『不思議の扉 時をかける恋』(大森望・編) #読了 #よしざき読んだよ
時間 SF の名作短編とそのアンサーを主に収めた短編集。「美亜へ贈る真珠」(梶尾真治)と「机の中のラブレター」(ジャック・フィニィ)が出色。
「美亜へ贈る真珠」は、浦島効果で時間の流れが外界よりも遅くなった男性と、彼を見つめるしかできない女性と、彼女に寄り添う男性の話。時間のズレに翻弄されるラブストーリーが三人で展開されるというのがいい。彼女の感情の奥行きがグッと広がった。本書の収録作「眠り姫」(貴子潤一郎)もそうだが、「むかし、爆弾が落ちてきて」(古橋秀之)はこのバリエーションか。やはりオリジナルだからか「眠り姫」より圧倒的に読み応えがある。
「机の中のラブレター」では、古い机に手紙を隠した当時の女性と、その机の新しい持ち主であり現代を生きる男性とが、時を越えた文通を行う。アイデア面での技巧は凝らされておらず、シンプルな味付けだからこ心に響く。正直、ちょっと泣いてしまった。