"(...)日本人は職業を「カタギ」と「ノン・カタギ」に分けるといわれる。そして氏は政治家を「ノン・カタギ」に分類される。確かに、交通違反などで警察につかまったとき「裏からのもみ消し」などは市会議員に頼む。また裏口入学は総理の秘書に頼む。これは「カタギ」の人間に頼めることではない。"
――山本七平『昭和東京ものがたり1』

……これ、真面目なたとえなのかジョークなのか一瞬迷ってしまった。昭和中盤はこれが一般的な認識だったということか。何にせよ、この本、昭和の世界が今とはまるで異なる社会だったことが書かれていて興味深い。

"「人というものは、世の中ですたれそうな芸能を大切に保存して末々までも絶やさぬようにすべきものだ。お前も人がすててかえりみぬようなことに愛情をもち、世のためにそれをのこすよう心がけよ。よいな、人間というものは、そうしたことに自分をささげなければならぬ」"
――『教科書名短篇 人間の情景』より吉村昭『前野良沢』

"日本でも「活字離れ」が問題になっており、電車の中で本を読んでいるインテリに見える学生は「デカンショ」を読んでいないし、「マル・エン全集」も読んでいない。"
――ドナルド・キーン『日本語の美』

そもそもどれも電車の中で読める気がしない。かろうじてショーペンハウエルの随筆は電車内でも読めそうだけど、なんか、著者本人に怒られそう。

"庭づくりは奥が深く、年月を必要とするものです。辛抱強く植物が生長するのを待ち続け、焦らず、弛まず、そして時には楽天的に考えて、大きなダメージに遭い心が打ちひしがれて、焦りを感じても、気持ちを切り換えて心配を払いのけながら、次の手を考えて、希望を忘れずに…。まさに、人生そのもののようでもあります。"
――ケイ山田『庭に生きる』

"進歩した文明とは、困難な問題をかかえた文明にほかならない。だからこそ文明は、進歩すればするほど、それだけ危険な状態になるわけだ。"
――オルテガ『大衆の反逆』

"私は何の予備知識もない人から「法哲学とはどんな学問か?」と質問されたとき「そんなことは一口では言えませんよ」などとはぐらかしたりせず(一口で言えない人は何口かけても言えないことが多い)、とりあえず「法と法学の諸問題を根本的・原理的なレベルにさかのぼって考察する学問です」と答えることにしている。"
――森村進『法哲学講義』

>一口で言えない人は何口かけても言えないことが多い
:t_soudane:

"私にはコンビニの「声」が聞こえて止まらなかった。コンビニがなりたがっている形、お店に必要なこと、それらが私の中に流れ込んでくるのだった。私ではなく、コンビニが喋っているのだった。私はコンビニからの天啓を伝達しているだけなのだった。"
――村田沙耶香『コンビニ人間』

"全く動じる様子のない黒川さんの返事にため息をついてしまうが、私の〈アバター〉は鷹揚に手を差し伸べて話を促した。〈アバター〉ならではの機能、〈感情補正ビヘイビア〉のおかげだ。"
――藤井太洋『Gene Mapper -full build-』

VR空間での無作法な振る舞いやコンプライアンスに反する動作をリアルタイムで補正しアバターの動作を修正してくれる機能拡張、欲しすぎる。こういうのが登場すると、仕事上では生の対人コミュニケーションなんてやってられなくなると思う。

"起きている力をだんだんに失った三人は、一日じゅう寝床の上に横になって、水を取りに行く時だけ這い出して行っては、茶飲み茶碗にわずかに一二杯ずつの水を大事にすすった。その水もやがて尽きる日が来た。"
――野上弥生子『海神丸』

大正時代、実際にあった海難事件をベースにした物語。難破船という極限状態で食糧が尽きたとき、人はどうなるか。

『一度読んだら絶対に忘れない哲学の教科書』ネオ高等遊民著

ネオ高等遊民さん初の単著。哲学入門書にはいろんなアプローチがあるけど、この本はどうかしらね。先入観なしで読んでみます。帯の推薦が読書猿氏・飲茶氏であるあたりにこの本の立ち位置が伺えそう。

"日本における善悪は実のところ、欧米が理解しているようなものとは、天と地ほども異なっていた。価値体系は特異なものであった。仏教でもなければ、儒教でもなかった。それは日本的なものであった。そこに日本の強みも、弱みもあった。"
――ルース・ベネディクト『菊と刀』

"出来がどうあれ、ひとつの作品を完成させたなら――この世に存在する何千何万というフィクションの列に、あなたの作品を加えられたことを「楽しい」と感じられたなら、それが創作を続けるための最大の原動力となるはずです。"
――山本弘『料理を作るように小説を書こう』

訃報を耳にして。2021年発行のこの本が最後の本となってしまった。
tsogen.co.jp/news/2024/04/4985

"格闘家と哲学者、両者は一見まったく正反対の人種に思えるかもしれませんが、実のところ、格闘家が「強さ」に一生をかけた人間たちであるように、哲学者も「強い論(誰もが正しいと認めざるを得ない論)」の追求に人生のすべてを費やした人間たちなのです。"
――飲茶『史上最強の哲学入門』

ここだけ読むとわりと真面目そうな本に見える笑

"革新を好む精神というものは、がいして利己主義の性格と視野の狭さからくるのです。祖先をかえりみない人は、子孫を思いやることもないでしょう。"
――エドマンド・バーク『フランス革命についての省察』

スレッドを表示

"「ドクター・ローゼンバッハは、どんな本も最低三冊は揃えるべきだという持論でした」とセルマは説明してくれた。「自分が読む本と、人に見せる本と、人に貸す本と」"
――ローレンス&ナンシー・ゴールドストーン『旅に出ても古書店めぐり』

ローゼンバッハ博物館には、ブラム・ストーカー『ドラキュラ』の手描き創作ノートが収蔵されてる。

"本当に貴重なものは金では買えないという。さんざん言い古されていることだが、これは金に困ったことのない人間の浅知恵だ。年々の稼ぎがほんの何ポンドか不足だったばかりに味わった悲惨や、噛みしめた無念を思い出すと、金の大切さに愕然とする。"
――ギッシング『ヘンリー・ライクロフトの手記』

スレッドを表示

"当時横浜には、ロシア軍艦「リューリック」「ロシア」の二隻がよく入ってきておりました。(...)停泊中には、始終高官の往来があって、向こうからも来、こちらからも出かけていく。ロシアの艦に行くと、むやみにシャンペンを抜く。どうしてあんなにシャンペンを抜くのかと尋ねると、自分たちが存分に飲みたいからだと言うのです。"
――山梨勝之進『歴史と名将~海上自衛隊幹部学校講話集~』

日露戦争のわずか数年前にこんな時期があったんだなー。

"私はプレゼンには次の三つのゴールがあると捉えています。

① 聴いた人がハッピーになる
② 聴いた人から行動(決断)を引き出す
③ 聴いた内容を他人に言いふらしたくなる

端的に言えば、プレゼントはこの三つを達成するためのものであり、この三つのゴールに向かっていくものです。"
――澤円『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術』

"プトレマイオス二世フィラデルフォスは、アレクサンドリア図書館に「トーラー」をギリシア語に翻訳して収蔵するために、わざわざイスラエル12部族から各6名の学者を呼び集め、合計72名のユダヤ人学者によってヘブライ語の聖書をギリシア語に翻訳させた。72名全員が隔離されて作業を行ったにもかかわらず、翻訳はまったく同じテクストになったといわれ、これが翻訳の正確さと神の承認を示す証と見なされた。"
――安酸敏眞『人文学概論』

"平常ハ訓練ニ次グ訓練ノタメ、読書ノ余暇ハ皆無ナルモ、出撃セバ多少ノ閑暇アラント期待シテ、ソノ直前艦底図書庫ヨリヨウヤク探シキタレル一冊、哲人「スピノザ」ガ伝記ナリ 乗組士官ノ遺留セル私物ナラン
明日ヨリ訓練再開セバマタ寸暇ヲモ奪ワレン 僅カニ数頁ヲ読ミタルノミナレバ、突入マデニ読了ノ見込ナシ
ソレモマタ良カラント思イツツ読ミ耽ル 柔ラカキ小説体ノ行文、蜜ノゴトク心ヲ包ム"
――吉田満『戦艦大和ノ最期』

定期的に読み返したくなる文語体。以前、朗読が販売されてたけど、もう手に入らないだろうな。買っておけばよかった。

古いものを表示
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。