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小川哲『嘘と正典』読了。
時間SF物っぽい感じの短編集。6編収録。
うち3編は、息子(娘)が理不尽な父親を理解しようと努める(好きなテーマだ!)話で、妻とか母親とかは背景に追いやられていて、うみょーんとなる(短編だから仕方ないね!)。
何をどう書いてもネタバレになりそうで、うーん。だけど、他の人のネタバレ感想は知りたい感じ。

この作者は、もっともらしい嘘をつくのがとても上手いです。つらつらと嘘と本当を織り交ぜて、順を追って説得力のある語り口で騙るんですよ。読んでてとても気持ちいいです、嘘だけど、説得力があるから。さらさらと流れる論理展開が気持ちいい

収録作の「時の扉」。
まず、「未来を変えられる」というのは嘘だ、と定義付けします。未来は存在していないので、存在していないものは変えられない、と。でも、過去は存在しているので、過去は変えられる、と。では、過去とは何か、時の流れとは何か、といったことを滔々と騙っていくんですね。
過去とは何かといった語りはいわば仕込みなんですが、千一夜物語のパスティーシュ風の語りで流れていくので、楽しいです。

んで、読み終わって、終わり方や作品の核といったものは、いまいちかっちり掴めていません。
「で、つまり、これはいったいどういうこと?」となってる自分がいます。

『ゲームの王国』や『地図と拳』に比べると、だいぶ脂が抜けててさっぱりとしてるので、読みやすいよ!
『ゲームの王国』、共産主義者の青年が娼婦を買う場面の文体とか、でたんギトギトだったもんな。あれ、凄かった。

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