『説明組み立て図鑑』(犬塚壮志) #読了 #よしざき読んだよ
あなたは「結論ファースト」一本槍で説明していませんか? 本書は一般的に説明に有効と言われている「結論ファースト」で上手くいかない大人のために書かれています。「結論ファースト」が上手くいかない理由は、二つあります。
一つ目は、人は「結論=ファクト」だけで動くようにできていないからです。むしろ、ファクトが先に出されることで反感を覚えることすらあります。説明を本当に届けるためには、相手の「感情」にフォーカスする必要があります。本書は、長年にわたって駿台予備校で「説明」してきた筆者が認知科学に基づいて相手の「感情」を動かすための型を解説します。計80の型が収録されていますが、本当に大切なのは、相手の「感情」に焦点を当てることともう一つだけです。
そのもう一つとは、相手を「知る」ことです。「結論ファースト」が上手くいかない理由と重なりますが、客観的なファクトは客観的であるがゆえに動かしようがなく、相手の「感情」に合わせてチューニングできないのです。そして、相手の「感情」に訴えるためには、相手を「知る」必要があります。つまり、相手を「知る」ための事前準備をどれだけ深く行えるかが説明の成否を決めるのです。
説明の究極的なコツとはこの二つだけなのです。
『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』(武田綾乃) #よしざき読んだよ
ギブ
『サマータイム・アイスバーグ』(新馬場新) #読了 #よしざき読んだよ
【あらすじ】
三浦半島に住む高校二年生・宗谷進は毎年夏休みの間だけ叔父・若草鉄矢と叔母・若草優月の元に身を寄せていた。進は、同級生にして幼馴染みの富士天音を拠り所として同級生の安庭羽、天塩一輝と友だちだった。一年前、天音が不慮の事故で昏睡状態に陥るまでは。
今年も叔父たちの家で夏休みを過ごしていた進だったが、夏の補習の初日、湾に氷山が忽然と姿を現す。やがて進は、その氷山の下の浜辺で幼い天音の外見にそっくりなそれを持ち記憶を失った少女・日暈を見つける。進たち高校生三人は、日暈に天音を重ね見てしまい、かえって天音の不在を強く感じてしまう。しかし、引き起こされた不協和音は、日暈と進たちの今年だけの夏休みを忘れられない日々へと昇華させていくのだった。そんな夏休み、氷山の秘密を探る組織たちの魔手が着実に日暈と進たちへと迫っていたのだった。
青春×時間SFの忘れられない夏が来る。
『紫色のクオリア』(うえお久光) #読了 #よしざき読んだよ
読みました! 怪作! 「毬井についてのエトセトラ」は「玩具修理者」、「1/1,000,000,000のキス」は「酔歩する男」か。必ず小林泰三の『玩具修理者』を読んでから読むようにと言い含められていたのだが、確かにその通りである。同じような骨子でも意匠を変えることによって、こんなにも雰囲気が変わるのかと感動した。全般的に『紫色のクオリア』の方が好きですね(オタクなので)。
設定的にはループものというよりはむしろ平行世界ものという感じなのだが、平行世界をジャンプしながら友人を助けようとする姿から受ける印象はループものだった。ループものと平行世界ものとの近さを感じたし、今回書こうとしているのはループものなので、そこを意識した書き方にしたいと思った。
『海を見る人』より「海を見る人」(小林泰三) #読了 #よしざき読んだよ
「山の村」に住む少年だった主人公が夏祭りで偶然にも「浜の村」の住民である少女・カムロミと出会ったことにより始まったロマンス。「浜の村」は「山の村」よりも時間の流れが数十倍近く遅く、二人の年の差はどんどん広がってしまう……。要するに、この地球とは異なる重力圏を有する別世界の物語である。
ロマンスとしてはボーイ・ミーツ・ガールのストレートな味付けで好みである。読者にとっては時間 SF の物語に見えつつ、作中世界の人物らにとっては厳として存在するシリアスなハード SF の物語であるという、読者と登場人物とでジャンルが異なるという読み心地に新鮮味を感じた。
『クロノス・ジョウンターの伝説』より「吹原和彦の軌跡」(梶尾真治) #読了 #よしざき読んだよ
タイムマシン×ロマンスもの。制限時間付きでしか過去に戻れないタイムマシン、しかも現代には帰れずに未来に帰還させられるという代物を使って過去に戻り、愛する女性を事故から救おうとする男性のお話。
恋は盲目を地で行く男性がいじらしく、思わず手に汗を握ってしまった。彼と彼女の(事実上の)遺物が……というラストなのだが、最後に遺されたアイテムが物語の行く末を暗示するのは「美亜に贈る真珠」でもそうだった。得意のパターンなのだろうか? 短編 SF に相応しい余韻を遺したラストで巧みだ。現代では忘れられた作家になりつつあるのが不思議なくらい。
『ロマンティック時間SF傑作選 時の娘』(中村融・編) #読了 #よしざき読んだよ
書名の通り、時間を超えた恋愛を描いた短編を集めた一冊。SF 的なアイデアとしてはやや弱いところのある作品が多かったものの、十分にロマンティックさが勝っていた。特に好きだった作品を紹介。
「台詞指導」(ジャック・フィニイ)
私の好みにストライク。映画に出演する美人女優がどうしても役を演じきることができなかったが、ある出会いをきっかけに……、という一作。時間の取り扱いはサイエンスというよりむしろ奇想寄り。時間やロマンスに関するアイデアもさることながら、芸能界の描かれ方が良い。美人女優や主人公の台詞指導係やその他映画スタッフは、作中世界から数十年前に走っていた(作中世界ではもう廃止になった)1920年代のバスを深夜にこっそり走らせる。一夜だけの、いっときだけの秘密を共有する様子には、演技だらけに見える芸能界においてほんの少しだけ顔を覗かせる本物の感情が感じられた。美人女優が役を演じきれるようになった大ネタも滋味深く、何事にも抑制が効いていた。
「時が新しかったころ」(ロバート・F・ヤング)
アクションが光る傑作。豪快なアクションを支える少年少女と彼らに向き合う大人の感情の機微が細かく、読んでいてとにかく楽しかった。
『不思議の扉 時をかける恋』(大森望・編) #読了 #よしざき読んだよ
時間 SF の名作短編とそのアンサーを主に収めた短編集。「美亜へ贈る真珠」(梶尾真治)と「机の中のラブレター」(ジャック・フィニィ)が出色。
「美亜へ贈る真珠」は、浦島効果で時間の流れが外界よりも遅くなった男性と、彼を見つめるしかできない女性と、彼女に寄り添う男性の話。時間のズレに翻弄されるラブストーリーが三人で展開されるというのがいい。彼女の感情の奥行きがグッと広がった。本書の収録作「眠り姫」(貴子潤一郎)もそうだが、「むかし、爆弾が落ちてきて」(古橋秀之)はこのバリエーションか。やはりオリジナルだからか「眠り姫」より圧倒的に読み応えがある。
「机の中のラブレター」では、古い机に手紙を隠した当時の女性と、その机の新しい持ち主であり現代を生きる男性とが、時を越えた文通を行う。アイデア面での技巧は凝らされておらず、シンプルな味付けだからこ心に響く。正直、ちょっと泣いてしまった。
『ifの世界線』より「二〇〇〇一周目のジャンヌ」(伴名練) #読了 #よしざき読んだよ
先行のループものとは異なる読み心地のループものでありかつ王道の SF 作品としての本作を生み出すために、設定を巧みにコントロールしていると感じた。
登場人物にとって原因不明のループが嵩むと一般的にはホラー・不条理ものになるのだが、本作は大きく異なり、以下の二点によって王道の SF として成立している。
一点目に、原理的には無限回のループを起こせる計算機がループを起こすために非ゼロな計算時間を必要とすることにより、実際的には有限回のループしか起こせないという、ループの外部にその回数の物理的な制限を設けた点。ループの内部の主人公にとっては果てしない回数のループであるが、ループの外部の登場人物および読者にとってはしょせん原理の知られた有限のループである。この物理的制約によって、SF 的な読み心地が損なわれていない。また、ループに時間が掛かるということは、その時間で、ループの外部において、他の事件が発生し得るということでもある。
『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』(チャールズ・ユウ) #読了 #よしざき読んだよ
たぶん3回目くらいの通読。
今回は家族小説、つまり父-息子の対立軸を中心に読めました。息子と作ったガレージ製のタイムマシンで箱の中へ、箱の中へと縮こまっていく父を、息子が発見し、
父および息子自身と和解する話。今回はそのように理解しました。
本作におけるループは、時間によってもたらされるというより(いや、確かに一定程度は寄与しているのだが)、むしろ意識によってもたらされている? 堂々巡りの意識こそがループの原因であって、父の発見、和解がその堂々巡りからの脱出の鍵となる(たぶん)。
意識の堂々巡りが、時間の堂々巡り=ループをもたらしている(たぶん)というアイデアは非常にオリジナリティありますね。
『All You Need Is Kill』(桜坂洋)読みました。 #読了 #よしざき読んだよ
何度も読んだ小説ですが、改めて再読。筋はよくよく知っているだろうからまあいいや。
ループの出口はもちろん入り口まで書けたパターン。出口と入り口にロマンスを絡めて役が増えた感じ。私の先行文献調査によると、出口と入り口の接続を達成するのはけっこう難しいらしく、そこが評価された一因だと今ならわかる。
ループからの出口がループへの入り口と接続しているとやはりループそのものへの納得感が高まるものですね。出口さえしっかりしていればそれだけでループものとして成立すると確信を得ているから、自分の小説ではまず出口第一だけれど、余裕があったら入り口も出口に繋げてあげたい。
今回の再読では、アクション部分の切れ味の良さに気付けましたね。こまめな改行、短文、単語の繰り返し。これはそのままライブシーンを書く参考になるでしょう。4年近く書いていないライブシーンの経験値は溶けきってしまっているだろうから、こういう気づきを得られたのは僥倖でした。
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