、コミカルで痛快で。来月は奈々福さんがトリをとる日があるみたいだから、そこを目指して行こうかな。

あと、今日は曲師にこの人ありという沢村豊子さんの三味線が聴けたのもよかった。御年86歳というが、合いの手のなんとも艶のあるいい声。さらには、トリに登場した88歳の浜乃一舟さんの声量とこぶしの素晴らしいことったらねえ。

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