肉体改造を経て死ねない身体になった「わたし」は、暇を持て余した末に家族史を記し始める。父のこと、兄と姉のこと、恋人のこと、これからのこと。
正直、前評判ほど「良い本」とはおもわなかった。身体性も名前もはく奪された永遠の少女(って年齢でもないんだけど、一人称で語られる文体がとても幼く実年齢と乖離している)が、介護や育児といったケア労働にずっと搾取され続け、しかも自分も搾取の連鎖に関わっていたことを悔やみつつ、いろいろ納得した末に筆をおく……って話なんだけども。
物語はずっとすごく淡々とすすむ。主人公はまるで心までロボットになったように、悔恨も憤怒もあらわにしない。それは自身が受けた「傷」に影響していた乖離症状かもしれないけれど本編からは読み取れない。表現や道筋はどうあれ、最終的に搾取を納得しちゃう話を『いい話』として消費するのは、どうにも気が乗らない。
ずっと家と個人のなかで完結しているのも、物語の仕掛けの一つなのだろうけれど、社会情勢や社会規範といったものは殆ど出てこず、こうあるべきといった理念も理想も描かれず、自分がした/されたことのみが取り上げられていたことに凄く違和感があった。でもまあそういう作風がウケたのかなともおもった。