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『真実の行方』観た

そこそこ映画を観てきた今だと、初めの方でこの事件の犯人、動機、概要はおおよそ想像がついたりするのだけれど、それでも、軽薄な野心家に見える主人公弁護士の仕事と人間への信念を知り、審理の成り行きと彼の奮闘を見せる法廷劇の緊張を楽しんだ後に、前触れもなくこの結末をもってくる、この展開の鮮やかさは面白かった。沢山の報道陣が待ち構えるのを見る主人公を背後から写したシーンが良い。彼の胸にはどんな感情が広がっているのか、または何も感じられないでいるのか。痺れるね。

『哀れなるものたち』観た 続き 

マックスとの結婚に自然に落ち着くのも、せっかくあんなに自由を突き進んでいるのに、なんだろう、少々残念だった。自分は個人的に婚姻関係にあまり価値を感じていないので…。でもマックスのことを考えたら、戻ってきてくれて本当によかった‼という気持ちではある。

ベラをいいようにできる・自分は軽快な精神の持ち主だと思っているダンカンが、自覚していなかった世間体や支配欲に振り回されてズタズタになっていくのがめちゃくちゃ面白かったですね。悪くて情けないマーク・ラファロ、面白い。おいしい役!

あとゴッドウィン役のデフォーさん、完璧だった。登場シーンの顔、表情に雰囲気が良すぎて、なんか興奮してしまった。ゴッドはベラを創造した自身のエゴや傲慢さと創造したものの自由を尊重する矛盾、自身の愚かさを自覚している、でもだからといってやめられるわけではない、という複雑さが感じられて、こちらも良い役でしたねー。面白かったー。

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『哀れなるものたち』観た 

面白かったですね!
科学者のエゴにより、大人の身体に赤子の脳を埋め込まれ創造されたベラが、世界を肉体的精神的に知る冒険へ飛び出し、感知し観察し主体性・自由を発揮し選択してゆく。性的快楽を足掛かりに、女性を囲い抑圧してきた、そして今も抑圧する男達の支配欲をズタズタにしていくのが清々しいし、自分の存在の根本原因となったラスボスとも対峙する、突き抜けていく感じがとても面白かった。人間の自由な意思の肯定。
女性が積極的に性的快楽を得ることの肯定、その幸福、自由を土台に進むので、セックスが重要なのはそれはそうなんだろうけど、人間の幸福は精神的成熟でもあるという後半が、性描写より熱が入ってなくない?と感じてしまったかな。船上のマーサおば様との場面が良かったけれど、あれでは物足りなかったので。自分が読み切れてないだけかも。前半の方がすごい面白かったと思っているのもある。
あと、最後のベラの夫への仕打ち、少々違和感がある気がする。知的に成熟し、殺すのを嫌がり人間の向上を信じる彼女のすること…なのかなぁ。でもベラは残虐性も無くはないし。毒々しい仕返し自体は、清々しい~おもしろい~と思ってね、嫌いじゃないんですけれども。原作は違う結末らしいので、どんなものなのだろう。気になる。

『緑の光線』感想続き

しかし、観光地の人がごった返す浜辺でバカンスだからとひとり海水浴をするのはきつすぎるのでは…友人の親戚と過ごすのもきつい…自分だったらそんな根性ないわ。とにかく誰かと居たい。でも人と居ればいるほど、孤独が増すものだよね。そうかと言って、悶々とした気持ちでは滞在先の部屋でも外でも一人でいるのは落ち着かない、自宅にもいれないのもわかる気がする。所在なさげな様子が、気の毒であり面白くもあり。散歩の途中で悲しくなってしまうのは、なぜか特に共感したな…

肉食拒否の場面、彼女なりの意志の強さがありつつ明確に説明できないもどかしさを抱えいるのがわかるちょっと重要な場面なのだろうが、彼女も周りも主張を下げたりぼやかないので気まずくなっていくのが、文化の違いなのかなと面白くなってしまった。

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『緑の光線』観た

バカンスを一人で過ごせない女性、どんどん拗らせる。
人生にとって恋人ってそんなに必要だろうか?というのは置いておいて。周囲の人間が、今恋人が必要な自ら行動するのも必要じゃない?と助言するのも頷ける程、どうも状況に受動的な主人公デルフィーヌ。ついついそうも言いたくなる、彼女の不貞腐れた様子…。助言の中には、一人で過ごす旅もいいものだよというのもあるが、二言目には、旅先で出会いもあるかもだし、人生ずっと独り身ではないんだし…と続けられる息苦しさ!この欧州のシングル人生は駄目という価値観を目の当たりにして、主人公が段々気の毒に。
そう、主人公は不貞腐れてはいるが、規範や欲の中で自分の感情や意志を明確にできない、言語化できなくて苦しみながら拗らせていく心理は、とっても理解できて可哀そうになるんだよね。自分には人に与えられる価値が無いから孤独なのだというね…そんなことはないんだよと、声を掛けたくもなる。
それでも、何とか語りだして、偶然に乗っかって、緑の光線を見にいこうと踏みせた時、心が形になりはじめた時がなんとも愛おしい。

「自分自身と他人との触れ合いをとりもどそう」と作中で教えてくれるの、親切だな。

『ソルトバーン』観た

これ、上流階級・実家が太い人間が放つ屈託のない優しさで、しかし見えない境界線が引かれている悪意のない残酷さもあるやつなのだろうな、これは下流の者の愛憎を煽るよ…と思っていたらやはりそういうお話だったので納得。『太陽がいっぱい』の親戚の様な。その愛憎の苛烈さがバリー・コーガンによって湿度高めでねっとり増幅されてくるの、面白いね。

主人公オリヴァーの上流の同性の友人フェリックスに対する欲望が尋常じゃない、同一化したい域に達しているのが独特で大変面白かったのだけど、やや奇を衒っている印象を受けたのと、オリヴァーの"裏"が見えても、じゃあ彼の強烈な欲望の源泉は一体どこに?と疑問のまま最後まで話が走っていくのが、ふわっとしていたかなと感じた。オリヴァー側の心理スリラーというより、上流の人々はいまこれが怖いんだスリラーに見える気がして。

バリコを最大限堪能できる作品としては、本当に良いですね。今回は裏がある役だったので、彼の心理の動きの詳細は読ませない、でも今確実に情念が発酵している…な演技の上手さが効いているよね。歩き方でも全然違うんだよね。そして今回は何でもやってくれたなぁ。
最後のダンスはね、気持ちがわかる気がした。『帰らない日曜日』を思い出した。

『ある少年の告白』感想続き
性的指向に関係なく、また二者の間に関係を深めたいとする雰囲気があったとしても、同意がなければ強制性交であること。
マイノリティで悩みを持っている弱者でも卑怯で卑劣なことはする。
性被害の告白を強制されるのは問題、ましてや性的指向とその被害自体は関係づけらるものではないこと。
主人公がそれらの外的事象およびそれに関する思考と、自身の内にある思考や心理を混ぜないこと。それらの描写があるのが、しっかりしているなと感じられて良かった。被害は本人の罪ではないし、性的指向も罪ではない。

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『ある少年の告白』観た
ある出来事を契機に、キリスト教系LGBT矯正施設へ送られた青年の苦悩と告発。実話ベース。
主人公の動揺・苦悩と闘いを見つめながら、施設の実態と彼に何が起きていたかを知るミステリー的要素も。キリスト教の牧師家庭で、父親・母親・息子が各々の立場で教義と心情に苛まれ、関係が歪んでいく様は見応えがり。皆上手いし、視線など内心の表現・撮り方が安定していた。保守的信仰が篤い人には難しいとは理解するが、正しいとはとても言えない。
矯正を騙った虐待であることは明らかなのだが、ではなぜそれを行うのか?というと、単に信仰や金銭的利益目的だけでなく「正しい事をしている実感」の為では…と思うのですよね。そうでないと、ああも熱心に運営管理しないのでは。守秘義務を持ち出すあたり自覚もあるのだろう。本当に人間は厄介だと思う。
虐待や理不尽をされるのが問題なのは大前提で、決断し抵抗し闘う勇気を出さねばならない時はあること、それでも味方がいなければ貫けないこと、を重く感じた。施設でのその後を伝えられた彼は、主人公の別の未来だったのだろう。危険な気配の中を主人公が決断できず進んでいく様がつらかった。ルーカス・ヘッジズ君は、繊細で不安定でも内省し闘う強さがある性格を演じるの上手くて、本当に良いよね。

『シャクラ』観た

ドニーさんなので是非とも観る、ということで全く情報を入れずに観ましたが、武侠物時代劇ファンタジー演出ありという感じで楽しかった。武侠物結構好きなんだよね。
アクションは剣戟も体術もさすがで、満足感ありで楽しかったのだけど、いきなり拳から炎や波動が出たりする演出ともちろんワイヤーアクションなので人を選ぶのかな。私はこれも結構好きです。だってもう降龍十八掌!とかバチバチに決めるのワクワクすぎるよ。派手波動演出とドニーさんが若作りということで『かちこみ!タイガー・ドラゴン・ゲート』を思い出しながら観たり。あれ、なんだか忘れられなくて…
原作が人気の長大な小説ということらしく、それを映画にしたことから、情報量がかなり多いのにざっくりしているけれど、話に乗ってしまえば爆速展開も面白く見れる。恩讐とか悲願がね…なんかすごいのよ。誰に信じて貰えなくとも正道を貫くのが真の英雄という話とは言え、頼れるリーダーのはずなのにあまりに誰も彼を信じないし悪し様に言うので動揺…なぜそこまで…。しかし、武侠らしい義断の盃からの大乱闘とか爆上がりの展開などがあって楽しかったですね。喬峯というかドニーさんの強さが異常!という期待したものが確かに見れて楽しかったー

『源氏物語の結婚 - 平安朝の婚姻制度と恋愛譚』読了

大河ドラマの予習になるかもと読む。
これは面白かった。平安期は一夫多妻制と言われているが、本当は一夫一妻制多妾状態が正確だろうと述べる本書。ぼんやり理解されているものに、法令や立場の優劣の例を引いて検証し、法的関係の重さに注目している。婚姻制度を知ることで、当時の恋愛も幸せの形も見えてくるし、恋愛ものとしての源氏物語の奥深さもわかってくる。愛だって見えるものにすることで、強さも深さもわかるのだ。ただ愛があるだけでは正妻にも幸せにもなれない、女達のシビアで悲しい世界。
なるほど、嫡妻との間には恋愛は起こり得ず、翻って恋愛はその他の女性との間で起こると知ると、源氏物語も腑に落ちるところが増えてくる。当時の社会的立場を登場人物にリアルに落とし込むから読み継がれてきた側面もあるのかもと思う。「つま」達の立場の優劣を知ると、かなり強烈な恋愛物なのかもしれない源氏物語。そして、式部先生の冴えわたる構想力!といったところかな。
源氏物語の婚姻例を具体的に説明する部分もあり、サブテキストに最適に思われる。理解も、見え方読み方も変わる。
で、このように面白い社会通念の一端に触れても、源氏はやべえ奴だと思いますけれども。

『コカイン・ベア』観た
輸送事故により森に投棄されたコカインを熊が摂取してしまったら、ハイな熊が人を襲うんじゃね?ってことで、確かに熊のコカイン摂取への欲望により人が次々に襲われていく!飛ぶ血しぶき!なのだけど、意外とテンポがまったりしていて、期待した緊張感には足りなかったかな。中盤の救急隊が到着するあたりのテンポ、緊張感、惨劇のユーモアは良かった!聴診器を使ったアレは声出して笑った~。あれは面白すぎる!
東屋の攻防も、関係性が動く緊張感があって、なかなか面白い場面。それ以外が思ったよりおとなしくて惜しい。悪くないんだけど。
登場人物が多くて、それぞれの事情で次々と熊の森へ集結し、そして皆がどうやら人生を次に進ませていきたい気分である。さてそれなら誰が生き残るのか?という楽しみはあるし、最初の方で、おやこれは友情のドラマがあるっぽい?と思ったらやっぱりあるので、その辺は意外と良かったです。人生の打開も終了もクスリ欲しさの熊次第。まあ大変。
熊の凶悪さ、爪の破壊力などが一応描かれていたのは良かったよ。きちんと鋭かった。今年は熊の報道が多かったこともあり、噛み攻撃も強力だけど、熊はまず速さと爪の威力が特に怖いと思っていたので。

『ポトフ 美食家と料理人』観た

1880年代を舞台に、美食家ドダンと料理人ウージェニーの料理と愛の人生。二人(と下働き)がきびきびと動き熱を込めて料理を作る様子がじっくりと描かれるのが良い。手間を惜しまず、素材を贅沢に使い旨みを引き出す料理の数々。美食倶楽部の面々も美味しそうに堪能するので、こちらの胃も刺激される。

観ていくうちに、二人にとって料理を作り食べることは芸術であり思想であり、それこそが生活で人生なのだという事が分かってくる。のだけど、こういう食、料理に情熱があり理解する能力がある人間以外はお呼びでない感じがあり、少し冷めた感じで観てもいた。美しく素敵には思うのだけど。なので下働きのヴィオレッタの気分で観ていたかも。彼女が時折微笑みながら働き、見つめているのに親近感。

それでも、二人の関係を進める決意をしたウージェニー、共に料理を作り上げる関係こそが最上の人生で幸福じゃない?と考えるウージェニーに答えたドダン、彼らの優しさと敬意ある関係は愛おしく素敵だと思えた。かけがえのない彼らだけのパートナーの形。

映像、音、光が大変繊細で美しくて、惜しみない料理への情熱の息づかいを楽しめた。

『帰れない山』観た

イタリアの山間で12歳で出会い繋がった男二人の友情の軌跡。そこに確かに友情はあり寄り添って過ごしたけれども、人間は絶対的に孤独なのだろうと思い知るようで、寂しい映画だったな。良かった…

山の民として生きる者と、山を愛しているが山の民のようには生きれない者。二つの生き方の差というよりも、人生の速度やタイミングがそれぞれであったことによる悲しさを強く感じる。主人公が「共有した時間はなんだったのだろう」と言うが、そんなこと言わないでよ…とものすごく悲しくなった。主人公の居場所の定まらなさの苦しみは手に取るようにわかるが、ブルーノの苦しみは見えにくいんだよね…彼がもっと語る言葉を手に入れていたなら、何かが違ったのだろうか。

大人になってからの友情は淡白に見えるけれど、会わなかった期間があるし、12、13歳の頃の距離の縮まりとお互いを理解してる様子があるので、いい関係だなと見えた。お互いにうっすらとした憧れや嫉妬を持ち続けたんじゃないいかな…なども思う。

登山中人物をカメラが後ろからとらえるが、それが雄大な山々と接しながらも内に内にと内省している、人間の自然との向き合い方を写しているようで良かった。山々の風景が素晴らしくて、自分も山と向き合いたくなる。

『帝国の亡霊、そして殺人』読了

1950年代初頭、インド初の女性警部ペルシスがイギリス人名士の殺人事件に臨む。ミステリとしてはオーソドックスながら舞台設定が興味深く、イギリスからの独立・印パ分離独立の混乱の暗い影、女性蔑視の社会や組織の圧力が絡み合い、事件捜査が展開され面白い。ペルシスが自身の在り方に悩みつつも猪突猛進といった様子で正義の捜査に向かう姿は応援したくなる。開明的ながら頑固でつい減らず口を叩く負けない性格なのが、危なっかしくもありハラハラ。
独立への歩み、印パ分離時の混乱という言葉では簡単すぎるインド社会の重たい動揺の一端が窺い知れる。独立を闘い続ける難しさ。
ペルシスの「いつから真実はどうでもいいものになったんですか」「将来に善を成す機会を残す」といった言葉が鮮やかに感じた。
次作も楽しみだ。

『マエストロ』他には
指揮シーンは少な目だったと思うし、私は詳しくないけれど、終盤の指揮シーンなんかはブラッドリー・クーパー熱演って感じで素晴らしかったと思う。本人にかなり寄せてるよね?わかる人にはわかるのだろうな。で、そこからフェリシアを流れね。上手いね。

キャリー・マリガンもが良いのは当然なんですが、彼女の怒りの演技が好きなので、今作では感謝祭のシーンがかなり好きです。

指揮者ものとして『TAR』と共通するような行動があって、やはり芸術家はそもそもそういう所があるものなのかなーなどと思う。

ブラッドリー・クーパーは、バーンスタインに共感するところがあって撮ってたのか、それとももうすこし距離のある関心があって撮ったのか、というのも思いますね。表現者と創造者の外向内向の話なんか特にね。

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『マエストロ:その音楽と愛と』観た

バーンスタインの芸術面というよりもその人物像、彼と妻フェリシアの愛情の話であったのだが、恐らく意識的にドラマチックにしない、夫婦愛といっても哀愁が漂う愛ある関係の難しさの視線での話で、個人的には面白かった。バーンスタインになりきったブラッドリー・クーパーも大変良かったし、何しろキャリー・マリガンが素晴らしい。言葉にしない感情の表現が好きですね。二人の会話の親密そうなのが(説明しきらない台詞なのもあるが)、観ていて本当に面白いし心地よかった。
バーンスタインなりきりと言えば、メイク、メイクが凄い。本人の顔はきちんと認識していないが、ブラッドリーであってそうでない具合が見事。皮膚の質感も見事すぎて、初アップ時の老けメイクの自然さにちょっと驚く。メイクはカズ・ヒロさんと後で知って納得だった。
一番面白かったのは、技巧を凝らした映像。色々全然詳しくない自分でも、凝りに凝ってる~!とわかる。ショットや画面サイズに質感、白黒とカラーの切り替えなど、上手いんだろうなぁ。映像については特に、本当に観ていて楽しかった。
音楽も詳しくないですが、全編バーンスタインの音楽鳴りっぱなしで知ってる人は耳が楽しいと思われるし、実際素敵だった。

『永遠に僕のもの』観た

1971年の実際の事件を元に。所謂サイコパスと思われる青年、「世の中の全てのものは自分のもの」と語るように窃盗が"得意"なのだが、しかし得られないものもあったのかもね、という彼なりの孤独や虚しさに視線を向けた作品かな。

主人公はラモン青年とその家族と出会い次々と犯罪を重ねていく。この家族が窃盗稼業をしているのが自然に語られるのでまず驚く。主人公がこの犯罪者達とも明らかに思考回路が異なるというのも自然に見えてくる。迷いなく欲のままに動いているようで、しかし彼自身が明確に認識できずに手を出せないものの周りを漂うような様子に、彼は今何をどう思っているのだろうかと惹きつけられるようだった。思いがけず、ラモンとの距離の揺れが情緒たっぷりで良かった…。

感情や行動が想定の横を行く感じ、また見目の麗しさに無垢を感じ取ってしまうように、危うさにも美がある様に撮られていて、なかなか好きな作品だった。色使いもいいし、音楽がとても好みの感じで、大好きですね。ダンスもとても癖になる感じで、良い。

『ナポレオン』観た

ナポレオンの心を占めたのは、ジョゼフィーヌと戦争。個人的で卑近なものと、他人と欧州の命運を巻き込む重大ごと。この二点を対比させることで、偉大な英雄で皇帝に上り詰めた存在の滑稽さと虚しさを焦点にした作品という印象。普通の伝記スペクタクル作ではない。

ナポレオンとジョゼフィーヌの愛憎のような主導権争いのような、超パーソナルな関係変化のドラマ、私的には好物なので面白かったけれど、期待を越えるまではいかないかな…という感じ。史実ではジョセフィーヌが年上なので、ホアキンとヴェネッサ・カービーだと絵的に違和感はぬぐえないんだけど、ヴァネッサの堂々とした演技と雰囲気、ホアキンの甘えとナイーヴそう性格をみせる演技でかなりカバーしてたと思う。ホアキン、こういう役上手いな。

戦闘場面はさすがのリドスコ監督、壮大でリアリティあって見たいものを見せてもらって大満足です。映像もリッチ。景色のでかさと泥臭さ、本当に良いよねー。主にアウステルリッツとワーテルローの戦いを取り上げ、本当にこの二つは見応えあった。

『マディのおしごと 恋の手ほどき始めます』観た

金に困った三十路女が金持ち夫婦の内気な息子の筆おろしの仕事にありつくラブコメ…とひどい倫理観の設定なのだが、これが案外真っ当な作品で。後半どんどんきちんとしたところに落ち着いていく。いいじゃないのこれ。

マディがパーシーの幼さに一切つけ入らないところ(訴えようとするのは男の部分に。しかし強引すぎるw)、年上の方がひどい目にあうユーモア担当、打算とロマンチックの狭間でてんやわんやするうちに傷を負った者同士の心の交流になっていくのが良いよね。最後はパーシーの気持ちを思って少し辛くなった。久々に人と親密になるのっていいよね…と自然に思った。素敵な作品だよ。

ジェニファー・ローレンスがもうめちゃくちゃ体を張っていて凄い…!乳の振り乱し具合に本気を見た。海は…海でそれやられたらそうなるわな、仕方がない。笑った~

当然演技も良くて。ピアノの場面の感動と喜びと少しの罪悪感と戸惑いの表情(と私は見た)は流石。こちらも感動してウルっときた。重い哀しみもどこか乾いた感じを漂わせるのが上手いし。彼女の人との距離の見せ方が本当に好きだ。

配信スルーで期待してなかったのに、楽しく素敵なところのある作品でなんだか嬉しかったな。

『ワーキング・ガール』続き

ラブコメ得意じゃない者としては、この作品は登場人物の性格も恋愛的動向も落ち着いていて、見やすかった。彼氏とのプロポーズ展開は何とも苦い空気が漂っていたね…「いつも自分を一番に考えてるものな」ってお前の方だろ…と言いたくなる彼氏の女見下し感とかなんかリアルっぽいな…と見ていた。

ハリソン・フォードが取引先社長に、下半身で考えてると良くないぞ的なことを言われて、その言われ方も時代だなと思うけれど、君たち成功の予感と恋愛感情がないまぜになって取引先の建物内でいきなり盛り上がっちゃってたから、そう言われる隙もあるよね確かに…と納得しました。ちょっとね、最後の主人公逆転劇の説得力がぼやけるのだよね…。

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