万葉集に、いわゆる〈題詞〉や〈左注〉以外の、「多少とも独立した作品としての性格をもつ漢文や漢詩」がどれくらい・どんなものがあるのか知りたくて調べていた。角川ソフィア文庫の解説に「収める作は、漢文1、漢詩4、重出歌3を加えて4541」とあり、まずはこれが手掛かり。 https://fedibird.com/web/statuses/112650174558792552
漢詩④:杪春余日媚景麗 初巳和風払自軽 来燕銜泥賀宇入 帰鴻引蘆迥赴瀛 聞君嘯侶新流曲 禊飲催爵泛河清 雖欲追尋良此宴 還知染懊脚令*丁*
(杪春の余日媚景麗しく、初巳の和風払いて自ら軽し。来燕は泥を銜み宇を賀して入り、帰鴻は蘆を引きて迥かに瀛に赴く。聞くならく君が侶に嘯き流曲を新にし、禊飲爵を催して河清に泛べしことを。良きこの宴を追尋せまく欲ふと雖も、また知る懊みに染して脚令*丁*なることを。)
(巻十七・3976の前(新番号3999)) *の字は足偏がつく
では漢文(散文)はどうか。ざっと通覧すると、通常の〈題詞〉とは異なる、多少なりとも作品としての性格をもつ漢文は少なからずあり、主に巻五と巻十七に集中する。試みに分類すると、①「令和」の出典である巻五の「梅花の歌三十二首の序」など、「序」と明記のあるもの(計10)、②「序」の記載はないが歌の序文的性格を持ったもの(漏れがある可能性大だが計8)、③題詞に分類されうるがそれ自体物語の性格をもつもの(巻十六の物語歌群の題詞)、となりそう。