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『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(鴨志田一)

再読。ふつうに楽しく読んで、あと、地の文の情報量をどの程度にすべきかとエモをどの程度にすべきかとを確かめるために。
地の文:情景描写は自分のナチュラルの下限にタッチするくらいまで落としてもよいが、その分、心の声を増やす。
エモ:赤面してページをめくる手が早くなるくらい。

『ともに生きるための演劇』(平田オリザ)

読みました、といった感。基本的にこれまでの著作をコンパクトにまとめた一冊。新型コロナの話題が新しいか。プロローグの「幕はもう上がっている」のパンチラインは良かった。危機の時代にあって、我々は否応なしに演じることを迫られているのだ。

『人間関係ってどういう関係?』(平尾昌宏)

「人間関係」を、友達/家族/恋人……といったあり物の言葉から解放して、フラットな見方で定義し直す。「個人」と「社会」との間に位置する人間関係(たとえば、友達/家族……ね)をまず「身近な関係」と名付け、精緻に分解していく。「タテ/ヨコ」の軸と「共同性/相補性」の軸とで2軸による4領域に配置し直す。「タテ/ヨコ」はその人間関係に目的が有るか/無いか、「共同性/相補性」はその人間関係の基礎が共通点に有るか/無いか、から定義される。
便宜上、4領域に分かれているが、その中でのグラデーションをさらに細かく考えていくと(創作で)役立ちそうだと感じた。
amazon.co.jp/人間関係ってどういう関係?-ちくま

『自由が上演される』(渡辺健一郎)

難解! 教育場面において「自由」をワークショップ的に学ばせる際に、まさにその「学ばせる」という権力性が自由と矛盾するのではないか……、というところから議論がスタートするのだが、追いつけなくなった(字面は追えるが目の速度に頭の速度が追いつかなくなった)。その中でも最も印象的だったのは「演劇はいかだ」という比喩。いかだは構造的に不安定で自律性を欠いているが乗る人は方向性を欲望している。そういうイメージは腹落ちした。

『「若者の読書離れ」というウソ』(飯田一史)

若者(小学生~高校生)の近年(この5~10年程度)の読書傾向を詳らかに解き明かす一冊。若者向けの「型」を有し「ニーズ」を満たす本がヒットするとのこと。そこから逆算的に、若者がなにを欲しているのかを読み出すことができた。そして、〈自分の小説〉は明らかに若者向けではなく、おたくのおじさん向けの本だということと向き合うことになり、泣いています。

『熟達論』(為末大)

今年読んだ本の中で暫定ベスト!
オリンピアンである著者・為末大が自らの競技者としての経験とその道を極めた人物達との交流を基に、なにかを「熟達」するとはどのようなメカニズムであり、そこではどのような心の動きがあるのかを緻密に言語化する。
熟達への道のりは、遊・型・観・心・空の五段階に分類できると説く。それぞれの段階に共通するのは、人間の柔軟性への信頼だ。人間の心が柔軟である故に、遊んで様々な可能性を模索することができる。また、その可能性を型にはめることによって、より良い方向へと導くことができる。そうして導かれた型を観察することで、中心と周辺とを分別することができる。立ち返るべき中心が定まると、中心から外れてみる冒険ができる。やがて、それまでの四段階を意識していた自らを手放し、空=無意識を得られる。無意識であるがままの自分・あるがままの環境を受け入れられると、遊んで可能性を模索できる領域がさらに広がる……、そうして五段階のサイクルが回っていく。
オリンピアンの説く、身体と精神とのバランスのストーリーは説得力に満ちており、読み応え十分。充実した人生の一部を垣間見させてもらったような気分で、とても満足しました。
amazon.co.jp/熟達論:人はいつまでも学び、成長で

『上達の法則』(岡本浩一)

上級者とそれ以外の質的な違いを説く一冊。上級者に特有の人格の話題が多めで、類書とは違った読み味があった。要約すると、上級者の方がそれ以外よりも価値観が安定しており自他の価値観を弁別する能力が高く、ひいては人格的にも安定しているとのこと。
〈自分の小説〉の登場人物の人格を深めるための資料本として読んだ。作中では中級者が上級者に対して絶対的な差を感じる(そして挫折感を覚える)シーンがあるのだが、上手く中級者の心理を捉えることができず筆が止まっていたのだが、まさにこの「価値観/人格の安定」がキーワードになりそうだ。中級者には、上手くいかないゆえ不安定、不安定ゆえ上手くいかない、というフィードバックループ(スランプの一種)があろう。そのステップを乗り越えるためには、不安定な価値観を(それ以前と比べて)革命的に新しいものへと進化させ、安定させなければならない。いわば脱皮だが、それを考え抜くことができれば、中級者の心理を書き切ることができるだろう。
amazon.co.jp/上達の法則―効率のよい努力を科学す

『Z世代~若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?~』(原田曜平ら)

ギブ。若者が出てくる小説を書くにあたってなにか役立つかと思ったが、大掴み過ぎてあんまり役に立たなさそうなので。わたし(92年度生まれ)よりもっと上の世代向けかな。

『アンソロジー 舞台!』(近藤史恵、他)

ギブ。一本目の近藤史恵が酷すぎる。2.5次元舞台に初出演する舞台俳優が慣習の違いに戸惑って……という話なのだが、それだけで終わって、ビジョンもメッセージもなく、こぢんまりとしていると言えば聞こえはいいが、話のスケールが小さすぎる。二本目の方もリーダビリティが低く、これ以上読めませんでした。テーマがテーマだけにマストリードだと思っていたのに、ここまでこうだと、流石につらい。私は私のお話を書こうと思いました。

『トレンドフォロー大全』(マイケル・C・コベル)

ありえん分厚い(900ページ超)ので必要な箇所だけ抜き読み。本書でも頻出のワードが「規律」「ルール」「測定」。 トレンドフォロー理論は、オニールのCANSLIMのMに特化しているのだが、これは個人には実行できないと感じる。トレンドフォローを実行するためには、ルールを作る(ここまでは不可能ではない)必要性に加え、それを計算機に落とし込まねばならない。この落とし込みのプロセスは、独力で達成できなかろう。そのプロセスの労力が、アクティブファンドの手数料なのであろう。

『インデックス投資は勝者のゲーム』(ジョン・C・ボーグル)

顧客から手数料を掠めとるアクティブファンドを罵り、低い手数料でインデックスをフォローすることを称揚する本。資産に関する価値観が著者(と、ウォーレン・バフェット)と私(と、私が参考にしている投資家ら)とでは決定的に異なるな、と思った。前者は資産が増えればいいと考え、後者が信じるのは確定した利益だけである。私が思うに、ローリスクローリターンでインデックスファンドに預けるか、ミドルリスクミドルリターンで個人で狙い撃ちするかがベターで、個人でインデックスファンドのまねごとをするのがハイリスクハイリターンなのだろうな。

『株式トレード 基本と原則』(マーク・ミネルヴィニ)

基本的に『ミネルヴィニの成長株投資法』を読めばよい。それに加えて、本書で特筆に値するのは、
・日々、記録せよ。
・損益分岐点(あるいは、得たい儲けの分岐点)を厳密に設けよ。
の二点に集約される。損益分岐点の話題はこれまで読んだ株本の中でほとんど触れられていなかったので新鮮に読むことができた。

『ミネルヴィニの成長株投資法』(マーク・ミネルヴィニ)

これまで読んできたオニールやそのフォロワーを、書きぶりを変えて総括するような一冊。オニールもミネルヴィニもテクニカルから入ってファンダメンタルで傍証を得る手法を採っているが、よりファンダメンタルに寄ったイメージを受けた。個人的には、テクニカルとファンダメンタルとのバランスは、ミネルヴィニがいちばん「しっくり来た」。しっくり来たという納得感は、一貫したパフォーマンスのために必須の一貫した手法を使い続ける(規律を守り続ける)ために重要な要素だろう。何度も読み直そう。

『エッセンシャル版 マーケットの魔術師 投資で勝つ23の教え』(ジャック・D・シュワッガー)

投資で勝つのに必須な能力は「規律」である。勝ち負けのルールを定めること、そしてルールを守ること。23の教えとあるが、絶対的に必須の能力は規律だ。特に耳が痛いのは「トレーディングをしたいという欲望」が生物には備わっているという事実だ。私は先月から今月に掛けてかなりの数の株本を読んでいるのだが、これは現実にお金を動かしてトレーディングする代わりに、読書を通じてその欲望を発散させることも兼ねているのかもしれない。ところで、投資の世界で問題なのは、規律を持って守るべきルールの中には「ルールを柔軟に変える」ことまで含まれていることだが……。

『会社四季報 2024年2集 春』(東洋経済)

日本には様々な企業が存在するのだが、どんな業界にどれくらいのボリュームで存在するのか規模感を把握できたのがよかった。オンリーワンの強みを持つ、投資に値する企業は少ないと肌感覚でわかったのもよい。投資の観点から言えばオンラインで検索して洗い出せば済み、紙の本で頭から尻まで読むのは「修行」以上の価値を見出せないかもしれない。次の号は通読しないと思います。

『日経 業界地図 2024』(日本経済新聞社)

個別株の銘柄選びをカードゲームのデッキに入れるカード選びだとすれば、業界選びはデッキタイプ選び。来週3/18にカードリストもとい四季報が発売されるので、その前にデッキリストもとい業界地図を読んだ次第。

『WHYから始めよ!』(サイモン・シネック)

書名の通り「なにを」ではなく「なぜ」から始めないと価値観の共感を得て成功することができない、と伝える一冊。本書のエッセンスは、添付画像の一枚で説明できる。成功とは、WHY=明確な価値観を打ち出す人間、HOW=その価値観のための手段を考える人、WHAT=その手段を実行する人間、そのサークルから成り立っている。表現の都合、ピラミッドになっているが、上の方がエラいとかではなく、三者の協同が必要である。
amazon.co.jp/WHYから始めよ!―インスパイア型

『ジャズ超名盤研究』(小川隆夫)

私にとって最初のジャズの教科書を遂に読破しました! 目標でした! 本書に紹介されている34枚のうちSpotifyで配信されている33枚を鑑賞し、各アルバムに対して簡単ながら感想も書き、自分のなかに(まだ弱々しいものの)ひとつの価値観が芽生えているのを感じています。解説と共に楽曲に触れるのは、私の人生でほとんど初めての体験で、とても意義深いものでした。『同 2』もあるので次はそちらを読みつつ、近年のジャズの動向については『Jazz The New Chapter』シリーズでカバーしようと思います。
amazon.co.jp/ジャズ超名盤研究-小川-隆夫/dp

『株式売買スクール』(ギル・モラレス、クリス・キャッチャー)

『オニールの成長株発掘法』をオニールの下で実践した著者によるレポート。ただ、マジで難しい。技法としては、いわゆるカップウィズハンドルを形成し切る前にエントリーする「ポケットピボット」、市場動向を探る「マーケットダイレクションモデル」、そして空売りの手法がチャートと共に紹介されているのだが、これらを念頭に置きつつ、実地でチャートを観察しなければ自分のものとは出来ないだろう。そういう意味で、本書の効果が出るには年単位の修練が必要になると感じた。ただ、理解できるようになったら何段階も強くなれるだろう。
amazon.co.jp/株式売買スクール-ウィザードブック

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