小川哲『嘘と正典』読了。
時間SF物っぽい感じの短編集。6編収録。
うち3編は、息子(娘)が理不尽な父親を理解しようと努める(好きなテーマだ!)話で、妻とか母親とかは背景に追いやられていて、うみょーんとなる(短編だから仕方ないね!)。
何をどう書いてもネタバレになりそうで、うーん。だけど、他の人のネタバレ感想は知りたい感じ。
この作者は、もっともらしい嘘をつくのがとても上手いです。つらつらと嘘と本当を織り交ぜて、順を追って説得力のある語り口で騙るんですよ。読んでてとても気持ちいいです、嘘だけど、説得力があるから。さらさらと流れる論理展開が気持ちいい
収録作の「時の扉」。
まず、「未来を変えられる」というのは嘘だ、と定義付けします。未来は存在していないので、存在していないものは変えられない、と。でも、過去は存在しているので、過去は変えられる、と。では、過去とは何か、時の流れとは何か、といったことを滔々と騙っていくんですね。
過去とは何かといった語りはいわば仕込みなんですが、千一夜物語のパスティーシュ風の語りで流れていくので、楽しいです。
#読書
5月26日は静岡県知事選挙の投開票日
https://www.nhk.or.jp/shizuoka/lreport/article/006/93/
まず、記号接地問題(それを体感せず実感を持たないままにそれの意味を理解することは可能なのか)が提示され、そこから、オノマトペとは何か、オノマトペは言語なのか、といったことが紐解かれていきます。
そして、オノマトペを拡張し援用し、身体的感触から離れ論理的な言葉を覚えていくのは、ブートストラッピング・サイクルというシステムにあると、推論を立てていきます。
物事には名前がある、単語には意味がある。では、他の物事にも意味があり、他の単語にも意味があると、推測していくことかな。
この、推測していくという行為は「仮説形成(アブダクション)推論」と呼ばれ、帰納推論とともに、人間に特徴的な思考バイアスである、といったことが書かれています。
“「AならばX」を「XならばA」と過剰に一般化することは、人間には日常的に頻繁に見られることである”と書かれ、“対称性推論をごく自然にするバイアスがヒトにはあるが、動物にはそれがなく、このことが、生物的な種として言語を持つか持たないかを決定づけている”という仮説があると書かれていて、ほへーっとなりました。
黒澤明『生きる』を見た。
“生きる”というのは、“仕事をする”ということです。あなたは“ためになる”仕事をしていますか?働け。といった映画でしたね。
主人公は役所でお役所仕事をして無為に日々を費やしていましたが、末期の胃癌を患い、それまでの生き方を後悔し、小さな公園を作るために奮闘する、というお話。
奮闘すると書いたものの、作中奮闘する場面はあまり描かれず、主人公の葬儀の場で仕事仲間が断片的に回想するだけです。
ていうか、ご遺族の前で、渡辺君は頑張っただの頑張ってないだのスタンドプレーだっただの、よくまあ盛り上がれるな。ご遺族がほぼノーリアクションなのも、不思議な感じ。
映画の尺を割いて描かれているのは、余命幾許もないと知り、自分は何も成し遂げていないと気付いた主人公の煩悶です。
夜の街で酒を飲んだり、パチンコを打ったり、キャバレーで戯れたり、元部下の若い女の子と街遊びに興じたりと、彷徨い続けます。
濡れた犬みたいな主人公のアップがとにかく多い。
主人公の葬儀の場では、渡辺君を見習おうと仕事仲間たちは奮起するのですが、その翌日からはいつもと変わらぬお役所仕事で、といったところで映画は終わります。
“働く”“生きる”といったことは、分かっていても難易度の高いことよねーって感じでした。
ついったーの永久凍結が解除されました。
おたくらしいですよ。基本的にやる気がないです。フツーにダメ人間です。今特に腰を据えてるジャンルはありませんが、ときどき何かをぽつぽつ書いてます。オススメ本とかは常に募集中です。
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