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>「いやいや、違う。誤解してもらっちゃ困る。きみたちは小説家として生計を立てることはないだろう。いくらがんばっても無理だ。しかし、だからといって、書いてはいけないということではない。きみたちはダンスのレッスンを受けるのと同じ理由で小説を書かかねばならない。高級レストランでのフォークの使い方を学ぶのと同じ理由で書かねばならない。世界を見る必要があるのと同じ理由で書かねばならない。それはたしなみだ」

前々から気になっていた本、近所の本屋をのぞいてみたら置いてあったので即買い。

読者に憐れみを | 動く出版社 フィルムアート社
filmart.co.jp/books/978-4-8459

『仕事が人をつくる』
小関智弘著、岩波新書 2001年9月発行

研削工、瓦職人、歯科技師工、染色工、椅子職人など、主に町工場の職人を、自身も町工場の旋盤工である著者が取材。職人たちの生い立ちと仕事を描き出す。仕事が人をつくり、人を育てる。人は働きながら、その人となっていく。むちゃくちゃおもしろかった。たまたま古書店のワゴンで手に取った本だけど、大当たりでした。

『日本医家伝』
吉村昭著、中公文庫 2023年8月発行

江戸から明治期の日本で近代医学の開拓に取り組んだ医家12人の短編集。「前野良沢」は教科書で読んだなあ。今でも教科書に載ってるのかな。極貧から身を起こし、富と地位を求め続け、ついには蘭医として初の幕府奥医師最高位まで上り詰めた伊東玄朴とか、この本で初めて名を知ったけど、おもしろかった。カバーに写ってるのは「ハルマ和解」かな?と思ったら、確かにそうだった。

『海上権力史論』
アルフレッド・マハン著、北村謙一訳 原書房 2008年6月発行

絶対に読めないだろうなという想いと、どうしても読んでおきたいという想いの狭間で、ついに買ってしまった。クラウゼヴィッツの「戦争論」やリデルハートの「戦略論」と並ぶ、海軍戦略の古典。19世紀末の本なので海戦も帆船の時代。だけれども、マハンのいうとおり「戦いの原理に今も昔もない」ので学べることは多いと思う。

『イタリア遺聞』
塩野七生著、新潮文庫 1994年3月発行

エッセイ集。この中に収録されているアルド・マヌッツィオ(アルドゥス・マヌティウス)の話を読みたくて購入。グーテンベルクが活版印刷を発明した頃に生まれたアルドは、ヴェネツィアでギリシア・ローマの古典作品を多数出版。百科事典のような鈍器本ばかりの中、コンパクトな文庫本(八つ折判)を開発し、本の価格を1/8に下げることに成功した。読みやすいイタリック体(の祖先)を発明し、初めて出版物カタログを作成した。アルド社の出版物は丁寧な校閲により誤植もほとんどなかったという。

『中世イングランドの日常生活』
トニ・マウント著、龍和子訳、原書房 2022年10月発行

現代人のための中世世界のガイドブック。中世の社会と住宅、仕事と休暇、信仰と宗教、衣服と外見、食べ物と買い物、健康と医療、娯楽、家族、教育、戦争、法と秩序など、幅広い話題を取り上げる。何かの拍子に中世に飛ばされても、この本が手元にあればサバイバルできる確率が高くなりそう。チョーサーの『カンタベリー物語』を読み返したくなった。

『オランダ語のしくみ』
清水誠著、白水社 2007年3月発行

白水社のニューエクスプレスが会話中心に言語の基礎を学ぶシリーズなのに対し、言葉のしくみシリーズは読みものの形式で「入門の入門」レベルの内容をさらっと読めるようになっている。本格的に学ぶ気はなくても少し興味がある、くらいの時に読むのにちょうどよい。昨今のように音声データDLではなくCDが付いている(しかもシングルCD)。後から参照するのには向いてない。そういう用途ではないのは承知の上で、索引は付けてほしかったと思う。

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『オランダ語四週間』
朝倉純孝著 大学書林 1971年12月発行

江戸時代を舞台にした小説を読んでいて蘭学が出てくると無性にオランダ語を学びたくなる。そしていつもすぐに挫折するのだけど、その際に手に取るのがこれ。昭和の中頃に発行された、見るからに古い様式の学習書であるがゆえ、かえって蘭学っぽい雰囲気に浸ることができる。江戸時代当時の本はさすがに古すぎて読めないし(でも国立国会図書館デジタルコレクションでアクセスできるのはつくづく良い時代だと思う)。4週間のカリキュラムで初級レベルを網羅し、最後の3日間は文学作品の訳読(対訳で100ページもある)というハードな学習書。白水社がエクスプレスシリーズを出すまでは、マイナー言語の学習書はこの四週間シリーズが定番だった。

『多読術』
松岡正剛著、ちくまプリマー新書 2009年4月発行

今朝たまたま読み返していて、お昼に訃報に接して驚いた。この本は何度も読み返している。読書の方法、正剛さんの生い立ち、読書遍歴、千夜千冊について、編集、本棚、読書スタイルなどなどについて、対談形式で語られる。時々手に取って一部を読み返すだけで新しい気づきがある。

『火器の誕生とヨーロッパの戦争』
バート・S.ホール著、市場泰男訳 平凡社ライブラリー 2023年6月発行

画期的な兵器が発明されても、軍がそれを採用し実践で使われなければ発展することはない。火薬・火器の発明から銃砲が戦争の主力となる16世紀までを技術史的な観点から説き明かす本。ナーロッパ系世界の小説を書く際の参考にと購入。

『高等学校 公共』
帝国書院 2022年1月発行

かつて高校で教えられていた「現代社会」は一昨年より「公共」になった、らしい。本書は最近ゲットしてざっと目を通したけど、従来よりもより現実社会に即したカリキュラムになったように見える。アクティブな社会参加を前提にいろいろと考えさせ、社会人に備えさせる。AIの発展やSNSの問題など新しい話題も積極的に取り入れられている。こういうの、大人こそ手に取って学び直した方がよいんじゃないかな、と思う。高校時代は現代社会の授業が正直言ってつまらなかったけど、今にして思えばものすごく大事な内容だったんだと気づく。

『ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト読本』
深津貴之・岩元直久著、日経BP 2024年8月発行

プロンプトエンジニアリングの教科書。生成AIの力をいかに引き出せるかはプロンプトにかかっているけど、私も含めて多くの人が適切なプロンプトを構築できていないのではないかと思う。効果的なプロンプトをいかに組み上げるか、基礎から実践的な内容まで丁寧に解説されている。7割くらいの内容はChatGPT以外の生成AIにも適用できそう。

『高校生のための批評入門』
ちくま学芸文庫 2012年3月発行

帯にあるように「珠玉のアンソロジー」だと思う。本書に収められた51編の文章は、著者の批評精神の発露でもあり、読者に批評を促す契機でもある。感性が豊かな年代のうちに読んでおきたかったけど、大人になってからでもじゅうぶんに楽しめると思う。

"私たちは「他者」に出会うとき、驚きや違和感を覚える。その時、本当に「私」を意識する。これが批評の始まりである。"

『物語のつむぎ方入門 〈プロット〉をおもしろくする25の方法』
エイミー・ジョーンズ著、駒田曜訳、創元社 2022年12月発行

紹介されている手法はどれも基本的なものなのだろうけど、こういうのは系統立てて勉強したことがなかったので参考になった。60ページちょっとしかないハードカバーの本。装丁が素敵。

『百年の孤独』
ガルシア=マルケス著、鼓直訳、新潮文庫 2024年7月発行

近所の書店では初版は即日完売だったらしい。ようやく増刷分がゲットできた。すでに6刷。あまり売れないと言われる海外文学がこれだけ売れるってすごいよね。小説自体は以前に読んだことがあって、たしかガルシア=マルケスが亡くなった頃にハードカバー版を買って、読んでから実家に送ったのだった。細部はほとんど忘れている。そして筒井康隆氏が解説を書いてるのね。

『南総里見八犬伝』
曲亭馬琴著、石川博編 角川ソフィア文庫

八犬伝を、できれば原文で読んでみたいけど、あんな膨大な量、今の積ん読本のボリュームを考えると、現代語訳ですら読めないだろう。馬琴は28年かけて八犬伝を書いたのに、私は28年かけても読めそうにない。というわけで、ダイジェストの対訳版を入手。余力があれば次に河出文庫版(抄訳)も読みたい。

『詳説世界史図録 第3版』
山川出版社 2020年11月発行

高校の副教材なのかな?350ページフルカラーで860円という驚異のコストパフォーマンス。内容の充実度もすごい。適当なページを開いて眺めているだけで楽しい。山川詳説世界史研究と合わせて、一家に一冊!

『宇宙船が遭難したけど、目の前に地球型惑星があったから、今までの人生を捨ててイージーに生きたい』
水野藍雷著、KADOKAWA 2023年5月発行

なろう系らしい長タイトル。そしてタイトルどおりの序盤。中世レベルの文明と魔法と魔物が支配する辺境のファンタジー惑星が舞台。1巻ではまだ3人しか登場人物が出てこなかったんだな、と久々に読み返してみて思った。書籍化が決まる前から読んでいて、書籍は2巻まで出ているけど、作者都合で休止中。いつか再開されると嬉しい。ちなみに1巻には全体の1割も収録していないので、序盤もいいところである。
kakuyomu.jp/works/168169278610

『コマンドラインの黒い画面が怖いんです。新人エンジニアのためのコマンドが使いこなせる本』
kanata著、翔泳社 2024年4月発行

ラノベかと思われる長タイトルの技術書。コマンドプロンプトやPowerShell、WSL上のUbuntuでコマンドラインに慣れ、どう使っていけばよいかを学ぶ実践的入門書。Windows PCがあれば普通に学習できるのが良い。私はコンピューターとの出会いが黒い画面だったので何の抵抗もないのだけど、今の人たちにはずいぶん抵抗があるらしい(ダメな人は全力で拒否するものね)。

『ロビンソン・クルーソー』
ダニエル・デフォー著、唐戸信嘉訳、光文社古典新訳文庫 2018年8月発行

言わずとしれた名作。なんだけど子どもの頃に(おそらくダイジェスト版を)読んで以来なので、ぼんやりとしか覚えてない。遭難し、ただ一人孤島に辿り着きサバイバルする。典型的な「行きて帰りし物語」。島での暮らしは28年に及ぶ。どんな失敗をしたか、なぜそのような失敗をしたかが丁寧に語られているのが興味深いし物語にリアリティを与えている。にしても、当時のヨーロッパ人の無邪気な残酷さというか、野生のヤギを捕まえて閉じ込め1週間放置していたら餌がなくて死にかけていた、みたいなエピソードがたくさん。子ども向きの本ではどうなってるんだろうね……。

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