ゲゲゲの謎ネタバレ感想・2
ラスボスの「子どもの身体をした老人」の造形がキモくて最高だった。現代への風刺としてもよかった。若くても老人みたいな思考の大人は多いし、いまの老人は老いても元気だし。
この映画は一部で「因習村だ~!」といわれているけれど、別に村に伝わる謎の因習があるわけではない。あの村は、幼く弱く非力なものを虐げ続けて発展してきた、それって戦前から続く日本社会そのものじゃねえかって話で、ちゃんとストーリー内でそれが明示されていたとおもう。
神作画によるゲゲ郎本気の肉弾戦を中盤にもってくるセンスもよかった。戦うゲゲ郎が観られて眼福。あのシーン何度でも観たい、かっこよすぎるので。終盤は元気玉的な解決でそこは子供向けに回帰したかんじがして好きだったし、元気玉を作るキッカケとなるのが赤ちゃん=鬼太郎の産声というのもよかった。
序盤、時麿が父親を思って(?)慟哭したシーンではみんなぎょっとなったのは、あの時代の男性が声を上げて泣くって相当異常事態だったから。終盤で水木も泣いてたけど、ゲゲ郎は泣き止むのを待ってたのかな(それもひっくるめて水木は「待たせたな」と言ったのかな)とおもってギュンときた。
あとは、ゲゲ妻のお顔が6期猫娘風のツリ目で、ちょ、ちょっとやめてよそういうの!!!
好き!!!
ゲゲゲの謎ネタバレ感想・1
光と影、煙の演出が凄く見事で見ごたえがあった。あとは、「子供がせき込む中でも平気で煙草を吸う」「畳のへりに座布団を敷く」「ポイ捨てする」といったキャラクターたちの仕草が昭和三十年代のそれで、普通に観ていると見過ごしてしまう情報がたくさんあった。一画面から得られる情報量が多くて脳みそフル回転で見られてとてもたのしかった。何回も見たくなる気持ちが分かるしそういう風に作られているなとおもった。
アニメは制作者が書きたいと思ったものを全部書き込める表現で、実写みたいな「たまたま写っちゃいました」的なものは存在しない。つまり「妖怪的なもの」は存在しようがない世界だけど、カット割りとか視点とかから『こちらからは視認できない存在に見られている』感覚がつきまとうよう演出されていて、特に不気味さが際立つ前半がとてもよかった。
もっとも幼く、もっとも弱く、本来もっと目をかけられて慈しまれるべき者=こどもたちが誰にも顧みられず犠牲となり、呪いを抱いてラスボスになり、自分たちを苦しめた村=制度をぶち壊す。見えるもの、見えないもの、見ないふりをしていたもの、作品全体を貫く「見る」という演出がゲゲ郎のセリフで「未来を夢見ること」につながって、あぁ〜〜〜うめぇ〜〜〜〜〜〜と唸った。
ゲゲゲの鬼太郎、その生誕の謎に迫る物語。
ヒト型だった頃の目玉親父がイケメン過ぎたのと、水木しげるの話ではなく『ゲゲゲの鬼太郎』作中世界での鬼太郎誕生秘話を描くと聞いて、「おいおいおたく受け狙いかよぉ」と鼻白みアウトオブ眼中だったんですが、SNSの評判を聞いているうちに、もしかして傑作なのではないかという予感がして観に行きました。私は心が弱いおたく……。
結論。名作なので何らかの賞を得てほしい。映画の街調布賞は最低限必須で。
閉鎖的な村と謎多き一族を巡る物語も面白かったですが、すさまじかったのが「昭和三十年」の描写力。執念を感じるほどに作りこまれた風景は後半への伏線がいくつも貼ってあり、こりゃ入村したまま戻れなくなる気持ちがわかるわぁ~とおもいました。村人一人ずつにちゃんと設定がありそうなところもよかった。
会社員として村に訪れた戦争帰りの男・水木と、妻を探す幽霊族の末裔=目玉親父のかつての姿・ゲゲ郎のコンビが嫌いなおたくはいねえわ……同室で寝たり飯食ったり着替えたり風呂入ったりアイス舐めたり酒呑んだりするシーンが多く地味に色気がありおたくは狙い撃ちされていた。やめろよ。いや嘘ですもっとください。
以下、ネタバレ全開で書きます。
ーー近年、創作界における「ボーイズラブ」や「百合」と呼ばれる作品が、ストーリー面で現実のセクシュアリティの多様性と当事者における葛藤を取り込む動きが見られます。私は、これは娯楽作品が非当事者によるフェティシズムを越えて様々なセクシュアリティを持つ人々の連帯へとつながることを期待しています。
一方でエンタメ作品が現実における社会問題を取り扱うことには、その当事者が置かれた社会的問題構造自体を娯楽として消費しかねない危うさも常に感じています。
そこで問われるものこそ、「志」に他なりません。
「『零合』創刊に寄せて」逢坂冬馬
百合総合文芸誌「零合」創刊号を読み始めたら、逢坂さんが巻頭言的な文章で問題提起されていた。
ザ・クリエイター感想続き
まぁその「キターーーーーー!!!」で今回は圧倒的弱者が蹂躙されて泣き叫ぶので、ゴジラ映画的な破壊の爽快感は皆無で私は始終ため息つきながら見てたんですけども。
細部のアジア趣味が成功しているようには見えなかったけど(むしろノイズだった)逆に、映画全体の雰囲気は嫌いじゃなかった。
というのも、アジア色が押し出されているのは、西側諸国が続ける攻撃の欺瞞や、AIを道具として利用することへの倫理観を揺さぶるためでもあるんだな、と感じたので。
現在進行中の「対象地域に住まうものを全員敵と見做し圧倒的な軍事力をもって無差別攻撃をおこなう行為」=虐殺をとめられないなかで見ると、「西側」に近い人ほどずんと胸が苦しくなるような映画だったとおもう……でも西側の啓蒙のためにアジアが利用されるのをヨシとも思えないので悩ましい点ではある。私はそんなに気にならなかったな~という話でした。
この映画、どうやら興行成績は芳しく無さそうなんだけど、そりゃそうやで。SF映画的なものに通常求められる爽快感が皆無だもん。こんなんよく撮ったなあ……。
『ザ・クリエイター/創造者』(2023)
監督/ギャレス・エドワーズ
#映画 #感想
圧倒的な映像と寓話的なストーリーを展開する完全新作SF。AIと人間が戦争をしている世界…という「それ知ってる」「またかよ」「何度目だ」な設定でだいぶ損している気がする。正直、脚本はご都合主義っぽいところが多かったんだけど、映像が本当に凄すぎてねじ伏せられた。こういう映画こそ劇場で観るべきだよ~と心から思える映画だった。うちの近所の劇場では公開一か月で上映終了になってしまったので気になっている人は駆け込んでください、ぜひに。
AIを「人類の敵」として圧倒的な軍事力で殲滅しようとする西側諸国に対し、不思議な均衡を築きながら共生するニューアジア、という設定に監督のオリエンタル趣味を感じて多少う~んとは思った。あえて謎翻訳した日本語とかが出てくるとことか、全角半角ごちゃまぜフォントとか、サブタイトルが毛筆なところとか…。
あっでも時代劇風のコテコテ演出は好きでした。あとゴジラのセルフオマージュも。ギャレス作品はどれも「くるぞ…くるぞ…キターーーーーー!!!」が凄いんですけど今回も凄かったです。
【ぺけったー】
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【青空】
脳内直通の叫びとか日々のちょっとしたこととか
みたいなかんじでゆるーく使い分けてます。
IDはぜんぶ「@mameg229」です。
『英語の路地裏 オアシスからクイーン、シェイクスピアまで歩く』
著/北村紗衣
#読書 #感想
オアシス、クイーン、パディントン、スタートレック、ジョーズ、シェイクスピア等々、歌詞や映画や戯曲で使われる英文をとりあげて文化的な意味や使われ方や文法の基本を解説してくれる本。楽しくてスイスイ読めた。関係代名詞の非制限用法と制限用法はネイティブでも間違えることがあると聞いてひと安心。いや安心してる場合ではないが。
英語でお米は「rice」だけれど、日本語だと「白米」「玄米」「冷やご飯」「銀シャリ」「握り飯」等々、状態や温度や調理方法で様々な呼び方があるのは、それだけ「お米」にまつわる文化の深度が違うから、みたいな話を聞いたことがある。同じことがもちろん英語にもあるわけで、キリスト教やシェイクスピア作品への深度は日本と全然違う。言語を学ぶってただ喋れるようになるだけじゃないんだなあと改めて思った。
図書館で借りてきて急いでガーッと読んだので、実は面白さを全然味わいきれていない。でも「英文は楽しく読めたらまずはOK」「小説を読むのも全然アリ」的なことが書いてあったので私も小説を読んでみようかな。パディントンとか。
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2022)
監督/アーロン・ホーバス、マイケル・イェレニック
#映画 #感想
双子の配管工がブルックリンの地下で謎の土管に吸い込まれて異世界転生する超おもしれ~~~映画。謎の恋愛描写やジョークで雑音を感じさせないスカッとしたエンタメでした。そういう意味では前に見た『ダンジョンズ&ドラゴズ』と同系統。
離れ離れになった双子の弟ルイージを探す為に兄マリオが頑張る、そのためにピーチやドンキーコングと協力する、という展開がよかった。ピーチがメチャクチャタフで強くてかっこよかったです。クッパの「ピーチピチピーチ♪」ソング最高に好き。アナ雪2のクリストフとデュエットしてほしい。
私はゲームとしてのマリオはスーファミのやつとヨッシーアイランドとオリガミキングダムのプレイ動画位しか知らないんだけど、ファンが見たら涙ちょちょぎれる演出がされてるんやろうなあ…というのは伝わった。ただ、これはこの映画に限らず最近の風潮だし元ネタが有名なぶん仕方ないんだろうけど、超盛り上がるエピソードのパッチ―ワークでずっとサビをお出しされている感があり、個人的にはもうちょっと侘びとか寂びとかはほしかった。でもまあ5歳サンが観てもほぼ飽きなかった点はよかった。
『アンデッド・アンラック』と『マイ・エレメント』を比較した、とっ散らかった感想
アンデラは「素肌に振れた相手に不幸を呼ぶ肉感的美少女」に「なにがあっても死なない筋肉マッチョメン」だけが触れられる(※触って不幸が起きても死なないから)って設定で、少女がマッチョに触れることで起こす不幸で敵をやっつける…という、話は面白いし作画も凄いんだけども設定が非常に苦手で。というのも、どうもこのアニメでは「触る」→「心を許す」って流れになっているからで。いや事情はわかるけどそれ順序逆じゃね?????(※原作の漫画は未読、アニメを5話位まで観た時点での感想です)
同じくふれあいがテーマの『マイ・エレメント』では、主人公は火と水なので、相手に振れた途端、火は消えるかもしれないし水は蒸発しちゃうかもしれない。相手に触ることがとても怖くて互いに命がけで、それでも相手をもっと知りたくて、全身全霊をかけてそっと指先を触れ合わせる。そりゃ週刊誌連載の漫画原作アニメと、全世界で大々的に公開されるディズニー&ピクサー作品の倫理観とか需要とかを一緒にしたらイカンとはおもう。おもうけど、この差はなんだろうな…と見ながら考えちゃった。
マイ・エレメント感想続き・2
主人公の「かんしゃく」が実は改善すべきものではなく、大切な自分の要素であるという話になっていたのが良かった。
私も昔はよく怒りっぽくてすぐに大声を出す性質で「なんでこんな風なんだろう?」と落ち込んだものだけど、環境が変わると落ち着いたことがあり、あれは自分の身体が信号を発してたのだなぁと思うなどした。
ちょっとだけ残念だったのが、序盤に提示された格差社会の要素が後半薄くなって、ふたりの心の交流がメインになってしまったこと。それはそれで素晴らしかったのだけれど、個人的には、移民として街に来た炎たちの命に関わるライフラインの故障が放置されてることや、家が手作りでツギハギで建築基準法をクリアしていないのを理由に店の営業停止を命じることは、街の支配層である水風木の怠慢だって指摘があったらもっとよかったな。いや正直そんなん無くても十分良くできたお話で素晴らしかったんだけど、どうしてもいろいろと詰め込みまくってる感があったので、30分12話か45分8話位で見せてほしかったな〜とおもった。それだけのポテンシャルがある都市の造形だったので。
我ながらなんて贅沢な不満だ。でも本当によかったので、ホシイ…モットヨコセ…って唸る妖怪みたいになった。もっとくれ。
『マイ・エレメント』(2023)
監督/ピーター・ソーン
#映画 #感想
飛行機の機内で鑑賞。水、木、風、火、4つの元素が暮らす都市で、相容れないはずの炎と水の若者が出会い、恋におち、触れ合う物語。
それってあれやん『ズートピア』やん、って思いますやん。確かに冒頭シーンはどうしてもズートピアと比較しながら見てしまった。でも全然ちがう話なのでズートピアが刺さった人ほど見てください。父の跡を継ぎファミリー(コミュニティ)の炎を守るかどうするかって話なのでどちらかというと『ゴッドファーザー』です。
ズートピアでは「種族」の違いを全面に押し出すかたちで格差は造形としては大きくでてこなかった印象だけど、マイ・エレメントでは格差がはっきり描かれていた。水風木(街を形作る3つの要素として冒頭で提示される)の暮らす街と火(移民として街に来たことが示唆&街を燃やす厄介者扱い)の住む場所の経済格差や、互いの差別意識といったものが、劇中なんどもリフレインされる。
印象的だったのが、分かりやすい差別発言ではなく、相手を楽しませようとしたジョークやもっと知りたいという好奇心だったりが、相手を深く傷つけてしまう、という描写がされていたこと。悪気がなくても差別の当事者になるということを親しみやすく描いていて凄いと思った。
追記
・三越とモスバーガーもあった。マクドよりモスがある
・いたるところに電光掲示板がある。小学校の門にまである。そしてデカい(見やすくて良い)
・名古屋の広報と思われる広告には城と武将のイラストが描かれてたんだけど見たことのない兜をつけたイマジナリー武将だったのが面白かった
・ゆるキャラ風の可愛い公共ポスターが多いが日本みたいな萌え絵は皆無。日本が異常なんだとおもう…
・選挙ポスターと思われるものがでかいビルの壁面広告になっていて政治を身近に感じた
日本より「無駄」が生き残っている感じがした。百貨店のピアノに刺繍のカバーが着せてあったり、バスの窓にレースのカーテンがあったり。また、大通りの建物は新しくてピカピカしているけれど、一本裏通りにはいると、崩れそうなほど古い建物が立ち並んでいて、不思議な雰囲気だった。このへんがレトロとか懐かしいとか言われるゆえんなんだろうな、きっと。
台湾ではどのくらい日本語がありふれたものなのか、どのようなイメージで使われているのか、いつからこれが当たり前なのかわからないけど、台北に限れば日本語文化が本当に身近にあるのだなという感じがした。コンビニや百貨店のサービスも日本に似ていた。
占領の歴史とも何か関係あるのかな。歴史を何も知らないのが身に沁みた。
台湾びっくり事項箇条書き。
・超バイク社会。時々歩道でも走ってるし道路にはバイク用の待機ゾーンがある。中型で二人乗りしている人が際立つ
・台湾で見つけた日本の店→コメダ珈琲、牛角、サツドラ(サッポロドラッグストア)、ダイソー、セブンイレブン、ファミマ、他にもあった気がするけどたくさんありすぎて忘れた
・「京都鉄板焼き」とか「日本式○○」とか書いてある店も多かった。あと沖縄料理の店と北海道の地名が付いたアイス屋
・ドラッグストアには日本の商品(カイロとかおむつとか)が普通に並んでいるので、乳幼児期の子連れ初海外に台湾はメチャクチャおすすめだとおもった
・山間部の土産売り場では昔懐かしい「アニメキャラのパチモン」を時々見かけたがパチモンのクオリティが高い。「これ、ジブリの公式サイトから画像をDLして無地のトートバックに印刷したやつですよね?」ってやつとか、ちょっと顔がゆがんだピカチュウとか
・すみっコぐらしは台湾でも人気っぽくて、すみっこどころかグローバルだった
・街が綺麗。ゴミが落ちてない。なんならゴミ箱がない
・公園が多い。台北は超都会なのに路地にでかい遊具のある公園があった。遊んだ
・子連れにフレンドリー。電車にのったら誰かが席を代わってくれた。皆、腰を浮かすためスタンバイしていた。ありがとう……
滞在3日目は街歩きデー。小籠包の人気店で朝ご飯を食べて、誠品生活で買い物をしました。誠品生活は日本でいうところのパルコやマルイ的な百貨店で、クリエイターの作品や若者向け衣料品などがたくさんおいてありました。台湾インクがみたくて、ゴネる5歳サンをなんとかなだめすかしつつ、オレンジ系の色のボトルを購入。手持ちのツイスビーにいれて書くのが楽しみです。
午後は昼ごはんをテイクアウトしてホテルで食べつつ休憩&昼寝(※親が)して、夕方から夜市に出かけました。お祭りの屋台が毎日並んでいるような場所で、魯肉飯やカステラや肉麺などがたくさん売られてました。どれも凄く美味しかったです。奥には子供向けの遊び場もあり、5歳サンは魚釣りしました。夜市は18時から開始で近隣店舗は25時まで営業のところもあり、子連れは少ないかな〜と心配してましたが、普通に大勢歩いてました。明るくて歩きやすかったです。
夜市の帰りに豆花を買ってホテルで食べました。ひんやりあっさりしていて美味でした。前日のタピオカもそうだったんですけど、日本と似たような値段で1.3倍位のやつがでてくるのでお腹いっぱいになりました。
まめです。本や映画や漫画やゲームの話をします。
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