『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』観た
ワインスタインの性暴行疑惑に迫る調査報道記者。報道ものにあるオーソドックスな作りで、真相を報道できるまでの道のりが遠いのだが、この作品(と記者達の関心の多く)は被害者の訴えが取り沙汰されないことの問題、構造にも焦点があるので、もどかしさを共有しやすいと感じた。
被害女性達の中で、勇敢に立ち向かったが理不尽な条件を飲まされ絶望した人、被害に遭遇後に静かに仕事から去ったが後悔している人が特に印象に残った。理不尽な判断を迫られた事自体に、その状況に屈してしまった事自体に、深く尊厳は傷つけられるのだとわかる。精神を蹂躙されてしまった重み。
記者が女性として仕事をし生活をこなす日常を送る場面が多いのも印象的。日々の中で向き合い続ける粘り強さ、それが一つの連帯の態度なのだと伝えている様に感じた。報道の価値があると信じて仕事をしているとは言え、記事を出しても世間の反応が薄かったらどうしようという不安も、この隠され続けた事案ならより強く感じるだろうことも理解。真剣なお仕事映画でもある。
『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』他には
本筋からは少し逸れるけど、育児中の記者二人が上司からはい出張!と言われて、マジですか?……あーーーーじゃあ私が行くことになるよねそうだよねー、ってなるのには育児していない自分でもそうだよねーとなって見ていた。乳幼児の親より小中学生の親が当然行くことになるよね。育児しながら仕事するのって、人手が要るっていうか大変っていうか、労力がかかることだと思うよ。
記者という仕事上、常時仕事してる感じで、当然夫婦や子供が協力しあって生活してる様子も沢山描写されてたね。協力してこの慌ただしさなんだから、協力が無いとそもそそも無理な仕事なんだというのもすごい理解する。
キャリー・マリガンの役の記者が、産後鬱っぽくなった後で職場復帰した際に、仕事をしてるとかなり楽と言っていたけれど、仕事が人格の大事な一要素であるんだよね。そういう人も多い。で、今回の事件で仕事の場を奪われた被害者達がいる。何重にも理不尽を迫る行為だったんだと思う。