『お葬式』を見た。
妻の父親が急に亡くなったので、いきなり葬儀を取り仕切ることになりました。あたふたコメディ。
ちょいちょい口を挟んでくる親戚、酔っ払って帰ろうとしない弔問客、飽きて暴れる子供、正座で痺れる足、紛れ込んでくる愛人。無事に葬儀を終えることはできるのか。
お葬式なんて常にいきなりで準備万端で挑めるものではないのですが、でも恙無く敢行しなければならないわけで。
わたしも棺桶の相場とか通夜振る舞いの量とか喪主の挨拶とか書類の手続きとか一切見当付かんわ。っつうか、線香の上げ方すら知らん。
お葬式というものは、神妙にしなければならないわけで。さほど悲しくなくても、悲しそうに繕わねばならないわけで。参列者は遺族と弔問客という役割を演じているわけで。
お葬式というものは、そういう浮ついた薄っぺらい薄寒さが纏わりついているものだと思うのです。
祖父母の葬式で、司会の人が変なムーディーな音楽を流しながら情感たっぷりに祖父母の人生を読み上げてる時、白けた変な気分になったものな。
でも、そういった内実を伴わない形式とか建前とかいったものは、心とか感情とかを柔らかく包むために必要はあるんだろうなと思ったりもするわけでした。
#映画
最近中国のお茶の本を読んだの機に、むかし買ったまま封を切らずに冷蔵庫に保存していた中国茶を飲みはじめることにした。賞味期限すっごい過ぎてるけど…。
「はじめての中国茶とおやつ」誠文堂新光社
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/hobby/78759/
https://note.com/sickpig/n/n59e330f2bec7
シネマテークがなくなるのやだなあという気持ち。価値のあるものから全部消えていく。
小川哲『地図と拳』読了。
とても面白かった。
満州国、奉天の東にある李家鎮という架空の街の50年の興亡の歴史。
大量の人物が現れ、生い立ちが語られ、思惑を語り、消えていく。それらの集積。
色彩はなく、手触りもない文章で、思弁的な小説。とにかく登場人物が各々の理論を語る語るで、異様な説得力があった。読んでて楽しい。
満州という国家を李家鎮(のちに仙桃城)という箱庭でシミュレーションして、李家鎮という街を小説上でシミュレーションしているような趣きで、SFでした。
李家鎮がどういう街でどういう人が住んでてどういう営みが行われてるかは読んでてもさっぱり分からないんですが、でも李家鎮の50年の歴史、それに関わった人々の思いだけは分かる。
燃える土(石炭)がキーワードのひとつなのですが、石炭成分を期待するとがっかりします。
銃に撃たれても死なない人間とか、人間気象観測器とか出てくるんですが、そういう外連味や派手さを期待すると肩透かしを食らうんですが、分かりやすい派手さとは別の妙味があるといいますか。
#読書
三大好きすぎる表現はこれなのですが、これに加えて四天王にします。
夏目漱石『坑夫』
(崩れかかった藁葺き屋根に対して)
夜と屋根の継目がわからない
ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』
それにひきかえ、彼女の方は、彼女の生活は、あかりとりの窓が北に向いている屋根裏の物置のように冷たい。
イサク・ディネセン『アフリカの日々』
「ムサブ、起きたほうがいいと思うよ。神様がやってくるらしいよ」これを聞いた私は、もちろん飛びおきた。なぜそう思うのかとたずねると、カマンテは重々しく先にたって、丘の見える西向きの食堂に私を導いた。ガラス張りのドア越しに不可思議な現象が見えた。丘の上に大きな草火事がおこっていて、丘の頂きから平原にかけてずっと燃えていた。この家から見ると、火の線はほぼ垂直につづいていた。なるほどたしかにその光景は、偉大な存在がこちらに向かって動いてくるように見える。私はしばらく立ちつくしてその眺めに心をうばわれていた。カマンテもそばでじっと見いっていた。やがて私はことの実情をカマンテに説明してやった。この子がどんなにおどろいたことかと思い、安心させてやるつもりで話したのだった。だが私の説明を心にとめる様子はいっこうにない。カマンテは私を呼びおこすことで、自分に与えられた使命を全うしたと考えていた。「ええ、草火事なのかもしれない。だけど、神様のおいでだってこともあるし、それならムサブが起きていたほうがいいと思ったんだ」
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おたくらしいですよ。基本的にやる気がないです。フツーにダメ人間です。今特に腰を据えてるジャンルはありませんが、ときどき何かをぽつぽつ書いてます。オススメ本とかは常に募集中です。
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