#落語 #寄席
(つづき)
さん喬「笠碁」
こんなに客が少なくて申し訳ないと心の中で詫びながら聴く。でもさん喬師匠はきっちりしっかり聴かせてくれた。それほど笑いどころの多くない「笠碁」を選んだのは、客の少なさも影響したのかなと勝手に思っている。この中でなんといっても好きな場面は、喧嘩別れしたあとの美濃屋宅での老夫婦の会話。ご隠居が何を話しかけても、老妻は膝に乗せた猫に向かって語りかけるようにして返事をする。その猫を撫でる手つきがもう、本当に猫が見えてくるんだなー。頭を撫でたかと思うと、首の横を撫でたり。妻がお茶をいれるときに、「猫を膝に載せたままするな、湯がかかったらどうする」とたしなめるところも猫好きにとっては萌え萌えポイント(=^・^=)(つづく)
#落語 #寄席
(つづき)
正楽 羽根つき、鏡、神業
「神業」という珍しいお題に対し、「寄席の神業といったら……あたしでしょう!」といって切ったのは、正楽師匠自身と、切り終えた紙から馬(?)が飛びだしているような構図。これは素晴らしかった。
扇遊「たらちね」
久しぶりの扇遊師匠。上手な方がやると前座噺もこんなに味わい深くなるんだ、と思うと同時に、どうせなら別の噺を聴きたかったかなぁという贅沢な感想も湧く。
小平太「おすわどん」
これは初めて聴いた。歌丸師匠が発掘して、得意としていたらしい。怪談噺と思いきや……で、小平太師は表情のつくり方がまるでアニメで楽しい。
橘之助&天音
座布団が二枚用意されたので何事かと思ったら、橘之助師匠が弟子の天音さんを連れての高座。寄席デビューしたばかりなのだそう。17歳のときに出待ちして弟子入り志願して以来、4年間の修業を終えて21歳。デフォルトが困り顔で、かわいらしくて初々しい。でも声はしっかり出ていたし、あの様子を見たらつい応援したくなるな。がんばれ。(つづく)
正蔵「鹿政談」
最初、噺をすっと始めたはいいが、楽屋に手ぬぐいを忘れてきたことに気づき、前座にもってこさせるも、気勢を削がれていったん楽屋に引っ込み、出直す。結局、演目を替えて「鹿政談」に。本当は「一文笛」をやるつもりだったらしい。残念だ。一文笛は聴いたことがないから、聴いてみたかったな。師匠が「ツイッターには書かないでね」と言ったので、マストドンに書いてみた(ソウイウコトデハナイカ…^^)
やなぎ 新作
田舎から上京するさゆりの前に、元彼の「代行」が現れる。日頃、元彼が飲んだときの運転の代行を請け負っているという男。元彼の代わりにさゆりを引き止めにかかるが……という話。面白かった。前回聴いた「親子酒」もよかったっけ。古典と新作を両方やるということで、喬太郎師匠と比べられると思うけど、すごくセンスがあると思う。次にあがった玉の輔師匠が、「いかにも『本当は喬太郎に弟子入りしたかったのに、断られたからさん喬師匠にした』って感じだ」と言っていた。確かに喬太郎みはあるけれど、ネットの情報によれば、やなぎさんは寄席に通ううちにさん喬師匠の話術に魅せられ、さんざん入門を断られながらも粘って十一番目の弟子になったらしい。おばちゃんは応援するよ。(つづく)
#落語 #寄席
2023年1月16日(火) 池袋演芸場の正月二之席へ。
池袋の二之席はまだ正月気分が残り、料金も高めだし獅子舞も出たし、演者も普段より多い。その分、短めながら色々な噺が聞けたのはいい……のだけれど、客の入りが本当に寂しかった。わたしの寄席人生で一番少なかったかもしれない。最後までいたのは20人くらい? やる側もやりにくいだろうし、張り合いもないだろうし。何より、笑い声に厚みが出ないというのは、客の側からしてもどうにもやりにくい。
それに、客席の隙間がそのまま心の隙間になって、つい余計なことを考えてしまう。これで取り分はいくらなんだろうとか、鈴本の喬太郎は満席なんだろうなとか、そういう話を伝え聞くとどういう気持ちなんだろうとか、なんだか客として申し訳ないとか。客が入っていればいるほど楽しくなる。寄席の場の空気は演者と客が共につくる。それが寄席の真実だと、しみじみ感じる夜だった。(つづく)