『生き仏になった落ちこぼれ』
長尾三郎著、講談社文庫 1992年1月発行
40km以上の山道を1000日歩き続ける比叡山延暦寺の千日回峰行。何があろうと中断は許されない。そのため自害用の短刀を携え、死に装束を着て歩き続ける。終盤は1日80kmにもなる。睡眠時間は1日2~3時間。さらに中盤の堂入りでは、9日間にわたる断食・断水・不眠・不臥。比叡山1200年の歴史で千日回峰行を達成したのは50人にも満たない。その千日回峰を二度も成し遂げた酒井雄哉は、戦争で心に傷を負い、事業に失敗し、妻を自殺で亡くすという人生に、39歳で出家。史上最高齢で千日回峰を達成する。壮絶なドキュメンタリー。
酒井雄哉氏、一度だけ間近で見かけたことがある。かつて勤めていた施設での講演に来ていただいたのだった。当時すでに高齢だったが、体はかくしゃくとしたもので、少しも偉ぶったところがなかった。