「ケン・ローチと英国の左派文化」
「麦の穂を揺らす風」、「私はダニエル・ブレイク」で二度パルムドール受賞、英国を代表する左派映画監督のケン・ローチ。
トニー・ブレアの「ニューレイバー」に反発して労働党を離党。J.コービンを支援して復党するも、コービンを追い落としたスターマー(現首相)によって除名。
ケン・ローチはサッチャー政権時の炭鉱労働者潰しや国鉄民営化の際の労働者弾圧を描いた映画も作ってきました。「ナビゲーター」は後者で日本でも見ることができます。
他にもスペイン市民戦争を舞台にした「大地と自由」、ニクラグアのサンディニスタ革命下のニカラグア女性とスコットランド男性の関係を扱った「カルラの歌」があります。
UK内を舞台にする際にも、アイルランド(「ルート・アイリッリュ」、「ジミー、野を駆ける伝説」)、スコットランド(「天使の分け前」)など周辺地域を舞台にすることが多い。
「私はダニエルブレイク」は現在の英国の福祉行政が如何に残酷なものであるかを描いた秀作です。
おすすめです。
『ガザ日記:ジェノサイドの記録』(著者:アーティフ・アブー・サイフ、訳:中野真紀子、地平社)。
https://chiheisha.co.jp/2024/05/01/9784911256060/
作家で、パレスティナ自治政府の文化大臣でもあるアーティフ・アブー・サイフ氏が、15才の息子を連れてガザに里帰りしたところ、イスラエルによる攻撃が開始され、ガザから身動きがとれなくなってしまいます。
10/7、久々に故郷の海で泳いでいたら、攻撃が始まって、ロケット弾が飛んでくるのを見るという場面からこの本は始まります。
そのときは、演習だと思っていた氏は、すぐにそれが本当の攻撃だったことを知り、そして後に、自分と同じときに同じように海で泳いでいて、被弾して亡くなっていた人もいたことを知ります。
そういう「紙一重」のところで自分は生き残った、しかし、そうでなかった人もたくさんいる、という経験の連続が書き連ねられた、希有な記録文学です。
BT
映画「あしたの少女」。
映画「私の少女」のチョン・ジュリ監督の作品です。
前作と同様、ペ・ドゥナが出演しています。
(私は「私の少女」よりこちらのほうが好みです)。
商業高校に通う高校生ソヒは、学校に紹介された職場で研修生として働き始める。しかし、そこはノルマがある過酷な職場だった。
「大企業なんでしょう?」と喜ぶ親、「お前が辞めたら、うちの学校の評判が悪くなる」という学校の先生。主人公は追い詰められていく・・・。
原題は「次のソヒ (다음 소희)」。
「研修」の名の下で
高校生をこういう目に遭わせていいのか。
そういう問題意識からこの映画は作られています。
(この映画の公開後、「次のソヒ防止法」(다음 소희 방지법)という法律ができています)。
石破内閣の法務大臣牧原秀樹、「『サヨク』と見える人は日本人と装った工作員の可能性がある」とSNSで発信している人らしい。
しかし本当の「工作員」(日本国内で一番多いのは当然CIA)は「サヨクには見えない」ようにしている。
それにしても、この人他の発信を見ても「五輪選手を誹謗中傷した人は全員逮捕」などと、自分は「勝ち組」のつもりの、無教養かつ下品なただの「ネトウヨ」にしか見えない。
いくら法務省の事実上のトップは検事総長で大臣は「飾り」といってもこれは無茶苦茶である。
麻布中高・東大法学部、司法試験合格、その後旧あさひ法律事務所入所、典型的なネオリベローファーム。その後ジョージタウン大学に留学、2007年世界経済フォーラムから「ヤンググローバルリーダー」とやらに選出、とあるから「札付き」の「犬」である。
通産省とコネをつくり、政治家としては安倍に面接を受けて政界入り。落選時は東北大学客員教授、政策大学院客員研究員をさせてもらえるのだからお気楽なものだ。
その後第二次安倍政権で厚労大臣、2021年では埼玉5区で枝野に僅差で敗れたらしいから、今後要注目かも。
しかし枝野は立憲執行部から排除されているが、このまま野田(維新と共闘)路線で突撃すれば崖から転がり落ちるだろう。
https://chiheisha.co.jp/2024/09/03/chihei202410/
日本学術会議(の政府による任命拒否問題)について地平10月号で読んでいるところ。
日本政府のめちゃくちゃなやり方が本当にひどい。日本はすでにそういう状態にあるんだとおそろしくなる。
日本学術会議の皆さん、それを応援する皆さんの誠実な姿勢を私も支持します。
BT
英国インティペンデント紙の宮崎の不発弾についての記事。
宮崎空港はもともと1943年に帝国海軍のパイロットが特攻の訓練をするためにつくられた場所で、特攻隊はここから出撃していったそうです。
(だから、当時米軍がここに爆弾をたくさん落として、それが地中に埋まっている)。
もともと特攻隊用の空港だったということ、私は知りませんでした。
日本の報道では、「自衛隊の処理班が活躍して無事処理できた」みたいな報道ばかりで、もともとが特攻用の空港だったということはあまり言われていない気がします。
そして、もうすぐ行われる
日米共同統合演習「キーン・ソード25」(10月23日~11月1日)。
この演習は、宮崎空港で行われるのです。
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20240928-OYTNT50083/
脳の神経回路をすべてマッピングしたら意識や行動の原理の解明が解明できるのではないか、というショウジョウバエのコネクトームのプロジェクトがついに脳の全回路のマッピングを完了、とのことで「すげー」なのはそうである。ものすごい解析の計算量。ペタバイト以上のすさまじい量の電子顕微鏡像の解析である。
でもなあ。発想がコンピューターのCPUを理解するように脳を理解しよう、ということなのだが、これではおそらく本質的なことはわからないだろう。なぜかというと、脳は回路が常にダイナミックに変化する、しかも無駄や間違いが非常に多い、という、固定したマッピングでは知ることのできない本質があるから。だから結局、CPUに似たような固定した構造とそこから演繹されるあれこれの機能という理解しかすすまないと思うのだよね。つまりこれは本質ではない。
昨日、電車の釣り広告の『第三文明』に西田亮介「公明党に期待する連立政権の自浄作用」という文字列があり、「何を愚かなことを」と思ったら、この西田という人、慶応SFC出身、東の『思想地図』関係の人だった。
東浩紀や経産官僚(ニコニコ動画勤務)、楠木たら言うヤフー関係者とともに新憲法草案作成に関わった、というから、いわば「札付き」の人物である。
それで思い出したが、この西田という人は「朝日」のコメント+にもよく「しょうもない」ことを書いていた。
そしてどういう訳か「あの」中島岳志のいる東京工業大学で勤務した上で、「第三文明」で公明党を持ち上げているのだから、これは典型的な「首都圏文化マフィア」の一員である。
ちなみに中島岳志は「潮」の常連であるとともに「脳科学芸人」中野信子が「特任教授」として給料を貰っている東日本国際大学の客員教授もしていたように記憶する。
ところで西田亮介、現在は警察キャリアの天下り先である日大危機管理学部に移り、「研究費が少ない」などとSNSで発信しているようだ。
大学から給料を貰っている人間が「研究費が少ない」などとSNSで発信するとは、私などの感覚からすれば「下品この上ない」。
大体、この人「本も読んでない」のに、研究費を「何に使うのか」、疑問である。
ルソーの『告白』、当時の性規範的にもややスキャンダラスな面もあり、死後出版の前提で書かれた。
ルソーは1778年に死去するが、第一部は81年、第二部はフランス革命の前年88年に出版。
ところで、ルソーの『社会契約論』は、フランス革命、その後の1871年以降の第三共和政において、国民統合を正当化する「聖典」として普及していくが、『告白』の方は、20世紀前半においても一種の禁書的扱いだった。
R.マルタン・デュ・ガールのー日本でも有名なー『チボー家の人々』の冒頭、主人公ジャックが『告白』を密かに読んでいる所を見つかり、叱責される場面が出てくる。
これには性規範的に、18世紀よりも19世紀の方が「厳格」になり、また女性の地位も低下してWWIに至った背景がある。
サルトル、ボーヴォワール世代は『告白』は勿論、今では仏文の聖典であるボードレールさえも一種の禁書扱いだった。
仏で女性参政権が与えられるのはWWII後。性規範の大衆レベルでの変化は1968年以降である。
従って1949年の『第二の性』が広く読まれるようになったのも68年以降。
ただその際クリステヴァ・イリガライなどの「差異」派によって普遍主義=同化主義派とレッテルを貼られる。
再評価は21世紀に入ってからである。
ここ2週間、レバノンを空爆し続けたイスラエルは、ついにヒズボラー司令官を殺害。同時に死者1000人以上、難民100万人以上という事情を引き起こしています。そして、この死者、難民の圧倒的多数は民間のレバノン人。
国際法上はレバノンはれっきとした独立国家。であるから、イスラエルの行為は、いつもながら国際法違反の侵略戦争行為にあたり、また倫理上も許されるものではない。
ところが、驚くべきことに米国のバイデン大統領は、ヒズボラ司令官殺害を「当然の報い」と発言、さらに「ヒズボラやハマスなど親イラン勢に対するイスラエルの自衛権を全面的に支持する」と付け加えました。
さらにイスラエルはレバノンの特殊部隊を軍事侵攻、同時にイエメンも空爆しました。
もう、これは誰がどう見ても、イスラエルは中東大戦争の一方的な侵略者。最終的にはイランを戦争に引きずり込み、欧米を巻き込もうとする意図は明らか。当面の所イラン政府は隠忍自重をきめこんでいるが、どこまでもつかは不明。
欧州はイラン敵視政策を長年続けていたツケもあり、イスラエルに足元を見られている。
ところで、イランは日本にとって原油輸入第3位(14・2%)の国でもある。万一日本政府が欧米に歩調を合わせた場合、日本社会は破局に直面するだろう。
さて、解散・総選挙、10月15日告示、27日投開票。
「赤旗」では、今日から「無党派」系の文化有名人のinterviwが始まった。
初回はなんと島田雅彦だった。1980年代後半-2000年代の「軽佻浮薄」の権化のスタイルを知っている私からすると、「隔世の感あり」である。
主張自体は極めてまとも。「自民党総裁選の党首交代は茶番、生活圧迫、対米従属の大軍拡路線は不動」と言っている。続けて「市民の手で自主独立の民主主義」を提唱。
島田雅彦は1961年生で東京外大ロシア文学科在学中「優しいサヨクのための嬉遊曲」で芥川賞候補。その後、大学院受験に失敗、小説家に専念することとなった。この頃の院入試は今と全く異なり、かなり難しかったのである。現在なら島田の学力があれば、どこの大学院でも博士まで進めるだろう。
ちなみに私は小説家としての島田雅彦は全く評価しないが、時代もあって「反右翼」がデフォルトトの、近年の政治言説は「まとも」と考える。
文壇の弟分だった星野智幸の昨今の堕落ぶりとは対照的。とは言え、島田は元来星野とは比べ物にならない秀才ではある。
私は直接会ったことがないが、学部時代の知り合いの父親が島田のパトロンをしていた。
それにしても偉い老けたな―。ま、当たり前か。
25年前に通読したルソーの『告白』を再読。なんと、7-8割方記憶から消えていた😭 。
ま、しかし大部の書物を思ったより早く読めたのは、かつて読んだ記憶が+になったのかも、と考えることにする。
ところで、自伝というジャンル、丸山眞男が『福翁自伝』に関して「自伝というのは嘘を書くに決まっているのです!」と断言したように、現在の書き手の視点から意識的・無意識的に再構成されるもの。文学理論的にはこれを「自伝契約」と呼ぶ。
例えば加藤周一さんの有名な『羊の歌』はサブタイトルに「自伝的小説」とあるように、明確に小説的部分がある。
ただし、1930年代日本ファシズム下の閉塞した状況の内側で一青年がどう感じたか、という点では史料的価値は高い。
ただし、歴史史料として扱うには他の同時代的史料による裏づけは当然必要になる。
ただし、ルソーのような大思想家の場合は、意図的な「嘘」、あるいは叙述の配列によって与えようとする物語に、思想家の感受性、思想の質が現れるので、それ自体独立して分析の対象とできる。
ただ、ルソーの『告白』、現在日本の「普通の」基準から見ると、かなり驚きを与えるだろう。ここは「歴史的距離」をもって読むことが必要である。
2019年イージスア・ショア計画に反対していたころ、宮古島や石垣島の「弾薬庫」建設計画を知りました。現実のものとなっている映像を見てやりきれない。
民意を無視し軍事要塞化されてゆく沖縄の南西諸島は他人ごとではない、沖縄の島々も含め日本列島がこうして軍事要塞化されているのです。。
各地で自主上映中。
https://www.youtube.com/watch?si=dtGWMcgaN6xH9tdk&v=nBPhfgi2CUM&feature=youtu.be
数日前、「戦雲(いくさふむ)」(2024年)の三上智恵監督が撮った
ドキュメンタリ「標的の島 風かたか」(2017年)をみました。
・「標的の島 風かたか」
https://www.amazon.co.jp/dp/B07S52LT9W/
自分たちが暮らす地域に基地(米軍・自衛隊)をつくってほしくない、と沖縄の各地で行動している市民を記録した映画です。
この映画の最後、高江のヘリパッド建設に反対し工事車両を止めようとする市民たちを、警察が排除する場面が続きます。
全国各地から集められた警察です。
映像では、沖縄以外のナンバーをつけた警察車両がうつっていて、なかには柏ナンバーの機動隊車両もありました。千葉県警からも集められたのでしょう。
本来なら自分たちの生活を守ってくれるはずの警察が、前に立ちふさがり、場合によっては体をひっぱったり押さえつけたりして、市民の行動を妨害している。
そのことに、行動に参加している人たちの多くが、とても哀しげだったのが印象に残りました。
岸政彦氏の「アベノミクス」礼賛、親切な方が送ってくれた「投稿」によれば、なんと自民党総裁選で高市早苗を支持する文脈だった。
これはさすがに「開いた口がふさがらない」。ま、ついに「化けの皮が剥がれた」というところか。
極右でも「反緊縮」ならOK、であるならまさに「ナチス」でも支持できる。実際、ナチスは33年に政権を奪取してから、戦争準備のための緊縮財政を完全に反故にした。
これで「左派は経済のことを知らない」と言い放つのであるから、いやはやたいした度胸である。
それにしても、「物を知らない」+「面の皮が厚い」ということは、ある意味短期的には政治的に+になる典型である。
しかも、肩書があり、芸能人気取り、インチキ「リベラル」身振りで騙されている人もそれなりに居る訳だから始末に悪い。
ところで、この岸政彦氏、例の「リベラルの正義」批判の星野智幸、これまた「ポストモダン詐欺師」の千葉雅也氏と、元来「一味」の人である。
ある意味「物を知らない」トリオと言ってもいいが、首都圏の文化産業にコロリと騙される人が多いのは真に困ったことである。
そろそろ考え直す潮時ではないか?何と言っても「あの」高市早苗支持を表明しているのである。付け加えると、岸氏は経済学のことは「何も知らない」。
この投稿が9月10日。その後、かなりメディアも含めた激しい党内権力闘争もあったようだが、結局石破が次期首相となる。
10日の投稿でも書いたように、選挙用に「安倍的」なものを刷新する演出としては、石破が合理的なのは外からは明らか。
とは言え、この「刷新」は当然マスコミを抱き込んだ選挙キャンペーンに過ぎない。石破の政策表明としては、1)原発フル稼働、2)9条2項の改憲、ついでに3)デフレ脱却まで、安倍・岸田と同じ。
何と言っても石破は軍事法廷の設置が長年の主張である。確かに、組織が軍であれば、特別軍事法廷があるのがグローバル。スタンダード。
とは言え、ここから1年で物価上昇、株式下落、金利上昇(中小企業倒産)は避けられないから、まずは「刷新」ムードのまま解散・総選挙の可能性大。
党内基盤が弱い石破としても、自民党議員の入れ替えを行うメリットもある。
問題は維新との共闘を表明している野田立憲。
安倍的なものからの刷新を唱える石破自民と安倍2軍である維新と組む立憲という構図では、結局「自浄作用がある」自民の方がまし、となって立憲は壊滅的大敗となるだろう。
こうなってくると、WWII後大政翼賛会から出発した保守グループだけの離合集散へと収斂する可能性もある。リベラル左派の結集は如何に?
QT: https://fedibird.com/@yoshiomiyake/113108439239484402 [参照]
自民党党員・党友内での支持、1位石破、2位小泉進次郎、3位高市早苗という。河野太郎は、「保険証」廃止の振る舞いで、数パーセント。衆院用の「石丸」か思われた「コバホーク」とやらも全く振るわない。この「コバホーク」、宏池会の林へのあてつけか「保険証廃止延期はあり得ず」とわざわざ表明している。
ところで、選挙を担う党員として、選挙用には「安倍的なもの」を刷新したい、その点から言うと石破1位は合理的ではある。
しかし、2位、3位の顔ぶれを見ると、もう自民党という政党には国政を担う人材そのものが払底していることがわかる。これは党の体質でもあり、安倍の手下でしかない高市が3位、というのはかなり「閉じた社会」である。
しかし、ここのところの総裁選キャンペーンが功を奏して現時点では自民党第1党は動かないと云ふ。やれやれ。
逆に長引く兵庫知事問題で維新の支持率は急落。これは少なくとも兵庫では議席を失うだろう。
この状態で維新との連携を打ち出す立憲主流派の「センスの悪さ」には驚嘆する他ない。
一方共産はメディア広報のあおりをくって現在令和を少し上回る程度。
これから自民、立憲の総裁選次第で状況は多少動くだろうが、「リベラル左派」にはなかなかに厳しい状況である。勿論中期的には可能性はあるけれども。
哲学・思想史・批判理論/国際関係史
著書
『世界史の中の戦後思想ー自由主義・民主主義・社会主義』(地平社)2024年
『ファシズムと冷戦のはざまで 戦後思想の胎動と形成 1930-1960』(東京大学出版会)2019年
『知識人と社会 J=P.サルトルの政治と実存』岩波書店(2000年)
編著『近代世界システムと新自由主義グローバリズム 資本主義は持続可能か?』(作品社)2014年
編著『移動と革命 ディアスポラたちの世界史』(論創社)2012年
論文「戦争と奴隷制のサピエンス史」(2022年)『世界』10月号
「戦後思想の胎動と誕生1930-1948」(2022年)『世界』11月号
翻訳F.ジェイムソン『サルトルー回帰する唯物論』(論創社)1999年