明日から、比較政治学入門講座で、ethnic conflictのユニット。ジェノサイドとかエスニッククレンジングの例にホロコーストはもちろん入れるけれど、ガザについては、International Court of Justiceの見解はジェノサイドの可能性がある、けれど、まだ最終的な結論出ていない、という言い方をしないといけないのが歯痒い。 夫の国際政治の倫理のクラスでは、もっと踏み入った授業をできたようだが、例の一つとしてあげる場合には難しい。でも、ジェノサイドの例を幾つか言及するのにガザをスルーする訳にはいかない。 日本含め、他国を植民地にした国々の人殺しは半端じゃない。コントラストにスライドに数値を入れときます。
授業では、どういった条件が揃うとethnicity とか宗教の違いを巡る争いがが起こるのかを考えていきます。
後出しジャンケンですけど、これは2022年の中間選挙の結果が比較的民主党に良かった(下院は失ったけど心配されたほどの大敗ではなかった)ときから予想してたシナリオでした。
中間選挙がまあまあ良い→バイデンが引っ込まない→大統領選に負ける
バイデンが一期で引退を宣言して普通にプライマリーやってたらカマラ・ハリスは最終候補にならなかっただろうというのがわたしの印象。現役の副大統領というポジションはプライマリーで有利だったろうけど、政策、ディベートなどで抜きん出たオーラが足りなくて最後まで行けなかったと思う。ただ現職副大統領を推さないとなると党内抗争は避けられないだろうけど。(その意味だけからは負けてよかったと思う。次回はフレッシュスタートで予備選ができる。)
中小企業のスタートアップの免税枠を拡大するとか、住宅購入を支援するとか提案したけど、テレビのインタビューで「その財源はどうするのですか?」と聞かれたら答えられない、移民問題で「超党派合意の成立した移民対策法をトランプが潰した」と糾弾したけど、あの法律は超党派合意を取り付けるための妥協の産物で内容はイマイチなんで、あの発言を聞くたびにヒヤヒヤした。
高学歴エリートは幅広い層の支持を取り付けにくいんだけど、唯一長所があるとすれば、こういうインタビューやディベートでの切り返しが本当にうまい。(逆に言えば、そういう詭弁の上手い人でないとエリート校に行けないということなんだけど。)ハリスもウォルズも同じスローガンを繰り返すだけで、誰に投票するか最後まで迷ってる有権者を説得するだけの弁を持っていなかった。これは説明の天才と言われたビル・クリントンあたりの応援演説と並べてみればよくわかると思う。
今回の選挙の争点はインフレと移民問題で、インフレに関してはバイデン政権のメッセージングの失敗もあると思う。もっと「インフレはトランプがコロナ対策に失敗して経済を壊したから。わたしたちはこれを立て直してるのだ」と売り込むべきだったと思う。
これは当然の指摘だと思う。トランプが強いというよりも、民主党が弱すぎる。これは米国だけに限った話ではなく、裏金スクープした共産ではなく漁夫の利で議席を獲得した日本の立憲や国民民主も同じではないか。自力で票を獲得しようとする政党が議席を得るべきだと思う。
バーニー・サンダースがXに載せた声明文:
労働者階級を見捨てた民主党が労働者階級に見捨てられるのはさほど驚くことではない。まず白人の労働者階級が離れていき、今やラテン系や黒人の労働者がそれに続く。民主党指導部が現状維持に努める一方でアメリカ国民は怒りを覚え変化を求める。そして国民は正しい。
今日、富裕層が素晴らしい成功を収めているにもかかわらず、国民の60%はギリギリの生活を送り、かつてないほどの収入と富の格差は拡がっている。信じ難いがインフレを調整した現実の平均的な労働者の週給は50年前を下回る。
今日、技術の革新と労働者の生産性の飛躍的進歩にかかわらず、多くの若者は親よりも生活水準は劣るだろう。彼らの多くはAIやロボットが厳しい現状をさらに悪化させるのではと懸念する。
今日、諸外国に比べ多大な資金を国民1人あたりに注ぎ込んでいるにもかかわらず、我々は未だ全ての人の権利として医療を保証出来ない裕福な国で、処方薬にも世界で最も高額を払っている。主要国の中では我々だけが有給休暇や医療休暇を保証出来ずにいる。
今日、国民の大多数が強固に反対しているにもかかわらず、我々は極右ネタニヤフ政権によるパレスチナの人々への攻撃を全面的に支援するため数十億ドルを注ぎ込み、子供達の栄養失調や飢餓という恐るべき人道的災害を引き起こしている。
民主党を支配する巨額の資金の動向や高額報酬を得るコンサルタント達はこの破壊的な選挙活動から真の教訓を学ぶのだろうか。膨大な数のアメリカ国民が感じている痛みや政治からの疎外感を理解するのだろうか。経済的にも政治的にも強大な力を持つオリガルヒがさらに力をつけることに我々が立ち向かう術を彼らは持っているのだろうか。おそらく無いだろう。
今後の数週間から数ヶ月に渡り、草の根民主主義と経済的道義について懸念を持つ我々は実に真剣に政治的議論を行う必要がある。
(添付した写真は掲載文本文)
大統領選挙を前に、気になっていた本を読んだので、感想などを。
https://note.com/heping_q/n/nc364a7cf3af7
ホックシールドの新著も出ましたね。邦訳を待ちたいです。
https://amzn.asia/d/aFoNgl8
@ryoko_ando さんに紹介していただいた『壁の向こうの住民たち〜アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』(A.R.ホックシールド、布施由紀子訳、岩波書店)読了。
ルイジアナ州の右派(ティーパーティー)支持者へのインタビューを通じて、米国の社会分断の現状と、その分断を乗り越えるための希望を模索した良書。
本書を読んで驚いたのは、ルイジアナ州における化学工場の環境汚染。ルイジアナにおける企業の行動は、水俣におけるチッソと瓜二つだということ。またそれはフクシマにおける東電、横田基地のPFASと同じく「責任転嫁と事実の矮小化」でしかないと痛感した。
「良質な物語」が社会から失われてきたことが社会分断を生み出してきたのだと改めて感じた。いま私が問題だと思うのはSNS環境における言論の陳腐化。ここにAIが加わるとさらに取り返しのつかないところまで行ってしまうという危機感を持っている。
『霧のコミューン』(今福龍太、みすず書房)に、この問題意識につながる数々の言葉があったので、こちらも合わせて読み進め、思考を続けていきたい。
ご飯を作ったり山に登ったり、ときたま本を読む。月1回程度、直接のやり取りがない方のFFリストを見直します。