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ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』「戦闘の時」読了。
三世代、二家族、18人が住んでる家の男の子の話。家の生計を立てるために、従兄弟とともに市場で窃盗をさせられており、ある時五リラを盗んだことにより一家に騒動が起きる。
まず、不勉強なので、五リラがどれぐらいの価値があるのかが掴めてない。主人公一家にとっては大金であることは分かる。
主人公が五リラを握った使わないまま失ったしまったことを、どう捉えたらいいのか考えあぐねてる。主人公は五リラをなくしてしまったことを悲しんでいたが、わたしは主人公が五リラを使わなかったことが悲しかった。
そして、この話の大人は働いてないなあと思った。子供である主人公は稼ぎを得ているのだけれど。「悲しいオレンジの実る土地」や「路傍の菓子パン」のように、おそらく頽れてしまった父親が悲しい。反面、子供はこの戦闘時を適応して生き抜いている。これを希望としたくないのだけれど、おおよそそのようなものなのだろうと思う。
最後、主人公は「きみにはわかってもらえないだらうなあ」と語る。うん、わたしにはわからない。わからないと断絶すべきではないが、わからない。

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ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』「彼岸へ」読了。
文庫本で15頁の短編。熱いスープが冷めるまでのまどろみの中、彼岸から此岸への糾弾。これも、感想が難しい。というか、読むのが難しい。
題名が「彼岸から」ではなく「彼岸へ」なんだよな。
作中の “皆さん、パレスチナ人の難民キャンプをぜひ見ておくべきです。それが消滅してしまわないうちに” という言葉が痛い。
これは、この小説を読んでいる、わたしのこの行為が、まさにこういうことなので。

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古宮九時『Unnamed Memory』5巻、6巻読了。完結。
この世界の外にも世界は広がっているのだ(新大陸編とか)と言われてワクワクすることもあれば、今まで読んできたのは何だったのかとモヤモヤすることもあり。
んで、主人公二人はお互いにとって唯一なのですが、その関係性にギュインギュイン盛り上がることもあれば、淋しいなあと思うこともあり。
わたしの感じ方は理不尽だなあ、この理不尽さはどこから来るんだろうか、分からんなあとなりました。

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2023年2月18日
志賀直哉『小僧の神様・城の崎にて』読了。
小さな事件は起きるが、大きな事件に発展しない、させない。話らしい話のない話たち。文章に気負いがない。
新潮文庫のカバー装画が熊谷守一の「赤蟻」なんですが、新潮社装幀室さすが慧眼というか、本当にそんな感じ。深夜の砂抜き中のアサリの身じろぎ。細々としたものを、ぽんと切り出して置いた短編集。
見捨てた恋人を未練がましく思ったり、片恋で失恋を捨てきれずにいたり、だらだらと不貞をしたりと、男の身勝手な様をわりとつらつら書いてんなと思いました。
開き直りではあるんだろうけど、許しを請うでもなく責めを負うでもなく、「だってそうなんだよ」と不貞腐れてもおらず。

2023年2月11日
ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』「盗まれたシャツ」読了。
文庫本で10頁と1行しかない短編なのだけれど、凄まじいな。
主人公は難民キャンプに住んでいて妻子がいる。配給は滞りがち。キャンプの倉庫には大量の物資があるので、そこから少しぐらい盗みをしてもいいんじゃないかぐらいは思ってる。そうしたら、家族はパンを食べられるし、息子には新しいシャツを買ってやれる。寒い中、たいした収入にもならないどぶさらいをやっていると、いけすかない知人がやってきて物資のちょろまかしをやらないかと誘ってきたので、その脳天をかち割って、終わり。

2022年11月17日
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ『戦争は女の顔をしていない』読了。
当時15〜30歳だった、独ソ戦に従軍した女性たちのインタビュー集。翻訳の所為か、口語体の所為か、当時の彼女らの年齢の所為か、文章から受ける印象は萌えでた新芽のように柔らかい。
ひとりの口から語り得ることは、その人が体験したほんのひとかけらにしか過ぎなくて。それら断片の集積。広い海の汀に立って、漣を眺めているような気分になった。
戦線と銃後の女性の断絶とか、『戦争は女の顔をしていない』というタイトルの意味とか、ミシンとか下着とか、いろいろぐるぐるしている。

日本は先の戦争を完膚なきまでに負けたので、他人の土地で何をしたのか忘れたふりをして、戦争の悲惨さを嘆くことができるけれど、ソ連は大祖国戦争に勝利したので、戦争を輝かしい誇らしいものとして語らなければならない、ということに思い至ってなかったです。

わたしはまだ、「人間は戦争よりずっと大きい」という言葉を、まだちょっと信じられないでいる。そうであったらいいな、とは思ってるし、500人以上もの戦争の話を聞き続けた作者がそう謳うのであれば、そう信じたいと思ってる。

2022年11月15日
吉村昭『脱出』読了。
戦争末期から敗戦までの、樺太からサイパンまでの短編集。
読んでる最中思い浮かべてたのが、冬の晴れた白い空に漂う風船で、これまでの世界が崩壊するのは分かってるけれど、これからどうなるのか分からない、という寄るべない不安感が印象に残りました。

いしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』読了。
ぽんこつな女の子がファド歌手として成功するまでを描くビルドゥングスロマン。
「ファド」ってポルトガルの大衆歌謡だそうです。
読んでる最中はさほどでもなかったのですが、読み終わって本を置いてから、言祝ぐしかない喪失感が迫ってきて泣いてしまった。大きな風が吹いて去った感じ。
4コマ漫画なので流れはパスパス切れるし、説明も最低限なので、行間がとても大きくて、読んでるこちらが積極的にその行間を埋めにいかなきゃいけないけど、辿り着けない部分がだいぶあるけど、でもたぶんそれでいい。
主人公がファド歌手になりたい理由が一切説明されてない。で、成功するまでの物語なので、成功した姿やその後は語られない。
ファドとか聞いたことないけど、読んでる最中主人公のファンにさせられます。
んで、作中で「ライナスの毛布」と称されていた友情の話でもありまして。
これが、サウダージなのかな。

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古宮九時『Unnamed Memory』4巻読了。
タイムパラドックス後の世界で、魔女と王様は再び出会う。
いきなり親世代の出てこない次世代編が始まったみたいなもにょもにょ感を感じる。第二部じゃなくて、第一部の続きが読みたい。
と思ってたら、1巻で怪しいまま退場した人物が曰くありげに再登場したので、第一部と第二部は合流しそうですね。
あとまあ、これは細かい話なのですが、国による食習慣の違いとか服飾の違いとか言葉の違いとかはちまっと知りたいです。これはまあ、好みの話です。

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古宮九時『Unnamed Memory』3巻読了。
歴史の裏で暗躍する悪い魔女を倒して、王様と最強の魔女は結婚しました。めでたし、めでたし。
と思っていたら、王様が事故で過去にタイムトリップし、最強の魔女が魔女になる過去を改変したのでタイムパラドックスが起きて、二人の出会いはなかったことになりました。つづく。
悪い魔女を倒す話では、2巻の戦いと違って脇キャラも戦力に数えられてる感があったけど、それでも最終決戦は王様と魔女の二人だけの舞台になるんだよな。ちょっと寂しい。
伏線の張り方が最小限で、新章に入るたびに、そんなん知らんかったという情報がザクザク現れるな。

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古宮九時『Unnamed Memory』2巻読了。
子を成せぬ呪いをかけられた王子様と最強の魔女のお話。
魔女が王子様の呪いをといて、王子様が王様に昇進して、魔女さんの昔の因縁が片付いた。
魔女さんの昔の因縁が片付いて探偵物っぽい細々とした話が始まって楽しいなと思ってたら、唐突に昔の神様を殺す話になってびっくりした。
昔の神様を殺す話は、その場に魔女と王様しかいなくて寂しいなと思うのですが、その場に立てるのはこの二人しかいないという作者の意思を感じます。
1巻の時に、この王子様お触り多いなと思ってたのですが、2巻で言及あったヨシヨシですし、魔女さんからのお触りも増えました。

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古宮九時『Unnamed Memory』1巻読了。
子を成せぬ呪いをかけられた王子様と最強の魔女のお話。
主人公に因縁がありそげな怪しい人物が現れては、特に主人公の前に姿を見せることなく消えていくのでびっくりした。でも何故かそんなに肩透かし感はない。
王子様のパーソナルスペースがバイデン大統領並みに狭くて、息をするように髪を撫でたり、頭に手を置いたり、頬に触れたり、抱き上げたりしてるので、歳を取ってからセクハラで訴えられやしないかと、かなり心配になった。

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