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「オッペンハイマー」下の補足 

いやヴィランいる必要あったんかといえば必要はあって物語のツイストとしてうまく機能して面白くなってるんですけど、別にそこをそのツイストで面白くするよりオッペンハイマーの内心の倫理的葛藤とかそういうあんまり面白くはないかもしれない部分にフォーカスできんのかっていう意味で。私怨系のヴィランがいちゃうと主人公側の内省があんまり進まないというか。

「オッペンハイマー」RDJ 

RDJはすごくうまかった。演技うま!ということを強烈にリマインドする出来。しかしそれゆえにストラウスの私怨がオッペンハイマーの転落の原因だったという要素の存在感がでかすぎ、オッペンハイマーの倫理的葛藤とかそのへんの要素がかすみまくったという気はする。ストラウス、こんなに存在感なくてもよかった説。
あとクライマックスのストラウスのオッペンハイマー評はわりと一理あることを言ってると思うのだが明らかなヴィランが言ってるので物語内ではあんまり正当性がなく、そのへんもオッペンハイマーの人物の複雑性を削いでいるような気がする。
RDJのストラウスはヴィランとして良かったんだけど良かっただけにいやこの物語にヴィランいる必要あった?みたいな所感です。

「オッペンハイマー」面白かったな。面白いということが何を意味するかは要審議なんだけど。それにしてもちょっとでもまとまった台詞のある役はほぼ主役級の俳優がやってて学芸会みたいだった(*演技の質にかかわらずこの役の子もあの役の子も全員知ってる!という状態を学芸会と呼んでいます)。皆さすがに上手かったけど気が散った。多少知らない顔も入れてほしい。

「オッペンハイマー」所感おまけ。 

というような感想を実家との電話で話していて、「エンタメの人ってこんな重い題材でもこんな普通に面白い映画作れるんだなって思って感心した」という所感を述べたら「面白くしか作れないんじゃない?」と言われて感銘を受けた。たぶんそうだと思う。たとえ問題提起するような映画を作るぞって思っても面白くしか作れないんだと思う。面白い物語にしかできないこともあるけど面白い物語にはできないこともある。

「オッペンハイマー」所感つづき。 

前半2時間は原爆ができるまでのプロジェクトXみたいなもので、オッペンハイマーはそこで人生の絶頂を迎えるので、ぴったり残り1時間がそこからの転落になるわけですけど、それにしても原爆が人道への罪だったから転落したわけじゃなくてふつうに水爆推進派にポリティクスで敗れたからなんですよね。本人に倫理的葛藤があったということは描かれているけど、転落の直接的原因としてはそれじゃなくて、オッペンハイマーが政治家としてはナイーブすぎたから、というように見えるし。いやまあ歴史に忠実に描くとそうなるんだろうけど、やっぱ徹頭徹尾アメリカンポリティクスの話だな…という先のトゥートに述べた印象が導かれます。

ただそれと「人類に過ぎたる力を与えてしまった男」みたいなナラティブはあんまり合わないかなーとは思った。アメリカ=世界じゃないんだしこんなドメドメした小さな物語をなんか人類全体に示唆があるものとして拡張されても無理やで感はある。

「オッペンハイマー」3時間チャレンジしてきました。 

ノーラン印の非直線的なナラティブで、オッペンハイマーが原爆を製造するに至る1920~40年代の経緯と、1954年の聴聞会、1959年の上院公聴会の3つのシーンがどんどんカットバックで交差していく。というわかりにくい構造のわりに特にわかりにくさもなく進んでいくのでさすがのストーリーテリングぢからだった。

で面白いのかというと面白いんですけど、それはアメリカが舞台のポリティカルスリラーとしてすごい面白いので、原爆が人類に残した爪痕みたいなことへの興味はごくごく浅く、題材のわりにえらいドメスティックな映画だなっていう気はする。でもそれが現実…というかあの時代、原爆の製造も使用もアメリカにとっては”我が国”イシュー(我が国の敵に対する強さ、我が国の防衛、我が国の我が国の以下略)であって人類へのなんたらみたいなことは興味もなかった。オッペンハイマーは科学者であって政治家じゃないからその身も蓋もなさがわからなかった。いやほんと人命や人間に対するこの程度の浅い理解であんなすごい武器とか作ったりしてたのか…って思いました。人類、人類に対する理解が一番足りてない。

前も言ってたけどロマンスにおいて倫理を逸脱しがちなのはロマンスがそもそもそういうものだから=社会的な価値よりも"あなた"がどう思うかが大事の世界だからで、盗んだ車で走り出したり人の家のプールに忍び込んだり他人に消化器を噴射したり軽犯罪(時に重犯罪)がロマンチックな場面になりがちなので、どういう逸脱をどれだけ許せるかがロマコメを楽しむためのポイントかなあ。

社会的な意識やモラルの変化もあるけど私自身の感覚の変化も大きいとは思う。ロマコメって主人公が多少倫理に反することをしても許される(*欠点がある主人公が愛されることに意味がある)という性質があるので、主人公をどのくらい許せるかというのは時代の風向きとか個人の感覚とかライフステージとかとにかくすごく微妙な問題なのだった。

ロマコメを見たからアマプラのおすすめにロマコメが現れるようになり、その中にサイモン・ペグの「Man Up」があったのでちらっと再見してた。これ2015年の作品でたしか当時DVD買ったくらい好きだったんだけど、8年後の今見ると目をつぶりきれないところある。ロマコメにはほんとに賞味期限ある!

題材からいって宇宙開発ものかと皆思っていたら宇宙ホラーものだった「First Man」の話しますか?(チャゼル関連作で今のとこ一番好き)

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そのへんの話「Bros」が公開した時にもちょっと出てた?気がするんだけどあんまり追ってなかったな。

私はこれについてどう考えたらいいかよくわからないんだけどゲイロマンス映画における奔放な性の描写…奔放っていうかポリアモリーっぽい?友達でもファックはする的な線引き?ってよくあるけどこれって偏見の再生産になるのかなー。へテロロマンスでもそういう文化界隈って普通にあるだろうけど映画ではあんまり描かれない気もするし。

あとイタリア映画「Mascarpone (原題Maschile Singolare) 」も見た。舞台はローマ、夫から突然離婚をつきつけられたアントニオが恋に仕事にがんばるゲイロマコメ。キュートでよかったけど、起承転結の転を登場人物の安易な死で済ましているので個人的には減点。アントニオの恋のお相手で出てくるのがもれなく全員グッドルッキングガイでローマすごくない?!ってなりました。

しかし実在の人物だから人の人生にケチをつけるようであれなんだけど宇宙飛行士というめちゃくちゃ時間のかかる夢があって自分は家庭にあまり時間を割けないとわかってるのに五人も子供作るのは…と思ったがまじで余計なお世話なので略。いや映画では宇宙飛行士しか眼中にない!みたいな感じだけど実際の人生ではいろんな事情があるんでいいんだけど。物語としてみるとこの主人公ちょっと…ってなっちゃうけど。

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「A Million Miles Away」見た! 宇宙飛行士ホセ・ヘルナンデスの自伝風フィクション。貧しい季節労働移民の子から宇宙飛行士への道のりを描く。まんまあらすじの通りなので私にはちょっとストレートすぎたかな。そういうのが見たい場合は良いかも。

アマプラにペーニャ主演の「A Million Miles Away」きてる〜。がんばって宇宙飛行士になる話(小学生風あらすじ)っぽい! 調子が戻ったら見よ。

「The Map of Tiny Perfect Things」見てる。同じ1日を繰り返すタイムループもの。しかしいつも思うけど、本当に同じ1日がずっと続くならまずやることは映画見たりゲームしたり本読んだりYouTube見たりとにかくなんかコンテンツ系を制覇することでは? 外の世界で何が起こってるか見てみようって一万ループくらいしないと出てこない発想。

私はピンさん推しだからカンフーパンダはじつは2が一番好き。一番出来がいいのは3だと思うけど一番熱いのは2。

作業中に大好きな「カンフー・パンダ3」を流してたんだけど、ポーの育ての親ガチョウのピンさんが本当にいい人なのでポーはスーパーラッキーパンダやで…とまた思うなどした。自分が拾って一生懸命育てたパンダにある日突然親パンダが現れて親ヅラしはじめた時に「(生みの親が現れたからって) 私から何かが奪われるわけじゃない。ポーが得られるものが増えるだけだよ」って普通のガチョウには言えないよー。まして普通の人間には。

今日見た中では「Polite Society」が一番面白かったな。ドラマ「We Are Lady Parts(絶叫パンクス レディパーツ!)」のニダ・マンズール監督の初長編映画。 

パキスタン系の家庭に育ったリアはスタントウーマン志望。しかし仲良しの姉レナが親の薦める相手と結婚することになり、なんとかして止めようと奔走する……というあらすじからは一瞬想像つかないくらいアホでコメディでアクションでポップでロック。ナードで頑固で子供っぽくて(子供なので当然)喧嘩っぱやいリアがすごく魅力的。

あと序盤の物語のうまいところは、お見合い結婚させられてしまう姉を救う!とリアは思っているものの、自分の才能のなさに絶望し将来に迷っていたレナにとっては結婚は絶好の解決策…みたいなのも描いてるところだと思う。移民二世三世における伝統的な親世代との対立みたいな部分は最近ほかの映画でも見るけど今作ではその部分は薄め。

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