『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』観た

憑依体験をドラッグのように遊ぶ若者。
予想通り悪い事にしかならないのだが、不安や孤独で心が弱っている子らなのが強調され、彼等の方がより依存し深みにはまっていくのがマジでドラッグだなぁと。そこに納得はするが、個人的には嫌な感じの作品だった。そこには悪循環しか無いので。
でも終わり方は◎。世にも奇妙な物語的な後味。

あの"手"自体は予告で見かけて思っていたほど禍々しくないし、霊的表現もそれほど怖くなかったので、やはり若者のメンタルヘルス状況の方を焦点にしているかと思う。
あ、でも結構痛そうではあった。痛そうなのはちょっとね、きついよね。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』観た

前作の丁寧な解説+念押し。他者の理想になれず、自身の繊細な望みにも向き合えなかった者の物語。残酷で真面目。自分は前作の答え合わせをするのも楽しかったし、苦痛からの逃避・無意識の感情をお歌と映像で開陳される羞恥で悶える面白さがあった。

インセルの共感を呼んだと言われている前作を思うに、最後はあれで大丈夫?自分はジョーカーに思い入れも大した知識も無いなので適当な感想だが、ジョーカーは"特別じゃない、現象"だとして、あいつのあの動作で、はい次々に来るよ~!と言っているとも見えたのだが、色々それでOKです?

アーサーが自主性のない他者に振り回される小者であるのを丁寧に、柔さと攻撃性まで、こうですよ~と見せてくれるので、ドラマチックに盛り上がらないがそこまで退屈はしなかった。

お歌で心象風景も豪華かつ陳腐なのが肝だと思ったので、ホアキンの演技(特に身体の表現。すごいね…)が巧すぎるほど痛々しさが輝く。現実と心象の差!厳しい…!あと法廷で頑張るところも共感性羞恥がー!

ガガ様は良かったが今作の設定だと役不足な感じ。

悲しいけれどさ、主体性なくイキっているとこう見えるしこうなるよ、という作品で味わい深かったけれど、これ言われてつらい人もいるのか…

『悪魔と夜ふかし』観た

お蔵入りとなっていたとある深夜番組生放送での放送事故映像を発掘したモキュメンタリー、という体のホラー映画。全く怖くないオカルトで面白いね。

70年代深夜番組の再現(再現ではない)に拘りが見られ、TV画質や4:3の画角、視聴率さえ稼げればいいといういかがわしさと、オカルト特集で積み重ねられる不穏とで、実際にTV番組を視聴しているような没入感があり面白い。出演者たちの表情や反応が良いのがまた楽しい。ダストマルチャンのいかにもな司会が見応えがあり良いんだよね。
悪魔憑きの少女の見透かすような執拗なカメラ目線と、奇術師の検証で鑑賞者を巻き込んでくる力業…からのクライマックス爆発、大惨事!という勢いが良かった。
のだけど、終盤の何があったのかの説明に入ると一気に「映画」に戻されてしまい。あの、画角が変わることで(その意味はわかるけれど)、モキュメンタリーじゃなかったの?という疑問が浮かんでしまい。そういえば、あの奇術師の検証も我々に見えていて良かったんだっけ?とも思うし。そういうのがどうでもいい!というまでの勢いはなかったかなと。前半の、裏側の映像が入るのは気にならなかったのだが…。モキュメンタリーを徹底していた方が好みでした。でも面白かったよ。

『花嫁はどこへ?』観た

婚礼後の実家への帰途で花嫁を取り違えてしまってさあ大変な映画。

うちの嫁どこいった?騒動のおとぎ話の中に、花嫁達の"人生"はどこへ行くだろう?と、男尊女卑の社会での女性の自立や教育の大切さを小気味よく伝えていく。女はみんな「ちゃんとした女性にならないとね詐欺」に遭ってるんだよ、と女性という「属性」「立場」で生きている不自由さ、見ないふりしないで行こうという思いが隅々に在る。

女性は顔を隠さねばならない、夫の名前を口にしてはいけない等々、女性を抑圧する伝統や風さを、逆手にとったり破らせたりと映画的面白さにして批判していく楽しさ。その塩梅が面白かった。まだ女性には命の危険すらある社会なのがわかる描写もある。最後には良心や人情でまとめる優しさ。偶然の失敗とそのチャンスの光を掴んだ意志によって、嫁の心と嫁ぎ先の家族に自由の風が吹き込んだ、ファンタジーだけれど現実に広がって行けという願いでもあって、いやぁ良いおとぎ話だった。好き。
あ、あと、警察がとっても優秀だったので驚き。ありがとう警察。めちゃくちゃ不遜だったけれど。噛みたばこ?のクセがすごい…。今までインドの映画で見た警官がろくでもないのばかりだったから、てっきりそういうものだと…。

『コット、はじまりの夏』続き

始めにおばさんと接する描写から、徐々におじさんとの描写が増えていくこと、そして最後の場面を考えると、やはりコットとその家族にとって一番の問題は父親ということだろう。彼があの状況の原因である。母親もほぼ育児放棄しているが、彼女も父親からDVを受けていて(困窮もだが、次々に子供を生ませるてるんだよね…)、もう子供へ向ける余力などなくなっているのがありありと分かる。宝くじが当たった母親がどうしたか聞かれて、当たったお金でみんなでゼリーを食べたとのコットの台詞が良いなと思って。母親は子供達への愛情はあるのだがしかし…というのがこの台詞だけでわかる。

実際問題、コットをあの環境から救おうとするなら、福祉…福祉の手が入ることなんだろうな。
子供と丁寧に接しようとする大人と、福祉システムってのは大変重要なものなのだよね。

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『コット、はじまりの夏』観た

沈黙は悪いことじゃない。家庭の事情で親戚の家に預けられた寡黙な少女のひと夏。最後がね…最後がさ…もう泣けて泣けて。

寡黙でいるあいだに、しっかり傷ついて、考えて、心は育っているのが伝わる作品。主にコットの見える範囲を描写するので断片から読み取るものが多くなるが、どうネグレクトがあって、おじさんおばさんがコットにどう優しさを向けてくれているか、そしてコットが感じとるものが繊細であるかがとても伝わってくる。寡黙であることで得られる豊かさを、まさに感じられるのがとても良かった。

特におじさんの、接し方に迷ってる感じからの打ち解け方がすんごい刺さって(自分も同じタイプだと思うし)。もう、あのビスケット一つ!泣いてしまうー!おばさんの、視線を合わせた柔らかい距離の取り方も素晴らしい。萎縮したコットが和らいでいく姿の温かさよ…。

だからね、もう最後がね…疾走と抱擁のエモと同時にあの近づいてくる人影がね、ぐあー!現実!解決はしないよね!つらい!となるのだけど、もう私の中ではコットはおじさんおばさんの家の子になるんだ!ということで、苦しさを紛らわします…。
いい作品だった。

 

『憐れみの3章』観た

支配と搾取関係をテーマにした短編を3つ続けて。その関係に溺れる人達の様子に面食らうけれど、じわじわ面白くなる。期待通り、ヨルゴス・ランティモス監督のあの変態的に見える感じがたっぷり。私達の中にあるものを極端に際立たせて提示してくるから気持ち悪く変態的に見えるのだよね。だから、おもしろ気持ち悪い。
原題を考えると、支配"して・させてあげている"、ある種の利他精神が発揮されている状況と言えるのかな…と思う。邦題の視線も理解できる、なかなか良いタイトルでは。ユーリズミックスのスイート・ドリームスが流れるが、まさにこの人々を表しているようで、なるほどねという感じ。

1章は割とオーソドックス(オーソドックス…?)な支配と搾取の話で展開され飲み込みやすく、2章はちょっとサスペンスみがある面白さ、3章は一番規模が大きく気持ち悪いことになっている感じ。
全体的にランティモス監督の変態的カメラワークや画の感じが抑えめで話に乗りやすい、観やすい気がした。その代わり音楽で気持ち悪さ全開という感じ、最高。

尺が長めだけど、短編の連続で話が切り替わるために長さを感じず、また各々のキャストが3パターンの役と演技をしているのを観る楽しさがあって、良かったですよ。→

『カンバセーション…盗聴…』観た

手練れのプロ盗聴屋がお仕事地獄の業火に焼かれる様を覗く映画で、大変面白かった。音と音楽、ショット、ジーン・ハックマンの演技の渋かっこよさ。
辞めるには良心がなさすぎ、やりきるには良心がありすぎた。その良心がかえってプロの目を曇らせた皮肉!耳で聞き目で見たものに物語を作り上げてしまう人間の性ゆえの妄執かもしれない。自らの所業を返されて、猜疑心で壊れていく様子がたまらないね。部屋の崩壊は心の崩壊。

秘密主義生活の弱音を吐きかけたのを仲間に盗聴された場面、繊細な心の襞を盗まれ開陳されたことに傷つく姿が気の毒でな…いや、その心があるからこそ己の所業に焼かれるのだけどね…。(夢で)盗聴対象にならできる身の上話の時点で、もう駄目になってるんだよねぇ…。
盗聴屋業界フェスがあるのが面白かった。後ろ暗さは横に置いておく感じw

冒頭から音とズームで魅せる掴みが◎。会話を再現していくのが鑑賞者も引き込まれるようで。アップや引きを使ったショットの緊張と解放がこちらに訴えかけるようで面白い。主人公のシルエットから入る場面もいくつかあって好きだったな。

ジーン・ハックマンって血圧高そうな演技しか見たことが無かったので、こんな抑えた渋い演技すると知って大変良かったです。

『ヒットマン』続き

そうそう、グレン・パウエルのこと。グレン・パウエルは、見ていて面白い俳優だな!と、今回特に思いました。というのは、派手なのか地味なのかわからない、知的にも愚かにも見える、善と悪の雰囲気も持っている、そいういう微妙なニュアンスを持っているのが、囮捜査員の役で発揮されていて、いや楽しかったですよ。

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『ヒットマン』観た

哲学教師がおとり捜査員の能力を発揮して顧客のお好みの暗殺者に七変化、な話。やや実話。サスペンスなラブコメお仕事映画と面白く観ていたら、いやいや…自己とは何か?自己変容の力を考えさせられてしまう、軽妙なポジティブハッピーの皮を被った毒という感じで、強烈なブラックさだった…!おお…!

捜査対象者や、捜査・司法自体に対する哲学教授としてのどこか趣味的な捉え方をしていたのが、いつしか最大の窮地に陥り、どこに着地するのか読めずハラハラして面白かった。その過程で、演技と自己が一体化していくあわい、ぬるっと一線を踏み越えていく様が、なんともおもしろ恐ろしい。相手に望まれる自分が、なりたい自分なのだろうか?そこに幸福を見出したという「自己認識でいる」のが、爽やかなのにえぐみのある余韻で。特に良いとも思っていなかったある種のイケてる男らしさに無意識に飲み込まれていく話にも見えるし。ある理由で嫌いだった犬派になって幸せ…?って、いやぁブラックだわ。

『僕らの世界が交わるまで』観た

意識高いvs浅はか、全く違う方を向いてる母と息子がギスギスするのだが、時間が経つにつれ、このふたり似た者親子すぎることがはっきりと見えてくる。平行線の二人を綺麗に対比させながら、これからの予感に終わる演出で面白かった。機会があれば、向き合えるのかもしれない。ジェシー・アイゼンバーグが監督なんだね。ほほう。

希望通りにならずこじれる親子の話はよくあるものだけど、左派政治的な家庭と同級生たちなのが今どきで新鮮で興味深かった。普遍的な話も、細部の違いも、たくさん語られるべきだよね。

父親で夫が指摘する通り「自己愛が強すぎる」ふたりなのがねぇ…。相手に好意、親切を向けているつもりが、実は自分の世界に引き入れようとしているので空回りするというのが、とても痛々しくて、寒々しくて。息子ジギーは、子供だなぁと見ていられるのだが、母エヴリンの方が厄介というか静かに強烈で、心理が想像つくだけにきついものがあった。期待と執着の象徴の様に映されるホイルで包んだ食事が良かった。2回映すのがいい。

『交渉人』続き

どうすんだこれという空気でやたら射殺したがる警察にハイテンションな主人公で立てこもり事件は派手な緊迫感があるが、汚職事件はすごい地味という、ちょっと変わった可笑しみのある作品に感じた。
「仲間を信じられないとき、信用できるのは他人」なかなかいい台詞だったな。

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『交渉人』観た

交渉人vs交渉人をやれば絶対面白いはず…を成功した作品ですね。面白かった。

立てこもる交渉人の成り行きと警官汚職の解明の二本の軸を絡ませて同時進行するので、スリルが絶えない。そして、手の内を知ってる者同士のやり合いで心理戦になるのだから、まあ楽しいですよね。

あと上手いなと思ったのは、主人公が仲間の警察官らの同情を呼び起こす演説を入れるところ。主人公が無実だとわかっている鑑賞者にも、今一度共感を抱かせる作り。で、実際射殺を躊躇うのとかグッとくるのだよね。人質の不安と同情の間を揺れる感じも面白かった。ポール・ジアマッティの人懐っこい愛嬌と正義感の塩梅が良かったー。

しかしジアマッティさん、先日観た『ホールドオーバーズ』の演技と全然違って、すごいなと思った。他の作品でも見ているはずなのにあまり記憶が無くて申し訳ない(『サイドウェイ』は覚えてるが嫌いなので…)。

お仕事映画として観たかった気持ちもあるので、終盤に交渉人という職業としての心理戦が無くなってしまったのはやや残念。でも信用と賭けの絶妙なやりとりがスリリングで面白かった。振り返ると、犯人が結構印象的な言動していて最悪だったね。悪い奴だ。

『モンキーマン』続き

デヴ・パテルがすごく動けるので、アクション自体は面白かった。しかも軽い感じでなく、血の味がするぜぇ!という具合で。

ネオンカラーの中の戦闘はもう飽きたな…。これがやりたかったのかもしれないが。でも、バーカウンター上での戦闘は良い~。スカイフォールを思い出した。カメラの手ブレ演出が得意でないのもあって食傷気味だけど、この作品には割と合っていた気もする。ギリギリだけど。
パーカッションで強くなるのが面白かったですね。
回想もちょっとくどかったかな。

謎だったのは、脱色後のマスクをすぐに捨てたこと。あれものすごくもったいなくないですか?なんで?燃える演出だったのに?しばらく被って襲撃した方が良くないですか?なんでだよー

でも概ね面白かったです。デヴ・パテルのアクション作品は今後も観てみたいですね。

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『モンキーマン』観た

村を焼かれた青年、復讐の権化と化す。
アクションが好き(らしい。子供の頃からテコンドーをやっているようですね。)デヴ・パテルが、作中でも言及されるように『ジョン・ウィック』的復讐アクション映画を撮って、なるほどこういう画が撮りたかったんだろうな~というのが大変わかりやすく熱意が伝わる。ただの復讐アクションにはせず、ムンバイの階層差、宗教と警察と政治の癒着を見せつつ、個人の復讐に社会的に虐げられ周縁で生きる者達の思いが乗るところがユニークで良かった。ヒジュラが参戦すること、そのタイミングとか、燃えるよね。観客がモンキーマンを支持する声を挙げるのなども。

ただ、復讐に多数の思いが乗った先のこと、エスカレーションの危うさとかそいういうものの示唆があればもっと良かったのになと思った。ハヌマーンになぞらえるなど神話性も乗せているしその辺りで意図されていたものもあったかもしれないが、あまり読み取れなかったかな。復讐はいいのだけど、それで終わりでもないからな…と思うので。→

『ポライト・ソサエティ』観た

スタントウーマンになりたい女子高生、姉ちゃんが結婚で不幸になるのを絶対阻止してやると大暴走!アクション、コメディ、少しホラーが混ざりながら、でかいシスターフッドを見せてくれる楽しい映画だった。

主人公・リアの暴走が危なっかしい…!と思いながらも、無意識に身近な人の生き方を自分の支えにしていて相手が変わってしまうと動揺する気持ち、とっても分かるし、若くて真剣だから故にアホっぽい仲間とのノリなんかが愛しくて、終始笑顔だった。
中盤に笑える真相が明らかになるが、でも誇張しいてるだけで、現実的に女はああいう扱いされる側面はあるよねと思う内容。と言うか、もろに人間の尊厳が損なわれていて最悪な話。
リアに立ちはだかる敵が異常に強いが、あれはリアのifルートだったものだからこそバチバチに強いのかもな、などと思った。あの敵は最低だが、その怨念はわかる、気がする。
あれらが拷問になるのに笑ったが、納得するし、その後漂う哀しみ。女だからこその大変さはまだまだあるよね。

想像よりハチャメチャな空気だったのだが、ならばもっとアクションは外連味、派手さ、早いテンポなのが好みだったな。

友達ズ、姉ちゃんとのノリが最初から最後まで最高だった。こういう作品がまだまだ観たい。

『コールドマウンテン』続き

それぞれに頑張ったエイダとインマンを見てきたので、悲しい結末は嫌だなと思うのだが、そこはまあ想定した悲劇がくるわけで。戦争が引き起こす虚しさなどは色濃く感じられる、面白い作品でしたね。

しかし、インマンの傷ついた心や罪の意識はわかるのだけど、かなり善性を保っていたと思ったよ。

あと、髭をそって美しい顔を出したということはそろそろか…とか、登場人物に恐ろしく美しい男だなどと言われるたびに(何回か言われていた…!)マジで本当にそう!とか相槌うちたくなるし、ここで生き延びる・助けられるのも顔がいいからあり得る…!とか、顔の良さへの邪念が湧いてもうね……美しかったね…!

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『コールドマウンテン』観た

南北戦争を舞台に、銃後の混乱と困難に翻弄された悲恋。

輝く瞬間、愛を支えに生き延びる人間の強さを軸に、女性の自立、兵士の悲壮が描かれるのが良いのだが、ジュード・ロウの顔の良さがしゃしゃり出てきてしばしば集中できなくなる。いや、本当に顔が良いよね…

エイダ(ニコール・キッドマン)とインマン(ジュード・ロウ)が出会う前半、惹かれ合い目が離せずぶつかる視線、想いを伝えきれずに出征…な直球純愛らしさ、二人が演じるとまぁ美しくて、ここからグッと悲恋に進むのかと思えば、各々の話の内容が強くなっていき、恋愛は横に置いておいてもいいんじゃない?という気分に。

レネー・ゼルヴィガー演じるルビーがエイダを手伝う辺りからグッと面白くなって、彼女らが補い合いながら困窮に立ち向かい逞しくなっていくのが良くて。チャーリー・ハナムやブレンダン・グリーソンさんも味を出してくるし。

インマンの道行にも、フィリップ・シーモア・ホフマン、ナタリー・ポートマン、キリアン・マーフィが、牧師、寡婦、兵士の悲哀をクリティカルに出してきて、こちらもまた別の展開での人間が生きるとはどういうことか…?を見せられるので、エイダとインマンが再会しなくても、それはそれで…という気持ちに。→

『ツイスターズ』観た

気候変動に立ち向かえ、怪獣を手なづけろ、科学者再起の物語が熱い。人間関係を捌くのが上手くて気持ち良く楽しく観ていられた。キャストが全て良い!劇伴も好き。ディザスター描写にもう少し外連味や溜め演出があればなぁ。竜巻十分怖いが、主役の怪獣感がもう一歩かも。

嫌な奴が実はいい奴の塩梅が最高のグレン・パウエル、この路線を走っていってほしい。登場した時の本当にヤバめな感じ、次第に見せだす真面目感のキャラとしてはハビが複雑で、終盤は彼を応援せざるを得ない。災害と研究にまつわる金問題への言及があるのが良いね。再起の物語としては、自分のノートを振り返る描写があるのが、個人的には大切だと思う。ノートを写すと写さないじゃ全然違う。周囲の後押しがあっても、最後に引き戻すのは過去に積み上げた自分の努力と情熱。これよ、これ。素敵だ!
あとは終わり方が洒落てるよね。こういうのがいいんだよ。キスをカットしたのは英断。
あと、拗ねてるブランドン・ペレアが可愛すぎ最高。他のキャラの味わいも良くて、背景をもっと知りたくなる。

『墓泥棒と失われた女神』観た

所在なげに浮いている外国人墓泥棒、恋人の影を求め現実と幻想と生と死を曖昧に彷徨う。可笑しみと哀しさ軽やかに混ぜ合わせた現実と幻想の揺らぎに漂ううちに、魂に触れるラストの美しさにやたら感動した。良作。

生と死の曖昧さとか、人が求める現実と精神の揺らぎとかが主題の一つだと思うのだけど、その揺れ続ける存在としてのアーサーを演じたジョシュ・オコナ―が非常に良かった。イタリアの中の浮いた存在の英国人。やさぐれ感をベースに、演技の手数が多いというんですかね、弱さや狡さ、優しさ酷薄さ、色々な表情や雰囲気を出してきてくれて、見ているのがとても楽しい。素晴らしいよ!ジョシュは今、そしてこれから旬の俳優だですよね。

現実と幻想の混ざり具合が軽やかで面白かったけれど、『幸福なラザロ』のゆったりしつつも切れ味がある演出、聖と俗の寓話感の方がやはり好きかな。

列車の場面は全て好きだし、祭りに向かう路地の場面の幻想的な具合がとても良かった。
幸福なラザロでも感じたことだが、イタリアの人々への眼差しに優しいものがありつつ、彼らの気さくさと排他性の落差を見せつける様でもあるのに若干衝撃を受けますね。

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