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『ユリイカ 2024/11 特集 松岡正剛』
青土社 2024年11月発行

すごーく久々にユリイカ買ってきた。こういうのが出ると、本当にセイゴオさん亡くなってしまったんだな、と実感する。明日からじっくり読みます。

『地雷を踏む勇気』
小田嶋隆著、技術評論社 2011年11月発行

"特定の話題の周辺が地雷原になっているということは、その話題が「圧力」を獲得したことを意味している。そういう場合、誰かが地雷を踏みに行かないと、議論が死ぬ。無理が通って道理が引っ込む。かくして、弾圧は成功する。"

日経ビジネスオンラインのコラムを再構成した本。小田嶋さん、よく地雷を踏んで炎上していたけど、わざとだったのね。小田嶋さん亡き後、その役割は誰が担ってるのだろうか。ちなみにこの本、技術評論社から出ている。ちょっとびっくり。ずっと日経BPだと思ってたよ……。

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『ラ・ロシュフコー箴言集』
二宮フサ訳、岩波文庫 1989年12月発行

"人が悪徳をとがめるのも、美徳を称えるのも、すべて私利私欲からにすぎない。"

"真実は、見せかけの真実が流す害に見合うだけの益を、世の中にもたらさない。"

"愛されていると思い込むほど自然なことはなく、またこれほど当てにならないこともない。"

"誰も彼も自分はほかの人より抜け目ないと思っている。"

"虚栄心の種類はとうてい数え切れない。"

17世紀のフランス貴族ラ・ロシュフコーによる箴言集。日本で言うと江戸時代初期の本だけど、大半は今でも通じるものがある。人間は変わらないものね。こういうのって、若い頃もそれなりに楽しく読んだけど、ある程度の人生経験を踏まえて読むと、ますます楽しめるものだと思う。

『世界史を動かしたモノ事典』
宮崎正勝編著、日本実業出版社 2002年12月発行

モノに着目した世界史雑学本。ここでのモノは物体に留まらず、文字、都市、太陽暦、メートル法といったものも含まれる。どこかで薦められていたので購入したのだけど、どこだっただろう。なろう系小説の資料としてはけっこう役に立つと思う。十数名の著者による合作だけど、それぞれ参考文献が明記されてるので助かる。

『完結版 アーシアン 1』
高河ゆん著、集英社 2002年10月発行

天使(異星人)が地球人を評価し、マイナス評価が1万になれば人類を滅ぼす。プラスの評価員ちはやとマイナスの評価員影艶コンビを軸に描く、BL漫画でもあり、SFでもあり、ファンタジーでもある。1980年代から15年にわたって連載された作品。2002年完結。

最初の方だけは読んだことがあった。懐かしい。意外と覚えているものだねー。現在の水準で眺めてしまうと、絵とか読みやすさとか構成とかちょっともにょるし、80年代の表現にぎくりとしたりもする。徹底的に同性愛が否定された舞台での同性愛、というのも、なんかテンプレ過ぎるのね。それでも、たまに思い出して、無性に読みたくなったりする、そういう類いの作品。

『グイン・サーガ 5 辺境の王者』
栗本薫著、ハヤカワ文庫 1980年10月発行

第一部「辺境篇」完結。一気に物語が動く爽快感!

この巻から「あとがき作者」栗本薫らしいあとがきになった。そして、これまでの巻には物語世界での単位に矛盾があった理由が明かされる。単位を正確に決めたのは前巻のあとがきを書いた時だったと(笑)。中世あたりは地域によって度量衡はまちまちだったし、多少はよろしいのでは。グイン世界の単位系はわりとしっかり作られているので、今でも「うちから都内まで7タッド」「電車で1ザンちょっと」みたいに、私にとってはヤード・ポンド法よりはずっと自然に使える。

ともあれ、これでノスフェラスを舞台とした物語は一段落し、次からは占領下のパロの宮廷にメインの舞台が移る、だったはず。ヒロイック・ファンタジーから宮廷ファンタジーへ。戦いと怪異と冒険の世界から、文明と陰謀の世界へ。

『グイン・サーガ 4 ラゴンの虜囚』
栗本薫著、ハヤカワ文庫 1980年6月発行

表紙はモンゴールのマルス伯。セム族だけではモンゴール軍を食い止められぬと考えたグインは、幻の巨人族ラゴンに援軍を請うべくノスフェラス奥地へ単身足を踏み入れる。その頃、モンゴール軍に潜入したヴァラキアのイシュトヴァーンは、グインの計略どおり、青騎士隊を誘導し全滅させる。グイン・サーガは地の文も良いけどセリフもまた良い。兵卒は兵卒の、騎士は騎士の、一軍を率いる歴戦の将軍は将軍らしい知恵と言葉を持っている。そういうセリフのひとつひとつが作家栗本薫の非凡さを際立たせているように感じる。

『英文標準問題精講』
原仙作著、仲原道喜補訂、旺文社 1999年10月発行

高校生の時に取り組まされた。懐かしい。それにしても、高校生の時は気づかなかったけど、取り上げられている作者があまりに錚々たる顔ぶれで圧倒される。ギッシングやジョージ・エリオット、ジョセフ・コンラッド、ジェイムズ・ジョイス、ルイス・キャロルといった正統派な大御所はもちろん、T.S.エリオットやラフカディオ・ハーン、H.G.ウェルズ、フリードリッヒ・ハイエクまでいる。すごいものを学んでいたんだなあ。初版はなんと1933年。この本で受験勉強した人は5世代くらいいるのだろうか。

『氷川清話』
勝部真長編、角川ソフィア文庫 1972年4月発行

勝海舟の談話をまとめた語録。
それにしても海舟が偉人なのはもちろん、同時代に偉人が多すぎる。
「あんな時勢には、あんな人物がたくさんできるものだ」
とあるとおり時代が彼らを作ったのに加え、
「お役目大事と思って、その役目と討ち死にする覚悟になる」
と各種各様な豪傑が生まれてくる、とある。そういう精神的な気概は、当時、というか昭和の頃まで残っていたけど、今はもう望めないんだろうな。良い悪いはともかくとして。

『東方見聞録』
マルコ・ポーロ著、青木富太郎訳、河出書房新社 2022年9月発行

完訳はとても読んでいられないのでこういう抄訳はありがたい。異世界ものを書く際の参考になるかと読んでいる。実際、700年前のアジアは現代人にとって十分すぎるほど異世界だ。

見聞といいつつ伝聞も多い。日本に関する記述が嘘八百なのは伝聞をそのまま記したからだけど、それがヨーロッパにおいて日本への関心を高めることになったのは幸か不幸か。

この本、装丁がとても良い。地図も挿絵も入っている。マルコ・ポーロが想像した世界図なるものも載っている。たしかに日本は極東だなあ。

『沈黙の春』
レイチェル・カーソン著 渡辺政隆訳 光文社古典新訳文庫 2024年9月発行

学生時代に環境倫理学の授業で新潮文庫版を読んだなあ。懐かしい。『三体』でも労働刑に処された葉文潔が建設兵団で手にするシーンに出てくる。今では当たり前となっている知識も当時は知られていなかった。20世紀中盤は、あれほど野放図に農薬や毒物が使われていた、ということを、ともすれば忘れがちになってしまう。そしてまた、今から50年後に現代を振り返ると、21世紀初頭は人びとの環境意識も低く環境破壊は度を超していた、などと思われるのだろう。

『新版 世界史モノ事典』
平凡社編 2017年6月発行

創作の資料として購入。衣装、建物、乗り物、生活道具、楽器、文字、紋章、文様などなど、古代から20世紀までのモノを図と解説で取り上げる。創作のお供だけでなく、小説を読んでいてイメージできなかったモノを調べるのにも役立つ。ググるよりも確かだし、手間もかからない。

『もなかと羊羹』
仲俣暁生著 破船房 2024年10月7日発行

軽出版。zineより少し本気で、一人出版社ほど本格的ではない、即興的でカジュアルな本の出し方。巨大な装置産業である出版産業から離れて、執筆から販売まですべて一人で、気楽にサクサクと出版していく。そんな「軽出版」という言葉の生みの親である中俣さんによる軽出版エッセイ。同人誌の経験がある私も、ちょっと趣向を変えて挑戦してみようか、という気分にさせられた。コンテンツの作成だけではなく、デザインから印刷発注、そして1冊1冊を販売するところまで手がけるの、本当に楽しいんですよね。商業出版の見本誌が届くのも嬉しいけど、印刷所から自分の同人誌が届いた時の方が嬉しさは大きい。後者は利益にはならないのにね。

『ギッシング短篇集』
小池滋編訳、岩波文庫 1997年4月発行

『ヘンリー・ライクロフトの私記』を書いたギッシングの短篇集。食費を削って本を買い漁る男を描いた「クリストファーソン」、ほのぼのした話ではない。本好きは、ともすれば、本を収集することは誰に恥じることもない立派な行為だと勘違いしがちだけど、度を超した書痴はギャンブルや酒で身を持ち崩すのと何ら変わりはないのだと思い知らされる。

『ヘンリー・ライクロフトの私記』
ギッシング著、平井正穂訳、岩波文庫 1961年1月発行

ハードカバーや古典新訳文庫版ほど岩波文庫版は読み返していなかったかもしれない。いつか自分でも訳してみたかったけど、原文はけっこう言い回しが難しかった気がするのと、既存の翻訳ほど巧みに訳せないなと早々に諦めたのだった。ギッシング最晩年の著作。読み返すたびに、つまり歳をとるごとに、心に迫る部分が増えていく。

"だが、私は再びこれらの書物を手にすることはなかろう。年月はあまりに早くすぎてゆくし、しかもあまりに残り少ないのだ。"

"明らかになにかが初めから私には欠けていた。なんらかの程度に、たいていの人にそなわっているある平衡感覚が私には欠けていたのだ。"

『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』
ルトガー・ブレグマン著、野中

AIが人間の知性を圧倒的に凌駕するまで秒読みに入った今、あらためて読んでおきたい書。本書の処方箋は、ベーシックインカムと週15時間労働、国境の開放。所々に荒っぽい議論があって全面的には賛同できないものの、BIと労働時間短縮はこれからの社会で必須となるのは間違いないと思う(というかそれ以外思いつかない)。具体的なデータや事例が多く参考になる。

『人工知能 人類最悪にして最後の発明』
ジェイムズ・バラット著、水谷淳訳、ダイヤモンド社 2015年6月発行

当時の著名なAI研究者や技術者の取材を通じてAIの脅威を描き出す。これ、原著が出たのが2013年と10年以上も前。生成AIなど影も形もなく、おもちゃにも満たないような性能のAIが最先端だった時代。最新の技術が半年もすれば時代遅れになってしまうAIの世界で10年前は石器時代みたいなもの。それでも当時から人類の存続がかかるAI脅威論の本質は変わっていないと思わせられる。ただ、著者は専門家ではなくテレビプロデューサーであるせいか、本書も仮定の話が多く、今ひとつ説得力に欠けるように感じた。一方、10年たって超知能が本当に目の前に迫ってきた切迫感があるせいか、最近慌てて政府や国際機関がAIの脅威に対応しようとしてるように見えるけど、もう引き返せるポイントはとうに過ぎてしまったんじゃないかな。いずれにしろ大変興味深い時代だと思う。

『ザ、コラム:2006-2014』
小田嶋隆著、晶文社 2016年10月発行

各種媒体に発表されたコラムの自選集。最後から何冊目だろう。時事的な内容については「そんなこともあったなー」と懐かしく感じながら読めるし、小田嶋さん何馬鹿なこと言ってるんだと思ったりもする。日本語が乱れているという話は今も昔も興味を引かれる。小田嶋さんの世代(テレビと電話で育った世代)ですら文章力の低下が嘆かれていたのか。それはともかく、この本、ページが本のノド近くに振られているのでページを探しにくい。出版社(というかデザイナーの人)は気をつけてほしいところ。

『戦争論 レクラム版』
クラウゼヴィッツ著、日本クラウゼヴィッツ学会訳、芙蓉書房出版 2001年7月

話題の新訳……ではなくドイツのレクラム文庫に収められた縮約版の翻訳。中公文庫版を読んでると眠くなってくるので、これでまずは全体を掴もうと思って買ったのだった。戦争論の古典というだけではなく人間と社会に関する古典といってもよいと思う。今はどうなのか知らないけど、レクラム文庫の権威性というものに我々の世代(?)はひれ伏してしまう、ということを抜きにしても、良い本だと思う。

『ガメ・オベールの日本語練習帳』
ジェームズ・フィッツロイ著、青土社 2021年2月発行

半月ほど前、たまたま有料のnote記事2本を読んで、なんとすごい書き手がいるのだと驚いて著書を買った。著者はニュージーランド人。もともとブログに掲載されていた記事をセレクトしたのが本書。たしかに文体はブログっぽい。そしてむちゃくちゃ面白い。こういうのは決してAIには書けない。テーマは、日本、日本語、東京、友人、文学、戦争、貧困、音楽など多岐にわたる。

今のブログはここで読めます。

ガメ・オベールの日本語練習帳 ver.8
james1983.com/

本書のあとがき:
日本語の本を出すということ – ガメ・オベールの日本語練習帳 ver.8
james1983.com/2020/12/03/nihon

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