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『日本語の歴史 3 言語芸術の花ひらく』読了した。平安時代の巻。難渋な第2巻と比べてするすると読めた。あいかわらず知らんことばかりで楽しい。

スマホの画面にゴミついてるのかと思ってふいてしまった

何本もの稲妻を背景にツバメたちがひらりと飛ぶのを見た。はじめて見る光景かも。

これは亀井孝の弟子の田中克彦によれば、ソシュールの原書の誤植を亀井孝が見抜いて、小林英夫に教示したものらしい。すごい話。以上は、E. コセリウ『言語変化という問題』(田中克彦訳、岩波文庫)巻末の訳者解説から。

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現行の『一般言語学講義』(1972)の訳者序文ではこう書き換えられているそう。「そのようにして朱を加えられた原稿にもとづいて初刷をえたが、こんどはこれを国語学者亀井孝氏の間に供した。わたしが氏から拝借しようとしたのは鋭敏な語感である。国語国文にたいする氏一流の潔癖は、わたしの訳文の、想いもよらぬ所に盲点をあばいてみせた」

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「国語学者亀井孝氏には、別の役割を受持つていただいた。氏は専ら訳文の聞手となられた。眼によりも耳に訴へて、朗々誦すべき文章に仕上げるといふのが私の主張の一つであつたから、期せずして、私は振仮名廃止論を実践することとなった。私は氏から国語に関する該博な知識と繊細な感覚とを拝借したのである。氏と共に原書と訳文との読合せにすごした、うすら寒い東都の幾夜さを、私は忘れまい」

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最近知って驚いたのだけど、亀井孝は、ソシュールのあの『一般言語学講義』の翻訳にも一役買っているようだ。訳者の小林英夫が1940年に岩波から『言語学原論』(現行の『講義』の旧版)の改訳新版を出すときに、亀井孝とともに原書と訳文の読み合わせを行い、助言をもらったと、訳者序文に謝辞が記されている。

亀井孝先生、日本語の歴史とつおいつ叙述しつつ、筆がのってくると感情が溢れるごとくドイツ語が迸り出る。「トレーガー」(Träger:担い手)とか「ヒンターランド」(Hinterland:後背地)とか当時は説明抜きで読者は理解できたのだろうか。

『日本語の歴史』で字体の話を読んだばかりのところに、たまたま文科省の「常用漢字表の字体・字形に関する指針」を目にしたので拾い読みしてた。明朝体の歴史おもしろいな。

この時間でもぬるま湯の中を歩くようだな

まる1週間酒を我慢していたのでそろそろ飲んでもよいのではないかねえ、と内臓と相談している。ゴニョゴニョいっておる。

こんな蒸し暑い日の夜中はビール開けたくなるのだけど、なんか数日前から胃がじんわり痛いので我慢してる。

さて、角川ソフィア文庫の解説が「収める作4541」の1つに数えている「漢文1」はどれかというと、上の①〜③のどれにも分類されない特異な散文である「沈痾自哀文」(巻五)だと思われる。和歌や漢詩の序文になっているわけでもない(ように見える)この散文が、なぜ万葉集に収められたのか不思議。

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では漢文(散文)はどうか。ざっと通覧すると、通常の〈題詞〉とは異なる、多少なりとも作品としての性格をもつ漢文は少なからずあり、主に巻五と巻十七に集中する。試みに分類すると、①「令和」の出典である巻五の「梅花の歌三十二首の序」など、「序」と明記のあるもの(計10)、②「序」の記載はないが歌の序文的性格を持ったもの(漏れがある可能性大だが計8)、③題詞に分類されうるがそれ自体物語の性格をもつもの(巻十六の物語歌群の題詞)、となりそう。

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漢詩④:杪春余日媚景麗 初巳和風払自軽 来燕銜泥賀宇入 帰鴻引蘆迥赴瀛 聞君嘯侶新流曲 禊飲催爵泛河清 雖欲追尋良此宴 還知染懊脚令*丁*
(杪春の余日媚景麗しく、初巳の和風払いて自ら軽し。来燕は泥を銜み宇を賀して入り、帰鴻は蘆を引きて迥かに瀛に赴く。聞くならく君が侶に嘯き流曲を新にし、禊飲爵を催して河清に泛べしことを。良きこの宴を追尋せまく欲ふと雖も、また知る懊みに染して脚令*丁*なることを。)
(巻十七・3976の前(新番号3999)) *の字は足偏がつく

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漢詩③:余春媚日宜怜賞 上巳風光足覧遊 柳陌臨江縟袨服 桃源通海泛仙舟 雲罍酌桂三清湛 羽爵催人九曲流 縦酔陶心忘彼我 酩酊無処不淹留
(余春の媚日は怜賞するに宜しく、上巳の風光は覧遊するに足る。柳陌江に臨みて袨服を縟らかにし、桃源海に通ひて仙舟を泛ぶ。雲罍に桂を酌みて三清湛へ、羽爵人を催して九曲流る。縦酔陶心彼我を忘れ、酩酊して処として淹留せずといふことなし)
(巻十七・3973の前(新番号3995))

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漢詩②:俗道変化猶撃目 人事経紀如申臂 空与浮雲行大虚 心力共尽無所寄
(俗道の変化は撃目のごとく 人事の経紀は申臂のごとし 空しく浮雲とともに大虚を行く 心力共に尽きて寄る所なし)(巻五・897の前(新番号901))

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漢詩①:愛河波浪已先滅 苦海煩悩亦無結 従来厭離此穢土 本願託生彼浄刹
(愛河に波浪は已に先に滅び 苦海に煩悩はまた結ぶことなし 従来、この穢土を厭離す 本願、生を彼の浄刹に託けむ)(巻五・794「日本挽歌」の前(新番号797))※読み下し文は岩波文庫から

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まずは「漢詩4」。4首がどれなのか、探し方が悪いのか情報が見つからず、やむなく文庫の頁を繰って自力サーチ。結果、わりと簡単に見つかった。角川ソフィア文庫版には歌に旧国家大観の旧番号と新編国家大観の新番号が併記されており、漢詩には後者だけがついているので比較的探しやすかった。

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