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『FIRST COW』、年末に滑り込みでこんなに好きな映画に巡り合えるなんて、「おっ西部劇らしいな見とくか」くらいの軽いノリで見に行って本当に良かった…西部大開拓時代より少し前の1820年代のオレゴンの話で、メリーランド出身の男性と中国からの移民の男性が仲良くなり、一攫千金を目指して仲買商人の牛から牛乳を盗んでドーナツを作る…というあらすじから想像できる甘やかな成功物語とは真逆の、持たざる者の悲しさを静謐に描きだした作品です。二人とも持たざる者ではあるんだけど、互いを思いやり労り合う強固な友情の描写がとても美しい。
あー西部劇、そんなにすごくたくさん見てるわけじゃないんだけど好きでよかったホントに。古いジャンルが新たに作られる傑作によって次々に新しい側面を照らし出されてて、これもそういう一本です。ジャームッシュの『デッドマン』やピーター・フォンダの『さすらいのカウボーイ』（あれほど作りこまれた美しい映像ではないが、自然光を生かした青く濁った色合いが泥濘とシダに囲まれたオレゴンの自然を写してとても良い）好きな人におすすめです。
#映画 #マストドン映画部
あとオーディアールの『ゴールデン・リバー』好きな方にも強くお勧めしたい！ 主人公二人が本当にいいんだ。暴力が苦手で牛の境遇にさえ心を痛めて同情してしまうクッキー役のジョン・マガロの常に柔らかな表情がとても良い。世界を放浪の末アメリカ大陸で一攫千金を目指すキング・ルー役のオリオン・リーは物凄く良い声の持ち主で、声のタイプは違うんだけど少しだけイ・ソンギュンを思い出して悲しくなってしまった。西部劇というジャンルで、中国移民が誰よりも頭良くて狡さもあるけれど友人をどうしても見捨てられない優しさや、生活を彩ることを喜ぶ魅力的で血肉の通った人物像で描かれるの、ほぼ初めて見た。
ネイティブ・アメリカンの生活も濃やかに描かれていて、リリー・グラッドストンも出演しています。