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『英文標準問題精講』
原仙作著、仲原道喜補訂、旺文社 1999年10月発行

高校生の時に取り組まされた。懐かしい。それにしても、高校生の時は気づかなかったけど、取り上げられている作者があまりに錚々たる顔ぶれで圧倒される。ギッシングやジョージ・エリオット、ジョセフ・コンラッド、ジェイムズ・ジョイス、ルイス・キャロルといった正統派な大御所はもちろん、T.S.エリオットやラフカディオ・ハーン、H.G.ウェルズ、フリードリッヒ・ハイエクまでいる。すごいものを学んでいたんだなあ。初版はなんと1933年。この本で受験勉強した人は5世代くらいいるのだろうか。

『氷川清話』
勝部真長編、角川ソフィア文庫 1972年4月発行

勝海舟の談話をまとめた語録。
それにしても海舟が偉人なのはもちろん、同時代に偉人が多すぎる。
「あんな時勢には、あんな人物がたくさんできるものだ」
とあるとおり時代が彼らを作ったのに加え、
「お役目大事と思って、その役目と討ち死にする覚悟になる」
と各種各様な豪傑が生まれてくる、とある。そういう精神的な気概は、当時、というか昭和の頃まで残っていたけど、今はもう望めないんだろうな。良い悪いはともかくとして。

『東方見聞録』
マルコ・ポーロ著、青木富太郎訳、河出書房新社 2022年9月発行

完訳はとても読んでいられないのでこういう抄訳はありがたい。異世界ものを書く際の参考になるかと読んでいる。実際、700年前のアジアは現代人にとって十分すぎるほど異世界だ。

見聞といいつつ伝聞も多い。日本に関する記述が嘘八百なのは伝聞をそのまま記したからだけど、それがヨーロッパにおいて日本への関心を高めることになったのは幸か不幸か。

この本、装丁がとても良い。地図も挿絵も入っている。マルコ・ポーロが想像した世界図なるものも載っている。たしかに日本は極東だなあ。

『沈黙の春』
レイチェル・カーソン著 渡辺政隆訳 光文社古典新訳文庫 2024年9月発行

学生時代に環境倫理学の授業で新潮文庫版を読んだなあ。懐かしい。『三体』でも労働刑に処された葉文潔が建設兵団で手にするシーンに出てくる。今では当たり前となっている知識も当時は知られていなかった。20世紀中盤は、あれほど野放図に農薬や毒物が使われていた、ということを、ともすれば忘れがちになってしまう。そしてまた、今から50年後に現代を振り返ると、21世紀初頭は人びとの環境意識も低く環境破壊は度を超していた、などと思われるのだろう。

『新版 世界史モノ事典』
平凡社編 2017年6月発行

創作の資料として購入。衣装、建物、乗り物、生活道具、楽器、文字、紋章、文様などなど、古代から20世紀までのモノを図と解説で取り上げる。創作のお供だけでなく、小説を読んでいてイメージできなかったモノを調べるのにも役立つ。ググるよりも確かだし、手間もかからない。

『もなかと羊羹』
仲俣暁生著 破船房 2024年10月7日発行

軽出版。zineより少し本気で、一人出版社ほど本格的ではない、即興的でカジュアルな本の出し方。巨大な装置産業である出版産業から離れて、執筆から販売まですべて一人で、気楽にサクサクと出版していく。そんな「軽出版」という言葉の生みの親である中俣さんによる軽出版エッセイ。同人誌の経験がある私も、ちょっと趣向を変えて挑戦してみようか、という気分にさせられた。コンテンツの作成だけではなく、デザインから印刷発注、そして1冊1冊を販売するところまで手がけるの、本当に楽しいんですよね。商業出版の見本誌が届くのも嬉しいけど、印刷所から自分の同人誌が届いた時の方が嬉しさは大きい。後者は利益にはならないのにね。

『ギッシング短篇集』
小池滋編訳、岩波文庫 1997年4月発行

『ヘンリー・ライクロフトの私記』を書いたギッシングの短篇集。食費を削って本を買い漁る男を描いた「クリストファーソン」、ほのぼのした話ではない。本好きは、ともすれば、本を収集することは誰に恥じることもない立派な行為だと勘違いしがちだけど、度を超した書痴はギャンブルや酒で身を持ち崩すのと何ら変わりはないのだと思い知らされる。

『ヘンリー・ライクロフトの私記』
ギッシング著、平井正穂訳、岩波文庫 1961年1月発行

ハードカバーや古典新訳文庫版ほど岩波文庫版は読み返していなかったかもしれない。いつか自分でも訳してみたかったけど、原文はけっこう言い回しが難しかった気がするのと、既存の翻訳ほど巧みに訳せないなと早々に諦めたのだった。ギッシング最晩年の著作。読み返すたびに、つまり歳をとるごとに、心に迫る部分が増えていく。

"だが、私は再びこれらの書物を手にすることはなかろう。年月はあまりに早くすぎてゆくし、しかもあまりに残り少ないのだ。"

"明らかになにかが初めから私には欠けていた。なんらかの程度に、たいていの人にそなわっているある平衡感覚が私には欠けていたのだ。"

『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』
ルトガー・ブレグマン著、野中

AIが人間の知性を圧倒的に凌駕するまで秒読みに入った今、あらためて読んでおきたい書。本書の処方箋は、ベーシックインカムと週15時間労働、国境の開放。所々に荒っぽい議論があって全面的には賛同できないものの、BIと労働時間短縮はこれからの社会で必須となるのは間違いないと思う(というかそれ以外思いつかない)。具体的なデータや事例が多く参考になる。

『人工知能 人類最悪にして最後の発明』
ジェイムズ・バラット著、水谷淳訳、ダイヤモンド社 2015年6月発行

当時の著名なAI研究者や技術者の取材を通じてAIの脅威を描き出す。これ、原著が出たのが2013年と10年以上も前。生成AIなど影も形もなく、おもちゃにも満たないような性能のAIが最先端だった時代。最新の技術が半年もすれば時代遅れになってしまうAIの世界で10年前は石器時代みたいなもの。それでも当時から人類の存続がかかるAI脅威論の本質は変わっていないと思わせられる。ただ、著者は専門家ではなくテレビプロデューサーであるせいか、本書も仮定の話が多く、今ひとつ説得力に欠けるように感じた。一方、10年たって超知能が本当に目の前に迫ってきた切迫感があるせいか、最近慌てて政府や国際機関がAIの脅威に対応しようとしてるように見えるけど、もう引き返せるポイントはとうに過ぎてしまったんじゃないかな。いずれにしろ大変興味深い時代だと思う。

『ザ、コラム:2006-2014』
小田嶋隆著、晶文社 2016年10月発行

各種媒体に発表されたコラムの自選集。最後から何冊目だろう。時事的な内容については「そんなこともあったなー」と懐かしく感じながら読めるし、小田嶋さん何馬鹿なこと言ってるんだと思ったりもする。日本語が乱れているという話は今も昔も興味を引かれる。小田嶋さんの世代(テレビと電話で育った世代)ですら文章力の低下が嘆かれていたのか。それはともかく、この本、ページが本のノド近くに振られているのでページを探しにくい。出版社(というかデザイナーの人)は気をつけてほしいところ。

『戦争論 レクラム版』
クラウゼヴィッツ著、日本クラウゼヴィッツ学会訳、芙蓉書房出版 2001年7月

話題の新訳……ではなくドイツのレクラム文庫に収められた縮約版の翻訳。中公文庫版を読んでると眠くなってくるので、これでまずは全体を掴もうと思って買ったのだった。戦争論の古典というだけではなく人間と社会に関する古典といってもよいと思う。今はどうなのか知らないけど、レクラム文庫の権威性というものに我々の世代(?)はひれ伏してしまう、ということを抜きにしても、良い本だと思う。

『ガメ・オベールの日本語練習帳』
ジェームズ・フィッツロイ著、青土社 2021年2月発行

半月ほど前、たまたま有料のnote記事2本を読んで、なんとすごい書き手がいるのだと驚いて著書を買った。著者はニュージーランド人。もともとブログに掲載されていた記事をセレクトしたのが本書。たしかに文体はブログっぽい。そしてむちゃくちゃ面白い。こういうのは決してAIには書けない。テーマは、日本、日本語、東京、友人、文学、戦争、貧困、音楽など多岐にわたる。

今のブログはここで読めます。

ガメ・オベールの日本語練習帳 ver.8
james1983.com/

本書のあとがき:
日本語の本を出すということ – ガメ・オベールの日本語練習帳 ver.8
james1983.com/2020/12/03/nihon

『この世界を知るための人類と科学の400万年史』
レナード・ムロディナウ著、水谷淳訳、河出文庫 2020年7月発行

人類は知的好奇心、知りたいという本能的欲求から精神的な探求を開始し、文字、数学、法則の概念、合理的自然観を獲得していった。科学が発展し、世界を説明できるようになり、量子力学の進展によって人間の経験の限界を超えていく。この世界を少しだけ違った風に見ることのできる人たちによる想像力の積み重ねで人類の知識は進歩してきた。物理学者による文明史+科学史。現代は「The Upright Thinkers」だけど、タイトルは良い邦訳だと思う。

『食で読むヨーロッパ史2500年』
遠藤雅司著、山川出版社 2021年8月発行

ギリシア・ローマ時代から中世、大航海時代を経て近現代にいたる、食にまつわるエピソード集。山川出版社が出しているのだから信頼性が高そう、と思ったら、10人もの専門家が監修されてる。巻末にはレシピ集。古代ギリシアの大麦粥、手順の最後に「そのまま神に捧げて完成」とか書いてある(笑)。

『三体』
劉慈欣著、ハヤカワ文庫 2024年2月発行

ようやく最初の巻を買ってきた。人名には頻繁にルビが振ってあって良かった。本の冒頭だけとか章のはじめだけにルビがあってもすぐに忘れてしまい、ルビを探して右往左往してしまうので、この本みたいに見開きごとに振ってあるのは大変ありがたいのです。まだ読み始めたばかりだけど、Netflixドラマ版の範囲とだいたい同じなのね(登場人物が一部差し替えられている以外は)。

『数学の思想 改版』
村田全・茂木勇著、NHKブックス 2024年9月発行

発売日は明日のはずだけどもう売ってたので購入。
昔から数学が超苦手だった。中学に上がって急につまづき、よく理解できないまま社会人になった。今後も数学を必要とすることはないだろうけど、理解できないままというのも悔しいので、せめて高校数学くらいまでは確実に理解したい。その前に、数学そのものの意義や思想を知っておきたいと思ってこの本を購入。元の版は1960年代に発行されていて、当時のテレビ番組に基づいた本だったらしい。

『IDENTITY』
フランシス・フクヤマ著、山田文訳、朝日新聞出版 2019年12月発行

あら、フランシス・フクヤマ、こんな本を出してたんだ、知らなかった、というわけで購入。後日じっくり読みます。

『生き仏になった落ちこぼれ』
長尾三郎著、講談社文庫 1992年1月発行

40km以上の山道を1000日歩き続ける比叡山延暦寺の千日回峰行。何があろうと中断は許されない。そのため自害用の短刀を携え、死に装束を着て歩き続ける。終盤は1日80kmにもなる。睡眠時間は1日2~3時間。さらに中盤の堂入りでは、9日間にわたる断食・断水・不眠・不臥。比叡山1200年の歴史で千日回峰行を達成したのは50人にも満たない。その千日回峰を二度も成し遂げた酒井雄哉は、戦争で心に傷を負い、事業に失敗し、妻を自殺で亡くすという人生に、39歳で出家。史上最高齢で千日回峰を達成する。壮絶なドキュメンタリー。

『食卓歓談集』
プルタルコス著、柳沼重剛編訳、岩波文庫 1987年10月発行

プルタルコス(プルターク)はローマ時代のギリシア人著述家。この本では「酒席で哲学議論をしてもよいか」に始まり「宴会の幹事はどういう人物であるべきか」「なぜ秋には空腹を感じやすいか」「宴会の料理はめいめいに盛り分けるのと大皿からめいめいが取り分けるのとどちらがよいか」といった親しみやすいテーマが並ぶ。「鶏と卵ではどちらが先か」というお馴染みのテーマもある。「なぜギリシアやローマでは宴会の時に寝そべって食べるのか」を一番知りたいのだけど、それが書かれてないのはあまりにそれが当たり前だったからだろうね。

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