『スーパー30 アーナンド先生の教室』観た 感想続き
知は力なり、教育を受けることに身分・経済の障壁があるべきではないのはその通りだが現実は…というのは描かれていて、アーナンドは進学資格があるのにまさに金が無い事で断念したし、私塾の運営も金が足枷になっている。知を金に換えられることが実際必要なのも無視できない事で。
その点では、アーナンドを予備校教師にした人物は力を貸したとも言えると思えて、辞めるにしても一言説明するくらいの義理はあるんじゃね?とハラハラしたよアーナンド…。まあそんなの必要無いような相手側だったのだが。でも相手もジレンマあったよね…少し気の毒。
で、色々書いたが、この映画で一番心に刺さったのは、入塾しようとする子達の家庭の事情を描く場面の母と娘。「いいからあんたは行きな!」ってしている場面。あれはねー…一瞬で貧困で女で母で娘である哀しみ苦しみ諦めを感じ取ってしまって胸が潰れそうだった。エンタメなので身分・階層などには踏み込んでいないけれど、色々察することのできる描写はあって、良い作品だったと思う。
『スーパー30 アーナンド先生の教室』観た
「家の子供を教育すれば、家、家族、親、次の世代全ての人生が変わる」が至言。貧困階層の教育の為にまさに命を懸けて私塾を立ち上げた先生と生徒の実話。好きな話に決まってる、のは置いておいても社会派な内容をほど良いエンタメにした作品で面白かった。
主人公アーナンドがいかに信念を曲げずにいたかに焦点が当たっていて、挫折しそうな局面で常に父親の薫陶や自身の経験に奮い立たせられるのが良かった。それらの場面の演出も、リティクさんの演技もしみじみとした様子で好きだ。
その分、具体的な指導内容はエンタメ要素で見せる感じではあったかな。でも精神面の指導はやはり素晴らしくて。貧困階層という気後れが能力を発揮することを妨げる、その心に勇気を持てと言い支える大人がいる事、それが如何に大切か。しみじみ感じるよ。それを経ての突然のホーム・アローン感はとても楽しかった。知識ってのは使えると面白いよねー。知は全てを打倒する!的歌唱も荘厳で闘志が湧きたって良かった。笑
そして世界最難関の一つインド工科大学への受験結果が事実だって言うんだからすごい…。能力を支える精神を持たせてあげる事、本当に大切な教育の本質の一つだよね。よい作品だった。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』観た
原作を読んで臨んだので、話の内容を知った上での感想。
原作で、ヘイルやアーネスト、そして犯人達はどういう感覚なのか…とまず感じたが、映画はまさにそこに焦点を当てた内容だったので満足感がある。ヘイルの息をするように自然な正当化と二面性、アーネストの考えが浅いくせに欲だけはしっかり追う姿勢、それらがデ・ニーロとディカプリオによってこれでもかと表現されていた。己の邪悪さを受け止めない姿勢。
そしてこれは「未開な先住民より俺らの方が金を有意義に使える」という感覚からも来ている。ここで扱う犯罪はまさに先住民に対する後見制度を悪用したものだし、制度の考えそのものが搾取的なのだよね。原作の方が濃厚に描いているが、映画でもヘイルを筆頭に関係者の行動で見せていたのが良かった。
そういう社会であること、舞台の町の先住民と白人が混ざり生活している様、金に人が群がる町の猥雑さを映画的に見せているものも流石だなと思った。
映画のラストがとても皮肉的に締めているのが上手くて。ここは捜査局(というかフーヴァー)の思惑と白人社会の受け止めを表現し、我々の酷薄さまで指摘するようで。
#映画 #感想
『ウエスト・サイド物語』観た
ストーリーは知っていたけれど、想像以上に沈鬱な空気の中に現れるTHE END、とんでもない感情にさせられて終わるの…すごいな。
ミュージカルは嫌いではないのだが、怒り屈折した不良少年達が集団でキレキレに踊るか?という雑念が入ってどうもいけない。歌うのは気にならないのに。
対立や喧嘩を、張り詰めた空気と衝動・躍動を踊りで表現する、その踊り自体は見ていて楽しい。構図、見せ方、色彩等がしっかりキマっているのも楽しい。
あと恋愛の話自体にそれほど興味がないので、マリアとトニーの場面などはずっと、へーそうなんだーという距離感で見ているのもいけないですね。あ、でも恋に落ちる瞬間の二人だけの世界、愛の誓いの場面の演出はとても面白かった。それこそ舞台演出のような人力の加工が面白い。前半の演出は見栄えがして面白く、後半それが落ち着いたのが残念だが、話のテンション的に仕方ないか。
音楽はバーンスタイン。どれも素敵なのだが、踊りと内容的に「アメリカ」が一番好きだな。移民のないまぜな気持ち。
あとはもう、ドクの思いとマリアの叫びに尽きるよね。愚か。みんな愚か。疎外感を抱く事情があったとしても。
『イコライザー THE FINAL』観た
さよなら、どうか安らかに過ごしてねマッコールさん、と自然に思う、予想していたよりもずっと静的で余計なものがそぎ落とされた最終章だった。
確かに、マッコールさんのイコりぶり(アクション)はかなり抑えられ、最終決戦はもう少し盛り上がりがあっても良いかなと思うものの、殺戮は以前にも増して猟奇的でホラーの様相すらある。これ、前作2での出来事と年齢を重ねてマッコールさんが先鋭的になったんだろうな…と納得できたんだよね。冒頭の襲撃でサラッと引き金を引いた所でもう、2の後のマッコールさんの苦悩が感じられて。描写で語るのが心にしみた。
シリーズ通じて、マッコールさんの市井での生活が好きなので、今回シチリアでそれを取り戻す様子が喜ばしかった。いたるところに信仰が見える街で、これまでを苦悩するのと同時に独善も発露するの、さすがその目に留まったら見過ごせない善の殺人鬼、期待を裏切らなくて素晴らしい。
最終決戦、人々の信仰の裏での殺戮がめっちゃゴッドファーザーだなぁと思ったし、マフィアがスパゲッティ食べてたりして、やはりシチリアが舞台だから意識したのかなと、面白かった。ダコタんを見れたのも嬉しい。そういう関係…!ちょっと感動した。
『僕を育ててくれたテンダーバー』観た
こんな伯父さん欲しすぎる!ベンアフがいい感じに力の抜けた演技で魅せる大人の男のかっこよさ!父親の不在、素晴らしいとは言えない生活環境でも、伯父や周囲の大人のそれぞれの愛を背に受け大人へ踏み出した青年の自伝的成長譚。アメリカンなノスタルジーも漂い、とっても心地がよかった。とても好きだ。
伯父さんが本当に良い。良すぎ。父親にはならない、でも道を踏み外さないように目を離さずに男の、大人の生き方へ導いてくれる、ほどほどに甘やかしてもくれる。子供にとって最高の距離にいてくれる大人。こんな大人になりたすぎる。
大学には行けず、独身、実家住み、仕事はバー経営と一見うろんな気配があるが、読書家で知性的で真面目さと愛情と穏やかな根性があって、自分で語る男の生き方を実践し続けているようだ。で、見た目はベンアフ。良すぎ。
バーの常連の子供を見守る距離感も素敵だし、大学の友人もユーモアと真摯さがあって良いのだ。
それでも実の父親の不在は巨大だし、母親との関係はどうしても重たくなるのだな(それでも二銃士の話は素敵だ)
ひとつひとつが積み重なり、経験に変え、主人公が自分の決心で自立へ踏み出す納得感が清々しい。ラストのはなむけが最高にいかしてる。
Amazon prime
『PIGGY ピギー』観た イケてない日常を過ごす私が事件に巻き込まれて…!勇気とロマンスの少女漫画、ただし血みどろハードボイルド。
体形と酷いいじめと母親の抑圧によって内向的で自己肯定感がずたずたになったんだろうな…と手に取るようにわかるサラ。まず彼女はそれはもう大きな大きな不安と恐怖を抱えていて。それが大前提にある中で、事件をきっかけに罪悪感や復讐心、保身、友情、性欲、家族とのもやもや、が混ざり合って葛藤の嵐。誰でも持つ「いい感じの思春期を送りたい…」という欲望、それに伴う行動が正面から描かれていて良いなぁ。
行動をなじられて「間違えるかもしれないから…」と告白したサラに、これまでずっと自分の行動と本心の齟齬に後悔し続けていたんだな…と切なくなってしまった。その気持ちわかるよ。
殺人鬼がサラに都合がいい奴すぎて最初は驚いたが(家から連れ出してくれまでする!)、あれこそ少女漫画にあるような、乙女たちの夢。酷い現状から解放してくれる夢なんだよな。ちょっとわかる。ただし変質者(下着あさってた…おおう…)。
全てに対する怒りが唸り声となって、なけなしの良心を振り絞る。己との闘いだ。スリラーの顔をした少女の情念を解放する、思春期版正しくない女の映画でとても面白かった。
『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』観た
面白かった!快作!
ヒーローものが一周回って戻ってきた感じだ。ティーンらしい承認欲求から素朴な善性へと進む感じが眩しい。ヴィランズやスプリンター先生の描き方に、疎外された者たち、素朴な私たちの想いも載せてる。連携プレーが熱くて泣きそうになった。
その部分に関わる人々を始めとして、NYの下町文化感がすごい。詳しくないけれど、音楽やデザインの細部も本気でそれっぽいはず。遠くから想像してきたNYがあった。
アニメーション、スパイダーバースとはまた少し変化して、整っていない手書きストリートアート感がすごい。ライティング?と所々ネオンカラーも入る色合いがとても見やすくて好きだな。
タートルズ達が何やってもかわいいなー!ティーン感が楽しくて、わちゃわちゃ仲良しで、いいよね!ひとりひとり本当に好き。バイブス、バイブス大事!
好きだけど詳しくないので、スプリンター先生があんなにパパ感があったか?と動揺した。ヴィランとの対比からの決意がとても真摯で良い。
コメディ感のバイブスもよくて、大変楽しかった!
『グランツーリスモ』2回目を観て感想箇条書き。
・平さんから始まってかっこいいな。ご本人と雰囲気が似てる。ご本人のカメオ出演確認できた。満面の笑みw
・EDがゲームのそれっぽくて良い~。車両がめちゃ綺麗。
・個人的に恋愛パート要らないので、GTアカデミーでの人間関係がもう少しあるといいのにと思うが、恋愛パートが真面目なのでそれ自体は好感持ってる。
・東京がリアル東京。トンチキじゃないことに感心した。日本語話者もリアリティある。好感。
・オーリーの企業や自己の利益を優先させたい面と、企画自体を純粋に成功させたい・応援したい面、嫌な奴といい奴具合が本当に絶妙!
・ブラック・サバスが流れるタイミングが最高すぎる。燃える。特に2回目。
・いわゆるイケている曲じゃなくても、ひとりひとりに好きな曲はあって、いじりながらもそれを肯定してるのが良い。
・話の整理と目的、レース展開の説明が上手い。本当にわかりやすくて心地よい。構成と編集が上手いのだろうな。
・ル・マンのパートめっちゃ興奮する。開始直前の高揚感最高。面白すぎる~
・FvFを見直してからだと、だいたい同じことやってる、ほぼ同じ要素。鉄板の面白さか。
『波止場』観た
波止場を仕切るやくざ者になるかならないか、それが問題だ。
犯罪の手先に使われた青年が、しがらみを捨て良心に従えるか、真に勇敢になれるかを語る作品。逡巡をじっくり描いていて面白かった。
人にもともとある良心を信じている話だったな。主人公テリー、最初から組織のやる事に不満たらたら、ボスへの恩もそれほど…な様子が、ボスの右腕の兄とのやりとりで、そもそも望まない生活なのだとはっきりする、あの場面でテリーが兄ちゃんに失望した様子が好きだった。仕方ないだろ、何ができたっていうんだと流されていた、その気持ちはわかる。
あくまでも、主人公テリー個人の心の変化に焦点があたっているけれど、その心の動きの結果が、恩義や保身という私的なところから、労働者たちの意志の象徴という公的なところに到達するのが面白かった。
やはり神父の役回りが大きいのが、信仰で道徳を支えてるアメリカらしさだと感じる。最後の行進とかイエスのようだ。
ゴッドファーザーとジョニデの映画に出てる(でも印象に残ってない)のしか見たことがなかったマーロン・ブランドの若い頃を初めて見た。正統派ではない格好良さかな、弱さと頑なさが同居してるような魅力があるんだな。あと腫れぼったいような目元が印象的なのかも。
『グランツーリスモ』観た
面白かったー!
シムレーサーが現実のレーサーになる。努力と挫折と勝利!の少年漫画的とも言えそうな王道成功物語の人間ドラマは深入りせず淡泊。でも丁寧に拾っているので面白くて燃える!親子や師弟関係もその淡泊さがちょうどよい温度になって楽しい~。
中盤のレースデビュー以降は、それこそギアを上げたような爆速展開。白眉はレース場面で、すっごく楽しくて手に汗握る興奮!
ドローン使い、路面すれすれの視点、ペダルやステアリング操作、内蔵機関の動作、レース展開なんかの編集のテンポが良くて興奮するし、わかりやすくもあった。ペダルとエンジン、タイヤの音が良かった、とても好き。
音楽の使い方も好きっていうか教科書的感じがあって上手くて楽しい。ブラック・サバスにエンヤ~
ゲーム的演出が所々入るのも良くて、ゲームとリアルのシームレス感、その楽しさ、車やレースの興奮を表現しようという気持ちが伝わる。
デヴィッド・ハーバーが絶対良いだろと思ってたけど、本当に良かった。ドラマの深みを一人で背負ってたんじゃないかなってくらい。反発から信頼、そして自身の諦めを次代に残さないよう支える師匠、好きー。この役まるごと脚色らしいのだが、入れて大正解です。やはり師弟は良い。
『夜の大捜査線』観た
見知らぬ街で、殺人事件の容疑者と間違えられ逮捕されたのは殺人課の敏腕刑事だった。嫌々ながら事件捜査に協力する…と定番のサスペンスなのだが、刑事は黒人、舞台は60年代の人種差別の根強い南部のミシシッピ州、と途端に人種差別の緊張感が張り詰める。ユーモラスさに緊張の陰影がつき、とても面白かった。
数々の差別に努めて知的にクールに振舞う刑事を体現するシドニー・ポワチエの抑制された演技。北部の洗練さをひとり貫く。その奥に煮えたぎる思いが見え素晴らしい。躍起に捜査する中で「すっかり白人だな」と掛けられる声に、こちらもはっとする。
彼と対立しつつもバディ関係に陥ってしまう強烈に横柄な白人警察署長、演じるロッド・スタイガーがまた素晴らしく。じわじわと黒人刑事の能力を認めざるを得なくなる感情の揺らぎが絶妙。可愛げすら感じる。しまいには疎外された者同士の心が交錯する一夜、友情でもない寄り添い、という大好物な場面まである。偏見が消えないのがリアリティあって良い。数日の捜査で変わるほど人の心は単純ではない。
それでも、ラストの素っ気なくも、一時的であっても心の通ったやり取りに、爽やかさを感じ笑顔になる。
『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』観た
ワインスタインの性暴行疑惑に迫る調査報道記者。報道ものにあるオーソドックスな作りで、真相を報道できるまでの道のりが遠いのだが、この作品(と記者達の関心の多く)は被害者の訴えが取り沙汰されないことの問題、構造にも焦点があるので、もどかしさを共有しやすいと感じた。
被害女性達の中で、勇敢に立ち向かったが理不尽な条件を飲まされ絶望した人、被害に遭遇後に静かに仕事から去ったが後悔している人が特に印象に残った。理不尽な判断を迫られた事自体に、その状況に屈してしまった事自体に、深く尊厳は傷つけられるのだとわかる。精神を蹂躙されてしまった重み。
記者が女性として仕事をし生活をこなす日常を送る場面が多いのも印象的。日々の中で向き合い続ける粘り強さ、それが一つの連帯の態度なのだと伝えている様に感じた。報道の価値があると信じて仕事をしているとは言え、記事を出しても世間の反応が薄かったらどうしようという不安も、この隠され続けた事案ならより強く感じるだろうことも理解。真剣なお仕事映画でもある。
『ランガスタラム』観た
仄かなサスペンスの香りを感じつつ、難聴の主人公・チッティのお気軽村民ライフを楽しく眺めていると、最後の最後に因果のめぐりとインドの身分階層の重みがドスンとのしかかる。何とも言えぬ余韻がすごい…!
階層が固定化された村の生活は"舞台"の様で村民は配役を演じるだけ、と皮肉に語るも、村民の生活には豊かなドラマも矜持もあるぞとも語る。チッティの難聴をユーモアのベースにしつつ、障害の扱いや差別心を匂わせ、ドラマやサスペンスの道具にもし、チッティ自身の打算的なところ・善悪入り混じる内面まで見せる、そんな複雑さがありとても面白かった。
ふらふらとして無邪気で活動的で一目惚れして兄好きで血の気の多いチッティを、チャランさんがそれはもうくるくると演じていて、良かったなぁ!ぽわわーんしてる時と真剣な時のギャップがたまらん。ルンギ姿も眩しい…!想像以上に踊りまくってたのも最高だ。踊りパートの構成がミュージカル的で映画内容とマッチしていて好き(一曲だけアイテムナンバー的なのがあったかな)。
チッティ裏切りの帰宅後に家族が次々と集まりカレーを食べるユーモラスな仲の良い(即終わるけど…)場面がいいな。ランガンマとの関係も面白い距離感。
『PATHAAN パターン』観た
だいたいM:Iなんだけど、あのなじみの安心感に、ところどころ期待の荒唐無稽さと全開肉体美が加わって、やっぱりインドの娯楽映画はパワーが感じられて楽しいな!踊りはほぼ無いけれど、音楽の当て方が上手いよねぇ。あれでがっつり高揚させてくれるし、それと共に展開するアクション、特に肉弾戦が盛りだくさんで、個人的に非常に楽しかった!速度と重さが好みだったな。
アクションはどれも楽しかったが、中盤の列車アクションがめちゃくちゃ楽しーい。ニコニコしちゃう。私は知らないけれど、あれはユニバース的なものなのだろうと察しがついたぞ!俳優はご存じの方だし。
シャー・ルク・カーンの魅力ってピンときてなかったんだけど、すみませんでした、凄かった、色気が。なんだあの完璧筋肉と長髪とやさぐれ+抜け感ファッションでセクシー全開!おわー!
ディーピカーたんはもう期待を裏切らない美をこれでもか!と見せつけてくれるんで、最高。顔が大好きなんだ…。拝みたい。この二人が登場してる間(だいたい9割)は、うわー!ほわー!って脳汁が出てたと思う。凄かった。エンディングもセクシーの競演ドリーム映像すぎてやばい。
『真夜中のカーボーイ』観た
テキサスからニューヨークへ、アメリカンドリームを手にするために来た青年、その手段は男娼。
正義・男らしさ・男性的魅力の象徴としての"カウボーイ"に頑なにこだわる青年が、自由が手に入る街であるはずの大都会の現実に絡めとられ、寂しく何者にもなれず、"カウボーイ"を脱ぎ捨てていく。物悲しさが漂っていて面白かった。
最初と最後のバスの違いよ…ジョーの厚顔で意欲ある表情と心細さと不安全開の表情との差。うう…。乗客の視線も全く違うものに見えているのだろうな。
底辺をうろつくしかできない孤独な二人の、共依存の様な友情が切なくて良かった。上流との圧倒的な差。出会う人々の隠された事情。これがアメリカの現実だという様に。
ジョーの過去が挿入されるけれど追及はされず。想像するに、ものすごいトラウマだよね…そこに親の不在も。それも覆い隠す強い男の"カウボーイ"なのだろう。
ブーツ等を捨てるのがすごいサラっと行われるのがとても良い。いかにも自然な選択の様子が良い。地道に生きようという選択。リコがいたから選んだもの。
映像がアバンギャルドと言ったらいいのかな、独特で面白かった。リコを追う早いカット。情事の際に切り替わるTV。フロリダの夢。
『エリザベート1878』あと
彼女が夫や子供や従兄弟や負傷兵にまで、横に寝そべるのが印象的だった。同じ立ち位置でふれあいたいような気持ちの表れかな、と思って見ていた。親密さを共有したい表れというか。
動画の話が出てきて、そこに映る彼女の自由さが面白かった。動画に事実が映る的な台詞には、つい『フェイブルマンズ』を思い出したね。
彼女の奔放なわがままさも描いていて、子供との関係も面白かったし、侍女達とのやりとりも。一番の侍女にそれは酷い仕打ち…とは思ったが、ラストで女たちの繋がりの様なものが見えたのが好きだった。
ヴィッキー・クリープスが苛立ちから喜びから様々で些細な心の襞を表現するのを見る作品でもあって、それも楽しかったな。
『エリザベート1878』観た
「象徴」で「美しく」「若く」あることの抑圧を脱ぎ捨てようとした、エリザベート40歳の1年間。原題はCorsage。「お飾り」ということかな。
ところどころ現代のものや音楽が入り込んできたり、創作が入ったりと、ポップと言ったらいいのか、軽やかさがありつつ、エリザベートがとにかくダルそうで疲れているのがとても良かった。中年の不機嫌さがいい。ずっとイラついて反抗し続けているけれど穏やかに見えるのは、この中年まで我慢し続けたダルさがあるからかも。ほんともう色々ダルいわ…というね。わかるわ。
でも、抵抗することや求めたいものを諦めない意欲、もしくは諦めきれなさも終始あって、それも良かった。
ラストの演出はおお…!と少し驚いたけれど、爽快感があって面白かった。
その歳になると、若く美しいですね、これからも若く美しくいてねという褒めも、そんな訳あるかよとウザくなるし、もう勘弁してくれ…となるんだなぁ、というのがよくわかる。彼女が美貌の価値をまだ内面化し続けもがいているのが苦しそうだった。
従兄弟との関係がひとつの幸福だと思うのだが、彼女はそこに満足を見いだせていない、女として見つめられることを望んでいるのも気の毒だった。