毎年、お正月に定点観測的に福島復興についての概観の記事を書いています。
2025年は、「地元」と「福島再生加速化交付金」について書きました
国策としての福島復興の現在地 ・2025/その「地元」は誰なのか?
https://note.com/ando_ryoko/n/n613d580a9508
国策としての福島復興の現在地 ・2025/その「地元」は誰なのか?|安東量子
https://note.com/ando_ryoko/n/n613d580a9508
人口動態をちゃんと見てみると、福島の避難区域の持続可能性は極めて低いことが見えてきます。
そのための対策を取らなくてはならないのですが、石川県庁のように、きちんと自分たちの対応がまずかったところを検証して見直しをすれば、それも可能なのですが、福島の場合は、国も福島県庁も、復興政策に対して失敗を指摘されるとムキになって、さらにグレードアップして失敗を糊塗する方向へ全力で走ることを繰り返してきているので、先行き、相当に厳しいと見ています。
能登は、検証と施策見直しを繰り返して、少しずつブラッシュアップして、以前のようにはならなくとも、それでもがんばってよかった、とかかわった人たちみんなが思えるような復興になることを祈っています。
「課題先進地」と原発事故の被災地でもよく言われますが、被災地や過疎地は、どこもすべて「課題先進地」を自称するものですし、そう自称した地域で、課題を解決してモデルケースになった事例は、ほとんどない、というのが一般的です。
それに、14年も経てば、社会課題の方が先に進んでしまい、置き去りになっている、と考える方がより正確でしょうし。
また、最近聞くのは、原発の被災地は、政府に下駄をはかされてうまくいっているように見えるだけので、他の地域の参考にならない、というシビアな意見です。
「全住民避難による人口急減から再起を期す被災地は、地方が抱える課題解決の先進地とされた。本県には「挑戦」の合言葉がふさわしい。県、市町村、地域社会が一体となって新たな県づくりを前進させる力に高めたい。」
福島民報の元旦の論説も、あいかわらずの大本営広報ぶりで、せっせと県を持ち上げていて、「こりゃだめだ」感が濃厚に漂っています。
原発事故直後、被災町村の合併が取り沙汰された時に折れなかったことが唯一誇る成功談というわけですから、どれだけ、被災者のことをみないで、国との政治ゲームにばかり夢中になっているのか、がよくわかると思います。
「被災地」ではなく、権力争いゲーム大好きな地元おじさんたちグループ、というべきではないでしょうか。
「東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が発生した直後、被災町村の合併が中央で取り沙汰された記憶がある。被災地は屈せず、発災前より豊かな郷土づくりに挑んだ経験知は、本県固有と言っていい。」
先ほどのNスペでも、石川県は初動体制の検証を行なっていて、報告書を出すと言っていて、幹部(監)がカメラの前できちんと話していました。
検証なんてしないどころか、自分たちの対応を批判されたら逆ギレかだんまりで、黙殺、県民の意見は聞かず、基本、上から目線のマウント、その上、国には「おらおら」と要求はする福島県庁では考えられない対応です。
福島県庁、原発事故から一度も検証をしていないし、報告書を出したこともないと思います。
県知事や県庁幹部がカメラの前できちんと説明する場面も、ほぼ見たことがありません。
いろいろと地元の方にはご不満をおありだと思いますが、ただ、福島県庁に比べれば、はるかにまともに仕事している県庁だと思います、ということはお伝えしたいと思います。
石川県がボランティアを受け入れなかった件の記事が出ています。よい検証記事だと思います。
「石川県の職員さんに「私たちの失敗を書いてほしい。辛いけど、それが日本のためになるから」と言われて書きました。」
https://x.com/kensuke_yaoi/status/1874087205171581240
災害対策本部の会議参加できず、県庁の廊下で作業 冷遇されたボランティアの”調整役” 能登半島地震1年
https://news.yahoo.co.jp/articles/7c17c1647f3825bcd80033db7c23e740f9206d78?page=1
「若者が求める働く場が県内に少なく、大学進学などで県外に出た若者の「還流」が進まない要因の一つになっている。」
とありますが、私の身近なところでも、50代から60代の既婚女性が、長年の結婚先の扱いに耐えきれなくなり、離婚して県外に行った、という例が、ここ数年で何件か聞いています。
新卒就職の段階で、希望する職種がないのではなく、長期的な展望が存在しない、わかりやすくいえば、ロールモデルとなる女性が福島県内には存在しないことが、流出の大きな原因だと思います。
女性は歳を重ねても仕事を認めてもらえないどころか、あれだけ勤勉に働いていた人が。いよいよ見切りをつけて逃げ出さなくてはならないような待遇になるのか、と思うと、福島県内で就職という選択肢は回避することになります。
私も、ロールモデルとなる女性は福島県内には存在しませんし、同世代の相談できる女性も非常に少ないです。
若年女性の就職先の問題だけにしたいようですが、そうではなく、歳を重ねたら行き場がなくなることが見えているから戻ってこない、ということだと考えるべきだと思います。女性全般の地位の底上げを図らなければ解決はしないと思います。
福島民友で一面に若年女性流出の記事が載っていますが、ここで紹介されている20-34歳の未婚女性の男女比が、20年の国勢調査で、全国でもっとも高くなっているというデータは内閣府のサイトに掲載されています。
https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr23/img/chr23_01-02-13z.html
「さらに、20年の国勢調査では県内の20~34歳の未婚の女性1人に対する男性の人数の比率は1・35人と全国で最も高くなった。女性の県外流出が多い状況を反映し、県内で若い世代の女性が少なく、男性が多いという状況が起きている。」
若い女性の流出...対策待ったなし 福島県、20~24歳が社会減の3割
https://news.yahoo.co.jp/articles/164002db36d008e4bfdd8be6f3b8a7f54d3c7ae5
男性と意見が対立した時に、女性が「嘘つき」扱いされることは珍しくなく、ごく普通にあたりまえにあります。
私も何回も経験があります。
嘘をついていたのは、明確にあちら側なのですが、相手が男性である場合は、嘘をついているのは女性側になる、ということを思い知りました。
(仮に相手が嘘をついていたのがわかったとしても、「相手に嘘つかせるようなことをしたあなたにも落ち度がある」と言われる。)
こうした感覚そのままに裁判官が判決をこれまでも出していましたし、それが今も続いている、ということだと思います。
今回、抗議をしていた女性たちに対して、見下した反応が非常に多く出たことも、日本社会の男尊女卑ぶりがいかに強いかを実感させるものでした。
今回の判決文で、多くの女性がなぜ怒っているかについて、論理的に書いた文章が出ていました。
痴漢であったり、性犯罪であったり、同意のない性暴力を一方的に受けたにもかかわらず、「自分だって楽しんでいただろう」とニヤニヤしながら男性に言われる〈いつもの〉あの感じ、を思い出した方も非常に多いのではないかと思います。
何年か前に、Cakesの人生相談で、男性写真家が女性相談者の夫のモラハラへの相談に対して、相談者の女性を嘘つきよばわりして大炎上したことがありましたが、あれをそのまま彷彿とさせます。
「今回1審の大津地裁は裁判長、右陪席、左陪席とも女性でした。大阪高裁では左陪席のみ女性。女性が3人そろうと、性犯罪被害者の心理を十分に理解した判決が出るのに、男性が多数になると「女は嘘つきだ」という前提になってしまう。これは法曹教育の問題というよりも、幼い時からの「性的同意教育」の問題です。」
「2017年以前に巻き戻されたよう」 滋賀医大生による性加害事件 1審、2審で分かれた判断 千葉大学の後藤弘子さんに聞く
https://s-newscommons.com/article/6213
ここのところの財務省批判、ずいぶん盛り上がっているなと思っていたけれど、『ザイム真理教』なんて本が出ていて、21万部のベストセラーになっているのは知らなくて、びっくりしました。
戦前に国債について、大政翼賛会がまったく同じことを言っていたというのも、新しく知りました。
「国債がたくさん増えても全部国民が消化する限り、すこしも心配は無いのです。国債は、国家の借金ですが、同時に国民が貸し手であります――。
1941年10月に大政翼賛会が国民に国債の購入を促すために全国の隣組に配った読本「戦費と国債」の一節だ。」
戦前も吹き荒れた大蔵省批判 蔵相は射殺、その後の日本が進んだ道は
https://www.asahi.com/articles/ASSDR0SKKSDRUPQJ006M.html
この記事の本文インタビューとは少し離れますが、紹介されているこのドラマも復興予算で、テレビの放映枠を買い取る?形で作成したドラマでしたよね。
こういう復興予算の使い方もどうかと思います。
なにもかにもが「東京目線」だと感じます。
東京目線で、福島のために!で盛り上がって、それに同調できる地元の人だけが盛り上がっている、という状況が、過去ずっと続いてきたと感じていますが、それをコロニアリズムというのではないでしょうか。
「来年1月以降、順次放送されるオムニバスドラマ「風のふく島」(テレビ東京系、全12回)は、うち1回の主人公のモデルが浜田さんだという。ロックバンド「HOUND DOG」のボーカルで俳優の大友康平さん(68)が主人公を演じる。」
見守りたい、心の復興 福島・双葉町に単身移住、元副復興相・浜田昌良さんの覚悟
https://mainichi.jp/articles/20241223/dde/012/040/007000c?fbclid=IwY2xjawHeJLlleHRuA2FlbQIxMQABHXNsgIBzOHbOu-Hc7azjZW7x3W0gcfivBV2oXrik-SkKaUPoMq_eZDJBEA_aem_PxKNoVS_aSiUyvnZVOFnHw
この情報を知っていたら、私の人生はたぶん違っていただろうな、と後から思うことはいくつかあるのですが、2011年5月当時の福島県知事と西田敏行さんも一緒になって行っていた福島産の農産物をみんなで食べて応援の映像は、当時、これをテレビで見ていたら、私は今につながる活動をしていなかったかもしれない、と思うもののひとつでした。
あの当時は、福島の農家の人自身も、安全性に確信が持てず、本当に安全でないものを出荷していいのか、と逡巡していた時期でした。
本当に安全とわかったものしか生産者として出荷したくない。だから、検査が必要だし、検査して安全なものだけを出荷したい。そういう方がとても多くいました。
そして、福島県のやみくもな安全アピールに対しては、生産者含めて批判的な人が県内にもとても多かったです。
福島県に対する信頼は、当時、県内でも非常に低いものでした。
あの時期の安全アピールの広告は決して褒められたものではない、というのは昨日も書きました。
それを美談のように報じて、歴史を改竄するのはやめていただきたいです。
報道の若い方たちも当時のことをご存知ないのだとは思いますが、福島県の当時の安全アピールは問題が多かった、ということは共通認識にすべきだと思います。 [参照]
作家/NPO福島ダイアログ理事長/博士課程後期在学中
原子力災害後の復興政策と地域住民のギャップを埋めるためのローカルプロジェクトの意義と重要性について研究する予定。
・著書『海を撃つ』(みすず書房)
『スティーブ&ボニー』(晶文社)
『末続アトラス2011-2020』(福島のエートス)
寄稿や講演・講義のご依頼承ります。業績については、researchmapをご覧ください。
連絡先:スパム予防で全角にしてあります。全体を半角英字に、(@)→@に置き換えてご送付ください。 ryoko_ando(@)me.com