原子力学会の廃炉シナリオを検討した宮野さんは、現行の廃炉の時間軸は無理という話をずっとされているわけですが、現在の30年という案は、とりあえず目標を置いておかないと作業が進まない、程度のものに過ぎないのに、30年で終わらせるという目標として一人歩きしてしまった経緯は、除染目標の0.23と似ているところがあるとは思います。
下記インタビューでは、デブリ本体の本格取り出しに着手できるのが2050年頃ではないかとも書かれていて、そのあたりが妥当なところであるような気がします。
取り出し工法は決まっておらず、考えられる案は、いずれにしても難易度が極めて高く、その上取り出したとしても、安全に保管できる場所が確保されていなければならない、という高いハードルがいくつもあります。
福島原発の廃炉「2051年完了」は無理。宮野廣・原子力学会廃炉委委員長が現実的な展望の必要性を指摘
https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/66e998f78cd60fc25e8e1924434f90c773ebd4e8
やはり福島第一のカメラの不具合は、高線量が原因らしいとのこと。
「このトラブルの原因について、一度デブリに触れるまでに近づいたロボットが、非常に強い放射線にさらされたことで「電荷」がたまる、いわば電気が内部に蓄積された状態になってしまい、過剰な電流が流れて電圧が低下、それがカメラの不具合を引き起こした可能性があるとした。」
<福島第一原発>非常に強い放射線に晒されカメラに電気蓄積で不具合か 燃料デブリ試験的取り出し中断で
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ed7cec264e6046a540e241227734cf6cf19db8f
南海トラフの臨時情報についての否定的な指摘です。24時間無料で読めるようにしました。
自民党総裁戦の議論で、石破さんが「予知をもっと充実させて」と言っていて、専門家委員会で「予知は困難」とまとめられたことがもう忘れられて、また地震予知偏重地震学の再来になるのか、とここでも昭和逆戻りになるのか、と驚きました。
「2013年には内閣府の専門家委員会が、地震予知は困難だという報告書をまとめました。東海地震の予知を前提に警戒宣言を出して社会・経済活動を止める体制がなくなり、日本の地震学を縛っていた予知への期待から解放されたと思いました。しかし臨時情報の仕組みができ、似たことが形を変えて続くことになりました。再び地震学の実力が過大評価され、過度な期待を抱かせることにつながりかねません」
南海トラフ臨時情報は必要か 地殻変動学者が指摘する最大の問題点は
https://digital.asahi.com/articles/ASS9N1H9TS9NUPQJ005M.html?ptoken=01J8NTQ4VSDVEJDY9M2A7F7PD5
東日本大震災の調査報告で、自治体職員の仕事の過酷さとメンタルヘルスの不良、自殺者の多さは既に多く報告されています。
自治体が災害対応業務を一手に担うというのは、大災害の場合は、みずからも被災者である自治体職員の犠牲なしには成立しない、というのが現状だと思います。
ソーシャルメディアで、自治体の対応の悪さを指摘する声も多いのですが、背景には、圧倒的なマンパワーの不足と、日本の災害時対応の制度的脆弱さがあることは踏まえておいた方がいいと思います。
応援職員にしてみても、増えれば増えるほど意思疎通の難しさが増し、硬直性が増すということから考えても、現行の仕組みでは対応が無理だと思います。
OECD加盟国内で、公務員の比率が最低である、恒常的に公務員の人員が足りない日本の圧倒的なマンパワー不足も大きな背景のひとつだと思います。
小さな政府を志向するのに、公共サービスの充実を求めるというのは無理があると思います。
「復興」をどういう意思決定プロセスと体制で進めるかという根幹となる自治体で職員が減ってしまうと身動きできなくなるので、今後どういう体制で進めていくかは真剣に検討しておいた方がいいと思います。
福島の避難自治体の復興計画がとんちんかんであったり、住民側から自治体との意思疎通がまったくできない(自治体による差が大きいですが)、とのクレームが出る理由の大きな原因に、自治体によっては、半数が応援職員になっており、役場内での意思疎通や意思決定ができないことも大きいと思います。
応援職員は、人数にはなったとしても、大きな意思決定や、既存の進め方への変更することは、まずできませんから、硬直的な仕事の進め方が大勢になっていくと思います。
「県によると、早期退職者のうち市町の公立病院の職員が96人を占めた。市町長部局では計47人。輪島17人、七尾11人、珠洲と能登が各8人、穴水2人、志賀1人だった。2023年4月時点の6市町の職員数は市町長部局で1253人という。」
能登地震被災6市町の職員143人が早期退職 石川県職員109人も
https://www.asahi.com/articles/ASS9N55SDS9NPJLB003M.html
あれだけ揉めていた台湾がすんなり規制緩和になったのは、ウクライナ侵攻以後の国際状況変化と、ここでも中国の世論介入がなくなった影響もあるのでしょうか。
「規制緩和の対象は、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産の野生鳥獣の肉やきのこ類などで、放射性物質の検査証明や産地証明の添付を条件に輸入を認める。」
台湾、日本で流通する食品は全て輸入可能に 原発事故後の規制を緩和
https://www.asahi.com/articles/ASS9T3QS0S9TUHBI02GM.html
韓国も保守と革新とで大きな段差がある国ですが、これで、政権が変わったらまたどうなるのか、という感じはあります。
「韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権が原発の輸出に力を入れ始めた。2030年までに10基という目標を掲げ、大統領のトップセールス外交を展開。国内でも前政権の政策を転換して新たな原発建設を許可し、「原発推進」の姿勢を鮮明にしている。」
韓国が原発輸出推進 大統領、欧州へ売り込み
https://www.asahi.com/articles/DA3S16043754.html
1月の元旦から、人手は恒常的に不足し続けて、被災したなかで復旧活動が上乗せされた状態で、さらに上乗せなので、災害規模が自治体の能力を完全に超えているだろうと思います。
これこそ、南海トラフなどの時のことを考えてもどうするかという話だと思うのですが、自民党総裁戦では「予算をつける=金をばら撒く」以外の議論は出ているのでしょうか。
また、政治部の記者たちはきちんと質問しているのでしょうか。
「穴水町の吉村光輝町長は孤立集落や土砂崩れ、道路冠水が発生しているとして、「これから(復旧のために)各家庭や地域で膨大な人手が必要。短期間での処理が必要で、地域の人や行政だけでは対応できない」とボランティアの協力を要請した。」
能登豪雨「地域や行政だけで対応できない」 被災首長ら窮状訴え
https://mainichi.jp/articles/20240922/k00/00m/040/187000c
能登の今回の水害について、政治家サイドからなんの動きも出ていないことについて、被災地の方たちは、非常にご不安だろうと思います。
対応は実務レベルで行うから問題ない、とよく言われますが、実際にはそんなことはなく、総理大臣なり、大臣なりが方向性をしっかり出して対応を行うかどうかで、機敏さがまったく違ってきます。
非常時にこそ、政治家のメッセージと差配が重要となるので、ここで政治家がメッセージを出さなくても差し支えない、というのならば、そもそも私たちはいてもいなくてもどうでもいい存在です、と自分で言っているようなものではないでしょうか。
「しかし、大きな被害が生じているにもかかわらず、林氏は首相官邸の出入りの際に記者団の取材に答えるだけで、記者会見は行っていない。関係閣僚会議も開かれていない。」
能登豪雨、閣僚会議も官房長官会見もなし 国「状況踏まえて対応」
https://www.asahi.com/articles/ASS9R3K15S9RUTFK00MM.html
福島の風評被害がどうとかいう話も、最初から一貫して同じ流れだったわけではなく、いくつもの出来事が節目となって、それが大きな社会的反応を引き起こし、変化が起き、といったいくつものプロセスを経ています。
これだけ長引くことになった福島の風評被害の最大の引き金となったは、2011年当時の福島県知事による「安全宣言」の失敗でした。
「安全宣言」をした直後に、検査した米から基準値超えがたくさん出てしまったために、行政に対する信頼も、福島の生産者に対する信頼も壊滅的になってしまいました。
生産者本人たちもまだ、本当に安全な食品を生産できているか疑心暗鬼の時に、拙速に「安全宣言」をしたがために、検査への信頼も壊滅的となり、その後のコメの全量全袋検査も必要となってしまいました。
本来は、こういうことこそ、リス込みの失敗事例として記憶され教訓とされなくてはならないはずなのですが、ほとんどの方は忘れていると思います。
2011年の原発事故のときのこともよく覚えているのですが、当時のTwitter上で、福島への風当たりが強くなったのは、その年の7月に東京で福島から出荷した牛肉から基準値を超えるセシウムが検出されてからでした。
7月までは、少なくともTwitter上では、そんなにも福島をディスる声は多くはなく、むしろ、同情や応援の声が多かったと記憶しています。
それが、7月の牛肉に基準値超えが報じられると一変し、特に論争的な話題を書いているのでなくとも、普通に罵声が飛んでくるようになりました。
その極端な変化ぶりに驚いたので、よく記憶しています。
13年後のいまは、当時よりもさらに首都圏に人口が集中し、地方は過疎化し、みな内向きになっているので一層そうだろうと思います。
起きるか起きないかわからない南海トラフ地震の注意情報の時にはあんなにも騒然となったのに、これだけの豪雨被害がすでに出ている能登半島の時には、平然と総裁選の議論を続けるのは、首都圏に機能が集中し過ぎている弊害だと思います。
地方で起きる事柄についての関心の低さと、首都圏がかかわることでは些事でも大騒ぎをする(たかだか5cmの降雪でも災害特番を組む)のアンバランスさは、日本社会全体が内向きになっている様子がよくわかるように思います。
処理水放出、日中双方の外務省と外交部の公式声明が出ていました。
双方の共通するタームと、異なるタームを比較してみると、だいたい方向性は見えてくると思いますが、今回の場合、重要なのは項目4で双方ともに「中国側は、中国の関連法令及びWTOルールに基づき、日本産水産物に対して緊急的・予防的な一時停止措置を講じた」とあります。
要するに、中国の輸入停止措置そのものは中国側の非を問わないが、「緊急的・予防的な一時停止措置」であると明言してあります。
中国側の声明には「独立したサンプリングを実施し、結果を確認した上で、関連調整を進める」と、書かれており、「結果を確認した上」であれば一時停止措置を解除するという伏線はもう張られているので、あとは、そのタイミングがいつか、ということだけだと思います。
日本側は「輸入禁止の即時撤廃」、中国側は「核汚染水」と「中国の関連法令とWTOルールに基づき」はそれぞれ譲れない線だったのだと思いますが、大筋きれいに一致しているので、合意はうまくいったのだと思います。
日中間の共有された認識
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01181.html
2024年9月20日外交部发言人毛宁主持例行记者会
https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202409/t20240920_11493741.shtml
三菱総研が除染土の再利用と最終処分について、まっとうな提言を出していました。
提言されているのは、以下の3点でそのとおりだと思います。
物量と付随するコスト、安全性について「定量的に示す」ことは、それによって「安全性を説得する」ためではなく、判断の大前提として共有が必要だと言うことです。
環境省はその区別がついておらず、両者を混同し、判断材料として定量的に示すのではなく、安全だと説得するために定量的データを使ってしまうため、データそのものが信頼されなくなる、という負のループを招いています。
都合の悪いことはいわず、都合のいいことだけを宣伝する広告代理店の宣伝手法を最初から採用したため、そうなるのだと思います。
・最終処分に向けた取り組みの全体像を示すこと
・物量・安全性などを定量的に示すこと
・意思決定のプロセスを示すこと
大きな転換点を迎える福島環境再生
中間貯蔵除去土壌等の最終処分への課題と針路
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20240909.html
能登の豪雨被害で、自民党、総裁選のネット討論会、中止にしないんですね。
さすがに林官房長官は官邸に詰めているようですが、岸田さんも最後に飾る華といっても、アメリカに行ってしまっているし、人的被害がすでに出ていて、今晩さらに雨が降るというなか、さすがに間が悪いのでは、という気がします。
西日本豪雨のときの、赤坂自民亭を彷彿とさせます。とはいっても、当時は怒ったものの、いまは「自民党はそんなもの」と思っているので怒る気にもならない、というのが大きな違いかもしれません。
石川の政治関係者は立腹しているのではと思いますが…。
作家/NPO福島ダイアログ理事長/博士課程後期在学中
原子力災害後の復興政策と地域住民のギャップを埋めるためのローカルプロジェクトの意義と重要性について研究する予定。
・著書『海を撃つ』(みすず書房)
『スティーブ&ボニー』(晶文社)
『末続アトラス2011-2020』(福島のエートス)
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