阿津川辰海『黄土館の殺人』ネタバレる 

:blobbonebook:

『黄土館の殺人 (講談社タイガ)』阿津川 辰海
地震による土砂崩れで田所と三谷の2人が、滞在する荒土館に閉じ込められた。そこで起きる惨劇。頼みの綱の葛城はいない。果たして2人は生き残れるか。▼館四重奏シリーズ第3作目。てかこのシリーズ、きちんと名前があったの知らなかったわよ。紅蓮館の記憶がほぼ皆無なせいで葛城が前作の蒼海館とまるで別人のように饒舌でビビった。元気になって何よりだ。ただ、こんだけ人が殺されるせいか、そこそこ分厚い作品のわりに妙に血の匂いが少ない印象を受ける。館シリーズはそんなことないんだけどねぇ。好みの問題かな。仕掛けは結構大掛かりです。

bookmeter.com/reviews/12092726

有栖川有栖『長い廊下がある家』ネタバレる 

『長い廊下がある家 新装版 (光文社文庫 あ 42-7)』有栖川有栖
火村先生の教え子が山奥で迷い込んだ幽霊屋敷で事件に遭遇する表題作ほか3編収録。▼再読。作家アリスシリーズ第19作目。こちらも新装版のため買い直し。ボリュームのある表題作、アリスの妙な推理が冴えに冴え渡っており私は嬉しい。まさにイリュージョン!焚きつける火村先生共々、いつも通りで安心する。お気に入りは当然『ロジカル・デスゲーム』。窮地に立たされてて、より鋭利さを増す火村先生が嫌いな読者などいるか、いやいない。わかるよ犯人、「私」が「俺」になったときの興奮、わかりすぎるくらいにわかるぜ…。

bookmeter.com/reviews/12091341

:ablobbonebath:

そういうわけで本日久々の1冊は有栖川有栖『スイス時計の謎』
懐かしいね~だいぶ中身忘れてたけど、表題作のロジックはタイトルの通りスイス時計のよう
でも今回の再読は太田先生の解説がとても刺さった
『自分自身では如何ともしがたい事態、到底容認できない不条理に圧し潰されそうになったとき、「ロジックが世界を支配する本格ミステリ」の世界に飛び込むことで、一瞬でも疲弊した心を癒すことができるのだ。それを人は逃避と呼ぶかもしれない。しかし、この一時、この一瞬が、壊れかけた魂を救うことだってある。』

そう、まさにここ1年はこの通りで本を読んでいる
現実のクソみたいな社会を一時でも遮断できる心地良さがあるんだよね

有栖川有栖『マレー鉄道の謎』ネタバレる 

:blobbonebook:

『マレー鉄道の謎 (講談社文庫)』有栖川 有栖
再読。第56回日本推理作家協会賞に輝いた作家アリスシリーズ第12作目&国名シリーズ第6作目。旧友の誘いでキャメロン・ハイランドを訪れた2人に訪れる災難。▼読み始めればあっという間の読み心地。絶対に滞在を延ばせない時間的制約のお陰で緊迫感がある。最後に犯人と対峙する火村先生はまさに狼そのもの。「あんた、何人殺してる?」は痺れるセリフです。あと何気にアリスのサムライ・イングリッシュとそれに突っ込む火村先生に和むし、それが事件を動かす最後の一手になってるのが上手い。「ピクチャー・スター」が出色の出来です(笑)。

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有栖川有栖『絶叫城殺人事件』ネタバレる 

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『絶叫城殺人事件 (新潮文庫)』有栖川 有栖
再読。作家アリスシリーズ第11作目。「殺人事件」というタイトル縛りの短編集。冷え冷えとするオチの『黒鳥亭』、見た目のインパクトと正統派密室トリックの『壺中庵』、映像で観たい&「えっ、そっちの名前?」な『月宮殿』。『雪華楼』は「たまたま」「刹那」の残酷さを感じる。意図しない庇い合いが事件をややこしくする『紅雨荘』。そして表題作、終始何とも言えない不穏感に満ちていて、一番「現代」に繋がる作品。といっても、もう20年以上前の作品なんだけどね。正直、現代はこの『絶叫城』の時代より酷くなっていると思わざるを得ない。

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孫沁文『厳冬之棺』ネタバレる 

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『厳冬之棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMソ 5-1)』孫沁文
半地下で水没していた貯蔵室で見つかった死体。陸家で起きた密室殺人事件の捜査が始まるが、新たに密室殺人が起きる。▼華文ミステリは初めて読む。ケラケラ笑ってしまう楽しい作品であった。3つの密室はどれも力技で、負けているサッカーの試合で反則級助っ人選手をブチ込んで無理やり点取って勝つみたいな、理不尽な喜びみたいなものに近いものを感じる(笑)。探偵役も予想外のところから飛んできたし、なんというか、日本のよく知っている作家じゃないからおもしろい、という面が少しあるかもしれない。あと、踊る大捜査線が好きなの?(笑)

bookmeter.com/reviews/11729973

有栖川有栖『暗い宿』ネタバレる 

:blobbonebook:

『暗い宿 (角川文庫)』有栖川 有栖
再読。作家アリスシリーズ第10作目。宿にまつわる短編集。取材旅行に出かけた先でアリスがお世話になった鄙びた(元)旅館の秘密が明らかになる表題作。最後にガラッと雰囲気が変わる不気味な『ホテル・ラフレシア』、怪しさ満点でこれが一番ミステリっぽい『異形の客』。一番好きな『201号の厄災』は火村先生に災難が降りかかる前段階が印象的。普段より良いホテルに泊まることになって、カーテンの開け閉めに戸惑うかもしれないと考える火村先生はなかなか庶民的。全編通してミステリ短編集とはいえないけど、どこかに泊まりたくなる作品集。

bookmeter.com/reviews/11715908

有栖川有栖『ペルシャ猫の謎』ネタバレる 

:blobbonebook:

『ペルシャ猫の謎 (講談社文庫)』有栖川 有栖
再読。作家アリスシリーズ第9作目&国名シリーズ第5作目。まぁ異色よね、異色という言葉がぴったり。ミステリとしては弱いのは仕方がない。一番好きなのは『暗号を撒く男』。なんといっても〆の一文が最高。笑いながら立ち上がる火村先生、画になる!見たら絶対好きになる(もう好きだった)ので誰かイラストにしてくれ。『赤い帽子』も良い。はりきりボーイ森下くんの奮闘記であり、最後の一文が上手い。ワッと捜査員が湧き上がる様子が手に取るようにわかる。最後の一文が良いのは『悲劇的』もかな。居眠りする神、説得力がある世の中ですわ。

bookmeter.com/reviews/11702293

有栖川有栖『朱色の研究』ネタバレる 

:blobbonebook:

『朱色の研究 (角川文庫)』有栖川 有栖
再読。作家アリスシリーズ第8作目。教え子から依頼を受けた火村が2年前の殺人事件の情報を収集し出したところ、火村宛に不可解な連絡が入る。
教え子へ向ける優しい目線があまりにも良い火村先生。今読んでもやっぱりそう思う(笑)。初読がまさに自分が大学生だったこともあって、どうしても大学生のつもりで読んでしまう。火村先生から「おやすみ」を言ってもらえる優秀な学生は羨ましいぞ。非常に手の込んだトリックと動機なので、落とし込むのは結構大変。まぁ動機に共感もへったくれもないので、そこは「そうなんだ」で済む話ですが。

bookmeter.com/reviews/11691233

有栖川有栖『英国庭園の謎』ネタバレる 

:blobbonebook:

『英国庭園の謎 (講談社文庫)』有栖川 有栖
再読。作家アリスシリーズ第7作目&国名シリーズ第4作目。美しい庭園と対照的な醜い真相まで英国っぽい表題作、まさに盲点の『雨天決行』、『竜胆紅一の疑惑』はオチにゾッとし、うっかりアリスの『三つの日付』、そんなアリスが大阪を爆走する姿が躍動感ある『ジャバウォッキー』、一番好きなのは倒叙モノの『完璧な遺書』。犯人から見た火村先生の怖さを感じるのがいつも好きなんだな。でも第一印象「身を持ち崩したインテリのギャンブラー」は笑った。アリス目線とはまったく違う火村先生が見られる倒叙モノは大変にお得です。

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方丈貴恵『時空旅行者の砂時計』ネタバレる 

:blobbonebook:

『時空旅行者の砂時計 (創元推理文庫)』方丈 貴恵
瀕死の妻を救うために、2018年現在から彼女の祖先の竜神家で惨劇が起きた1960年にタイムトラベルした加茂。惨劇を止めることで妻は救われるとマイスター・ホラは言う。かくして名探偵となった加茂に竜神家は救えるのか。
タイムトラベル機能がトリックに組み込まれていて、そのために前半のタイムトラベルの説明が懇切丁寧です。しかしどうにも登場人物と関係図の把握がしんどい…ここらへんは好みの問題かな。ただ3部作で本書の最後に次へのとっかかりもあった感じなので、次も気になる。楽しい設定だよね。

bookmeter.com/reviews/11666163

:blobcatread:

『日本近代史 (ちくま新書)』坂野 潤治
再読。幕末から太平洋戦争開戦前夜までの約80年間の政治史を一気におさらい。複雑な派閥や思想をなるべくわかりやすく説明してくれている感はある。第3章の西南戦争へ向かう政府内の考え方の違いなんかは「征韓論」だけではしっくりこなかった各々の動向が朧気ながらも見えてくる感覚はあった。そして第6章、派閥や思想があまりに細分化され、上手く舵取りができなくなったという記述もなるほどと思う。すべてそのまま飲み込むだけの、考えることを放棄した政権運営。難しいと思いつつも、政治家が考えることをやめたら終わりなのだ。

bookmeter.com/reviews/11652891

第6章、最後まで読み切った!ちょっと駆け足になっちゃったけど。
第6章は太平洋戦争前夜まで。海軍軍縮条約における小競り合いが事の発端みたいに読めちゃったけど、こういう火種が無数にあって、それがいちいち燃えて、派閥や指導者、思想が細かくなりすぎていったってのもあるのかね。そういったものを整理することを諦めた政府。そのあとは、、、という〆。
戦時中の記述については著者の記憶というところで少し記述があるのみ。まぁそこがメインではないのは最初からわかっている。最後まで読むと、ますますそのややこしさに頭を抱えるw
とりあえず読書メーター記録しよっと

坂野潤治『日本近代史』

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第5章まで行った。日清日露という2つの戦争のみならず限定的な参加になった第一次世界大戦の話から普選の話まで。平民宰相原敬が一貫して普選を認めなかったということで著者が結構辛辣に原のこと書いてるwまぁ地主が基盤の政党だからそうだろうなと思いつつ、普選いうても所詮男だけの時代だから(現代からそれを批判するのはちょっとズルいのは認めるが)チベスナ顔になっちゃう。あと一般市民も別に良心的じゃないしね…
あとはやっぱり、戦争にまつわるカネの影響は偉大。つい最近までこれやってたわけだから、戦争特需に拠る政権運営を封じられた現在のこの状況はむべなるかな、なんて思ったりしてね!

坂野潤治『日本近代史』

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第3章の、征韓論だけじゃない政府内の思惑、ややこしいんだけど確かに「征韓論」だけではしっくりこなかった各々の動きがおぼろげながら見えてくる感覚はあった。第4章、地租制度の関係から金を持ち始めた一部の一般市民(この時代は農民)が権利を主張し始めた話が議会の話と絡んでいるの、なるほどって思う。政府としてはいかに市民に力を持たせないか。どうやって増税するか、どうやって権力を拡大させるか。最終的には個人でも国でも、終着点は「権利の拡大」なんだよなぁという身も蓋もないお話になってくるw
ここからがたぶん本書の本筋なので、読むのも大変!感想も上手く書けない!!

坂野潤治『日本近代史』

読み進めているので適宜メモ
幕末編というか第1章第2章は西郷隆盛を基点として書かれているね、1度読んだくせに全然覚えてなかったけどwこういうのは詰まるところ西郷がインパクトのある死に方をしている部分が大いにあるだろうなぁ
西南戦争で死ななかったら西郷の評価というか捉え方もだいぶ違っていたでしょう
幕末の思想の考え方については1つ1つ紐解いていかないと本質が見えてこない
これは2年前の大河ドラマ『青天を衝け』でも結構描かれていた印象がある
読んでも読んでもこんがらがっちゃうw
さ、ご飯食べたら続き読も

坂野潤治『日本近代史』

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有栖川有栖『ブラジル蝶の謎』ネタバレ中 

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『ブラジル蝶の謎 (講談社文庫)』有栖川 有栖
再読。作家アリスシリーズ第6作目&国名シリーズ第3作目。火村先生の「こうするしかないんだ」が気になる表題作、膝を叩きたくなるようなオチの『妄想日記』『鍵』、語り口がいつもと違って新鮮な『彼女か彼か』、映像化してほしいトリック第1位(笑)の『人喰いの滝』。でも本書はやっぱり『蝶々がはばたく』が出色。蟹食いたい、で阿吽の呼吸で北陸行きを決める2人の良きコンビ感は勿論、阪神淡路大震災の直後に書かれたというこの短編は、東日本大震災を経験した今読むと改めて響く。理不尽な悲運の中にも、せめて、希望があることを願う。

bookmeter.com/reviews/11648080

有栖川有栖『スウェーデン館の謎』ネタバレ中 

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『スウェーデン館の謎 (講談社文庫)』有栖川 有栖
再読。作家アリスシリーズ第5作目&国名シリーズ第2作目。裏磐梯のスウェーデン館で起きた殺人事件に遭遇したアリスは火村を呼び寄せる。取材旅行先で事件に遭遇したアリスが火村を呼び寄せる形なので、火村先生は後半、風のように現れます。物悲しさが全編を覆っていて、昔読んだときよりも何だか寂しさを感じる。でも火村先生とアリスが2人で雪を被ってる姿を想像したら可愛い。足跡のトリックは想像しやすくてややこしくなく、だけど行為の背景は残酷だ。そして子どものための言葉だった「僕にまかせて」という言葉、最後は哀しく響く。

bookmeter.com/reviews/11645708

『ホワイトバグ』ネタバレるよ 

『ホワイトバグ 生存不能 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)』安生 正
世界各国で起こる猛吹雪中の惨劇。連絡の途絶えた気象観測隊の救出に協力するよう政府に要請されたプロ登山家の甲斐が現地で見たものとは。
『生存者ゼロ』に近いものがありますね。生物の「本能」はとにかく真っ直ぐで力強い。人体破損の顛末がかなりエグイのと、今回も変わらず知識と剛腕で捻じ伏せてくる感じなの、一貫していて良い。あとは政府側の描き方がいいなぁ。織田さん好き。マスコミのクズさもよくわかる(笑)。笑い事じゃないけど笑う。マスコミは誰も救済などしないのだよ。親子関係の話はもっと減らしても良い。ウェットだよね。

bookmeter.com/reviews/11639529

『海のある奈良に死す』ネタバレるよ 

『海のある奈良に死す (双葉文庫)』有栖川 有栖
再読。作家アリスシリーズ第4作目。アリスも面識がある同業者の死。だからこそさらに情緒的な雰囲気もありつつ、まぁトラベルミステリーですよね。ここで朝井先輩も登場。惚れた腫れたの話の中で火村先生のある種孤高な面が浮かび上がる気もしている。トラベルミステリーは火村先生とアリスの珍道中を楽しめるのでありがたいが、基本的には移動距離の長さがトリックに影響してくる作品はそんなに興味はないかな。まぁ学生時代の初読時から比べると私も旅行は経験したし、読みやすくなったかも。レンタル屋で駄々をこねる火村先生が可愛い。


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